まだ市場はあんまり動かない…/原ゆみこのマドリッド

2022.06.21 21:00 Tue
Getty Images
「ここまで遅くなるなんて気の毒に」そんな風に私が同情していたのは月曜日、とっくに各国代表戦も終わり、SNSには選手たちが世界各地でバケーションを満喫している写真が溢れる中、ようやく前夜、昇格プレーオフ決勝2ndレグでアルメリア、バジャドリーに続いて、新シーズンを1部で戦うチームが決まったのを知った時のことでした。いやあ、昨年などは準決勝でラージョとレガネスの弟分ダービーがあり、前者が決勝で嬉しい1部復帰を遂げたため、プレーオフも結構、真剣に見ていたんですけどね。

今年はまったくマドリッド勢がおらず、試合も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行かないと見られなかったため、全然、盛り上がる理由もなかったんですが、強いて言うなら、ラージョのレジェンドでもあるミチェル監督が率いるジローナが、3度目の正直で昇格を決められたのは良かったかと。ええ、2019年に2部落ちした彼らは最初の年にエルチェ、去年はラージョ相手に一番悔しいプレーオフ決勝で敗戦。今回は1週間前にモンテリビでの1stレグを0-0で終え、敵地エリオロドに乗り込むことになったんですが、相手のテネリフェはリーガ5位と6位のジローナの上で終わっていたため、引分けのままだと延長戦もなく、そのまま向こうの勝利になってしまうという不利な条件が。
加えて夏のバケーションシーズンが始まったスペインではすでにカナリア諸島行きのフライトが高騰。よって応援に行けたファンも300人程度と心もとなかったんですが、大丈夫。前半42分にはエース、ストゥアーニのPKで先制すると、後半14分には同点に追いつかれながらも23分にホセ・レオンのオウンゴール、そして35分にはアルナウが止めの3点を挙げ、1-3で勝ってしまうのですから、見事なもんじゃないですが。

もちろん、2009-10シーズンに降格して、まあその前後も合わせると、かなり2部生活が長いとはいえ、せっかく用意した祝勝イベント用の舞台装置も解体しないといけなかったテネリフェも残念でしたけどね。ちなみに彼らが前回、プレーオフ決勝まで残ったのは2016-17シーズンで、この時の相手はボルダラス監督率いるヘタフェ。その年の1月にスペインに来た柴崎岳選手もテネリフェの一員として出ていたんですが、そこでの活躍が認められたか、翌シーズンはヘタフェに入団することに。

ただ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスには2年しかおらず、その後はデポルティーボ(当時は2部)、2020年からはお隣さんのレガネスに移り、1部昇格を目指して戦っていたんですが、何せ昨季はプレーオフ進出にかすりもしない12位で終わってしまいましたからね。シーズン当初の不調を乗り越え、何とか残留は果たしたナフティ監督も去り、次は降格したばかりのレバンテの指揮官となることが決まったのはともかく、現在、レガネスはアメリカの投資ファンドへの経営権売却が秒読み状態。まだ1年、契約が残っている柴崎選手に影響があるのかは不明ですが、少なくとも新ユニフォームのビデオでモデルを務めているのは安心材料になりますでしょうか。
まあ、そんなことはともかく、8月第2週の週末に開幕する新シーズンに1部でプレーする20チームが出揃ったところで、今週木曜にはいよいよ対戦カード日程の抽選会が開催。まだスペインからの日本入国には飛行機搭乗前にPCR検査の陰性証明が必要なんですが、コロナ最盛期に比べると、だんだん海外旅行も行きやすくなってきましたしね。しばらくリーガ観戦をご無沙汰していたファンもここはお楽しみカードをチェックして、予定を立ててもいいかと。スペイン国内やヨーロッパ内の移動にはもう何の制限もないため、1週間早く開幕するプレミアリーグなどと梯子というのもありかもしれませんね。

え、それで肝心のマドリッドの1部チームのニュースはないのかって?いやあ、普通のW杯開催年なら、今頃は私もスペイン代表の試合に一喜一憂しているはずだったものの、今年のカタール大会に限っては11月までお楽しみはお預け。どのクラブも今はフロント以外、休業状態なんですが、そんな中で唯一、動きがあったのはレアル・マドリーでしょうか。ええ、先週は月曜にチュアメニ(モナコから移籍)の入団プレゼンがあっただけでなく、水曜にはペレス会長がチリンギート(TVのサッカー番組)に出演。サッカーを扱うメディアは数ある中、あまり格の高い番組ではなかったため、賛否両論あったものの、ここ何年もファンがいつ来るのか、指折り数えていながら、結局、PSG残留となったエムパペについて聞けたのは興味深かったかと。

曰く、「Este Mbappé no es mi Mbappé/エステ・エムバペ・ノー・エス・ミ・エムバペ(あのエムバペは私のエムバペではない)」そうで、「フランス代表として、チームメートと一緒に広告イベントに参加するのを断った時から、驚いていたが、PSGはチームだけでなく、クラブ経営のリーダーの地位まで彼に提供している。Ningún jugador en la historia del Real Madrid ha estado nunca por encima de los demás/ニングン・フガドール・エン・ラ・イストリア・デル・レアル・マドリッド・ア・エスタードー・ヌンカ・ポル・エンシーマ・デ・ロス・デマス(レアル・マドリーの歴史において、どんな選手も他の者の上にいたことはない)。私たちはクラブを危うくするような例外を設けるつもりはない」とのこと。

まあ、実際、昨季44ゴールのベンゼマに続き、ビニシウスも22ゴールと大成長。リーガとCLのdoblete(ドブレテ/2冠優勝)を達成したとなれば、マドリーの得点力にはまったく不安はありませんからね。おまけに後者など、バケーション先のマイアミで日曜にはロベルト・カルロスとロナウジーニョのお友だちチームが対戦したチャリティマッチにも参加。12-10でロベカル側が勝ったのはともかく、そこでも2ゴールを挙げているとは、もしや21才の若い彼にはオフシーズンなど必要ない?

そのビニシウスとも近々、契約を2025、26年頃まで延長する予定で、当人のお給料も3倍増ぐらいになるそうですが、いやあ、それだけではつまらないのは記事のネタが必要なマスコミ。ええ、早速、エムバペの新契約が切れる3年後にリベンジ獲得とか、この夏、マンチェスター・シティに持って行かれたハーランド(ドルトムンドから移籍)も2024年には契約解除条項があって、移籍可能だとか、うーん、最近はロシアのウクライナ侵攻のせいで、鉄鋼材など輸入物資が滞り、本当なら、今年の12月には終わっていたはずのサンティアゴ・ベルナベウの全面改装工事の完成も来年夏まで延びるようですしね。

となれば、スーパーメガプレゼンをするにもそのくらいまで待った方がいいというのもわかりますが、日曜の夜など、バスケットのリーグ王者を決めるマドリーのプレーオフを観戦に行ったペレス会長がファンにエムバペの件を持ち出され、「Pobre hombre, estara ya arrepentido/ポブレ・オンブレ、エスタラ・ジャー・アレペンティードー(可哀そうな男、もう後悔しているだろう)」と答えていたのはもしや、本音が漏れてしまった?

