そしてアトレティコとラージョが残った…/原ゆみこのマドリッド

「何かズルいよね」そんな風に私が不公平感を覚えていたのは金曜日、コパ・デル・レイ決勝前日記者会見をネット中継で見ていた時のことでした。いやあ、レアル・ソシエダは直近の試合が先週土曜のアラベス戦、シメオネ監督のチームは火曜にバルサとのCL準々決勝2ndレグの死闘があったため、それぞれ中6日と3日とかなり差があるんですけどね。この1週間、コロナ禍で1年遅れとなった2021年の無観客決勝でアスレティックを倒して掴んだ優勝を、サン・セバスティアンから駆けつける2万6000人のファンの前でリピートすることに集中していた相手に対し、アトレティコの忙しいことといったらもう。

そう、CL戦翌日の水曜は休養日で、木曜午後にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でジュリアーノ、カルドーソ、バエナ、プビルが囲み取材に応じるメディアデーを実施。その後にリハビリトレをして、夜はマドリッド市内のホテルで合宿、翌午前中に飛行機でセビージャに向かい、夕方にシメオネ監督とグリーズマンが会見してから、カルトゥーハで前日練習と、いやまあ、CL準決勝進出を決めて、選手たちの士気が高揚しているのは間違いないですけどね。

予行演習となった3月7日のリーガ対戦でも3-2で勝利していますし、たとえ、マテラッツォ監督が「60分はプレーできる」と保証していた久保建英選手が戻るソシエダでも、バルサ祭り前のような恐怖はないんですが、体は嘘をつきませんからねえ。金曜は午前中にスビエタでセッションを行った後、夕方にもカルトゥーハでも練習していたソシエダが体力余りまくっているのと対照的に、3月の代表戦週間後、週2試合ペースが再開したものの、カップ戦に全振りのアトレティコにとって、週末試合はローテ対象。5試合で1勝しかしていないのも何ですが、2013年のサンティアゴ・ベルナベウでのお隣さんとの決勝とは違い、それこそ延長戦とかに入ったら、恐ろしいことになるかもしれない?

どちらにしろ、私にはヨーロッパリーグに優勝した後、絶対勝つだろうと思って乗り込んだカンプ・ノウでの2010年コパ決勝でセビージャに負けたトラウマがありますからね。よって、今回も土曜午後9時(日本時間翌午前4時)にはメトロポリターノへ行って、大型スクリーンでのパブリックビューングで済ませるんですが、できれば、来季はMSLのオーランドシティに行くグリーズマンにいい思い出を作ってあげられることを願っています。

まあ、そんなことはともかく、今週のヨーロッパの大会準々決勝2ndでのマドリッド勢の様子を振り返っていくことにすると。結果的にアトレティコ、レアル・マドリー、ラージョの3チームは揃って負けたんですが、いやあ、1stレグでの勝利がこうも命運を分けるとは。そう、まずは火曜、メトロポリターノにバルサ祭りのトリを見に行った私だったんですが、いや一応、先週の1stレグでは奇跡のようなシメオネ監督のカンプ・ノウ初勝利で、先勝していたんですけどね。ただ、4-0のリードがあったコパ準々決勝とは違い、今回は0-2と控えめだったのが微妙。

超満員となったスタンドも「Lucha por tu camiseta/ルーチャ・ポル・トゥ・カミセタ(君のユニのために戦え)」と書かれた横断幕を掲げ、全面赤白のモザイクで選手たちを励ましてくれたんですが、開始早々、プビルが1stレグでのイエローカードで累積警告となり、捻挫したハンツコも間に合わず、ヒメネスも何度目かわからない負傷中。ル・ノルマンと共に5番目のCBであるラングレが先発したツケが回ってきたんですよ。そう、前日会見でもremontada(レモンターダ/逆転劇)に自信を見せていたジャマルの1分になる前のシュートは、復帰したオブラクを差し置いて先発したGKムッソが弾いてくれたんですが、4分、ラングレがバックパスをジャマルに与えるって何?フェラン・トーレスとのワンツーを経て、18才のFWに至近距離から撃ち込まれては防ぎようがありませんって。

