まずはガツンと行かないと…/原ゆみこのマドリッド

「もう忙しいのは2チームだけね」そんな風に私の気が少し楽になっていたのは月曜日、ミッドウィーク開催リーガの後、週末に2日連続梯子観戦をした疲れがまだ取れていないのに気がついた時のことでした。いやあ、最近はすっかり快適な気温になって、別に完全密封サンティアゴ・ベルナベウでなくても、スタンドで観戦するのは気分が上がるんですけどね。それでもリーガだと、マドリッド4チームの試合があるため、追うのが大変だったりするんですが、今週のミッドウィークはヨーロッパの大会の準決勝1stレグ。この高みまで来ると、ヨーロッパ中でもプレーするのがたった12チームだけで、その中にアトレティコとラージョが入っているんですよ。

そう、バルサとレアル・マドリーがもうただ、今週末のリーガ戦で優勝が決まるのかどうかを考えているだけなのに対して、アトレティコには水曜午後9時(日本時間翌午前4時)にメトロポリターノにアーセナルを迎えての1stレグがあって、うーん、9年ぶりの準決勝だからですかね。お隣さんなど、CL決勝前にしかやらないメディアデーを月曜にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で実施。コパ・デル・レイ決勝前にやった囲みインタビューとは違い、今度はプレスルームでセルロート、フリアン・アルバレス、ジョレンテ、ルックマン、オブラク、ニコ・ゴンサレスらが次々と記者会見するのを私もライブ配信で見られることに。

中でもコパ決勝後のリーガ2試合にまったく出ず、もしや昨季のCL16強対決マドリーダービー2ndレグのPK戦敗退に続き、今季もレアル・ソシエダとのPK戦でセルロートに続いて失敗。GKムッソが次の1人を止めていたため、結果的にまた戦犯のようになったせいで、落ち込んでいるんじゃないかと、私も心配していたフリアンだったんですけどね。その会見では、「Estoy al 100%/エストイ・アル・シエン・ポル・シエン(ボクは100%)。コパ決勝で負けたのは痛恨だったけど、決勝まで行ったんだし、今はCL準決勝もある。ボクらは全てを争っていて、まあ、リーガは遠ざかっちゃったけど、昨季なんて、3月に全てが終わっていたんだから」と前向きな姿勢を見せていたのは嬉しかったかと。

一方、弟分のラージョは木曜午後9時にエスタディオ・バジェカスでコンフェレンスリーグ準決勝ストラスブール戦1stレグなんですが、ヨーロッパリーグ準々決勝でベティスとセルタが敗退し、ついに木曜にプレーする唯一のスペイン勢となりましたからね。2ndレグを私も胸を張って、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に見に行けるのが何より有難いんですが、週末にある弟分ダービーの相手、ヘタフェが来季はヨーロッパリーグかコンフェレンスリーグかと夢見ながら、1週間丸々、準備に充てられるのはちょっと皮肉かもしれませんね。

まあ、そんなことはともかく、マドリーがバルサにリーガ優勝をお盆に載せて差し出すことになった先週末のリーガのマドリッド勢の様子を伝えていくことにすると。もちろん、元凶はアルベロア監督のチームが金曜に土壇場で追いつかれ、ベティスと引き分けてしまったせいなんですけどね。コパ決勝の悪夢がまだ忘れられないカルトゥーハでの試合では太もものケガで今季絶望となったギュレルだけでなく、当日にチュアメニも招集リスト落ちし、中盤にはカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のピタルチが復帰。それでも前半17分、バルベルデのエリア外シュートをGKバジェスが弾いたボールをビニシウスが撃ち込んで、先制はしたんですよ。

ただその後、どうやらマドリーはそれで十分だと思ってしまったのか、ベティスの方が際どいシュートを何度も放ち、GKルーニンのparadon(パラドン/スーパーセーブ)で凌ぐことになったんですが、後半ロスタイム4分になって、とうとう失点してしまったから、さあ大変!いやあ、実はそのプレーの始まりにはアントニーがボールを奪い取るためにメンディを倒してしまったなんてことがあったんですけどね。彼のシュートはゴール前でリュディガーがクリアしたものの、出て来たボールを蹴ったベジェリンのシュートがあれだけの人垣を縫ってネットに収まるとは、まさに「Está claro que tampoco estamos teniendo mucha suerte/エスタ・クラーロ・ケ・タンポコ・エスタモス・テニエンドー・ムーチャ・スエルテ(ウチが幸運にも恵まれていないのは明らかだ)」(アルベロア監督)という証明?

うーん、確かに前半にはベティスのエリア内でのハンドが見逃されたり、メンディへのファールも取られないなど、マドリーに味方しないジャッジはあったんですけどね。といってもリードした後、まったく追加点が入らず、ええ、3月の各国代表戦週間明け以来、6試合で1勝しかしていない上、CLバイエルン戦2ndレグやマジョルカ戦でも彼らは終盤に失点して負けている彼らですからね。これって、やっぱりチームには何か重要なものが欠けているのでは?

