スペインBチームは強くない…/原ゆみこのマドリッド

「これは人の不幸を喜んだツケかも」そんな風に私が反省していたのは木曜日、アメリカ代表の親善試合で筋肉痛を訴え、早帰りしていたアトレティコのカルドーソが実は太ももを負傷。全治2週間となったのを知った時のことでした。いやあ、先日はラフィーニャがブラジル代表のフランス戦で全治5週間のケガをして、この週末からバルサ祭りに挑むアトレティコの懸念が1つ減ったと思った私だったんですけどね。それがシメオネ監督のチームのどこより手薄なボランチにFIFAウィルスの犠牲者が出たとなると、もうCL準決勝進出の夢など見ない方がいい?

そう、2月5日のコパ・デル・レイ準々決勝ベティス戦でケガをしたバリオスが、3月18日のCL16強対決トッテナム戦2ndレグで復帰しながら、翌日の練習でまた医務室行きに。メンドーサも3月7日のレアル・ソシエダ戦で捻挫して、3月の各国代表戦までの連続週2試合興行の中盤はコケ、カルドーソ、ジョレンテで回してきたアトレティコだったんですけどね。実際、この週末のリーガのバルサ戦はカルドーソとジョレンテが揃って累積警告による出場停止になるため、予め苦しいのはわかっていたものの、まさかCLバルサ戦までカルドーソが使えず、まだ見習い扱いのメンドーサが何とか間に合うことを祈る破目になるとは、まったくもって恐ろしい。

まあ、そんなことはともかく、まずはスペイン代表の親善2試合目がどうだったかをお伝えしていくことにすると。月曜にはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での合宿を終え、バルセロナに移動したチームは翌火曜、チケット完売のRCDEスタジアム(エスパニョールのホーム)でエジプトと対戦したんですが、金曜のセルビア戦から、デ・ラ・フエンテ監督はジャマル(バルサ)以外全員を先発ローテすることに。所謂チームBで挑んだところ、結果、スペインのゴールはオジャルサバル(レアル・ソシエダ)頼りということがハレてしまったから、さあ大変!

だってえ、CFとして入ったフェラン・トーレス(バルサ)も、後半途中から引き継いだボルハ・イグレシアス(セルタ)もまったく当たらず、計25本(うち枠内6本)もシュートを撃ったにも関わらず、全然、点が取れないんですよ。それどころか、前半29分など、サラー(リバプール)が負傷でいないエジプトでCFを務めたマーモウシュ(マンチェスター・シティ)のシュートがGKダビド・ラジャ(アーセナル)の守るゴールバーを直撃して、ヒヤリとさせられたなんてことも。それでも後半17分には予定通り、GKジョアン・ガルシアも古巣のホームで代表デビューを果たしたスペインは何とか、最後まで失点はしなかったんですけどね。

その日はバルネチェア(レアル・ソシエダ)も先発で代表デビューとなり、モスケラ(アーセナル)、ビクトル・ムニョス(オサスナ)共々、初招集組4人全員がプレー。「Es gestión de grupo/エス・ヘスティオン・デ・グルッポ(これはグループマネージメントだ)。新しい選手たちにチャンスを与え、チームに溶け込んでもらうためのね」というデ・ラ・フエンテ監督の目的は達成できたんですが、実は0-0というお寒い結果にまったくイチャモンがつかなかったのには訳があってねえ。

そう、3年前、代表監督就任2試合目だったユーロ2024予選のスコットランド戦にローテメンバーで挑んで2-0と負け、当時はかなり批判されたデ・ラ・フエンテ監督だったんですが、今ではもう、ネーションズリーグ、ユーロの優勝で実績を積んでいますからね。W杯用招集リスト作成前、最後となる試合で引き分けても、ミケル・メリーノ(アーセナル)、ファビアン(PSG)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)らが負傷から回復すれば、おそらく本大会には呼ばれなさそうな選手たちも出ていたため、仕方のない面もあったかと思いますが、何よりの原因はこの試合中のあるカンティコが大問題となったから。

