ラージョ以外、皆、シーズンが終わった…

「レアル・マドリーの選手が1人もいないとは」そんな風に私が時代の移り変わりを感じていたのは月曜日、スペイン代表のW杯用招集確定メンバーを知った時のことでした。いやあ、マドリッド中心部のグラン・ビアにあるテレフォニカ(スペインのNTT)のビルで賑々しく行われた発表イベントは近場なこともあり、私も見に行ってきたんですけどね。今季限りでマドリーを退団したカルバハルが55人のプレリストに入ってなかったため、元々、呼ばれてもハイセン1人だったところ、ええ、彼も昨年の予選時にはラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設での合宿に来てもすぐ帰ってしまったり、負傷で呼ばれなかったりと、まだ常連とは言えないレベルだったのが仇となることに。

実際、マドリー勢なしのメジャー大会はルイス・エンリケ監督(現PSG)時代の2022年W杯に続く、代表史上たった2回しかないそうで、優勝した2024年ユーロにはカルバハル、ナチョ(現アル・カーディシーヤ)、ホセル(現アル・ガラファ)の3人が参加。翻って、モラタ(現コモ)の1人参加だったアトレティコからは今回、ジョレンテ(2024年は最終選考で落選)、バエナ(ビジャレアル、パリ・オリンピックとダブル優勝)、プビル(アルメリア、パリ金メダリスト)の3人が呼ばれたんですが、何せ、プビルなど、同僚のル・ノルマン(レアル・ソシエダッド)を蹴落としての初招集ですからね。

後々、チーム内に禍根を残さないといいのですが、やっぱりアトレティコファンとして謎なのは今季、レギュラーでもないバエナをデ・ラ・フエンテ監督が本当に気に入っているようなこと。まあ、先日、バルサのフェルミンが中足骨を骨折し、W杯に行けなくなってしまったのもあるんでしょうが、どちらにしろ、大会での定番主力は8人招集されているバルサの選手となりそうですしね。ちなみにスペインの強化合宿は今週土曜にラス・ロサスで始まり、夜にはCL決勝PSGvsアーセナル戦でファビアンとダビド・ラジャ、スビメンディ、ミケル・メリーノのどちらに軍配が挙がるのかを一緒に見ることになりますが…準々決勝でアトレティコに負けたバルサのメンバーは羨ましくてたまらないかも。

まあ、そんなことはともかく、先週末のリーガ1部最終節のお話しをしていかないと。土曜の一斉同時刻開催のカードでは、本音を言えば、5年ぶりのヨーロッパの大会出場が懸かっていたヘタフェをコリセウムに応援に行きたかった私ですが、ええ、何せ、サンティアゴ・ベルナベウの試合ではカルバハルのお別れセレモニーが予定されていましたからね。とうに2位確定済みのマドリーと同様にもう何も懸かっていないアスレティックとなれば、おそらく親善試合みたいになるんじゃないかと思っていたところ…。

何と、Fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)の応援団が「El sueño de un niño. El triunfo de una leyenda/エル・スエニョ・デ・ウン・ニーニョ、エル・トリウンフォ・デ・ウナ・レジェンダ(子供の夢、レジェンドの勝利)」と書かれた横断幕と共に、カルバハルが11才だった2004年、故ディ・ステファノ名誉会長と共にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場建設の最初の石を置いた際のイラストを掲げてくれたのに応えるように、前半13分には前節のセビージャ戦に続き、トレントを抑えて先発したキャプテンが魅せてくれたんですよ。

そう、ビニシウスが先週、一足早くバケーション入りし、ブラジルに帰ってしまったため、エムバペが左サイドへ移っていたんですが、CFとして入ったゴンサロに向けて、ロングパス。卒なくトラップして、こちらもスペイン代表に行くウナイ・シモンに休養を与えるために入ったGKパディージャを破ってくれたから、2人のカンテラーノ(下部組織出身選手)がその夜、最初の大喝采を浴びることに。

ただ追加点が入ったのは今年初めてのお水休憩が入った後の41分のことで、またスタメンに戻った後輩格のピタルチが浮き球でエリア内にパスを入れ、ベリンガムがトレントの分まで、イングランド代表でW杯を頑張ってやるとばかりにシュート。今季最後のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が見られるのかとスタンドをウキウキさせてくれたんですが、45分にはイニャキ・ウイリアムスのクロスから、グルセタにvolea(ボレア/ボレーシュート)で1点を返されていてはねえ。