おかげで首位との差は一時、勝ち点8差になったものの、そりゃ、こうなれば、バルサだって、張り切ますって。翌土曜、改装工事で正面スタンド以外の2階席が完全になくなったコリセウムを訪れたフリック監督のチームは、うーん、ヘタフェはホームでここ5年、1度しか負けていないというデータに私もスコアレスドローを見る覚悟で行ったんですけどね。ラフィーニャも間に合わず、ジャマルも太ももの負傷で今季絶望になったというにも関わらず、ボルダラス監督のチームがしっかり守り、無失点で乗り切れるかと思った前半ロスタイムに入った途端、災厄が起きるとは!

そう、中盤でマリオ・マルティンがクバルシに潰されてボールを奪われ、ペドリからのパスで放たれた、CL準々決勝2ndレグでGKムッソに鼻の下をスパイクで蹴られて、マスク装着中のフェルミンがGKダビド・ソリアとの1対1を決めて先制。後半も29分、ヘタフェのCKをレバンドフスキがクリアしたボールを脱兎のごとく追ったラッシュフォードに2点目を決められてしまっては、いくらボルダラス監督が、声が枯れて記者会見に出られなくなるまでの熱血指導をしたって、ここ2試合、枠内シュート0本のヘタフェに一体、何ができる(最終結果0-2)?

いえ、それでもミッドウィークのソシエダ戦にゴロチェテギのオウンゴールで0-1と勝ち、残留をほぼ確定したチームをコリセウムのファンたちは試合後、称えてくれたんですけどね。やはり不慣れな週2試合はヘタフェには厳しかったか、「Creo que hemos acusado el esfuerzo del miércoles/クレオ・ケ・エモス・アクサードー・エル・エスフエルソ・デル・ミエルコレス(ボクらは水曜の努力が祟った)」と被害をカウンターによる2件だけに留めたダビド・ソリアも言っていたんですが、いいんです。勝ち点6差ある5位のベティスのことは考えずとも、セルタ、オサスナ、アスレティックら僅差のライバルから、あと5試合、この6位の座を死守すれば、来季は7年ぶりにユーロ・ヘタ(ヨーロッパの大会に出場するヘタフェ)に戻れるんですから。

ただ、おかげで兄貴分は首位と勝ち点差が11となってしまい、この土曜のオサスナ戦でバルサが勝って、日曜のエスパニョール戦でマドリーが勝てないともう、今季のリーガ優勝チームが確定することに。たとえ、勝って1節凌いでも、次のクラシコ(伝統の一戦)も含め、バルサ負け、マドリー勝利の組み合わせが続かないことには、永遠のライバルが戴冠するのも時間の問題に。何せ、ベティス戦で途中交代したエムバペも実は太ももの筋肉痛で、クラシコまでの回復に努めるつもりと言われていても、そろそろW杯が気になる時期ですからね。ミリトンなど、今週太ももを手術することになったため、そのW杯も行けなくなってしまったんですが、もうこうなると無用な苦しみは一刻も早く終わらせた方がいいのかも。

そして土曜はコリセウムからメトロを乗り継いで1時時間強、メトロポリターノにアトレティコのアスレティック戦を見に行った私なんですが、エルチェ戦の負けで少しは反省したか、この日のスタメンにはカンテラーノ(Bチームの選手)は入らず。レギュラーと控えのミックスみたいな感じでしたが、この日もラングレがその恐ろしさを発揮してくれたんですよ。そう、前半23分にはGKオブラクが余裕でキャッチできた敵からのクロスをジャンピングキックして、CKを献上しただけでなく、自身がマークしていたパレデスにヘッド撃たれて先制されているって、あまりにひどくない?

でも大丈夫。アーセナル戦のCBはプビルと間に合えばハンツコ、でなければル・ノルマンというのは置いておいて、この試合で復帰後初先発したバリオスが、いえ、前半の彼は先輩のコケと共に意味なく右往左往するばかりで、まだ実戦の勘が戻ってないのかと思ったんですけどね。それがとうとう目覚めて、後半4分には敵陣でボールを奪い、バエナに繋ぐと、そのパスからグリーズマンが同点ゴールを決めてくれたんですよ。更にその5分後にもバリオスからもらったボールでセルロートがバエナとワンツー、シュートも決まって、あっという間に逆転しているんですから、何て有難い存在なんでしょう。