そんな具合で、バスケでもバルサを下して通算36回目の優勝を果たした後の月曜、この夏、2人目となる加入選手、CBリュディガーの入団プレゼンもバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習施設であったんですが、プレスルームでの記者会見では、チェルシーとの契約を満了して移籍金なしで入ったこの彼もバルサからのオファーを断っていたなんて告白も。先のチュアメニは8が好きながら、クロースが着けているため、背番号18を選んだのと同様、カルバハルの着けている2が好きだという当人は2が二つ並んだ22番をもらっています。

ちなみにこのリュディガー、4月にはサンティアゴ・ベルナベウでCL準々決勝2ndレグの対戦を経験しているんですが、当時はまだ、マドリー入団は決まっていなかったとのこと。その試合でチェルシーが総合スコアで同点に追いつくゴールも挙げたせいもあったんでしょうか、その後、アンチェロティ監督から勧誘の電話があって、移籍を決意したそうですが、すでにアラバとミリトンでマドリーの守備ラインの固さは保証されていますからね。新シーズンはアラバを左SBに回したり、3CB制の採用もあるんじゃないかと噂されていますが、まあその辺は7月8日のプレシーズン開始を待ってみないことには何とも。

一方、これでとりあえず、夏の補強は一旦、打ち止め、しばらく放出組の方に専念することになったお隣さんと対照的なのがアトレティコで、いえ、コーチングスタッフにかつて、サラゴサやセルタでプレーした元MFのグスタボ・ロペス氏が加わったなんてことはあったんですけどね。肝心な選手の補強はまだ1人もなく、いいとこ、7月10日から始まるロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプ参加が保証されている新顔はモラタ(ユベントスに2年間レンタル移籍)とサウール(昨季はチェルシーにレンタル)ぐらいになりそうな。

いえ、ここ数日、ドルトムントとの契約が終わったアクセル・ビッツェルが退団したエレーラの代わりに入るんじゃないかとは言われているんですけどね。もう33才になるボランチですし、夢を掻き立てられているファンは少数派かと。それでも一応、プレシーズンマッチの予定だけは埋まったようで、7月27日にはブルゴス・デ・オスナでヌマンシア(RFEF1部/実質3部)戦、30日にはオスロでマンチェスター・ユナイテッド戦、8月4日にカランサ杯(カディス主催の夏の親善大会)、7日にテル・アビブでユベントス戦の4試合となっていますが、何せ、去年の夏は1年遅れのユーロ2020やコパ・アメリカ2020が開催されたせいで、プレシーズン練習になかなか選手が揃わず。

おかげでリーガ開幕前の親善試合はカンテラーノ(アトレティコBの選手)の独壇場となっていたんですが、今年は全員、キャンプ初日から参加できますからね。それもあって、プレシーズンマッチの数が少ないのかもしれませんが、どちらにしろ、マドリッドで彼らの勇姿を見るのは公式戦まで待つことになりそうです。

その横で先週はマンチェスター・ユナイテッドのホームプレゼン試合で7月31日にオールド・トラフォード初訪問することが決まったラージョは、19日にはオーストリアでセリエAのサレルニターナとの対戦も決定。4日にプレシーズンを開始するヘタフェもカンポアモール(アリカンテにあるゴルフリゾート)でのキャンプでイングランド2部のプレストンと最初の手合わせをすることになりましたが、弟分チームたちも獲得希望の選手名は幾人か挙がっているものの、まったく動きがなくてねえ。降格したアラベスから、GKパチェコがヘタフェに来るなんて話は結構、実現性が高そうですが、おそらく6月中はまだ、入団プレゼンイベントもないんじゃないでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
関連ニュース

