W杯開幕の準備は整った…

「まさか自分の思いつきが当たっちゃうなんてね」そんな風に私が首を振っていたのは火曜日の夕方、散歩から戻ってみると、フリアン・アルバレスに移籍金1億5000万ユーロ(約280億円)のオファーを出したものの、アトレティコが契約破棄金額5億ユーロ(約930億円)を盾に断ったというレアル・マドリーの公告が出ているのに気づいた時のことでした。いやあ、元々これは、日曜に続投が決まったペレス会長が選挙戦中に予告、今週火曜にはガラクティコ(クラック)獲得の大型オファーを出すと言っていたことから始まったんですけどね。

それを受けて世間はオリーゼ(バイエルン)だの、ビティーニャ(PSG)だの、ジョアン・ネバス(PSG)だのと候補を挙げていたものの、その金額が偶然にも、5億というのは建前で、1億5000万なら、アトレティコは売るつもりと言われている数字と一致していたせいで、フリアンを想起した私だったんですが、当たり前ですよね。バルサに行かせるのだって嫌なアトレティコが早速、Xで笑い泣きの絵文字を並べた後、「Ni estudiamos ni valoramos ninguna oferta por Julián/ニ・エストゥディアモス・ニ・バロラモス・ニングーナ・オフェルタ・ポル・フリアン(フリアンへのオファーは検討もしないし、評価もしない)」とけんもほろろにお隣さんに返していたのは。

え、こうなることぐらい、ペレス会長もわかっていたんじゃないかって?うーん、私もそう思うんですが、何せ会長選挙の対抗馬、エンリケ・リケルメ氏はロドリ、ハーランド(マンチェスター・シティ)と大物の獲得を公約していましたからね。それで仕方なく、ペレス会長もフリアンを出してきたんでしょうが、だってえ、現在、ブラジル代表で活動中。先日は親善エジプト戦でもゴールを挙げたエンドリックも来季はオリンピック・リヨンへのレンタル移籍から戻るマドリーのFW枠に不足はないんですよ。そこへハーランドなり、フリアンが加わることになったら、それこそエムバペかビニシウスを出さないといけないはずですが、そんな声はまったく聞こえてこず。

よってとりあえず、絶対獲れないであろうクラックの名を出しておいて、すでにアラバとカルバハルの抜けた穴をコナテ(リバプールと契約終了)とダンフリース(インテル)で埋めたペレス会長の真の狙いは、メジャータイトル無冠のこの2シーズン、ずっと言われていたクロース(引退)、モドリッチ(ミラン)の代わりとなるMFの獲得にあるんじゃないかと思うんですが、さて。就任発表が秒読み段階に入っているモウリーニョ監督も火曜にはマドリッド入りしたため、その人選は水曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に出勤し、プレシーズン開始を7月13日と定めた彼と相談しながらってことになりそうですね。

翻って、アトレティコの方はバルサには絶対、払えない金額をフリアンにつけておき、太っ腹なPSGやアーセナルが払ってくれるなら考えるといった感じだったんでしょうが、お隣さんの乱入は想定外だったかと。いやあ、選手本人がすでにクラブにバルサに行きたいと言ったという話もまことしやかに囁かれている今日この頃なんですが、現在、アルゼンチン代表のW杯合宿でカンサスシティにいる彼からの音沙汰はまったくなし。

うーん、2年前、コパ・アメリカ中にジュリアーノがフリアンを熱心に勧誘したように、スカローニ監督のチームにいる5人のアトレティコ勢が今度は引き止めに尽力してくれるといいんですけどね。もしかしてメッシ(インテル・マイアミ)の横槍が入ったりする?ちなみに大会前の親善試合では、日曜のホンジュラス戦(2-0勝利)でジュリアーノが、火曜のアイスランド戦(同3-0)でアルマダがゴールを挙げているんですが、CL準決勝アーセナル戦でのケガでシーズン終盤の試合を失ったフリアンはまだ、プレーしていません。

そんなことはともかく、スペイン代表の近況もお伝えしていかないと。W杯に備え、先週金曜にはアメリカのチャタヌーガにあるベースキャンプ入りしたチームは月曜夜、スペインでは火曜午前4時から、メキシコのプエブラで大会前最後となる親善試合でペルーと対戦。このところ、フィナリシマ(ユーロ王者とコパ・アメリカ王者の対戦)が流れた代わりの3月の親善試合、エジプト戦から、ラ・コルーニャ(スペイン北西部のビーチリゾート、デポルティーボのホームタウン)でのイラク戦と引分けが続いていただけに、私もちょっと心配して見ていたんですが、いや、やっぱりレギュラーがプレーすると、スペインは強いんですよ。