でもねえ、好事魔多しというか、またかというか、それから3分もしないうちにバリオスは太ももを負傷。最初2月にコパ準々決勝のベティス戦で痛め、復帰してCL16強対決トッテナム戦で25分程プレーした後、また痛めた右ではなく、今度は左脚だったんですが、これにはアーセナル戦のための足慣らしのつもりだったシメオネ監督だけでなく、スタジアム全体がどんなにショックを受けたことか。まあ今はカルドーソもいますから、危険を冒してモリーナを右SBに入れ、ジョレンテを中盤に上げる必要はないんですけどね。それがこの日はラッキーなことに途中出場した、そのモリーナが後半ロスタイムにセルロートにロングパスを送り、アトレティコは3点目も取ることに成功。

おかげでその後、ラドのクロスをグルセタにヘッドで決められても、3-2でリーガ4連敗を脱出する勝利を挙げることができたんですが、いやあ。そう、CLグループフェーズで4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を浴びせられたアーセナルの十八番はセットプレーや空中戦ですからね。ジョレンテなど、「Soy el jugador que menos visualiza los partidos antes/ソイ・エル・フガドール・ケ・メノス・ビスアリサ・ロス・パルティードス・アンテス(ボクは試合前に見通しをあまり立てない選手)。それが自分の集中する方法で、1時間半前のミーティングの時まで、試合のことは考えない」と言っていたものの、やっぱり事前の対策は立てておく方が良くない?

まあ、ルックマンやハンツコも月曜にはチーム練習に戻ったアトレティコには今季のガチの勝利の方程式、1stレグで沢山ゴールを挙げて、2ndレグでは負けても貯金で突破のリピートを祈るばかりですが、実は日曜にも私は激戦を目撃していてねえ。それはラージョがソシエダをホームに迎えた試合で午後2時と早い時間帯だったんですが、うーん、コパ決勝祝賀二日酔いもあって、前節弟分仲間に負けていたマタラッツォ監督のチームは江戸の敵を長崎で討つつもりだったんでしょうかね。

序盤から猛攻をかけてきて、先日のエスパニョール戦でバタジャがベンチにいながら、5枚目のイエローカードをもらったため、2試合連続でスタメンとなったGKカルデナスも22分まで耐えていたんですが、エリア内をするする移動したオジャルサバルのシュートは止められず。その1分後にはカルロス・マルティンがゴールを入れたものの、直前のパスを出したラティウのハンドがVAR(ビデオ審判)に発見され、スコアには挙がらなかったんですが、30分にはカメージョが2試合連続得点で同点にしてくれることに。

更に後半18分にはオカルソンに再びリードを奪われたラージョだったんですが、24分にペドロ・ディアスの同点弾が決まった直後にまさかあんな悪夢が始まるとは。というのも遅ればせながら、VAR注進が入り、その直前の敵エリアでのプレーでラティウがマリンを倒したのをペナルティにされてしまうって、そんな無茶苦茶なことあっていい?エスパニョール戦ではキケ・ガルシアのPKを弾いたカルデナスもスペシャリストのオジャルサバルには敵わず、当然、ラージョのゴールも認められなくて、1-3となったとなれば、普通のチームなら完全に白旗を挙げていても不思議じゃなかったはずですが…。

でもラージョには根性があったんです!39分にはCKからルジューヌが2点目を挙げると、後半ロスタイム11分間の9分目、ペドロ・ディアスのクロスをアレモンがヘッドで同点ゴールにしてくれたから、もう場内は蜂の巣を突いたように。うーん、最後にGKレミロがイリアスを倒した時、ええ、まるでコパ決勝でGKムッソがゲデスに同じようなことをしてPKを献上したのとよく似たプレーだったんですが、これでペナルティがもらえていれば、土壇場のremontada(レモンターダ/逆転劇)もありえたんですけどね。その日はジャッジ運から見放されていたラージョは抗議したイシがレッドカードをもらっただけで、試合は3-3のドローで終了。イニゴ・ペレス監督のチームは降格圏から勝ち点5離れた11位をキープしつつ、その全ての悔しさをストラスブール戦1stレグにぶつけ、3-0で勝った準々決勝AEKアテネ戦1stレグのリピートを目指すことに。

そんなこんなで、続いてブタルケでのレガネスvsアンドラ戦を見に行った私もすっきりはしなかったんですが、いやあ、あちらも2部残留が決まりそうで、なかなか確定しなくてねえ。それどころか、地獄の夕方時間帯の正面スタンドでお日様に90分丸々照りつけられた上、ホームチームは前半終了間際から始まった敵のゴール攻勢で0-4の大敗をしてしまうんですから、辛抱強いスタンドが最後はpito(ピト/ブーイグ)の嵐となってしまっても仕方ない?試合後には選手たちが応援団席に謝りに行って、何事か、言い合いになっていたのもショックですが、それでも彼らは降格圏と勝ち点6差の16位。今季はもう昇格とは無縁ですが、残り5試合で幾らかでも来季に期待できる要素を示すことができたらいいですよね。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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