「これだからピッチがファンで溢れかえるのは困るのよね」そんな風に私が嘆いていたのは火曜日、木曜にスペイン代表のW杯前親善試合のイラク戦が開催されるリアソルが突貫補修作業に追われているというニュースを見た時のことでした。いやあ、先週末日曜の2部最終節、その前の週に2位が確定し、1部復帰が決まっていたデポルティーボはラス・パルマスに負けたんですけどね。この8年間、2部、ひどい時は旧2部B、現在RFEF1部(実質3部)での苦節に耐え、ついに待望の昇格を達成した歓びに試合終了直後、大量のファンがピッチに雪崩れ込むという事態に。
まあ、そういう現象は最終節でヘタフェのカンフェレンスリーグ出場が決まったコリセウムでも見られたように、そんなに珍しくないんですが、問題だったのは、リアソルではファンの中に不貞な輩がいたこと。ピッチの芝を持ち帰ったり、ゴールに被害を与えたり、更にはスタンドでもシートを引きはがすという蛮行もあったんですよ。いつも夏に芝を貼り替えるコリセウムが8月の来季開幕までに用意を整えればいいのと違い、中3日でスペイン代表戦を迎えるとなると、デポルティーボの施設管理スタッフの苦労がしのばれますが、実は今季はもう1つの1部復帰組も14年ぶりという、ラシング・サンタンデール。
こちらはもう2週間前には昇格が決まり、最後は2部優勝で終わったんですが、まあ昨季は1位で1部に戻って来たマドリッドの弟分、レガネスも1シーズンだけで最速Uターンしてしまいましたからね。1部で生き残るためにはそれ相当の覚悟と準備がいるんですが、2部降格したマジョルカ、ジローナ、オビエドの穴を埋める残り一席が決まるプレーオフはカステジョンとアルメリア、ラス・パルマスとマラガが、今週末から2試合制の準決勝で対決。決勝は20日と、すでにW杯絶賛開催中の時期なんですが、この流れだと、やはり古株のマラガ辺りになるかもしれませんね。
まあ、そんなことはともかく、先週末の2部最終節にミランデスと残留最後の一席をガチンコ直接対決で争うことになったレガネスはどうなったのかというと。何せ、4月には降格圏と勝ち点6差になり、ほぼほぼ残留確定と言われていながら、ここ6試合白星がなく、前節には19位のミランデスとたったの3差になってしまいましたからね。それで泡を喰ったクラブがオカ監督を先週半ばに解任。運命の懸かった試合を現役時代にレガネスでプレーし、Bチームの指揮も執ったことのあるカルロス・マルティンス監督に預けたんですが、となると怖いもの見たさではなくとも、私もブタルケに応援に行かない訳にはいきませんって。
5月末から完全に真夏の気温になっていたスタンドを埋め尽くしたファンたちも、毎試合、「No te abandone en Segunda B,allá donde estés yo te seguiré/ノー・テ・アバンドネ・エン・セグンダ・ベー、アジャー・ドンデ・エステス・ジョ・テ・セギレ(2部Bでも見捨てない。どこにいても君について行く)」と歌っていたって、やっぱり2年連続の降格は嫌ですからね。「Yo creo en el Lega/ジョ・クレオ・エン・エル・レガ(レガネスを自分は信じる)」と書かれた紙マフラーを掲げて、入場する選手たちを迎えてから、ずっと応援の声を途切らせなかったんですが…。
いやあ、前半10分にはGKソリアーノのクリアがルーベン・ペーニャの頭に当たって、ゴールポストを直撃するドッキリがあった後、引き分ければ、レガネスは残留できるため、私も0-0死守の戦いを見る覚悟をしていたんですけどね。46分、そして後半7分にもエル・ヘバリのゴールがかろうじてオフサイドで認められなかったため、何とか、ミランデスにリードされずに済んだ彼らはほとんどシュートも撃ってなかったんですが、大丈夫。25分、ダニ・ロドリゲスがエリア前から入れたクロスを交代出場のミジャンがヘッドして、とうとう先制点が入ったから、どんなにスタンドが安堵感に包まれたことか。
もう後のないミランデスも正面スタンド左隅に陣取るビジターファンが息をひそめて見守る中、捨て身の反撃を試みたんですが、幸い長い9分のロスタイムも何事もなく終わり、試合は1-0でレガネスが勝利。結果的に順位も16位まで上がっていたんですが、とにかく崖っぷちでの残留確定でしたからね。選手たちのピッチでのお祝いもそれ程、派手なものではなく、ファンのピッチ乱入も起きず、ブタルケのシーズンは平和に幕を閉じたんですが、いやあ、まさか翌月曜にはクラブのオーナーが替わっているとは!