朗報の方が多い週末だったけど…/原ゆみこのマドリッド

「もう忙しい時期は終わったのね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、CL、リーガと試合が立て込んだ2週間の後、今週はミッドウィークフリーになることに気がついた時のことでした。いやあ、レアル・マドリーだけは来週、再来週にバイエルンとのCL準決勝があるため、他のマドリッド勢のように週1試合という訳にはいかないんですけどね。要は強いがための嬉しい代償ですし、これからはほぼ優勝の決まったリーガでローテーションもできるとなれば、あまり苦にはならないかと思いますが、この直近4連戦でボロボロになったアトレティコにはこの余裕日程が有難いかも。 だってえ、コパ・デル・レイ決勝のおかげで中8日で迎えたCL準々決勝ドルトムント戦1stレグ、その次、中2日で迎えたジローナ戦までは、ええ、ホームのメトロポリターノマジックのおかげもあって、勝っていたんですけどね。再び、中2日で挑んだジグナル・イドゥナ・パルクで4-2と負け、CL敗退が決まったかと思えば、次は中4日あったにも関わらず、メンディソローサでもアラベスに負けている始末。冗談抜きで今季残りのアウェイゲーム全敗の可能性も出て来たため、うーん、兄貴分に優しいヘタフェにはコリセウムで勝てるかもしれないとはいえ、マジョルカ戦、そして相手が最終節まで、ヨーロッパの大会出場権を争っていそうなレアル・ソシエダ戦はかなりヤバいかと。 メトロポリターノでのアスレティック戦、セルタ戦、オサスナ戦に勝つだけで、来季のCL出場権をもらえる4位をキープできればいいんですが、こればっかりはねえ。幸い、今週土曜に直接対決となるアスレティックもコパ優勝酔いがまだ覚めてないようで、リーガではここ2試合、引き分けが続けているため、何とかなってほしいんですが、とりあえず、まずは先週末のマドリッド勢がどうだったか、お伝えしていくことにすると。 この32節、土曜に先陣を切ったのは弟分のラージョで、ヘタフェとの弟分ダービーが0-0に終わった前節に続いて、オサスナとのホームゲームをプレー。でもねえ、春真っ盛りの気候に誘われて、エスタディオ・バジェカスに駆けつけたファンがゴールの歓喜に湧くまでには、かなり待たないといけなかったんですよ。それどころか、29分にはラウール・ガルシアが入れたクロスをモイ・ゴメスに決められて、先制されてしまうという逆境に遭うことに。 0-1のまま、後半に入っても相変わらず、ゴール日照りが続いていたラージョは順次、カメージョをRdT(ラウール・デ・トマス)に、デ・フルートス、ウナイ・ロペスをファルカオ、ベベにと前線を強化していったものの、30分を越えても同点に追いつけず。私の前に座っていた声の大きなアボナードー(年間チケット保持者)のオジさんなど、「Inigo, vete ya!/イニゴ・ベテ・ジャー(イニゴ・ペレス監督、もう出て行け)」と叫んでいた程だったんですが、35分、とうとう、ラージョの執念が実ることに。ええ、ベベの蹴ったCKを敵DFがヘッドでクリアしたボールがエリア外で待機していたチャバリアの前に落ち、そのvolea(ボレア/ボレーシュート)が決まってくれたから、どんなにファンも盛り上がったことか。 おまけにその4分後にはイシも奮起して、エリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を叩き込み、あっという間に逆転してしまうとは珍しい日もあるものですが、まあ、オサスナも勝ち点39とほぼほぼ残留確定していて、余裕がありましたからね。ラージョも何とかリードを守りきることができたため、2-1のまま終わり、イニゴ・ペレス監督は2年前に引退するまで、オサスナで師事していたアラサーテ監督に成長ぶりを見せつけることに。これでラージョも降格圏18位のカディスと勝ち点9差となったとなれば、今季3度目となる、ファンとの「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」唱和がプレ残留確定祝いみたいになっていたのも当然だった? そして翌日曜午後2時の早い時間帯に当たったのがヘタフェで、こちらもコリセウムでレアル・ソシエダ戦だったんですが、やっぱり順位争いをしているチームは違いますよね。開始1分にはラタサ、2分にはジェネが次々と倒され、先行きが心配されたんですが、それよりマズかったのは13分、早々にベッカーのクロスから、バレネチェアのヘッドで先制されてしまったことの方。何せエネス・ウナル(現ボーンマス)の移籍とマジョラルのヒザの靭帯断裂があってからの彼らはゴールを入れてくれるCFが不在ですからね。それでもこの日はオスカル・ロドリゲスが28分、同点ゴールを挙げることになったんですが、そのプレーが少々複雑なものだったんです。 そう、マキシモビッチのヘッドをGKレミロが弾いた後、オスカルの至近距離シュートも掻き出して、一旦、エリア外に出たボールをグリーンウッドがクロス。それをラタサが頭でゴールに入れたため、その場では誰もが彼の得点だと思ったんですけどね。それがしばらくして、VAR(ビデオ審判)がすでにオスカルのシュートがゴールラインを越えていたとして、得点者名が変わったんですが、どちらにしろ、1-1になったのは同じ。当事者たちの個人成績以外にはあまり影響はなかったかと。結局、久保建英選手がピッチに入った後半はどちらのチームも追加点を挙げられず、そのまま試合は引分けで終わることに。 え、後半8分にオスカルの蹴ったFKがポストに当たり、反対サイドのライン上にいたル・ノルマンが蹴り出したプレーでゴールが認められていれば、ヘタフェは勝てていたんじゃないかって?まあ、その通りですが、ボルダラス監督も「La falta que parecía que había entrado/ラ・ファルタ・ケ・パレシア・ケ・アビア・エントラードー(あのFKはゴールに入ったように見えた)が、ゴールラインテクノロジーがないから、本当に入ったか、入らなかったかはわからない」と達観していましたしね。ただ、これはこの勝ち点1で残留確定ラインの40に到達したヘタフェだからこそ、大ごとにならなかっただけで、その夜のクラシコ(伝統の一戦)では…。 まあ、その前には午後9時のキックオフまで時間があるのを利用して、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアラベス戦を見ることにした私だったんですが、いやあ、あんなに恐ろしいアトレティコを目の辺りにすることになろうとは!うーん、前日、モラタが体調不良で遠征に同行しないことを知った時には、もしやドルトムント戦2ndレグの1対1の大失敗を気に病んで、中4日では立ち直れない程なのかと穿ってしまった私だったんですけどね。もちろん、メンフィス・デパイもまだケガが治っていませんし、ゴールが足りていないのは重々、承知だったものの、もうそんな問題じゃなかったんですよ。 そう、4分までにグリディとハビ・ロペスがイエローカードをもらうという、テンション高めのスタートを切ったアラベスにシメオネ監督のチームは怖気づいたか、前半はほとんど何もできず。すでに15分にはコケがエリアからクリアしようとしたボールが敵DFに当たり、それを拾ったベネビデスにエリア外からシュートを決められていながら、ようようパスも繋がらない状態ではねえ。いかにもダメダメの今季のアウェイゲームの典型だったんですが、45分にはアラベスのFKがアスピリクエタの腕に当たったとして、ペナルティまで宣告されてしまうドッキリまで勃発することに。 でも大丈夫。この時は幸い、VARが介入してくれて、腕に当たったのは頭に当たって落ちてきたせいとして、PKを献上せずに済んだんですが、1-0のまま、始まった後半もデ・パウルの代わりにサウールが入りながら、大して変わり映えしないのでは。