マドリッド勢はホーム1勝1敗、アウェイ1勝…/原ゆみこのマドリッド

「もしかしたら優勝に一番近いのは彼らかもしれない」そんな風に私が喜んでいたのは木曜日、エスタディオ・バジェカスのスタンドでラージョがギリシャリーグの首位、AEKアテネに3-0の完全勝利を挙げるのを目撃した時のことでした。いやあ、コンフェレンスリーグの16強対決ではサンスンスポルにアウェイで1-3と勝ちながら、ホームでは0-1で負け、総合スコア3-2と薄氷を踏む思いをしなくもなかったんですけどね。準々決勝の相手はこれまでプレーしてきたチームより、実力的に一段上とも聞いていたため、ちょっと心配していたんですが、完全な杞憂に終わることに。

ええ、これまで1度しか戦ったことのないヨーロッパの大会の準々決勝とあって、平日の午後6時45分と早い時間ながら、700人以上のギリシャ人ファンが駆けつけ、キックオフ前から気勢を上げてスタンドを含め、場内は満員。バックスタンドには大幕が広がり、ブカネーロス(ラージョの応援団)のいるゴール裏は皆が白い大旗を振って、選手入場を盛り上げていたんですが、何よりだったのは開始2分にはもうゴールが入り、選手たちもファンを盛り上げてくれたことだったんでしょ。そう、ウナイ・ロペスのロングボールをアルバロ・ガルシアが追い、左サイド奥からエリア内に折り返したパスを、負傷から復帰して初先発となったイリアスがワンタッチで決めてくれたんです!

ただ、19分のイリアスのシュートをtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋いでゴールにしたルジューヌのgolazo(ゴラソ・スーパーゴール)は残念ながら、オフサイドでスコアに挙がらなかったんですけどね。その先はAEKも反撃してきて、以前、レアル・マドリーにいたヨビッチこそ影が薄かったものの、バルガのヘッドがゴールポストに当たったり、コイタが突っ込んで来て、GKバタジャと正面衝突。シュートが撃てなかったなんてこともあったんですが、前半ロスタイム2分、再びラージョ砲が火を噴きます。これもイリアスの撃ったシュートをGKストラコシャが弾いたボールをウナイ・ロペスが押し込んで、2点差をつけて折り返しいるって、ラージョって、こんなに効率のいいチームだった?

後半はやや引き気味になったものの、27分にはプレーが一巡して、AEKの選手2人の交代があった際にVAR(ビデオ審判)通信が入り、主審がモニターを見に来ることに。いやあ、これは私もオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の解説で知ったんですが、パチャのシュートがエリア内で敵選手の腕に当たっていたそうで、遅ればせながら、ラージョはPKをゲット。イシが決めて、とうとう3-0って、来週木曜の2ndレグのため、アテネまで応援に700人程のファンはもう、大船に乗った気分でいていい?

いえ、AEKのニコリッチ監督はそれでも「次の試合は土地の利があるし、ファンの前でプレーするウチのチームを信じている」と言っていたんですけどね。もちろん、コパ・デル・レイ準決勝バルサ戦1stレグの時のアトレティコのように4点差あればもっと安心ですが、この一戦を見る限り、余程のことがない限り、3点差を引っくり返されることはないかと。まあ、その反動でこの週末のマジョルカ戦がおろそかになる可能性もなくはないんですが、何より、このヨーロッパの大会準々決勝1stレグ週間、マドリッドの3チームで一番いい勝利を果たしたイニゴ・ペレス監督のチームを褒めない訳にはいきませんよね。

え、それでCL組の方はどうだったのかって?いやあ、先にプレーしたのはマドリーの方で、火曜にバイエルンとの準々決勝1stレグだったんですが、ベルナベウ周辺でチームバスの到着を待っている、普段の倍近いファンをレアル・マドリーTVの中継で呑気に眺めていたところ、突然、大雨が降ってきてねえ。バスが着く頃にはファンたちもズブ濡れになっていたんですが、その時になって、私も思い出したんですよ。メトロ10号線のヌエボス・ミニステリオスからクスコまでが、まさにサンティアゴ・ベルナベウ駅の改修工事のため、3月末から今年いっぱい運航停止になっていたことを。

それで慌てて家を出たものの、工事で止まる区間は代替バスがあるんですが、ヌエボス・ミニステリオス駅の外に出てもどこから発着するかがわからず。車道もかなり渋滞しているし、結局、傘をさして、1駅分、15分程、歩く破目になったんですが、大丈夫。キックオフの30分前には無事に到着できることに。ええ、ベルナベウに入ればこっちのもんで、屋根の閉じた密閉型スタジアムですから、ドイツから応援に駆けつけた4000人のバイエルンファンを除く、全てのスタンドは心置きなくモザイクの紙を掲げて、入場してくる選手たちを迎えることができましたっけ。

