カーボベルデ代表GKのヴォジーニャ(Vozinha)が、世界的な注目を集めている。ではヴォジーニャとは何者なのか。経歴やプレースタイル、そしてスペイン戦での活躍をもとに、その実力を整理する。

ワールドカップ初出場となるカーボベルデは、優勝候補のスペイン代表と対戦。試合は0-0で終了し、同国は史上初となるワールドカップでの勝ち点を獲得した。この歴史的結果の中心にいたのがヴォジーニャだった。
小国カーボベルデが起こした快挙
カーボベルデは、北西アフリカの西沖合、セネガル沖のヴェルデ岬から西へ約600キロに位置する島国で、人口約52万5000人の小国だ。そんなカーボベルデ代表がアフリカ予選で快挙を達成。予選10試合のうち7試合を無失点で終え、強豪カメルーンを上回って初のW杯出場を勝ち取った。
その堅守を支えているのが、守護神ヴォジーニャだ。
ヴォジーニャとは何者?スペイン戦「7セーブ」で世界が注目
ヴォジーニャは優勝候補の1つとされるスペイン戦に先発出場すると7セーブを記録。ボール支配率で上回るスペインの猛攻を受けながらも、安定したポジショニングと反応速度でゴールを守り抜いた。
至近距離からのシュートストップやクロス対応でもミスはほとんどなく、守備の最後の砦として機能。“無敵艦隊”相手に無失点という結果を残し、カーボベルデに歴史的な勝ち点1をもたらした。
ヴォジーニャの経歴|欧州で積み上げたキャリア
ヴォジーニャは1986年生まれのゴールキーパー。本名はジョシマール・ジョゼ・エヴォラ・ディアスで、カーボベルデのサン・ヴィセンテ島・ミンデロ市で生まれた。ニックネームの「ヴォジーニャ」は、ポルトガル語で「小さなおばあちゃん」を意味する。両親が生計を立てるのに忙しかった幼少期に祖父母と暮らしていたことに由来している。
ポルトガルやキプロスなど、主に欧州リーグでキャリアを積み、ビッグクラブでのプレー経験はないものの、安定したパフォーマンスを武器に各クラブで出場機会を確保してきた。
カーボベルデ代表では長年にわたり守護神を務めており、アフリカネーションズカップなどの国際大会も経験。その豊富な経験値と安定感が評価され、今回のワールドカップでも正GKとして起用されている。

プレースタイル|派手さよりも安定感と判断力
ヴォジーニャの特徴は、派手なセービングよりもポジショニングと判断力の高さにある。
無理に飛び込まず、シュートコースを限定することで対応するスタイルで、失点リスクを最小限に抑えるタイプのGKだ。スペイン戦でもこの強みが発揮され、試合を通じて大きく崩れる場面はなかった。
インスタフォロワー1853万人超え|W杯で一気に知名度上昇
W杯での活躍により、ヴォジーニャの知名度は一気に拡大した。
スペイン戦前、インスタグラムのフォロワーは5万人ほどだったが、試合後から数が急増し1853万人を突破(日本時間7月4日10時時点)。これまで欧州の一部リーグを中心にプレーしてきたGKが、ワールドカップの舞台で世界的な認知を得た形となった。
カーボベルデにとっての歴史的結果|W杯初の勝ち点
今回の引き分けは、カーボベルデ代表にとって特別な意味を持つ。
ワールドカップ初出場ながら、優勝候補スペインから勝ち点を獲得。これは同国史上初の快挙となった。
その結果を支えたのが、7セーブでゴールを守り切ったヴォジーニャの存在だった。
試合後コメント|ヴォジーニャが語った歩みと想い
スペイン戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いたヴォジーニャは、試合後に英メディア『The Athletic』の取材に応じ、自身の歩みとこの結果への想いを語っている。
まず、歴史的な勝ち点獲得については次のようにコメントした。
「カーボベルデのすべての人々へ感謝を伝えたい。この結果に私たちはすごく喜んでいる。選手たちは、この瞬間を迎えるために本当に努力してきた。誇りと満足感に満ちた一日だ」
さらに、自身のルーツについても言及。試合後に涙を流した理由を明かした。
「試合後に涙が出たのは、子供の頃、祖父母に育てられたから。しかし、彼らはこの場に立ち会うことができなかった。数年前に他界してしまったからだ。母もビザの問題と、その費用の都合でここに来ることができなかった。時間内に手続きを済ませることができなかったんだ」
当初は保証金1万5000ドル(約1万1200ポンド)と手数料が負担となり、渡航は困難だった。