アラベスでは今季、アトレティコからレンタル修行に出ているシメオネ監督の三男、ジュリアーノが、8月にグラナダからアトレティコ入りし、そのままレンタルに出されたサムをベンチに追いやって初先発。父の前でいいところを見せようと、前半から目立っていたんですが、後半6分にはモリーナに股抜きを喰らわし、エリア内に入ろうとしたところをサウールが力づくで止めているシーンなどを見せられては限界です。あと15分ぐらいはバルにいられた私だってもう絶望して、早々にベルナベウに向かっちゃいますよ。 実際、その判断は正しくて、いえ、終盤にはサムエル・リノやコレアのシュートがGKシベラにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されるなど、同点のチャンスがなくもなかったようなんですけどね。丁度、メトロの駅を出た辺りだった47分、カルロス・ビセンテのクロスから、リオハにスーパーボレーを決められて、最後は2-0で試合は終了。オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)から聞こえるピッチインタビューでオブラクが、「どこから撃たれてもゴールになるんだから、estamos en una dinámica fea, mala/エスタモス・エン・ウナ・ディナミカ・フェア、マラ(ボクらは酷い、悪い流れに入っている)」、「No hemos hecho suficiente, como tantas veces este año fuera/ノー・エモス・エッチョー・スフシエンテ、コモ・タンタス・ベセス・エステ・アーニョ・フエラ(今季の他の何回ものアウェイのように、ウチは十分なことをしなかった)」と言っているのを聞きながら、ベルナベルのゲートをくぐるのがどんなに気が重かったことか。 うーん、アラベス戦前には2回程、マハダオンダ(マドリッド近郊)でセッションがあったはずなんですけどね。ここまで守備も攻撃も崩壊しているようでは、いくらシメオネ監督が「Trabajar más que nunca/トラバハモス・マス・ケ・ヌンカ(今までにない程、練習する)」と誓おうが、これはもう、1回チームを解体して、ゼロから構築していくぐらいでないと、体力的にもサッカー的にもお隣さんとタイトルを争えるようなレベルにはならないような気がしますが…今はとにかく残り6試合、何とか乗り切ってくれることを祈るしかありません。 そしてとうとう、密閉式ベルナベウの客席上部に釣り下がっていた360度大スクリーンも稼働して、その日も大勢のファンのお出迎えを受けたマドリーがバルサを迎えるクラシコが始まったんですが、何せ、アンチェロッティ監督のチームは水曜にマンチェスター・シティと120分の死闘を繰り広げたばかりですからね。カルバハルとメンディが疲労でルーカス・バスケスとカマビンガとローテーションすることになったんですが、開始早々の6分にはエティハド・スタジアムでのPK戦で2本止めて、英雄になったGKルーニンがしくじってしまったから、さあ大変! ええ、ラフィーニャの蹴ったCKをクリアしそこね、クリステンセンにヘッドで先制点を決められてしまったからですが、助かりました。18分にはルーカス・バスケスが敵エリア内右奥で17才のクバルシに足を引っかけられ、PKをゲット。ビニシウスが決めて、すぐ同点にしてくれることに。例のゴールラインを割ったかどうかで大騒ぎになった問題のプレーが発生したのは27分のことで、ギュンドガンの蹴ったCKを16才のジャマルがゴール左前から蹴り込んだんですが、ルーニンが掻き出した位置が微妙でねえ。主審が3分程、VAR通信にかかりきりになり、プレミアリーグから来たギュンドガンなど、彼の腕時計を指して、ゴールの知らせが入ってないか、確認するように頼んでいたものの…はい、ゴールラインテクノロジーはリーガにはありません。 最後はVARが完全にボールがラインを越えている映像はないと判断したため、バルサの得点にはならなかったんですが、彼らには前半ロスタイムにデ・ヨングの足がバルベルデの足と空中で当たり、再度の捻挫で担架退場になるという不幸も。まあ、そこはすぐにペドリが入り、チャビ監督は後半頭から、本職CB、その日はボランチだったクリステンセンもフェルミンに交代。更に18分には何と、エースのレバンドフスキとラフィーニャをジョアン・フェリックスとフェラン・トーレスに代え、勝ち越し点を探しに行ったところ、またジャマルがやってくれました。そう、3月にはスペインA代表親善試合でベルナベウデビューしていた彼だったんですが、うーん、左SBがカマビンガだったせいもあったんですかね。 誰よりもいい動きを見せていたその当人が24分、エリア内から撃ったシュートはルーニンが弾いたものの、こぼれ球をフェルミンに決められているんですから、困ったもんじゃないですか。といっても、マドリーの十八番は根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)ですからね。とりわけ、シティ戦では守ってばかりでフラストレーションも溜まっていたか、28分にはビニシウスが上げたクロスをエリア内に駆け込んできたルーカス・バスケスが撃ち込んで、再びスコアは2-2に。マドリーは引分けでも良かったため、ブラジル人前線コンビはこの後、交代したんですが、そこはどっこい、古参のルーカス・バスケスが残り5分にチームメートを鼓舞したそう。 「Vamos a por el gol, vamos a ganar/バモス・ア・ポル・エル・ゴル、バモス・ア・ガナール(ゴールを取りにいこう。勝つんだ)」という言葉を有言実行し、ロスタイム1分には自らラストパスをゴール前に送ると、ホセルがスルーしたボールをベリンガムが決めたとなれば、場内がどれ程、興奮の渦に包まれたのは言う必要もないかと。そのまま、試合は3-2で終わり、とうとうマドリーとバルサの差が勝ち点11となったため、ほぼリーガ優勝は確定したようなもんですが、そのせいもありますかね。試合後のバルサからはジャマルのゴールが認められなかったことに猛抗議が起きることに。 ええ、「Es una vergüenza para el fútbol/エス・ウナ・ベルグエサ・パラ・エル・フトボル(これはサッカーとして恥ずかしい)。確認するのにいいアングルの画像がなかったとか、他のリーグにはあるテクノロジーが儲けているリーガにないとか」(テア・シュテーゲン)というのはその通りかと。とはいえ、「Todo el mundo ha visto que ha entrado la pelota/トードー・エル・ムンド・ア・ビストー・ケ・ア・エントラードー・ラ・ペロータ(誰もがボールが入ったのを見た)。ウチの方がいいプレーをしたし、チャンスも多くて、守備も良くて、勝利に値するのはバルサだ」(チャビ監督)とまでくると、それはどうかと思うんですが、だってえ、ジャマルのゴールが認められても3-3の引分けですよお。勝ち点8差は変わらないため、やっぱり、バルサの逆転優勝は絶望的だったのでは? まあ、私としては延長戦の後でも疲れを見せず、代わって入ったルーカス・バスケスやモドリッチのような選手がしっかり貢献して、最後まで勝利を求める意欲を失わないマドリーにただただ、感嘆するばかりですが、そうそう、来週はバイエルン戦1stレグがあるため、この週末のリーガ日程が変更に。1日多く休めるよう、レアル・ソシエダvsマドリー戦が金曜午後9時(日本時間翌午前4時)に前倒しされたため、他のカードも幾つか日時が変わっているんですが、リーガ優勝が正式に決まるにはあと勝ち点7が必要なのだとか。最短あと3試合ということになりますが、クラブ的にはCL決勝進出を決めてから、落ち着いて祝いたいところでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.23 20:00 Tue