いやまあ、キックオフ前、エジプトの国歌が流れる際にスタンドから大きなpito(ピト/ブーイング)が飛んでいた時点で私もちょっと、バルセロナの代表ファンは礼儀を知らないのかなと眉をひそめてはいたんですけどね。前半10分頃には、「Musulmán el que no bote es/ムスルマン・エル・ケ・ノー・ボテ(跳ねないのはイスラム教徒)」と歌いながら、かなりの大人数がピョンピョンしていたものだから、え、アトレティコファンなんて、毎回、「Madridista el que no bote/マドリディスタ・エル・ケ・ノー・ボテ(跳ねないのはマドリーファン)」とメトロポリターノでやってないかって?

その通りなんですが、この場合、イスラム教徒というのが人種差別に当たるとして、いえ、一応、スタジアムも電光掲示板や場内アナウンスで注意は促していたんですけどね。通常、人種差別的行為があった時は主審が試合を止めるという決まりもあるんですが、いや、ブルガリア人審判団にカンティコの意味がわからないのは当然では?おそらくエジプト人選手たちも同じだったため、誰も主審に抗議することなく、試合は続行。でもねえ、スペインにはカンティコの意味がわかるイスラム教徒がいたんですよ!

それはジャマルで、この件については後で自身のインスタで、「Sé que iba por el equipo rival y no era algo personal contra mí/セ・ケ・イバ・ポル・エル・エキポ・リバル・イ・ノー・エラ・アルゴ・ペルソナル・コントラ・ミー(あれはライバルチームに対してのもので、自分に対する何か個人的なことではないのはわかっている)」とコメントしていたんですが、そのせいか、当人も主審には抗議せず。

よって主審が試合を止めなかったことに関する文句はちょっと筋違いかなという気もするんですが、今は「usar una religión como burla en un campo os deja como personas Ignorantes y racistas/ウサール・ウナ・レリヒオン・コモ・ブルラ・エン・ウン・カンポ・オス・デハ・コモ・ペルソナス・イグノランテス・イ・ラシスタス(スタジアムで宗教をからかいのネタにするのは、その人を無知で人種差別主義者にする)」(ジャマル)時代ですからね。スペインは2030年にモロッコ、ポルトガル共催のW杯ホストになることが決まっていることもあり、試合後はサッカー協会会長、デ・ラ・フエンテ監督、更にはペドロ・サンチェス大統領、スポーツ省の高官などが口を揃えて、このカンティコに加わった観客を大々的に批判することに。

そんな訳で、物足りなかった試合内容に関しては誰も何も言っていない状態なんですが、まあ、本番となる6月15日のスペインW杯開幕戦、カーボベルデ戦はかなり先のことですからね。それまでに負傷者が治ったり、逆に誰かが負傷したりという可能性もあるため、今はまだ、生温かい目で見守っていけばいいんですが、オジャルサバルだけは絶対にケガをされちゃ困りますって。

そしてこのセマナ・サンタ(イースター週間)の週末のマドリッド勢の試合予定も見ておくことにすると、金曜に30節の先陣を切るのは弟分のラージョで、エスタディオ・バジェカスでエルチェと対戦。いやあ、実は4人いた各国代表選手のうち、W杯予選プレーオフ準決勝でそれぞれ、ポーランドとトルコに負けたバリウ(アルバニア)とラティウ(ルーマニア)の両右SBは早帰りするものと、私もてっきり思っていたんですけどね。それが何と、火曜にはその敗退組同士の親善試合がちゃっかり組まれていて、アルバニアがウクライナに1-0で負けた試合でバリウは後半途中出場。ラティウなど、スロバキアにルーマニアが2-0で負けた試合でもフル出場して、アトレティコのハンツコ同様、お疲れ様なことになっていましたが、W杯にも出ないのにこの親善、やる意味あった?