更には24分にもオルモのクロスをフェランが決めて、総合スコアが2-2となるのをラングレがただ見守っている姿を目撃したとなれば、後はもうお決まりのペナルティかレッドカードしかないと私が絶望してしまっても仕方ない?それでもその直後、ヘッドを撃ったフェルミンがムッソのスパイクで鼻の下を大きく切ったプレーは、ボールを弾くために跳んだGKに向こうが勢いで頭を下げた状態で突っ込んだために起こった事故として、幸いペナルティにはならず。

むしろ、その治療で間が入ったことにより、「El equipo se ha sabido levantar de ese golpe duro en los primeros 25 minutos/エル・エキポ・セ・ア・サビードー・レバンタル・デ・エセ・ゴルペ・ドゥーロ・エン・ロス・プリメーロス・ベインテシンコ・ミヌートス(チームは最初の25分間に受けた重い打撃から何とか立ち直った)」(コケ)ようで、31分には千載一遇のカウンターのチャンスが到来。グリーズマンのパスで、その日もバリオスの不在で中盤を務めていたジョレンテが発進し、敵エリアまでたどり着くと、ラストパスをもらったルックマが総合スコアで再びリードする1点を取ってしまうって、一体、誰に想像できた?

いえ、後半10分にはガビのシュートがラングレに当たり、反対側にいたフェランにゴールを入れられたんですけどね。VAR(ビデオ審判)のおかげでオフサイドだったことがわかり、スタンドもホッとすることに。その後はガビにcodazo(コダソ/肘打ち)を受け、額から出血していたルジェーリを始め、全員で必死に守っていたアトレティコなんですが、何と32分、ボールを持って敵ゴールに向かったセルロートがエリック・ガルシアに倒され、いえ、最初はオフサイドとされたんですけどね。これもVARのおかげでモニターチェックとなり、1stレグのクバルシ同様、「Ultimo hombre/ウルティモ・オンブレ(最後のDF)」という理由でレッドカードが出たから、ビックリしたの何のって。

残念ながら、直後のフリアン・アルバレスのFKはカンプ・ノウでのようには行かず、GKジョアン・ガルシアにキャッチされてしまったんですけどね。人数的優勢となったおかげもあって、アトレティコは最後まで1-2をキープ。ええ、彼らは先週末のセビージャ戦を控え選手とカンテラーノ(Bチームの選手)の大量投入で省エネ。逆にバルサはエスパニョールとのカタルーニャダービーにレギュラーを並べ、「土曜の試合で消耗していた相手の力が弱まるのはわかっていた」(シメオネ監督)というのも助けになったかと。

何はともあれ、最後は総合スコア3-2で勝ち抜き、9年ぶりのCL準決勝に挑めることになったとなれば、場内は完全なお祭り状態に突入です。ええ、ミックスゾーンや監督会見を見た後、かなり遅い時間にメトロに乗ったにも関わらず、大声でカンティコを歌いながら飛び跳ねる大勢のファンたちのせいで車両が大揺れし、私もかなり怖い思いをしたものでしたっけ。

そして翌水曜はアリアンツ・アレナで、1-2負けからのremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指すマドリーの2ndレグを近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に1時時間前に行って、席を確保して観戦したんですが、いやあ、それが開始36秒にはもう、総合スコアが2-2になっていたんですよ。というのもGKノイアーの出したボールをギュレルが受け、エリア外からロングシュートを決めたからで、ほんと才能ある選手は眩しい。ただ6分にはもうキミッヒのCKを、うーん、GKルニンはボールの軌道が見えなかったんですかね。ゴール内で先にニアポストの方に動いてしまい、正面でどっしり構えていたパブロビッチがジャンプもせず、頭でミート。バイエルンが再びリードすることに。

29分にはギュレルが2度目の閃きを魅せて、直接FKで2点目を挙げたんですが、これも38分、ウパカメンコのスルーパスを易々通し、ハリー・ケインにゴールされていてはねえ。それでもビニシウスがシュートをゴールバーに当ててしまった直後の42分、その彼のアシストでエムバペが決め、総合スコア4-4でハーフタイムに入ったマドリーだったんですが…。

