阿部引退試合で俊輔の凄さを再認識/六川亨の日本サッカーの歩み
2022.11.15 22:10 Tue
日本代表の海外組が各国リーグの終了と同時に続々とカタール入りし、話題はW杯へと切り替わっている。そんななか、先週末の12日は埼玉スタジアムでの「阿部勇樹 引退試合」を取材した。
対戦カードは浦和レッズOBで07年と17年のACL優勝メンバーを中心とした『URAWA ASIAN KINGS』と、阿部とはジェフ市原/千葉、04年アテネ五輪と日本代表時代のチームメイトによる『JEF・JAPAN FRIENDS』の両チームだ。
浦和OBチームには最年長の岡野雅行(50歳)からいまも現役のGK西川周作まで、幅広い年齢層が集結。対する混成軍にはジェフ時代のチームメイトであるDF中西永輔やFW巻誠一郎、アテネ五輪世代のDF今野泰幸、MF松井大輔に加えてMF中村俊輔やCB中澤佑二ら南アW杯のメンバーも参加するなど豪華な顔ぶれ。監督は浦和OBチームがホルガー・オジェック氏、混成軍はアテネ五輪代表監督の山本昌邦氏が務めた。
試合は田中マルクス闘莉王が岡野にロングパスを出そうして息が合わずにやめて会場を沸かせたり、岡野が得意の俊足を披露したりするなどして“お祭りムード“を盛り上げた(岡野のダッシュは50歳にしては超速! やはり持って生まれた才能だろう。しかし1回スプリントした後は休憩が必要だった)。
対する混成軍ではボランチの稲本潤一が、スローペースな試合展開になるとDF陣からパスを引き出す巧みなポジショニングと、視野の広さによる展開力は相変わらず上手いところを見せた。
今シーズンでの現役引退を表明したものの、まだ横浜FCの練習には参加しているだけにプレーは現役だ。そんな彼のプレーを見ていると、「まだ来シーズンもやれる」と思ったファン・サポーターも多いのではないだろうか。かえすがえすも右足首の負傷が残念でならない。
さすがに主役である阿部は、現役を引退してから1年しか経っていないのと、今年からユースチームのコーチとして毎日早朝から汗を流しているそうで、プレーは現役時代と遜色ない。そして引退試合だからからか、現役時代以上にゴール前に飛び込みハットトリックを達成するなど得点嗅覚の鋭さも見せた。
終わってみれば阿部の先制点(混成軍)で試合は始まり、闘莉王の連続得点、阿部のPKによる追加点(混成軍)、武藤雄樹と梅崎司、興梠慎三のゴールに加えて阿部の2人の息子による得点、そして最後は父親の3点目(浦和OB)でゴールラッシュを締めくくった。
この試合で一番のサプライズはすでに書いたように中村俊輔のプレーだったが、他にも新鮮な発見があった。それは阿部の2人の子息のプレーである。2人とも、視野の広さと意外性のあるプレーは父親譲りというか、父親を超える予感をいまから漂わせていることに驚かされた。
父親がJリーグにデビューした当時は『ジェフの選手らしい』パサー・タイプだった。しかし息子たちは相手に囲まれても苦にしない落ち着きと自信があり、さらにドリブルで局面を打開できるアイデアもある。長男は来年には浦和のユースチームに昇格すると聞いた。もしも「浦和の阿部」という選手の名を聞いたら、是非ともそのプレーを見ることをお薦めしたい。それほど2人の息子は埼玉スタジアムで異彩を放っていた。
【文・六川亨】
対戦カードは浦和レッズOBで07年と17年のACL優勝メンバーを中心とした『URAWA ASIAN KINGS』と、阿部とはジェフ市原/千葉、04年アテネ五輪と日本代表時代のチームメイトによる『JEF・JAPAN FRIENDS』の両チームだ。
試合は田中マルクス闘莉王が岡野にロングパスを出そうして息が合わずにやめて会場を沸かせたり、岡野が得意の俊足を披露したりするなどして“お祭りムード“を盛り上げた(岡野のダッシュは50歳にしては超速! やはり持って生まれた才能だろう。しかし1回スプリントした後は休憩が必要だった)。
対する混成軍ではボランチの稲本潤一が、スローペースな試合展開になるとDF陣からパスを引き出す巧みなポジショニングと、視野の広さによる展開力は相変わらず上手いところを見せた。
そして中村俊輔である。先週木曜のコラムでは「パスよりもシュートの方が印象的」と書いたが、それを撤回したい。それほど右サイドでボールを持つと、正確なミドル、ロングのパスとシュートで浦和サポーターのため息と拍手を誘った。敵チームの選手に浦和のサポーターがこれほど拍手をしたり、ため息をついたりするのは、阿部の“引退試合“とはいえそうあることではない。
今シーズンでの現役引退を表明したものの、まだ横浜FCの練習には参加しているだけにプレーは現役だ。そんな彼のプレーを見ていると、「まだ来シーズンもやれる」と思ったファン・サポーターも多いのではないだろうか。かえすがえすも右足首の負傷が残念でならない。
さすがに主役である阿部は、現役を引退してから1年しか経っていないのと、今年からユースチームのコーチとして毎日早朝から汗を流しているそうで、プレーは現役時代と遜色ない。そして引退試合だからからか、現役時代以上にゴール前に飛び込みハットトリックを達成するなど得点嗅覚の鋭さも見せた。
終わってみれば阿部の先制点(混成軍)で試合は始まり、闘莉王の連続得点、阿部のPKによる追加点(混成軍)、武藤雄樹と梅崎司、興梠慎三のゴールに加えて阿部の2人の息子による得点、そして最後は父親の3点目(浦和OB)でゴールラッシュを締めくくった。
この試合で一番のサプライズはすでに書いたように中村俊輔のプレーだったが、他にも新鮮な発見があった。それは阿部の2人の子息のプレーである。2人とも、視野の広さと意外性のあるプレーは父親譲りというか、父親を超える予感をいまから漂わせていることに驚かされた。
父親がJリーグにデビューした当時は『ジェフの選手らしい』パサー・タイプだった。しかし息子たちは相手に囲まれても苦にしない落ち着きと自信があり、さらにドリブルで局面を打開できるアイデアもある。長男は来年には浦和のユースチームに昇格すると聞いた。もしも「浦和の阿部」という選手の名を聞いたら、是非ともそのプレーを見ることをお薦めしたい。それほど2人の息子は埼玉スタジアムで異彩を放っていた。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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