それにしたって、2年ぶりにベルナベウを訪れたバイエルンファンたちの賑やかなことといったら、この上なく、ええ、マドリーファンはクラブ歌を合唱した後はほぼ、Fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏)の応援団以外、静かなのが通常運転ですからね。Fondo norte/フォンド・ノルテ(北側ゴール裏)上階の半分を占めたドイツ人たちがキックオフから、まったく声を途切らすことなく、大音量で歌っていたのには感心したんですが、それに呼応するようにチームも積極攻勢に。

ゴール前からウパカメンコがシュートを撃ち損じ、かろうじてカレラスがゴールライン上でクリアしたり、前半27分など、この日もベリンガムを差し置いて先発したピタルチがエリア内でパスを敵に献上。幸いナブリのシュートはGKルニンの腕に当たり、難を逃れたなんてこともあったんですが、エムバペやビニシウスが次々とGKノイアーに弾かれているうち、とうとう41分にはナブリのスルーパスをルイス・ディアスに決められて、バイエルンに先制されてしまったから、さあ大変!

実はその大変は後半1分、カレラスが自陣センター近くでパブロビッチにボールを奪われ、オリーズがエリア前のマドリー選手たちをかわしながら中央に向けて移動。最後はノーマークだったハリー・ケインのシュートが入って、あっという間に倍になっていたんですけどね。直近のリーガのマジョルカ戦でも中盤でのボールロストから、最後はムリキに勝ち越しゴールを決められていたマドリーだったため、即座に場内には冷ややかな空気が流れることになったんですが、それも16分にはビニシウスがウパカメンコのミスから、1人抜け出しながら、ノイアーをかわして撃ったシュートがゴール脇に飛んでしまっては、ファンのガッカリ度も爆上がりですって。

おかげで一時、pito(ピト/ブーイング)も聞こえてきたんですが、その直後、ハイセンとピタルチをミリトンとベリンガムに、更にはギュレルもブライムにアルベロア監督が代えてから、マドリーも一矢を報いることに成功。29分、トレントが右サイドから入れたボールをエムバペが蹴り込んで、ノイアーに当たったものの、すでにゴールラインを越えていたとされ、スコアが1-2に。となれば、マドリーお馴染みのremontada(レモンターダ/逆転劇)への期待でスタンドが一気に盛り上がったのも当然だった?

でもねえ、1stレグだったからなのか、その後は追加点が入らず。逆に途中出場のムシアラに何度か撃たれて、下手したら、1-3になっていたかもしれない程だったんですが、そのまま試合はマドリーが1点差で負けて終了。いえ、シュート数はマドリーが20本(枠内9本)、バイエルンも20本(枠内8本)で、「Si Neuer es MVP del partido hemos atacado mucho/シー・ノイアー・エス・エメウベペー・デル・パルティードー・エモス・アタカードー・ムーチョ(ノイアーがMVPなら、ボクらは沢山攻撃したってことだ)」(ルニン)というのは嘘じゃないんですけどね。

アルベロア監督も「Si algún equipo puede ganar en Múnich es el Real/シー・アルグン・エキポ・プエデ・ガナール・エン・ムニッチ・エス・エル・レアル(ミュンヘンで勝てるチームがあるとしたら、それはレアルだ)」と言っていましたが、いやあ、実はこれまでCLで初戦をホームで負けた5回の例で、マドリーは1度も逆転突破できてないんですけどね。しかも最近、中盤での守備ミスからの失点が多いのに加え、2ndレグではチュアメニが累積警告で出場停止に。エムバペとビニシウスにも撃っても撃っても入らない症候群が感じられるのが気懸りで、ええ、バイエルンは来週水曜のアリアンツ・アレナでも絶対、点を取ってくるでしょうからね。その辺も考えると、世間が来週の水曜前に「根性のレモンターダ」の掛け声で埋めつくされことになるのか、これはちょっと待ってみないといけないですね。

そして翌水曜、アトレティコがカンプ・ノウに乗り込んでの準々決勝1stレグとなったんですが、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に早めに行って正解でした。というのも普段、お隣さんの試合に比べ、観戦客は少ないんですが、うーん、ラウンドがかなり進んだせいでしょうかね。その日はキックオフ前から満席で、出足の遅いファンは立ち見することになっていたから。おかげでまんまとTVに近いテーブルを確保できた私だったんですが、気分的には最悪で、だってえ、シメオネ監督の13年間を含め、ここ20年間、アトレティコはカンプ・ノウで勝っていないんですよ。よって、また歯ぎしりするような試合を見せられるのを覚悟していたところ…。

序盤から、ラッシュフォードがガンガン撃ってくるのを、まだ完調でなく、マドリッドでお留守番となったGKオブラクでなく、ムッソが弾いてくれるのをヒヤヒヤしながら見ていたんですが、幸い前半17分のジャマルのアシストからのゴールはオフサイドで命拾い。でも何なんですかね。土曜のリーガ戦で温存され、この日のために力を蓄えていたCBハンツコが31分にジャンプからの着地に失敗。足首を痛め、急遽、負傷から復帰したばかりのプビルと交代したのにはまた、今日もアトレティコはツイていないのかと肩を落としたものですが、41分、とうとう転機が訪れたんです!

