大量得点勝利はなかった…

「今週末の試合なんて消えてくれればいいのに」そんな風に私が投げやりになっていたのは金曜日、二晩連続午前様の疲れがまだ抜けきっていない朝のことでした。いやあ、リーガも5節を残すところまで来て、大詰めっちゃあ、大詰めなんですけどね。バルサなど、それこそ土曜のオサスナ戦に勝って、翌日、レアル・マドリーがエスパニョール戦で躓けば、リーガ優勝が確定するため、選手もクレ(バルサファン)もワクワクしているはずですが、その分、マドリディスタの鬱気分は高まっていくばかり。

大体がして、勝って、永遠のライバルの戴冠を遅らせるつもりだった前節のベティス戦で土壇場に引き分けている辺りから、すでにマドリーは白旗を挙げている感があったものの、ええ、日曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのRCDEスタジアムでの試合には、ベニト・ビジャマリンで途中交代したエムバペがケガで出られませんからね。水曜にはテニスのマドリード・オープン準々決勝シナーvsホダル戦をカハ・マヒカのパルコ(ボックス席)で観戦していたGKクルトワもようやくチーム練習に加われるようになったものの、復帰目標は来週のクラシコ(伝統の一戦)。

ミリトンもフィンランドでハムストリングの手術を終え、5カ月のリハビリ期間に入りましたし、ギュレルもW杯を目指して治療の日々を送っている上、先週金曜のベティス戦の招集リストからもれたセバージョスなど、アルベロア監督との確執でもう今季はベンチにも入らないとか、とにかくマドリーにはいいニュースがまったくないんですよ。実際、エスパニョールが意地を見せて、お隣さんの優勝確定の手助けをするというのもあまりありそうにないんですが、シーズン後半戦で白星が1つもなく、未だに残留が確定していない状況はもうなりふり構っていられないかも。

それでもし、カンプ・ノウでのクラシコでPasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(王者の花道)をする破目になれば、エムバペもクルトワもチームに戻る気分になれないかもしれませんし、だってえ、2人共、それぞれフランス、ベルギー代表でW杯に行くんですよ。2シーズン連続ビッグタイトル無冠のクラブのプライドを守るより、自身の体調の方が大事かと思いますが、さて。

その一方で、今週ヨーロッパの大会準決勝1stレグを戦ったアトレティコとラージョに週末の試合がなければいいのにと願う理由は明らかで、ええ、どちらも来週ミッドウィークに控える2ndレグで頭が一杯でしょうからね。とりわけあからさまなのが兄貴分で、土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からのメスタジャでのバレンシア戦はすでにrotacion masiva(ロタシオン・マシバ/大量ローテーション)が確定。ケガ人6人以外にもジョレンテとハンツコは遠征に参加せず、カンテラーノ(Bチームの選手)9人がヘルプとして駆り出されることに。

現在、RFEF1部(実質3部)3位で、2部直接昇格の1位と勝ち点3差のアトレティコ・マドリレーニョのフェルナンド・トーレス監督も日曜にフベントッド・トレモリノス戦を控え、大変かと思いますが、最近、CL決勝トーナメントやコパ・デル・レイ決勝の狭間にシメオネ監督が送り出すBチームは、下位のセビージャやエルチェらに平気で負けていましたからね。弟分のラージョもコンフェレンスリーグ準々決勝AEKアテナ戦の狭間となったマジョルカ戦では3-0と大負けして、ええ、5位のベティスとは勝ち点差10あり、来季CL出場圏の4位の座は安泰そうなアトレティコと違い、イニゴ・ペレス監督のチームはまだ残留が確定していないのが辛いところ。

日曜の弟分ダービーでも負ける訳にはいかないんですが、もしや一番、この週末のリーガを待ち望んでいるのはヘタフェだったりする?実は彼ら、前節バルサをコリセウムに迎え、0-2で負けており、いえ、その前に残留はほぼ確定していて、来季のヨーロッパの大会出場圏6位というのも変わらなかったんですけどね。ただ、この順位はライバルが多く、ボルダラス監督も油断はできないんですが、たとえ、ジェネ、ザイド・ロメロ、マリオ・マルティンが出場停止でも、1週間丸々トレーニングできたのはとても大きいかと。

え、それよりミッドウィークのマドリッド勢の試合の様子を早く知りたいって?そうですね、まずは水曜にアトレティコがCL準決勝アーセナル戦1stレグを迎えたんですが、いやあ、今季最後のメトロポリターノでのビッグゲームとあって、壮大なモザイクなどを期待していたんですけどね。メトロの駅を出る際、トイレットペーパーのロールを手にしたファンを見た時もティッシュ代わりに持ち歩いている人がいても不思議はないと思っただけだったんですが、何と、実はそれが選手入場時の演出小道具だったとは!

