マドリッドで“お祭り”はなかった。/原ゆみこのマドリッド

「アトレティコも5年ぶりのお祝いになるはずだったのに」そんな風に羨ましく感じていたのは月曜日、すっかり予定が狂ってド暇な日曜を送った後、レアル・ソシエダのコパ・デル・レイ優勝祝賀行事のネット中継をチラ見していた時のことでした。いやあ、日曜夕方からのアトレティコ祝賀行事丸々追っかけ中継で駆り出されることになっていた顔見知りのテレマドリッド(ローカルTV局)のレポーターなど、ゆっくり過ごせて良かったかもしれないんですけどね。前回のコパ優勝から5年ぶり、しかも当時はコロナ禍でファンを集めての大々的なお祝いができなかったサン・セバスティアン(スペイン北部のリーチリゾート都市)が大盛り上がりしている風景はちょっと目に眩しすぎたかと。

だってえ、アトレティコの最後のタイトル獲得も同じ2020-21シーズンのリーガだったんですが、ええ、もちろん市内パレードなどはできず、関係者だけが出席したメトロポリターノでひっそりお祝い。夜中にネプトゥーノ広場をコケがゲリラ訪問して、像にbufanda(ブファンダ/マフラー)とbandera(バンデラ/フラッグ)を巻きつけるという、かなり物足りないものでしたからねえ。それでも彼らにはCLというultima bala/ウルティマ・バラ(最後の弾丸)があると言われているものの、お隣さんと違って、これまで1度も優勝したことのない大会なんですよ。

しかも準決勝の相手はリーグフェーズで4-0の大敗をしているアーセナルとなれば、うーん、今はその頃より調子を落とし、プレミアリーグ優勝もマンチェスター・シティに勝ち点3差に迫られたため、お尻に火がついた状態のようなんですけどね。コパとCLのバルサ戦のように、何とか来週水曜の1stレグではホームでゴールを沢山入れて勝って、2ndレグは耐え忍ぶのが唯一の道かと思いますが、でもでも決勝でバイエルンやPSGに勝てる保証が一体どこにある?

まあ、それはまだ少し先のことなので、今は置いておくことにして、先に土曜のコパ決勝がどうだったのか、お伝えしていくことにしましょうか。セビージャには行かず、メトロポリターノでのパブリックビューイングを選んだ私だったんですが、これがまた、盛況でねえ。正面スタンド以外の3面の1階席は満員で、上階もかなりの席を埋めていたファンはピッチに設置された9台の大型スクリーンで観戦することに。普通の試合のようにキックオフ前にはサンダー・ストラックが響き渡り、メンバー紹介もあったんですが、それが試合が始まった途端、全員が口をポッカリ開けてしまうシーンが展開するとは!

そう、開始14秒、ソシエダのゴールキックをジュリアーノとモリーナがカットできず、ゲデスの上げたクロスをルッジェーリの背後でバレネチェアがヘッド。それがすっぽりGKムッソの守るゴールに収まり、あっという間に先制されているって、アトレティコ、また眠ったままピッチに出ていた?それともこれって、バルサに2度も勝利したせいでの過信故?

いえ、それこそ時間はたっぷりありましたし、カルトゥーハはコパ準々決勝でベティスを0-5で破ったゲンのいいスタジアムですからね。実際、19分にはグリーズマンのアシストを受けたルックマンがゴールを入れ、アトレティコデビュー戦のリピートをしてくれたんですが、1-1のまま前半が終わろうかという頃になって、ムッソがやってくれたんですよ。そう、FKをクリアしようとしてゲデスの頭をクリアしてしまい、ペナルティを取られてしまったから、さあ大変!PKはスペシャリストのオジャルサバルがしっかり決めて、試合は1-2で折り返すことに。

後半は順々にソルロート、ニコ・ゴンサレス、バエナ、アルマダ、カルドーソと入れて、選手をリフレッシュしていったアトレティコだったんですが、うーん、かなりの時間帯、ソシエダを自陣エリア付近に囲い込んで攻めていたんですけどね。なかなか同点ゴールは入らず、メトロポリターノで応援していた3万5000人のファンたちにもだんだん不安が芽生え始めていたんですが、大丈夫。38分、ニコがエリア内に入れたボールが最後はフリアン・アルバレスに繋がり、その渾身のシュートでとうとう2-2になってくれたから、どんなに場内が沸いたことか。

その直後から、バエナがゴール前で撃ち上げてしまったり、カルドーソがエリア内からフリーで撃ったシュートがわずかに外れてしまったりと、そのままアトレティコは逆転できそうな雰囲気になったんですけどね。本当に決めるべき時に決めとかないと後悔するのがサッカー。結局、そのまま延長戦に入ってしまい、後半42分に入った久保建英選手も30分以上プレーすることになったんですが、こちらでもフリアンのシュートがゴールバーに当たるなど、惜しいシーンはあったものの…はい、2-2のままでPK戦です。

それがねえ、アトレティコのPK戦にはまったくいい思い出がなくて、やっぱりこの日も最低だったんですよ。凄いことに120分を走り切ったコケがコイントスでPKを蹴る順番で先攻を取ったものの、蹴るゴールの位置選びには負けて、ソシエダ陣地の方になったのも悪かったんですかね。まさか第1キッカーのセルロート、続いたフリアンが双方共、「También estaba detrás la afición y me he venido arriba/タンビエン・エスタバ・デトラス・ラ・アフィシオン・イ・メ・エ・ベニードー・アリバ(背後にはボクらのファンもいたから、自分もテンションが上がった)」というコパ専任GKマレロに弾かれてしまうんですから、とても正気の沙汰とは思えませんって。

その間、ソシエダはバレンシア時代にマドリー戦でPKだけでハットトリックを達成したこともあるソレルが決め、いえ、ムッソも2人目のオスカルソンは弾いてくれたんですけどね。そこからはニコ、スシッチ、アルマダ、アイエン、バエナと皆、成功し、最後のキッカー、マリンのPKも決まると3-4でソシエダの優勝が決定。メトロポリターノのファンはそそくさと撤退することに。いやもう、皆、呆然としていましたが、でもねえ、ソルロートとフリアンをキッカーに入れない選択肢はありえませんし、まさか彼らが失敗するなんて一体、誰に想像できる?