そう、41分にはフリアン・アルバレスのロングボールを追ったジュリアーノがエリア前でクバルシに倒され、いえ、バル中に「Ultimo hombre!/ウルティモ・オンブレ(最後のDF)」という声が木霊する中、ドイツ人主審は最初、イエローカードを出したんですけどね。VAR通信のおかげでモニターチェックとなり、19才のCBがレッドカードで退場させられたとなれば、だってえ、アトレティコは後半丸々、人数的優勢でスコアレスドローを守ることができるんですよ。それがまさか、そのFKをフリアンがすっぽりゴールに沈めて、先制点まで取ってしまうって、一体、誰に想像できた?

いやあ、今季はバルサのお隣さん、エスパニョールのホームでもFKゴールをリーガ開幕節で挙げていたフリアンに言わせると、「昨日、FKを練習したんだ。Tiré cinco o seis y no metí ninguna. El día era hoy/ティレ・シンコ・オ・セイス・イ・ノー・メティ・ニングーナ。エル・ディア・エラ・オイ(5、6本蹴ったけど、1つも入らなかった。今日がその日だったのさ)」だそうなんですが、こういうのは運も関係しますよね。実際、後半頭に飛び出して来たムッソをかわしてラッシュフォードが撃ったシュートが、前日のビニシウスのようにネット脇に逸れた後、その当人にも同じような位置からFKを蹴るチャンスが巡ってきたんものの、その一撃はゴールバーに逸れてしまうことに。

え、バルサが10人になっても攻められていたのはちょっとアトレティコ、情けなくないかって?まあ、そうなんですが、鬼門のアウェイですし、モリーナを始めとして、パスがようよう味方に届かない選手がああも多くいてはねえ。おまけに後半序盤にはムッソが出したボールをプビルが手で拾って返し、バルサの選手たちが口々に「Penalti!/ペナルティ」と叫ぶ中、主審はそれをスルー。これにはフリック監督も「あれはPKで、しかも彼は2枚目のイエローカードだった」と文句たらたらでしたが、あれ?もしかして今日のアトレティコ、ツイているの?

おまけに25分には、ルックマンに代わって入っていたセルロートがルッジェーリの渾身のクロスをゴール前からvolea(ボレア/ボレーシュート)。この試合、唯一の生産的連携とも言えるプレーで2点目を取ってくれたから、驚いたの何のって。バルサもジャマルを先頭に最後の最後まで、反撃の手を緩めませんでしたけどね。本職左SBのルッジェーリはリーガ戦のニコ・ゴンサレスのようにイエローカードをもらうことなく、7人いた累積警告寸前だった選手もプビル以外は来週火曜の2ndレグの出場停止を避けることに成功。枠内シュートがたった3本だったというのに0-2で勝てたとなれば、こんなに美味しい話はないかと。

いえまあ、もちろんコパ・デル・レイ準決勝でも4-3まで追い上げてきたバルサですから、たとえ、2ndレグがメロトポリターノでも油断はできないんですけどね。アラウホなども、「このチームは何度もレモンターダをやってきた。Si hay alguien capaz de hacer esto, somos nosotros/シー・アイ・アルギエン・カパス・デ・アセール・エスト、ソモス・ノソトロス(できる者がいるとすれば、それはボクらだ)」とアルベロア監督みたいなことを言っていたんですが、彼らにとって、厄介なのは間に挟まる土曜のリーガがエスパニョールとのカタルーニャダービーなこと。

そう、すでにリーガは投げ捨て、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのセビージャ戦に全面ローテで挑めるアトレティコと違い、バルサは優勝への道のりを着々と進めないといけませなからね。1日早く金曜午後9時にベルナベウでジローナ戦を迎えるマドリーが勝利すれば、勝ち点が4に縮まってしまいますし、お隣さんへの意地もあるとなれば、無下にできないのが辛いところかと。もちろん、シメオネ監督にも悩みはあって、バリオス、カルドーソに加え、ハンツコもバルサ戦2ndレグにも、来週末にあるコパ決勝レアル・ソシエダ戦にも間に合うかわからないんですが、とりあえず、アトレティコのシーズンが少なくともあと1週間は続くのは有難いことです。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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