また、自身のキャリアについては“遅咲き”であることを強調している。
「人生で努力するのは、こういう瞬間を迎えるため。私は今40歳だが、25歳になるまでプロではなかった。これはこれまでの道のりに対するご褒美だと思っている」
そして過去の自分へ向けた言葉も残した。
「18歳の頃のヴォジーニャに、自分を本当に誇りに思ってほしいと伝えたい。彼は本当に努力してきた。正直なところ、子供の頃はこんなことを夢にも思わなかったが、この試合を終えて、過去の自分に『すべてが報われた』と伝えられる」
最後に、マン・オブ・ザ・マッチ受賞についてはこう締めくくっている。
「愛する国を代表できることは、私にとって名誉なこと。私たちはごく小さな国から来ており、予選の道のりも非常に困難だった。今日、スペインのような強豪と対戦することで、私たちの夢が叶ったんだ」
国を動かした涙、母はスタンドへ
あの涙は、ピッチの中だけに留まらなかった。
歴史的な一戦で見せたヴォジーニャの姿は世界中の注目を集め、その背景にあった家族への想いもまた、多くの共感を呼ぶこととなる。結果として関係当局が対応を見直し、ヴォジーニャの母アナ・カンディダ・エヴォラさんに対する特例的な措置が取られることに。これにより、これまで渡航を断念していた母は無事にビザを取得し、次戦のウルグアイ代表戦からはスタンドで息子のプレーを見守ることが可能となった。
さらにESPNの報道によると、ヴォジーニャの母アナ・カンディダ・エヴォラさんは無事にアメリカに到着したようで、ウルグアイ代表戦をスタジアムから観戦できそうだ。
母も観戦するウルグアイ戦で躍動
日本時間6月22日に行われたFIFAワールドカップ2026のグループH第2節ではウルグアイ代表と対戦。母アナ・カンディダ・エヴォラさんがスタンドで観戦するなか、この日のヴォジーニャは2失点を喫するも、チームもワールドカップ初ゴールを含む2得点で2試合連続ドローとした。
サウジアラビア戦でも躍動!カーボベルデ史上初のノックアウトステージへ
日本時間6月27日に行われたFIFAワールドカップ2026のグループH第3節のサウジアラビア戦。カーボベルデはこれまでのようにヴォジーニャを中心とした堅い守りでサウジアラビアの攻撃をシャットアウト。ヴォジーニャ自身は枠内に放たれた3本のシュートをセーブする活躍でゴールレスドローに貢献した。
この結果、3戦3分の勝ち点3を獲得したカーボベルデが、グループ2位でフィニッシュ。初出場のW杯でノックアウトステージ(決勝トーナメント)進出を決めた。
なおデータサイト『Opta』によると、ヴォジーニャは40歳を過ぎてからW杯で複数回のクリーンシートを記録した史上3人目のGKであり、イングランド代表GKピーター・シルトン(3回)、イタリア代表GKディノ・ゾフ(2回)に続く伝説的な記録を残している。
待ち望んだメッシとの対戦 スーパーセーブ連発
日本時間7月4日に行われたFIFAワールドカップ2026のラウンド32でカーボベルデは、世界王者であるアルゼンチンと対戦。ヴォジーニャにとっては、大会前から対戦を望んでいたリオネル・メッシとの対戦を迎える。
29分にはそのメッシにゴールネットを揺らされるが、62分には抜け出したメッシに対してヴォジーニャが好セーブ。73分にはメッシの意表をついたFKを横っ飛びでセーブするなど躍動した。
しかし試合は延長後半にオウンゴールで決着。旋風を巻き起こしたカーボベルデの旅は、ラウンド32で幕を閉じた。
なおデータサイト『Opta』によるとヴォジーニャは大会期間中に18本のセーブを記録。そのうち8本がアルゼンチン戦だった。
また1度のW杯で40歳以上のゴールキーパーで歴代3位のセーブ数。1位は1990年のピーター・シルトン(28本)、2位はディノ・ゾフ(27本)だけだった。
まとめ|ヴォジーニャは「結果」で評価を変えたGK
ヴォジーニャとは何者か――その答えは、スペイン戦の結果が示している。
- スペイン戦で7セーブで無失点
- 優勝候補から勝ち点1を獲得
- フォロワー1853万人超えで世界的認知
- ウルグアイ戦では2失点も再び勝ち点1獲得
- サウジアラビア戦でもクリーンシートでR32進出に貢献
- 40歳を過ぎてからW杯で複数回のクリーンシートを記録した史上3人目のGKに
派手な経歴がなくとも、ワールドカップという舞台で結果を残せば評価は変わる。その典型例となったのが、カーボベルデ代表の守護神だった。