横断幕はいつ出るのだろうかと、応援団のいるfond sur(フォンド・スール/南側ゴール裏席)を双眼鏡で覗いていると、何故か大勢が白い物を振りながら、クラブ歌をアカペラ合唱していたため、私も???となったんですが、全てのスタンドからトイレットペーパーのロールが一斉に投げ入れられた時の驚きといったらもう。それこそ、記者席の上のファンからもロールが降ってきて、当たりそうで危なかったり、落ちたのを拾ってくれと頼まれて、ビデオ撮影が滅茶苦茶になったりなんてこともあったんですが、まあ、ビジュアル的には迫力があったかと。

キックオフの時もまだ、スタジアムのスタッフが回収に追われていたのは気の毒でしたが、試合の方は序盤から、アトレティコが積極的に攻勢をかけることに。ただ、フリアン・アルバレスのシュートがGKダビド・ラジャにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されるシーンもあったものの、なかなかゴールは決まらなくてね。今日はもしや、コパ準決勝のバルサ戦、CL準々決勝トッテナム戦の1stレグのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)先手必勝作戦は無理かなと思いかけていた42分、ハンツコがギェケレシュの背中を押して倒したプレーがペナルティとされてしまったから、さあ大変!

背番号14のFWがPKも決めたため、0-1とリードされてハーフタイムに入ったんですが、打撲を受けたジュリアーノの代わりにル・ノルマンが入り、CB3人制にした後半、アトレティコは目覚めたんですよ。そう、4分にはフリアンのFKがゴールネット脇に惜しくも外れ、7分にはルックマンが至近距離のシュートを弾かれ、グリーズマンがこぼれ球を狙ったものの、敵DFに当たって逸れてCKを獲得。そのCKからジョレンテが放ったvolea(ボレア/ボレーシュート)がホワイトの手に当たったとして、VAR(ビデオ審判)モニターチェックで今度はPKをもらえる側になるとは、有り難いじゃないですか。

まだコパ決勝のPK戦での失敗の記憶も新しかったんですが、この日のフリアンはラジャが一歩も動けない弾丸PKを決めてくれたため、おかげで1-1の同点となったんですけどね。いやあ、その後、グリーズマンのシュートはゴールバーに阻まれ、ルックマンも再びゴール前からのシュートをセーブされてしまう始末。そうこうするうちに33分にはまたしても主審がペナルティの笛を吹き、いえ、幸いここでもアトレティコはVAR注進に助けられ、ハンツコがエゼを踏んだプレーは大したことないとして、2度目のPK献上を免れたのは本当にラッキーだったかと。

結局、フリアンがデクラン・ライスやエゼにタックルを浴び、途中交代せざるを得なかったのと、普通なら後半出て来るセルロートがハムストリングスの痛みで出場できなかったのも響いて、試合は1-1のままで終了したんですけどね。うーん、これって要は来週火曜の2ndレグでアトレティコは勝利が必要ってことで、いえ、シメオネ監督は「Por delante tenemos un desafío extraordinario: Londres, campo del Arsenal/ポル・デランテ・テネモス・ウン・デサフィオ・エクストラオルディナリオ:ロンドレス、カンポ・デル・アルセナル(ウチには並外れた挑戦が控えている。ロンドン、アーセナルのホームというね)」と勇ましかったんですけどね。

確かに2014年のCL準決勝チェルシー戦ではビセンテ・カルデロンでの1stレグを0-0と引分け、2ndレグで同じロンドンのスタンフォード・ブリッジで当時、敵方にいたトーレスに先制ゴールを浴びながら、現在はラージョでアシスタントコーチをしているアドリアン、ジエゴ・コスタ、そして現シャフタール監督のアルダ・トゥランのゴールで1-3と逆転突破した経験のあるアトレティコですが、それももう13年も前のことですからね。