そう、ジャマル(バルサ)とニコ・ウィリアムス(アスレティック)こそ、リハビリの総仕上げのため、チャタヌーガでお留守番だったんですが、開始2分にはクバルシ(バルサ)のパスを受けたオジャルサバル(レアル・ソシエダ)がエリア外からシュートを決めてスペインは先制。押しも押されぬエースっぷりを発揮してくれたんですが、プエブラは海抜2150mの高地とあって、気温は低かったものの、W杯にならって、お水休憩をした後の32分、今度はフェラン・トーレスとペドリのバルサコンビの連携が炸裂します。前者がゴール前に入れたパスを後者が押し込んで、2点目が入ることに。

そのまま0-2で折り返したスペインは後半頭から、またローテションが始まり、GKウナイ・シモン、ラポール(アスレティック)、オジャルサバル、ファビアン(PSG)がGKダビド・ラジャ(アーセナル)、エリック・ガルシア、ダニ・オルモ(バルサ)、ジェレミー・ピノ(クリスタル・パレス)と交代。すると8分、ロドリが入れたボールをピノがゴール前に上げたところ、GKガレセ(デポルティーボ・カリ)がクリアしようとしてオウンゴールにしてくれるんですから、ツイているじゃないですか。

いえ、16分にロドリ、バエナ(アトレティコ)、ペドリ、クバルシがスビメンディ、ミケル・メリーノ(アーセナル)、ガビ(バルサ)、プビル(アトレティコ)に代わった後には、ペルーのカウンターを浴びて、ベレス(アリアンサ・リマ)に1点を返されてしまったんですけどね。24分にはククレジャ(チェルシー)、ジョレンテ(アトレティコ)、フェランもグリマルド(レバークーゼン)、ペドロ・ポロ(トッテナム)、ボルハ・イグレシアス(セルタ)となって、11人の交代枠をコンプリートしたため、完全に控え選手チームと化したスペインは追加点を挙げることはなかったんですが、1-3の勝利なら、W杯前の足慣らしとして全然、十分?

試合後、チャタヌーガに直帰したチームは火水と練習をお休みし、木曜からまた、来週月曜午後6時(日本時間翌午前2時)から、アトランタでグループリーグ初戦のカーボベルデ戦を迎えることになるんですが、ええ、デ・ラ・フエンテ監督も「Van a llegar todos en un gran estado/バン・ア・ジェガール・トードス・エン・ウン・グラン・エスタードー(全員、ベストコンディションで臨めるだろう)」と言っていましたからね。ただ、ここ2カ月程、試合に出ていないジャマルとニコが即先発入りするのかはわかりませんが、バエナはともかく、フェランは好調なだけに控えにするのは勿体ないかもしれませんね。

その脇で、水曜にはマドリッドの弟分チームに朗報があって、とうとうヘタフェのボルダラス監督の2年契約延長が発表に。実はこれまで、アンヘル・トーレス会長が年棒減給の新契約しか提示せず、退団に傾いているだの、ボルダラス監督はセルヒオ・ラモスがセビージャを買い取った後の指揮官となる約束をしているだの、色々、噂があったため、ファンはやきもきしていたんですが、大丈夫。ええ、ラモスの買収計画もぽしゃりましたし、ここ2シーズン、残留を争っているチームに行くより、来季はカンフェレンスリーグでヨーロッパを駆け回るユーロ・ヘタを率いる方がずっと楽しいですって。

逆に未だに監督が決まっていないのがもう1つの弟分、ラージョで、ええ、先週にはイニゴ・ペレス監督のビジャレアル入りも正式に発表されたんですけどね。一応、有力候補は昨季、マジョルカを途中解任されたアラサーテ監督と言われているんですが、丁度、来季はリバプールの指揮官に就任するイラオラ監督とその第2監督だったイニゴ・ペレス監督の間、フランシスコ監督ではクラブも人選に失敗していますからね。ペレサ会長も慎重に選んでいるところでしょうが、W杯参加選手がパテ・シス(セネガル)とムミン(ガーナ)しかいないラージョは1人も行かないヘタフェと一緒に7月の早い時期から、ほとんどの選手が集まれる恵まれたクラブ。

来季はヨーロッパの試合もないため、日程も楽になりますしね。それにしたって、W杯決勝が7月19日って、参加選手が10人いるマドリー、12人いるアトレティコなんて、フランス、スペイン、アルゼンチン、ブラジルといった優勝候補チームでプレーする選手も多いだけに、一体、どんなプレシーズンになるものやら。来季のリーガ開幕は8月14日の週末と決まったんですが、今季の不調を昨夏のクラブW杯のせいにしていたペレス会長、マドリーが来季も上手くいかなかったら、今度はW杯のせいにするんですかね。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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