でも大丈夫。2-1で入ったハーフタイム中、私がコリセウムではヘタフェが残留争いをしているオサスナと0-0を維持し、コンフェレンスリーグ決勝に備え、ローテをかけていたラージョはメンディソローサで前半13分にトニ・マルティネスにゴールを決められ、前節に残留が確定したアラベスに1-0と負けたままなのを確認してから始まった後半6分、とうとうエムバペも続いてくれたんですよ。エリア前から敵の隙間を狙ったシュートがゴールに入り、それまで失敗する度、pito(ピト/ブーイング)を浴びていた彼もこれでリーガ今季25得点として、2年連続ピチチ(得点王)獲得をダメ押し。チュアメニと共に気分良く

カマビンガ、メンディを欠くW杯フランス代表に行けるのは良かったかと。

そして後半14分にはオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の多元中継でルイス・ミジャのシュートがカテナに当たってゴールとなり、ヘタフェが1点リードして私が喜んだ後の23分、ベルナベウはお別れイベントを開始。まずは同じく契約終了で退団するアラバが満場の拍手を浴びてハイセンと交代したのと時間を同じくして、カルロス・マルティンのケガで前半から途中出場したカメージョのvaselina(バセリーナ/ループシュート)でラージョも同点に追いついたことがわかったんですが、やはりクライマックスは39分、カルバハルがピッチを出た時でしょうか。

スタンディングオベーションの中、マドリーだけでなく、アスレティクの選手たちも花道を作って送り出された当人はピッチ脇で待つ奥さんと2人のお子さんに迎えられるという感動的なシーンだったんですが、いやあ、実はこの後もスコアが動いてねえ。そう、43分にはエムバペのパスをピタルチがブライムに繋ぎ、4点目のアシストをして、リーガ終了後は2部昇格プレーオフに挑むRMカスティージャの頼りになる助っ人になることを示したり、45分には再びイニャキのクロスをイセタがヘッドで決めて、ロスタイムなしの試合は4-2で終わったんですが、はい、そこから本格的なお別れセレモニーの始まりです。

まず選手全員がカルバハルの背番号2が入ったユニに着かえると、先にアラバも名場面ビデオが自慢のスクリーン群に映し出され、ええ、ベルナベウのいいところはピッチの実物は米粒大でも、当人がマイクを持って話す姿など、細部まで画像で見られますからね。でも在籍5年間、最後の2年は負傷のせいで実力が発揮できなかったオーストリア代表キャプテンがスペイン語で喋っているのはこの日、初めて聞いたような気がしたのは私だけ?そして2022年CLのPSG戦で奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)を遂げた後、係員の座るプラスチック椅子を掲げて祝った有名なポーズを披露して、次はカルバハルの番。

さすがマドリーのCL優勝6回経験者5人のうちの1人とあって、ビデオも充実したものでしたが、当人はマドリディスタに「Sólo quiero que me recordéis con orgullo por haberlo dado todo por esta camiseta/ソロ・キエロ・ケ・メ・レコルデイス・コン・オルグージョ・ポル・アベールロ・ダードー・トードー・ポル・エスタ・カミセタ(このユニのために全力を尽くしたことを、誇りを持って覚えていてほしい)」そう。ただねえ、カルバハルが幼い子供たちにマイクを持たせていたのは微笑ましかったんですが、やっぱり1週間前のメトロポリターノでのグリーズマンお別れイベントに比べると、ピッチの装飾もなしで、かなり淋しい感じもしなくはなかったかと。

まあ、誰もが2年前、リーガ優勝とDecimoquinto/デシモキント(15回目のCL優勝のこと)を遂げて、ベルナベウやシベレス噴水広場で何度も胴上げされていたクロースのような派手なお別れができる訳ではありませんからね。負傷と無冠の時期が重なったカルバハルも気の毒ですが、来季からはビニシウス、エムバペ、ベリンガムらがチームリーダーになることを考えると、やっぱりスペイン代表にマドリー勢なしというのは妥当なのかもしれません。

ちなみにこの日はアルベロア監督にとっても最後の試合だったんですが、前日の会見で「モウリーニョ監督には素晴らしいスタッフが揃っている。もしマドリーに来ても、自分が彼と一緒にいる可能性はない」と第2監督として、来季を迎えることを否定していた彼の最後の会見はなしで終了。まあ、同日には37才の実業家エンリケ・リケルメ氏の出馬も正式に決まり、6月に会長選挙があるため、ペレス会長の続投が決まらない限り、モウリーニョ監督になるかも確かではないんですが、この先のマドリーはしばらく、この手の話題ばかりになりそうですね。

そしてお別れセレモニーのせいで聞き逃していたんですが、ラージョも後半45分にはエヌテカが2点目を挙げ、アラベスに1-2と逆転勝ち。セルタがセビージャに勝ったため、ヨーロッパリーグには行けなかったものの、オサスナ戦を1-0で逃げ切り、コンフェレンスリーグ出場を決めたヘタフェなど、ファンのピッチ大量流入でコリセウムが大変なことになっていたんですけどね。バレンシアもバルサに3-1で勝利と、7、8、9位は勝ち点1差ずつとなったため、ボルダラス監督も薄氷を踏む思いだったか、後で公開された映像ではロッカールームでのお祝いもかなり凄かったよう。