CL全滅は免れたけど…/原ゆみこのマドリッド

「差がありすぎて悲しいわ」そんな風に私が溜息をついていたのは水曜が終わる頃、道沿いのお店からはみ出して、そこら中でお祝いを続けている大勢のレアル・マドリーファンを避けながら、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)から家までの数ブロックを歩いていた時のことでした。いやあ、CL準々決勝2ndレグがあった今週は火曜水曜と続けて、バル観戦することになったんですけどね。火曜のドルトントvsアトレティコ戦ではキックオフ30分前に入って、余裕でTVが見やすいテーブル席をゲット。それが水曜のマンチェスター・シティvsマドリー戦では1時間近く前に行ったにも関わらず、すでに満席状態に。 奇跡的に1つだけ空いていたカウンター席を見つけ、立ち見するファンの隙間から、試合を追わないといけなかったのは、まあ、マドリーのCLビッグマッチでは恒例のことですからね。おまけに延長戦に突入し、120分中100分以上はシティに攻められっぱなしだったアンチェロッティ監督のチームが最後はPK戦で勝ったとなれば、店内がお祭り騒ぎになったのも当然ですが、え?アトレティコだって、16強対決のインテル戦2ndレグでは早いうちに2点ビハインドになりながら、グリーズマンとメンフィス・デパイのゴールで2-2に追いつくと、最後はGKオブラクが敵の2本弾いて、PK戦で突破していなかったかって? まあ、そうなんですが、あれは7万人近いアトレティコファンの応援に支えられ、当時はコパ・デル・レイ以外、1年以上無敗を保っていたメトロポリターノのマジックがあってこそでしたからね。一歩、ホームを離れれば、今回のような悲惨な結末になるのは十分、予測できたんですが、それがお隣さんときたら、マドリーファン3000人は駆けつけたものの、もちろん圧倒的に少数派。しかもここ6年間、昨季4-0で彼らが負けた準決勝2ndレグを含め、CL31試合無敗(2引分け)の難攻不落の要塞、エティハド・スタジアムで勝ってしまうとはやっぱり、”Reyes de Europa/レジェス・デ・エウロッパ(ヨーロッパの王者)”を自称するだけのことはある? そのリーガでも首位独走するマドリーが今季、公式戦42試合で唯一、負けたのがリーガ前半戦とコパ16強対決のアトレティコ戦だけというのはまさに皮肉なんですが、それもメトロポリターノでの話ですからね。しかも同じ水曜日、アーセナルにアリアンツ・アレナで1-0と勝ち、総合スコア3-2で準決勝に進出したバイエルンと当たる4月30日の1stレグはアウェイで、5月8日の2ndレグをサンティアゴ・ベルナベウでプレーできるとなれば、いよいよ、Decimoquinto(デシモキント/15回目のCL優勝)への秒読み態勢に入ったと言っていいかと思いますが…まあ、とりあえず、マドリッド勢の2試合がどんなだったか、お話ししていくことにしましょうか。 火曜のアトレティコは1週間前の1stレグで2-1勝利と1点リードして、ジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込んだんですが、開始2分にはいきなり大ピンチが到来。そう、敵陣でモラタがボールを失ったことがキッカケでドルトムントのカウンターを喰らい、エリア内からザビッツァーにシュートを撃たれた時には思わず、私も目を瞑ってしまったんですが、幸い、この時は出場停止のサムエル・リノの代わりに入っていたアスピリクエタがボールをカットしてくれて、事なきを得ることに。するとその2分後にはビッグチャスが巡って来て、こちらもカウンターで抜け出したモラタが敵陣を独走すると、GKコベルと1対1となったんですが、うーん、彼は今季、すでに1シーズンで決められるゴール数の上限に達してしまったんでしょうかね。vaselina(バセリーナ/ループシュート)を外してしまい、アトレティコがリードを2点に広げられなかったのは本当に痛かったかと。 実際、メトロポリターノでの遠慮がちな前半とは真逆で、時間が経つにつれ、Gelbe Wand(黄色の壁)に後押しされたドルトムントはアトレティコ陣内を跋扈するようになっていたんですが、他にも味方内に敵がいてはねえ。34分、直近のW杯王者の一員とはいえ、すでに今季の不調ぶりは言い尽くされているにも関わらず、シメオネ監督には同胞のアルゼンチン人枠があるのか、先発に入ったモリーナが自陣右サイド奥で回収したボールをフンメルスにパス。それが1stレグでも途中出場でゲームの流れを変えたブラントに繋がって、エリア内左から、シュートを決められてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。 ただこれだけなら、まだ総合スコア同点ですから、焦ることはなかったんですが、39分にも同じエリア内右から、マートセンに逆転の2点目を入れられてしまったから、さあ大変!ええ、モラタはあんな調子ですし、週末のジローナ戦で2ゴールを挙げたグリーズマンもやはり、ドルトムント戦1stレグから中2日、そのリーガ戦からまた中2日で迎えたこの試合では前半からもう疲れていたんでしょうか。パスミス連続で、デパイも負傷でいない今、一体、どうすれば、アトレティコが得点できるのかと頭を抱えたものでしたが…。 それが、シメオネ監督が後半頭から、モラタ、モリーナ、そしてイエローカードをもらっていたアスピリクエタをコレア、バリオス、リケルメに一斉交代したのが功を奏したんですよ。いえ、CKからエルモーソがヘッドしたボールをフンメルスがクリアしようとして、オウンゴールとなった時はまだ、ジローナ戦でのツキがまだ続いているのかと希望が持ったぐらいだったんですけどね。12分にはコケのラストパスをやはり、エリア内でGKと1対1になりながら、外していたコレアがモラタと対照的に19分、リケルメのシュートが弾かれたボールを1度は敵DFに当てながら、2度目のトライでゴールに入れて面目躍如。まさかまさかの総合スコア3-4に逆転返ししてしまったから、ビックリしたの何のって。 でもねえ、以前のアトレティコなら、これで後は守り倒して勝てていたはずなんですが、今季の彼らは「No supimos cuidar el resultado. No fuimos inteligentes/ノー・スピモス・クイダール・エル・レスルタードー。ノー・フイモス・インテリヘンテス(ボクらは結果をケアすることを知らず、賢くなかった)」(デ・パル)というのがデフォルトなんですよ。メトロポリターノのアトレティコ同様、この日はスタンドのファンが一体となった応援に力づけられたドルトムントは26分、ザビッツァーのクロスをフュルクルークがヘッドして同点ゴールをゲット。その3分後にもまた、エリア内に入ったロングパスをアトレティコのDFたちがクリアできずにいるのをいいことに、駆け込んできたザビッツァーがとうとう勝ち越し点を挙げてしまったとなれば、もうお先真っ暗ですって。 ええ、アトレティコのベンチにはFWがBチームのニーニョしかおらず、前線を強化する術がもうありませんでしたからね。おまけにジローナ戦である程度、ローテーションはしていたものの、さすが3連戦目となると、選手の消耗度が激しく、だってえ、彼らはスタメンの平均年齢が30.6才の高齢化チームなんですよ。当然、若いバリオスやリケルメもその先輩たちのスピードに合わせて動かないといけないため、とても再逆転するどころではなく…今季のアウィエイ弱者、黄色のユニアレルギーを再確認させる如く、4-2(総合スコア5-4)で敗退してしまいましたっけ。 いえまあ、CL8強の中で最弱と言われていたドルトムント相手にこんな調子じゃ、たとえ、勝ち抜けていたとて、明るい未来は望めなかったでしょうからね。