そう、4年前からアメリカの投資ファンドが経営していたレガネスですが、ドバイの企業に売られたそうで、うーん、最近のホームゲームではしょっちゅう、「Directiva, dimision!/ディレクティバ・ディミシオン(経営陣、辞職しろ)」のカンティコが聞こえていましたしね。そのせいもあって、「Salvarse es muchísimo más importante que ganar la Champions/サルバルセ・エス・ムチシモ・マス・インポルタンテ・ケ・ガナール・ラ・チャンピオンズ(残留決定の方がCLに優勝するよりずっと大事だ)」とクラブを救えて大歓喜していたマルティネス監督が来季も続投するのかも今はわからず。
どちらにしろ、カンテラーノ(下部組織出身の選手)のシセが退団したりと、この夏のレガネスはチームの大改編が必要になりそうですが、実は私が期待しているのは来季の2部ではマドリーミニダービーがあるかもしれないこと。ええ、アトレティコ・マドリレーニョはポンフェラディーナと、RMカスティージャはサバデルとの2部昇格プレーオフ準決勝の真っ最中ですからね。両者が決勝で逢うことはないため、上手くいけば、マドリッド勢2部3チーム体制が実現するんですが…ブタルケも含めて、セントロ・デポルティーボ・アルカラ・デ・エナレスも、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノも、兄貴分のBチームのホームスタジアムはマドリッド市内から、行きにくいのが難ですかね。
え、先週末はスペイン代表合宿も始まったんだろうって?その通りで土曜の夕方にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に集合したW杯招集選手21人とヘルプ要員の9人はそのまま、午後6時から始まったCL決勝を一緒に観戦。せっかく早い時間にハバーツの先制ゴールでアーセナルがリードしながら、後半20分、招集落ちしたモスケラのペナルティから、デンベレがPKで同点に。最後は延長戦、PK戦にもつれ込み、GKダビド・ラジャはヌーノ・メンデスのPKを弾いたものの、味方2人が外したため、PSGが4-3で2年連続優勝という結末に、準決勝でアーセナルに負けていたジョレンテ、バエナ、プビルのアトレティコ勢3人は結構、複雑な思いを抱いていたかも。
この決勝に参加していたファビアン(PSG)、ラジャ、スビメンディ、ミケル・メリーノ(アーセナル)、更に先週水曜にラージョを破ったカンフェレンスリーグ決勝にクリスタル・パレスの一員として出場していたジェレミー・ピノらは月曜から順次、合流することになるんですが、ラス・ロサスでは早速、翌日曜の午前11時に一般公開練習が実施。やはりW杯前とあって、今回はスタンド入場制限もあり、またゴール裏の壁の上には大勢の立ち見ファンが鈴なりになることに。いえ、初日の練習はいつも同様、ロンド(輪の中に選手が入り、ボールを奪うゲーム)やパルティデージョ(ミニゲーム)など、軽いもので、とにかく朝7時からに並んで、スタンド最前列を確保したファンたちはいつファンサービスが始まるかと、じりじりしていたみたいですけどね。
50分程でセッションが終わると、途中から別メニューとなっていたリハビリ中のジャマル(バルサ)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、ビクトル・ムニョス(オサスナ)らも加わって、選手全員がサインやセルフィーに応じることに。このW杯メンバーにはマドリー選手が1人もいないのもあって、人気は8人の最多勢力を誇るバルサの選手に集中しているようでしたが、実はもうこの時間はかなり暑くなっていてねえ。私も家に着く頃には頭がクラクラしていたんですが、今回は月曜にメディアデーがあったため、翌日も再びラス・ロサスを訪問することに。