私も2016年のCL決勝を始め、2020年スペイン・スーパーカップ決勝、昨季のCL15強対決と、マドリーダービーでのPK戦で負けている姿を見ているんですが、聞けば、ここまで17回やったPK戦でたった6回しか勝ったことがないとは何とも情けない。それこそ、ジョレンテなども「Hemos tenido un par muy muy claras y meterlas para dentro/エモス・テニードー・ウン・パル・ムイ・ムイ・クラーラス・イ・メテールラス・パラ・デントロ(ボクらには数回、ゴールを決めるとても、とてもはっきりしたチャンスがあった)。こういう試合で効率的でないとPK戦になって、どんなことでも起きうる」と言っていたんですが、もうこれはアーセナル戦がPK戦にならないことを祈るしかない?

ちなみにその日の夜にひっそりマドリッドに戻ってきたチームは、「Los aficionados necesitan ganar, no necesitan mensajes/ロス・アフィシオナードス・ネセシータン・ガナール、ノー・ネセシータン・メンサーヘス(ファンに必要なのは勝つことで、メッセージは必要ない)」というシメオネ監督の下、月曜からまたマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で稼働を開始。ええ、今週はリーガミッドウィーク開催週で、アトレティコも水曜午後7時(日本時間翌午前2時)に苦手なアウェイでエルチェ戦がありますからね。

もちろん、カルトゥーハで120分間を戦った選手たちにはお休みが必要なんですが、ルックマンとソルロートは打撲、延長戦前半に交代したジョレンテも痛みがあるそうで、ここは再びBチームの出番が回ってきそうな。ただ、前節のセビージャ戦でもカンテラーノ(Bチームの選手)を大量に使い、2-1で負けた彼らは、そう、今季は13位のラージョ以下、8チームが残留争い真っ只中にありますからね。また18位のエルチェに負けたりすると、そこら中から非難の声が上がりそうですが、リーガからはすでに興味を失くしているアトレティコと言っても4位以上の来季CL出場権確保はマスト。

今は勝ち点11差あるとはいえ、マドリーに続き、ヨーロッパリーグ準々決勝でブラガに敗退した5位のベティス、同フライブルクに敗退した6位のセルタも、そのせいでCL出場5席目がドイツに渡る可能性が高くなったこともありますけどね。ガチで4位を狙ってきたら怖いので、アトレティコもそろそろリーガでも勝つべきなんですが、果たしてシメオネ監督のプランはどうなっているんでしょうね。

そしてアトレティコと共にコンフェレンスリーグ準決勝に進出し、スペインの来季CL参加5チームの希望の糸を一緒に紡いでいるラージョは木曜にエスタディオ・バジェカスでエスパニョール戦となるんですが、こちらもやっぱり気になるのは来週木曜のストラスブール戦1stレグの方。とはいえ、彼らはリーガでまだ勝ち点35しかないため、残留を確定するにはあと2勝程必要なんですが、先週末がコパ決勝で試合がなかったのはいい休養になったかと。

一方、バイエルンにCL準々決勝で敗退して失意のどん底にあるマドリーは火曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)から、サンティアゴ・ベルナベウにアラベスを迎えるんですが、何せ首位とはもう勝ち点9差ですからね。ただそれでも万が一、バルサが水曜にセルタに負けた場合に備え、やはり17位で残留争いの渦中にあるアラベスに勝っておきたいところですが、とにかく最近はトップチームの話題がやたら乏しくてねえ。

マルカもAS(スペインの大手スポーツ紙)も、木曜にはユースリーグ・ファイナルフォーの準決勝でPSGにPK戦で勝ち、月曜にはクラブ・ブルージュとの決勝にまたPK戦で勝って優勝したCチームのことばかり扱っていたんですが、ええ、リーガはあと1カ月続くのに、ずっとアルベロア監督の後任候補探しばかりでは持ちませんからね。私的には残り7試合は5月10日のクラシコ(伝統の一戦)も含めて、選手たちのワールドカップに向けた足慣らしなるんじゃないかと思うんですが、ヒザの靭帯断裂のロドリゴはともかく、GKクルトワはそろそろ戻ってこられない?ちなみにミュンヘン遠征に行けなかったアセンシオはウィルス性胃腸炎で体重が6kgも減り、今は療養中だそうです。

そしてマドリッド勢では唯一、はなからヨーロッパの大会とは無縁のヘタフェはそれこそ、現在、絶賛コパ優勝祭り中のサン・セバスティアンに水曜に乗り込んで、ソシエダと対戦することに。奇しくも相手は勝ち点1だけ多い7位で、ボルダラス監督のチームは8位とリーガでは拮抗しているんですが、ここはコパで来季のヨーロッパリーグ出場権を勝ち取ったソシエダがまだ二日酔いしていてくれることを願うばかりかと。6位のセルタとも勝ち点3差なので、その辺りまで上がることができれば、来季はラージョと交代でヨーロッパの大会に行くことになるかも。ただ、2足の草鞋を履くと、ヘタフェは2部落ちしちゃうかもしれないため、あんまり気軽には勧められないんですよね。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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