もっと怖いのは、ここ数シーズンの彼らが重度のアウェイ弱者になっていることで、今回は1stレグでの貯金もないとなると…この準決勝のために入念に準備してきたというグリーズマンなど、「Tuve tres, pero no pude tocar la red, pero en la vuelta seguro/トベ・トレス、ペロ・ノー・プデ・トカール・ラ・レッド、ペロ・エン・ラ・ブエルタ・セグロ(自分は3回チャンスがあったけど、ネットには届かなった。でも2ndレグではきっと入るよ)」と言っていましたが、果たしてどうなることやら。週末はお休みをするフリアン、ジュリアーノ、セルロートもそれまでには治りそうなことぐらいがポジティブな要因となりますが、PSGにしろ、バイエルンにしろ、1stレグで5-4の壮絶な撃ち合いをしたチームとの決勝に勝てる気が全然しないのはきっと、私だけじゃありませんよね。

そして翌木曜、私はエスタディオ・バジェカスに行ったんですが、ポルタスゴ駅周辺からあまりにラージョユニを着たファンが溢れていると思いきや、あったんですよ、キックオフ3時間前にquedada(ケダダ/ファンがチームを迎える集い)が。そう、CLマッチ前などにサンティアゴ・ベルナベウやメトロポリターノ周辺に大群衆が集まって、いえ、ヘタフェの場合は残留争いをしている時ですけどね。チームバスをbengala(ベンガラ/発煙筒)などを焚いてお出迎えする光景はお馴染みなんですが、それが実はラージョの選手たちはバスでは来ず、三々五々、自家用車でスタジアム入り。

よって、クラブ史初のヨーロッパの大会準決勝をプレーするチームを励まそうと集まったファンたちがスタジアムの外で歌ったりしているうちに、選手たちがロッカールームから出て来て感謝するという、お出迎えならず、お呼び出しになっていたんですが、こちらは選手入場時もスタンド全面モザイクでストラスブール戦1stレグに挑む選手たちを応援。そんな期待値の高さのせいもあったんですかねえ。前半のラージョはどこかやる気が空回りしたか、シュートは撃ってもゴールを挙げることはできず。

それをハーフタイムにイニゴ・ペレス監督が、「Era una semifinal de Europa y que un 0-0 estaba bien/エラ・ウナ・セミフィナル・デ・エウロッパ・イ・ケ・ウン・セロ・セロ・エスタバ・ビエン(ヨーロッパの大会の準決勝で0-0なのはいいことだ)」と落ち着かせてくれたのが効いたんでしょうかね。後半9分には、リーガ前節のレアル・ソシエダ戦で抗議によりレッドカードをもらい、出場停止7試合を喰らって今季はもう、コンフェレンスリーグ以外では見られなさそうなイシがCKで奮起。正確な狙いでボールをアレモンのいるニアポストに送り、そのヘッドで先制点が入ったから、それまで歌声を一瞬も途切らせずに応援していたバジェカスのファンがどんなに狂喜乱舞したことか。

ただねえ、こちらも追加点は挙げることができず、相手のストラスブールが枠内シュート0だったため、1-0の最少得点差での勝利となったんですが、はあ。スタンドのファンはほぼ全員残って、幸せ一杯に「Vida de pirata/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を唱和していたものの、何せ、イギリス人のガリー・オニール監督率いるチームは準々決勝でマインツに2-0と先勝されながら、ホームでの2ndレグで4-0と大逆転していますからね。

正直、1点差を守るのは難しいと思いますが、まあ、イニゴ・ペレス監督も「貯金は少なく見えるが、大差で勝つ方がアテネみたいなことになるかもしれない」と、1stレグ3-0勝利の後、アウェイで3-0に持ち込まれ、イシのゴールでかろうじて突破した準々決勝AEK戦の教訓を説いていましたしね。ただ兄貴分と違って、もし勝ち上がれば、ラージョの決勝での相手はシャフタールを1-3で破ったクリスタル・パレスになる可能性が濃厚で、それならワンチャンで優勝もありそうなので、来週木曜の2ndレグでは踏ん張ってくれると嬉しいのですが…。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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