後半は趣が変わって、なかなか点が入らない展開となり、うーん、エムバペの至近距離ボレーもノイアーにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまいましたしね。それがまさか、誰もが延長戦入りを覚悟していた41分、とんでもないことが発生。そう、ケインへのファールでプレーが止まった後、途中出場していたカマビンガがボールを持ってちょっと逃げたところ、主審が2枚目のイエローカードを出してきたから、さあ大変!おかげで1人少なくなったマドリーは44分にはルイス・ディアス、ロスタイム4分にもオリーゼにゴールを浴びて、あっさり4-3(総合スコア6-4)で敗退してしまいましたっけ。

うーん、この結果には、試合後に「El arbitro ni sabía que tenía tarjeta/エル・アルビトロ・ニ・サビア・ケ・テニア・タルヘタ(審判は彼がすでにカードをもらっていたことすら忘れていて)、対戦に水を差した」と言っていたアルベロア監督を始め、マドリーサイドは空気を読まない主審にカンカンだったんですけどね。ただ、カマビンガには昨季の準々決勝アーセナル戦でも3-0で負けていた1stレグの後半ロスタイムに2枚目のイエローカードをもらって退場という前科があって、その経験から学んでいないのはちょっとどうかと。

それでも試合前日からメトロポリターノのピッチの芝の高さにイチャモンを付けて書状を送ったり、試合翌日にはジャッジの不公平さ正式にUEFAに訴えたバルサと違い、ええ、だってどちらもその前にしっかり自分たちでゴールを決めていれば、勝てていたんですからね。不満を公けにするつもりがないのはマドリーの品位の高さかと思いますが、それにしたって、まさか彼らの今季がお隣さんより早く終わってしまうとは。

だって、まだリーガは7節残っているとはいえ、前節のジローナ戦をミュンヘンでのレモンターダのテストマッチにして、1-1で引き分けたため、首位バルサと勝ち点差も9になってしまいましたしね。2年連続ビッグタイトル無冠ほぼ確定のこの先、シーズン終了まで、この夏の監督、選手たちの人員刷新の話題ばかりになりそうなのは、私も頭が痛いところです。

そして木曜には弟分のラージョがコンフェレンスリーグ準々決勝AEK戦2ndレグをプレー。実はラージョのアウェイ戦は、ヨーロッパリーグ勢のベティス、セルタと試合が被ってしまうため、私もここまでライブでは見ていなかったんですが、さすがにこれはと近所のバルの店員に頼んで流してもらうことに。キックオフ直前までベティスファンのグループが来るのを恐れていたんですが、いや、本当に見られて良かったです。

だってえ、1stレグで3-0と大きくリードしていたラージョがアテネでは大豹変していたんですよ。やたらアグレッシブな相手に恐れをなしたか、前半13分にスローインからパテ・シスが転んで逃がしたジニに決められると、36分にはラティウがコイタをエリア内で倒してPKを献上して、2点目を奪われしまうことに。おまけに後半6分にもジニのヘッドが入り、とうとう追いつかれてしまった日には、やっぱりイニゴ・ペレス監督を始め、選手たちにヨーロッパの大会での経験がないのが祟ったのかと思ったものですが…。

でも大丈夫。そう、前半にはアルバロ・ガルシアを、後半序盤にもルイス・フェリペをケガで失ったラージョだったんですが、15分、途中出場のパブロ・ディアスが敵エリア目掛けて真っしぐら、最後はイシのシュートが決まって、虎の子の1点を手に入れてくれたから。ボールポゼッションが28%だったアトレティコをなぞるように、36%だった彼らもそのまま3-1で逃げ切ってくれたため、総合スコア3-4で勝ち抜け、今季初めてのメジャー観光地でのアウェイ戦応援に駆け付けた1500人ものラージョファンも失望せずに済んだんですが、やっぱり鍵は先手必勝だったかと。

そう、準決勝では4月29日(水)にアトレティコがアーセナル、30日(木)にはラージョがストラスブールと当たるんですが、どちらもまた1stレグがホームですからね。また初戦でガツンと行って、アウェイでは負けても総合スコアを守り切るという作戦が無難かと。ちなみにコパ決勝の今週末はお休みとなるラージョですが、来週はミッドウィーク開催リーガあるため、また週2試合生活に復帰。弟分仲間のヘタフェと違い、まだ1部残留確定ラインに達していない彼らにはちょっと厳しいスケジュールになりますが、何とか乗り気ってもらいたいものです。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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