ただ、シメオネ監督も「No tuvimos contundencia y de tenerla hubiéramos ganado 6-4/ノー・トゥビモス・コントウンデンシア・イ・デ・テネールラ・ウビエラモス・ガナードー・セイス・クアトロ(ウチには決定力がなかった。あれば、6-4で勝っていただろう)」と言っていたように、優勢だった1stレグでもリノが絶好機にシュートを止められて、3点目を挙げられず。この日のモラタ、コレアも信じられないチャンスをムダにしてしまっているだけに、この問題の根は深いかと。 ただ同日、やはり1stレグで1点差勝ちしていたバルサも、こちらはアラウホの早期退場などもあり、ホームでも先制しながら、1-4という大逆転敗退(総合スコア4-6)。おかげで2025年に始まるFIFAクラブW杯出場権が手に入ったため、アトレティコが世間から叩かれることはあまりなかったんですけどね。何せ、まだリーガは7試合あって、5位のアスレティックと勝ち点4差の彼らは死ぬ気で4位のCL出場権を守らないといけませんからね。うちホーム3試合、アウェイ4試合となると、全然、安心できませんが、とにかく、中4日となる日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのアラベス戦では少しでも内弁慶を返上してくれるといいのですが。 そして水曜のマドリーは1stレグで3-3の引分けとまったくイーブンの状態でマンチェスター・シティに挑んだんですが、いえ、前半12分にカルバハルのロングボールをベリンガムが受け、バルベルデ、ビニシウスと繋いで、最後はCLキラーのロドリゴが2度撃ちでGKエデルソンを破って先制点をゲット。その時はさすが得意の大会だけあって、仕事が早いと感心したものだったんですけどね。それ以降は防戦一方で、とにかく、あんなにも長く自陣エリア付近に閉じ込められているマドリーを見るのは私も初めてだったような。 その状態は後半になっても変わらず、いやあ、シュートもかなり撃たれていたんですけどね。それでも得点できないのに業を煮やしたグァルディオラ監督が27分にグリーリッシュに代えて、ドクを投入。31分にはそのドクがエリア内奥から出したパスをリュディガーが遠くにクリアできず、とうとうデ・ブルイネに同点ゴールを入れられてしまうことに。はい、もちろんこれは根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)スイッチオンの状況で、通常のマドリーならば、勝ち越しゴールを求めて、邁進するはずと思いきや、いやあ、どうなっているんですかね。この日は変わらず、シティに囲まれて専守防衛のままだったため、それこそ、バルに詰め掛けたマドリーファンたちは頭を掻きむしっていたんですが…。 結局、試合は1-1のまま延長戦に突入し、後でロドリなど、「Imagino que en sus planes estaba llegar a la tanda de penaltis/イマヒノ・ケ・エン・スス・プラネス・エスタバ・ジェガール・ア・ラ・タンダ・デ・ペナルティス(彼らのプランはPK戦に持ち込むことたったと思う)」と言っていたんですけどね。実際、アンチェロッティ監督も「Ganar aquí se podía hacer sólo de esta manera/ガナール・アキー・セ・ポディア・アセール・ソロ・デ・エスタ・マネラ(ここで勝つにはこの方法しかない)」と認めていたため、それは正しかったんですが、でもお、コパ準決勝、決勝をPK戦で片をつけようとしたマジョルカでなく、彼らはマドリーなんですよ。 それがシティに33本(うち枠内9本)もシュートを撃ちまくられ、CKも18回蹴られ、ポゼッションもたった33%という状態でPK戦入り。もちろん、「El Real Madrid es el único que puede ganar de esta manera con una ocasión y defendiendo/エル・レアル・マドリッド・エス・エル・ウニコ・ケ・プエデ・ガナール・デ・エスタ・マネラ・コンン・ウナ・オカシオン・イ・デフェンディエンドー(マドリーはたった1度のチャンス、あとは守るだけという方法で勝てる唯一のチーム)。上手く守ったけど、自陣エリアから出なかった」(ロドリ)というのも、ある意味、マドリーのメリットではありますけどね。 実際、アンチェロッティ監督の息子、ダビテ・アシスタントコーチが゛「Jude es lanzador, Lucas es un gran lanzador, Nacho es un jugador con mucha experiencia y personalidad y Antonio es un jugador con huevos/ジュード・エス・ランサドール、ルーカス・エス・グラン・ランサドール、ナチョ・エス・ウン・フガド-ル・コン・ムーチャ・エクスペリエンシア・イ・ペルソナリダッド・イ・アントニオ・エス・ウン・フガドール・コン・ウエボス(ベリンガムはキッカー、ルーカス・バスケスも偉大なキッカー、ナチョは経験豊富でパーソナリティのある選手で、リュディガーは根性がある選手だ)」という理由で選んだPK戦のキッカーは最初に蹴ったモドリッチ以外、皆、成功。 シティに詳しいGKケパ(チェルシーからレンタル)や代表仲間に関してのモドリッチのアドバイスもあって、GKルーニンが相手の第2キッカー、ベルナルド・シウバのPKを動かずにキャッチ、続くコバチッチも止めるというお手柄を挙げ、最後はPK戦3-4で勝ち抜けたとはいえ、ちょっとスッキリしなかったのはきっと、私だけではなかったかと。まあ、バルのマドリーファンたちは狂喜乱舞していたため、別にいいんでしょうけどね。ちなみに守りすぎでこむら返りを起こし、交代せざるを得なくなったカルバハルとビニシウスもケガはしていないことが翌日にはわかり、日曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのベルナベウでのクラシコ(伝統の一戦)には出場可能だそう。 ここでCL準々決勝敗退で尾羽打ち枯らしたバルサを叩いて、一気にリーガ優勝をほぼ確実にしてしまえば、バイエルンとの準決勝にも心置きなく挑めるというものですが、そうそう、今週末はマドリッドの弟分2チームもホームゲーム。土曜にはラージョがエスタディオ・バジェカスにオサスナを迎えるんですが、折しも相手は月曜に0-1で負けたバレンシア戦でPKに失敗し、戦犯となったエースのブドミルが肋骨を3本骨折で今季絶望に。となれば、ゴール日照りに悩むイニゴ・ペレス監督のチームには1-0でもいいから、是非とも白星を挙げて、勝ち点40の残留ラインに少しでも近づいてほしいところかと。 一方、前節、そのラージョとの弟分ダービーでスコアレスドローに終わったヘタフェは日曜にレアル・ソシエダをコリセウムに迎えるんですが、こちらは勝ち点40まであと1つですからね。それだけでなく、同じ勝ち点で1つ下の11位にいるオサスナのアラサーテ監督は8差のコンフェレンスリーグ出場圏到達を諦めてしまったようですが、ボルダラス監督のチームはもうちょっと野心を持ってくれることを期待。ええ、直近のホームゲーム、セビージャ戦での差別的野次のせいで、一度はスタンドの一部閉鎖を命じられた処分も上訴委員会が撤回してくれましたからね。今季はもう、残り試合も少ないですし、相手がEL出場圏の6位であっても、決して臆することないプレーをファンの前で見せられたらいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.19 20:00 Fri