まあ、リーガでヨーロッパの大会出場権を逃したラージョには水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのコンフェレンスリーグ決勝でプレミアリーグ15位に終わったクリスタル・パレスに勝って、来季はヨーロッパリーグに行ってくれることを祈るばかりですが、何と日曜にはとうとう、エスタディオ・バジェカスで大型スクリーンを3台並べてのパブリックビューイング開催も決定。早速、月曜から5ユーロ(約1000円)の入場チケットを求めるファンたちで長蛇の列ができていたんですが、やっぱりイニゴ・ペレス監督にはビジャレアルに行く前に最後の花道を飾ってもらいたいですよね。

そしてジローナとマジョルカの降格が決まり、18位と同じ勝ち点42だったオサスナとレバンテが残留となった次の日、日曜に3位を巡るガチンコ対決として、1カードだけ回されたアトレティコはラ・セラミカでどうだったかというと。いやあ、これがひどいもんで、いえ、29分にペペをGKムッソが倒したとして、ビジャレアルに与えられたPKはかなり胡散臭いもんだったんですけどね。こちらも退団が決まっているパレホが決めて1点リードされた時もまだ、引分けでいいんだから、これから追いつけばいいと気楽に考えていた私だったんですが、はあ。

だってえ、33分にはペドラサがジョレンテを出し抜き、折り返しでゴール前に入れたパスをハンツコがアジョセに送ってしまい、そのシュートで2点目。40分にはカウンターから最後はアジョセがミカウターゼに送り、ラングレの見守る前で3点目を贈っているんですよ。とりあえず、その3分後にはグリーズマンの蹴ったCKをプビルが頭で決めて1点返したんですが、45分、今度はペペが送ったボールをゲイェに撃ち込まれて、前半だけで4点も取られるって一体、どうなっている?

うーん、確かにアトレティコは負傷者7人とル・ノルマンの出場停止でトップチームの選手が15人しかいなかったんですけどね。そのなけなしのベンチスタート組2人、セルロートとルッジェーリが後半頭から入ったものの、プビルの代わりに前日、2部昇格プレーオフ出場を決めたアトレティコ・マドリレーニョのアルヘシラス戦にフル出場していたプリッチが入るんですから、人出不足もここに極まれり。ただ、アトレティコが9分にアジョセに5点目を決められたのは、ルッジェーリのボールカットが間に合わなかったせいなんですが、15分、最後に入った選手もカンテラーノの2人ではとても反撃など望むべくもありませんって。

うーん、5-1という就任以来、最悪の結果で試合を終えた後、シメオネ監督は「ビジャレアルはいいシーズンを送ったが、jugó muchos menos partidos/フゴ・ムーチョ・メノス・パルティードス(試合数はずっと少なかった)」とCLリーグフェーズ敗退、コパ・デル・レイも昨年中の32強対決で敗退したマルセリーノ監督のチームに比べ、アトレティコがリーガで最も多い今季61試合目だったことを敗戦理由として仄めかしていたんですけど。コケなどに至っては、「ボクらだけ日曜夜9時の試合にされて、ウチにはW杯招集リストが気になっていた選手が沢山いたのなんて、言い訳にはならない」と言っていましたが、え?それって、プビルはちゃんと仕事していたし、バエナだけだったんじゃ?

何にしろ、どんなに「目標は3位になること」と監督、選手たちが言い張ったとしても、やっぱりアトレティコは前節のグリーズマンお別れ試合でシーズン終了。たまたまオサスナ戦、ジローナ戦の連勝とビジャレアルのセビージャ戦、ラージョ戦連敗が重なったせいで、勝ち点6差が消えて並んだため、周囲がその気になっていただけで、あまり3位ゲットには関心はなかったとしか思えませんが、まあ、今季もアウェイ弱者で鳴らした彼らですしね。

その上、ビニシウスのように一足早くバケーション入りしてしまったフリアン・アルバレスもアトレティコの契約更改オファーを無視して、この夏の移籍を考えているなんて話も出て来て、いや、昨季も今季もCL敗退は自分のPK失敗のせいだったのに全然、リベンジする気はないのかと、私もちょっと怒っているんですが、こればっかりはねえ。同じ無冠でもお隣さんのように批判されず、監督交代にも発展せず、「Creo que hicimos una temporada buena a muy buena/クレオ・ケ・イシモス・ウナ・テンポラーダ・ブエナ・ア・ムイ・ブエナ(ウチはいい、それともとてもいいシーズンを送ったと思う)」(シメオネ監督)と言えるのはきっと幸せなことなんですよね。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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