こちらではユ-ロ2024の時同様、敷地奥の屋外通路に3つのミックスゾーンが設けられ、今回はオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、グリマルド(レバークーゼン)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、エリック・ガルシア(バルサ)、プビルが出て来て、次々と取材陣の質問に答えていたんですが、思いがけぬトバッチリを受けることになったのはロドリ。そう、今週日曜のマドリー会長選挙に向けて壮絶なキャンペーン合戦が展開する中、ペレス会長の対抗馬、実業家のエンリケ・リケルメ氏が彼の獲得を匂わせていたため、移籍についてあれこれ、問われるのは避けられず。それでもモラタとカルバハルが招集されず、今回第1キャプテンに昇格した当人は、「Estoy centrado en ser un líder en la selección/エストイ・セントラードー・エン・セル・ウン・リデル・エン・ラ・セレクシオン(自分は代表チームでリーダーになることに専念している)」のだそう。
先行きについてはW杯終了まで保留するとのことでしたが、でも彼って、2024年のバロンドール受賞者。それこそ、フィーゴ、ジダン、ロナウド、オーウェン、カンナバロ、クリスチアーノ・ロナウドと歴代バロンドールを集めまくっていたペレス会長好みの選手な気がしますが、もしや、あの年、直前で持っていかれたビニシウスに遠慮している?ただ、ロドリもその後、大きな負傷をして、今季もまだ、完全復活という訳ではなかったため、逆に「Es la primera vez que llego fresco y sin tantos partidos/エス・ラ・プリメーラ・ベス・ケ・ジェゴ・フレスコ・イ・シン・タントス・パルティードス(こんなに多くの試合をこなさず、フレッシュな状態で代表に来たのは初めてだ)」というのは、スペインにとっていいことだったかと。
その脇で初々しかったのはこれが初招集となるプビルだったんですが、ええ、本来、3月の代表戦に呼ばれるはずだったのが、間が悪くケガをして、参加できませんでしたからね。「W杯にいるのは全て強い代表チームばかりだけど、ボクは自分のチームを信頼していて、他にチャンスがあるとは思わない。Ojalá podamos poner otra estrellita aquí/オハラ・ポダモス・ポネール・オトラ・エストレジータ・アキー(もう1つの星をユニに付けられますように)」と言っていましたが、うーん、他は皆、スニーカーで来たのに、彼だけビーサンって、何で誰も彼に常識を教えてあげない?
まあ、今は2年前のユーロで優勝したばかりですし、あの大会から12人、メンバーが変わっていても、FIFAランキング2位のスペインは強気でいられますからね。ちなみに火水もラス・ロサスで非公開練習をしたチームは木曜当日にラ・コルーニャ(スペイン北西部のビーチリゾート、デポルのホームタウン)に移動。午後9時(日本時間翌午前4時)からのイラク戦の後、翌日にはヘルプ要員9名を置いて、アメリカのチャタヌーガ(テネシー)に飛び、来週火曜にはメキシコのプエブラでペルーと最後の親善試合を行うことに。
そして15日(月)にはいよいよ、アトランタでのカーボベルデ戦でW杯の幕を開けるんですが、今回は48カ国参加で12グループ構成、各グループ3位の上位8チームまで32強対決に行けるという大甘なグループリーグ。となれば、残り相手がサウジアラビア、そしてヒメネス(アトレティコ)、バルベルデ(マドリー)のいるウルグアイといっても多分、決勝トーナメント進出は大丈夫だと思うんですが…スペインって、たまにグループリーグで敗退することがあるんですよねえ。