おかげでもし、6月にデ・フルートスがデ・ラ・フエンテ監督に再招集してもらえないと、ラージョからのW杯参加選手はセネガルのパテ・シスとメンディだけになってしまうことになりますが、それはまだ先の話。現在リーガ14位のラージョとしては、ええ、彼らはparon(パロン/リーガの停止期間)直前のバルサ戦で1-0と負け、悔しい思いをしていますからね。幸いエルチェは降格圏と勝ち点1差の17位と不調なんですが、代表戦期間中、キャンプに来ていたアストン・ビラと親善試合をして、2-1で勝っていたのはちょっと気になるかと。何にせよ、来週は木曜にコンフェレンスリーグ準々決勝AEK戦1stレグも控えているラージョだけに、ここは勝って勢いをつけておきたいところです。

翌土曜には兄貴分2チームの試合があって、午後4時15分(日本時間午後11時15分)にレアル・マドリーはマジョルカとのアウェイ戦をプレー。実はこの代表戦週間、アルベロア監督のチームは13人もの選手を派遣しながら、全員無事に戻って来たんですよ。それどころか、負傷明けのエムバペはフランス代表で実戦のリズムを取り戻すことができましたし、ブラジル戦ではゴールもゲット。ビニシウスも2戦目、モドリッチとアンチェロッティ監督が再会を果たしたクロアチア戦で得点し、3-1の勝利に貢献しているんですが、一番嬉しかったのはW杯予選プレーオフ決勝でコソボを1-0で倒し、24年ぶりの本大会出場を決めたトルコのギュレルだったかと。

唯一、心配なのはイングランド代表の2試合、ウルグアイ戦(1-1)にも日本戦(0-1で敗戦)にもまったく出場せず。まあトゥーヘル監督のチームが1勝も挙げられなかったのはともかく、やはり負傷明けのベリンガムがまだ完調ではなさそうなことですけどね。先週はバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でたった3人だけだったセッションにも、火曜から始まった今週はリハビリを終えたミリトンとセバージョスが加わり、各国代表からも水曜には7人が、木曜には残り6人も帰還し、とうとういないのはクルトワ、ロドリゴ、メンディの3人だけに。

マジョルカからは、コソボの夢を叶えられなかったムリキがギュレルに対してリベンジを企んでいるなんて話も聞こえてきますが、ただトルコ人MFはバルベルデ(ウルグアイ)と共に唯一、2試合にほぼフル出場している選手ですからね。となると、来週火曜にはCL準々決勝バイエルン戦1stレグを控えるアルベロア監督がローテをかけてくる可能性もなきにしろあらず。もちろん、首位バルサとの差を現在の勝ち点4から広げないことも重要なんですが、そこはCL命なクラブだけあって、調整が難しいところですよね。

そして午後9時(日本時間翌午前4時)にはアトレティコがバルサをメトロポリターノに迎えるんですが、何せ、4位の彼らはもう、首位とは勝ち点16差。せめて勝ち点1差の3位ビジャレルには追いついてもらいたいものの、5位とも13差あるだけに、果たして選手たちが本気を出すことができるのか。各国代表に14人が出向し、中でもアルゼンチン組の6人は長旅をしてきた後とあって、シメオネ監督も来週水曜のCLバルサ戦の方を優先しそうな気もするんですが、でもでもだって、相手は同じチーム。エースのレバンドフスキもW杯に行けず、傷心のようですし、まずはリーガで叩いておきたいところですが、果たしてどうなることやら。

一方、日曜試合に当たったヘタフェはコリセウムでアスレティック戦となるんですが、実はこの代表戦期間中、1月にレンタルで来たFWサトリアーノをオリンピック・リヨンから正式に買い取ることに。ボルダラス監督のチームは現在8位で、7位のレアル・ソシエダ、9位のアスレティックと同じ勝ち点で並んでいるんですが、励みになるのはあと1勝すれば、いよいよ残留確定ゾーンに入れることでしょうか。相手はいよいよ、恥骨炎でずっと休んでいたニコ・ウィリアムスが復帰してきそうなことが心配ですが、各国代表選手がたった3人だったヘタフェは休養もしっかり取れましたし、ホームのファンに喜んでもらえる試合ができたらいいですよね。

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原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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