もっとCLが続いてほしい…/原ゆみこのマドリッド

「いきなりクライマックスが来ちゃった」そんな風に私が武者震いをしていたのは月曜日、午前中にマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習を済まし、午後にはバラハス空港から旅立つアトレティコの選手たちの写真をXで見た時のことでした。いやあ、1カ月近くかけて、トロトロやっていたCL16強対決と違い、準々決勝、準決勝になると、2週間で決着がつく短期決戦になるのはわかっていたんですけどね。それが昨季など、何をトチ狂ったか、シメオネ監督のチームはグループリーグで最下位敗退して、年明けからヨーロッパの大会とは完全に無縁に。 よって、レアル・マドリーだけを追っていれば良かったため、あまりせわしい思いをした記憶はなかったんですが、今季は両者共に準々決勝まで残っていますからね。しかもホームとアウェイの順番が一致して、先週は火水の連夜、1stレグを見にサンティアゴ・ベルナベウ、メトロポリターノに足を運んだかと思いきや、今週は2晩続けて、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のお世話になることに。しかもどちらも1stレグで大差をつけられず、アトレティコはドルトムントに2-1勝利、マドリーはマンチェスター・シティと3-3の引分けと、これって、延長戦突入の長丁場になることを覚悟しないといけない? それでも揃って勝ち抜けてくれれば、4月の末から5月の第2週にかけて開催される準決勝ではホーム、アウェイの順番が分かれてくれるんですが、え?最悪の場合、パリで2-3とPSGに勝ったバルサも含め、スペイン勢全てがこのラウンドで消える可能性もあるんじゃないかって?うーん、一応、3チーム共、先週末のリーガで勝利して、流れは悪くないんですが、リーグ1の試合が延期されてプレーしていないPSGはともかく、ドルトムントも土曜にはメンヘングラッドバッハにザビッツァーの2得点で1-2と勝利。 メトロポリターノで2ndレグに希望を繋ぐゴールを挙げたハラーがその試合で負傷し、出られないのは助かりますが、かの「Gelbe Wand(黄色い壁)」立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクには4000人駆けつけるとはいえ、所詮、アトレティコファンは少数派というのは怖いかと。それ以上に大変そうなのは、実力的にガップリ五分に見えたシティにエティハド・スタジアムで勝たないといけないマドリーで、何せ、グアルディオラ監督のチームは先週末のプレミアリーグでルートンに5-1と大勝。リバプールとアーセナルが負けたことも相まって、とうとう単独首位に。マドリッドでは食中毒で試合に出られなかったデ・ブルイネも完全復帰しているため、それこそリーガ首位独走チームのお手並み拝見といったところでしょうが、ホント、どうなることやら。 まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにすると、金曜の私は久々にブタルケを訪問。ずっと2部の首位で頑張っているレガネスを応援するためだったんですが、それがちょっと目を離しているうちにファンが物凄く盛り上がっていてねえ。相手が2位のエスパニョールで、しかも4年前、冬の市場が閉じた後、契約解除金を支払ったバルサに特例移籍。アギーレ監督(現マジョルカ)の残留達成計画を狂わせて、2部降格の一因になったブライトワイテが初めて古巣訪問するというのもあったんでしょうか。 2部時代では最多記録となる1万2573人の観客でブタルケは超満員となり、1部の試合でも見たことない程の熱気だったんですが、残念なことに気合がから滑りしちゃいましたかね。レガネスはゴールを挙げられず、ここ3試合連続となるスコアレスドローで終わってしまうことに。いえまあ、それでもエイバル、エスパニョール、バジャドリーと同じ勝ち点で2位から4位につける後続とは勝ち点4差あるため、首位の座は安泰なんですけどね。まだ残り7試合もあるため、ボルハ・ヒメネス監督も今一度、手綱を引き締めて、白星基調を取り戻さないと、シーズン前はただの夢だった1部再昇格が決まるのも6月2日の最終節近くまでかかってしまうかもしれませんが、こればっかりはねえ。 そして土曜は1部のマドリッド勢が揃ってプレーしたんですが、先陣を切ったのは午後2時から、メトロポリターノにジローナを迎えたアトレティコ。何せ、コパ・デル・レイ決勝で1週間以上空いた後、一転、過密日程に入り、CLドルトムント戦1stレグとこの試合、そして2ndレグも中2日でこなさないといけない彼らでしたからね。シメオネ監督も中8日空いても70分ぐらいまでしか体力が持たない選手たちに配慮して、その日は6人も先発を変えていたんですが、久々のデーゲームでしかも、いきなり気温が夏モード入りというのが影響したんでしょうか。 だってえ、開始4分にはサビーニョの独走を許し、エレーラ、コウトとパスを繋がれ、ゴール左前にいたドブビクに易々と先制点を決められているんですよ。相手は勝ち点7差あるとはいえ、1つ上の3位で、4位から3位に上がってもあまり大差はないとはいえ、アトレティコには5位アスレティックを引き離して、CL出場圏を死守するという使命がありますからね。その後もしばらく、ジローナに主導権を握られていたため、20分にはシメオネ監督がシステムを4-4-2から、5-3-2に戻すなど、懸命に立て直しを図ったところ…。 いやあ、ドルトムント戦でもそうでしたが、今はアトレティコにはツキがあるんですよ。水曜も彼らの2得点は相手の守備ミスのおかげだったんですが、この日は34分、グリーズマンが蹴ったFKをエルモーソがヘッドしたところ、まさかミゲール・グティエレスが手を伸ばしてクリアしてくれるとは!有難くもらったPKをグリーズマンが決め、12月以来となるリーガゴールで同点にしてくれたんですが、40分にはサウールが足首を打撲して、急遽、モラタと交代するというアクシデントも。 するとそれが更に幸運を呼んで、いえ、モラタのゴール乾季が終わった訳じゃないんですけどね。前半ロスタイム6分には彼がラインを越えそうになっていたボールを救い、そこからゴール前に上げたクロスをコレアが敵DF2人の間でヘッドして、勝ち越しゴールを奪っているんですから、ビックリしたの何のって。え、でもそれもロスタイムが始まってすぐ、レイニウドがエリア内でサビーニョを倒しながら、主審もVAR(ビデオ審判)もお目こぼししてくれたからだろうって? まあ、確かにミチェル監督も後で「論理的でないのは、せめてチェックするようにVARが介入しなかったことだ。主審がエリア外だったかもとか、勝手に転んだだけかもとか、迷うのはわかるが、es una patada, es penalti/エス・ウナ・パタダ、エス・ペナルティ(あれは蹴られた。ペナルティだ)」と怒っていたんですけどね。その辺もアトレティコがラッキーだったということでしょうが、2-1で迎えた後半頭から、シメオネ監督はヒザの靭帯断裂から復帰して以来、ペナルティ癖がついてしまったレイニウドをビッツェルに交代することに。 そのおかげもあって、後半はほとんど守備でピンチを迎えることのなかったアトレティコですが、ええ、5分にはデ・パウルのクロスをソリスがエリア内でクリアミスし、こぼれ球を拾ったグリーズマンが3点目を入れてくれましたしね。ちなみにこのゴールの後、当人がデ・パウルと一緒に踊っていたのは、「Mi hijo Amaro quería un baile y se lo mandé a De Paul para hacerlo para Amaro/ミ・イホ・アマロ・ケリア・ウン・バイレ・イ・セ・ロ・マンデ・ア・デ・パウル・パラ・アセールロ・パラ・アマロ(ボクの息子、アマロが踊りを見たがっていて、デ・パウルにアマロのためにやるように命じたんだ)」(グリーズマン)ということだったよう。 それにはシメオネ監督も「Lo vi más suelto, más el, lo necesitamos así/ロ・ビ・マス・スエルトー・、マス・エル、ロ・ネセシタモス・アシー(ずっと伸び伸びしているように見える。彼らしくね。そういう彼が必要なんだ)」と目を細めていましたしね。2点差となった後は安心して、25分にはグリーズマン、リケルメをジョレンテ、サムエル・リノに、30分にはデ・パウルをアスピリクエタに代え、主力選手に疲れが溜まらないよう、またはベンチでお尻が痛くならようにプレー時間を配分できたのも、ドイツでの決戦を前に朗報だったかと。 結局、ジローナはドブビクの頼りになるウクライナ人仲間、ツィガンコフが負傷でおらず、交代で入ったポルトゥやストゥアーニも体調が完璧でなかったこともあって、アトレティコはそのまま3-1で勝利。直近のリーガホームゲームでバルサに負けて、1年以上ぶりに途切れてしまったメトロポリターノ不敗神話を再スタートすることになったんですが、とにかく火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのドルトムント戦まで、あまり時間がありませんからね。とりあえず、2回セッションをしただけで、チームは現地に向かったんですが、今回のお留守番は出場停止のリノと全治3、4週間のケガを負ったメンフィス・デパイ、そしてアキレス腱断裂からの復帰最終段階にあるレマルの3人。今回は引分けでもOKと油断することなく、同日同時刻にプレーするバルサvsPSG戦の勝者と当たる準決勝に進んでくれたらいいんですが…。 そして土曜は次の時間帯がラージョvsヘタフェの弟分ダービーだったんですが、さすがにアトレティコを途中で見捨てて、移動することはできなかったため、私はエスタディオ・バジェカスには行かず、試合の終盤をバルのTVで観戦することに。それがまた、ヨーロッパの大会と無縁な両者は2週間、じっくり調整できたにも関わらず、どちらもゴール日照りを克服することができなかったんですよ。スコアレスドローでそれぞれ、勝ち点1を上積みというのは一応、ラージョは降格圏との差が7に広がったため、レガネスと交代で2部降格という憂き目は回避できそうなんですけどね。 ヘタフェも残留確定ラインの40まであと1つと迫ったため、決して悪くはないんですが、10位の彼らが、せっかくアスレティックのコパ優勝で7位に下りてきたコンフェレンスリーグ出場権を掴むのはかなり遠い夢になってしまったかと。まあ、ボルハ・マジョラルが今季絶望になってから、CF不在となり、ボランチのマクシモビッチが前線に投入されているぐらいですから、ある意味、仕方ないんですけどね。せめて週末日曜にレアル・ソシエダを迎える試合ではマタなり、グリーンウッドなりが力を振り絞って、コリセウムのファンを喜ばせてあげられるといいのですが、それは続けてホームゲームでオサスナ戦を土曜に迎えるラージョも同じかと。 一方、そのまま私がバルに居座って、キックオフを待ったマジョルカvsマドリー戦では、もちろんアンチェロッティ監督もマンチェスター・シティ戦を考えて、大量5人のスタメンをローテーション。それでもコパ決勝でPK戦まで粘ったチームを称えるべく、ソン・モイシュはマジョルカファンで満員御礼となり、開始9分にはそのアスレティック戦で出番がなかったアブドン・プラッツの仮面をスタンドのファンが掲げて、労をねぎらったなんてことも。ただ、プレーのリズムはどちらも低調で、前半など、ライージョのヘッドをGKルーニンがparadon(パラドン/スーパーセーブ)したり、ベリンガムのシュートがゴールバーに弾かれたぐらいで終わってしまったのはガッカリでしたが、でも後半早々、見せ場が来たんですよ。 そう、3分にチュアメニがエリア外から放った一撃がモルラネスに当たって軌道が変わり、GKライコビッチが一歩も動けないまま、ネットを揺らしているんですから、ホント、マドリーはFW以外も恐ろしい。当人も「Sé que puedo chutar, lo trabajamos mucho en el entrenamiento/セ・ケ・プエド・チュタール、ロ・トラバハモス・ムーチョ・エン・エル・エントレナミエント(自分がシュートできるのは知っているし、練習で沢山取り組んでいる)」と言っていたんですけどね。世の中にはいくら撃っても入らないMFも多いため、やっぱりこれは才能あってこそ? ただ、マドリーもそれ以上は点が入らず、いえ、26分にはバルベルデのシュートがナスタシッチにゴールライン前でクリアされるなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も20分頃にはベリンガム、ブライムをビニシウス、カマビンガに、続いてモドリッチをカルバハルに代え、ヒザの靭帯断裂からの復帰でまだ慣らし運転中のミリトンにもロスタイムの4分を与えるなど、粛々とプレー時間を調整。ダルデルのvolea(ボレア/ボレーシュート)もルーニンに弾かれてしまったマジョルカはコソボ人エースのムリキ、途中出場のアブドン・プラッツも火を吹くことはなく、そのまま試合は0-1で終了したんですが、おかげでマドリーが勝ち点8差を保ったまま、日曜にバルサをサンティアゴ・ベルナベウに迎えられることになったのは良かったかと。 実際、リーガの次節はクラシコ(伝統の一戦)で、ここで勝てば、ほぼマドリーの優勝も決まりとなるんですが、何せ、今はどちらのチームもCL準々決勝2ndレグで頭がいっぱいですからね。それこそ、バルサは火曜のPSG戦で、マドリーは水曜午後9時からのマンチェスター・シティ戦で勝ち上がれるかどうかで、選手たちの士気も変わってくるはずですが、果たして結果は如何に。ちなみにチュアメニが出場停止でエティハドでプレーできないマドリーはCBスタメンがリュディガーとナチョになるようですが、昨季のように4点取られても、今度は決して撃ち負けない根性を見せてくることを期待しています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.16 20:30 Tue

まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド

「長い1週間になりそうね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL準々決勝1stレグ4試合の結果が入った決勝までのトーナメント表を眺めていた時のことでした。いやあ、火曜にプレーしたレアル・マドリーvsマンチェスター・シティ、アーセナルvsバイエルンがどちらも引分けに終わった時はまだ、今はもうアウェイゴールルールもないため、2ndレグの一発勝負になったなぐらいの気分だったんですけどね。水曜のアトレティコvsドルトムント、PSGvsバルサの方はどちらもスペイン勢が1点差で勝利という微妙なもので、それでもチャビ監督のチームは2ndレグを今季はカンプ・ノウ建て替えで、仮宿のモンジュイックとはいえ、ホームで戦えるんですよお。 翻って、アトレティコはかの「Gelbe Wand(黄色い壁)」が立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込まないといけず、ええ、今季の彼らのアウェイ弱者ぶりはつとに有名で、更に苦手の黄色ユニのチーム相手となると、いえ、先日、全身黄色でプレーして、とうとう1年以上続いたメトロポリターノのリーガ不敗神話を終わらせたバルサに倣ったんでしょうか。黒のアウェイユニでなく、一番黄色味が強いカップ戦用ユニで挑んだドルトムントとの1stレグではかろうじて、勝つことはできたんですけどね。一応、リーガ前節のビジャレアル戦でもアウェイ&黄色ユニというダブルジンクスを破っているとはいえ、1点なんて、何の弾みで引っくり返されるかわからないじゃないですか。 うーん、それでもシメオネ監督は「CL準々決勝の4試合を見れば、estamos contentos, es muy difícil ganar/エスタモス・コンテントス、エス・ムイ・デフィシル・ガナール(勝つのはとても難しいから、満足している)」と言っていたんですけどね。すでにビジター用チケット4000枚は完売。決して安くはない飛行機代を払って、現地まで2ndレグの応援に行くアトレティコファンの勇気にはただただ、敬服するしかないかと。 まあ、そんなことはともかく、まずは火曜のビッグマッチ、3500人のイギリス人ファンがサンティアゴ・ベルナベウに駆けつけたマンチェスター・シティ戦1stレグから、どんなだったか、お伝えしていくことにすると。さすがにこの高みまで来ると、勝負は2ndレグまでつかなくても、いても立ってもいられなくなるのか、スタジアム周辺は午後7時頃から、チームバスのお出迎えをする何千人もののファンで凄いことに。でもねえ、せっかくメトロポリターノでのドルトムントの記者会見と練習見学から直行し、チームの到着時間前に現地にいた私だったものの、バスが入って来るゲートに通じるパドレ・ダミアン通りが封鎖されていることを知らなかったのが致命的でした。 結局、レアル・マドリーTVの中継を見てお茶を濁すしかなかったんですが、まあ、激混みの中、bengala(ベンガラ/発煙筒)などの火も見えましたしね。煙いのと怖いのを我慢するよりは良かったかと。その頃にはすでに発表されていたマドリーのスタメンには意外性がなく、驚かされたのはスタジアムに入ってから知ったシティの方で、ええ、デ・ブルイネが先発じゃなかったんですよ。後でグァルディオラ監督は「ホテルでのミーティングではスタメンだったが、ロッカールームに着いたら、プレーできないと言ってきた。Tenía vómitos y se ha encontrado muy mal/テニア・ボミトス・イ・セ・ア・エンコントラードー・ムイ・マル(嘔吐して、とても気分が悪いようだった)」と説明していたんですが、もしや、その代理として出場したコバチッチは古巣のピッチが踏めて嬉しかった? それにしたって、CL用の大幕とスタンド全面モザイク、更に屋根を閉じているせいで一層、ファンの歌声やpito(ピト/ブーイング)の音響効果が高まった新装ベルナベウの雰囲気に酔っていたのが、ホームチームの方だったとは。そう、開始45秒にシティのカウンターに泡を喰らい、その日、CBに抜擢されたチュアメニが駆け上がるグリーリッシュにタックル。早々にイエローカードをもらい、しかも累積警告で2ndレグに出られなくなってしまったのは、後でアンチェロッティ監督が悩めばいいことですが、まさか、ベルナルド・シウバの蹴ったFKをGKルーニンが逃し、2分には先制点を取られてしまうとは一体、どういうこと? でも大丈夫。マドリー相手にリードするには時間の工夫が必要っていうのはとりわけ、お隣さんなどはよく知っているんですが、そう、彼らのDNAに刷り込まれたremontada(レモンターダ/逆転劇)根性が発動してしまいますからね。案の定、12分には長いポゼッションの後、カルバハルからパスを受けたカマビンガがエリア外からシュート。これがルーベン・ルイスに当たってオウンゴールとなり、あっという間に同点に。更にその2分後にはビニシウスが自陣から放ったロングボールをロドリゴが受け、エリア内から撃ったところ、アカンジに当たったせいでトロトロになりながら、ゴールに入ったから、ビックリしたの何のって。 いやあ、これには直近のアスレティック戦でビニシウスが出場停止となり、代理で左サイドを務めたロドリゴが2ゴールと活躍したため、逆にビニシウスの方をセンター寄りに、ロドリゴを左サイドに置いたアンチェロッティ監督の作戦のおかげもあるんですけどね。一応、この速攻逆転でマドリーも落ち着いたか、前半は2-1のままで終わったんですが、そこは相手も昨季のCL王者。後半が始まって、ボールポゼッションが増えてきたシティは21分、マドリーが「Nos descansamos un poco, dejamos de presionar por cansancio/ノス・デスカンサモス・ウン・ポコ、デハモス・デ・プレシオナル・ポル・カンサンシオ(ウチはちょっと休んじゃって、疲れから、プレスをかけるのを止めた)」(バルベルデ)ところを狙い、フォーデンがエリア前から、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、2-2にしたんですよ。 その5分後にも今度はグバルディオルがやはり、エリア前からのシュートを決めて、2-3の逆転返しをされてしまったとなれば、アンチェロッティ監督が慌てて、モドリッチとブライムを投入したのも当然だったかと。実際、その交代は的を得ていて、ええ、34分にはモドリッチのパスから、ビニシウスがクロスを挙げ、バルベルデのvolea(ボレア/ボレーシュート)で3-3に追いつくことができましたからね。これがもし、2ndレグで準決勝進出が決まるのであれば、絶対、マドリーはあと1点取っていたはずと私は確信しているんですが、生憎、この日は1stレグ。 どちらにしろ、来週水曜にはエティハド・スタジアムで再戦となるため、マドリーもレモンターダ根性を振り絞らず、最後は3-3で分けたんですが、え?「El empate parece como el del año pasado, como si fuera una derrota/エル・エンパテ・パレセ・コモ・エル・デル・アーニョ・パサードー、コモ・シ・フエラ・ウナ・デロータ(去年みたいな引分けだから、負けたようなもんだ)」とバルベルデは嘆いていなかったかって?まあ、確かに昨季は準決勝1stレグをベルナベウで1-1、2ndレグではシティに4-0の大敗を喰らって敗退した記憶はまだ新しいですからね。ただ、アンチェロッティ監督は試合前、「Jugamos sin coraje y sin personalidad/フガモス・シン・コラヘ・イ・シン・ペルソナリダッド(勇気もパーソナリティも持たずにプレーした)」とその敗因を解明していたため、同じ轍を踏むことはないのでは? ええ、この日も昨季のベルナベウでの対戦同様、ハーランドに1本しかシュートを撃たせなかったリュディガーを2ndレグで控えにするなんて、もう絶対にやらないでしょうしね。ただ、不気味なのは試合後、ベルナベウのピッチの芝の状態が絨毯のようではなかったという、今季はまだ誰からも言われていない文句を言って、注目を浴びていたグァルディオラ監督が交代枠をまったく使わず、90分を終わらせそうだったこと。いえ、最後はフォーデンがふくらはぎにこむら返しを起こし、フリアン・アルバレスを入れる破目になったんですけどね。これって、もしや2ndレグに備えて、手を隠していたのかも。 何にせよ、エティハドではデ・ブルイネも出て来るでしょうし、また競ったいい勝負が見られるんじゃないかと思いますが、その前にマドリーは土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からマジョルカ戦に挑むことに。まあ現在、2位のバルサと勝ち点8差がある彼らですから、シティ戦2ndレグの後にはクラシコ(伝統の一戦)が来るとはいえ、ローテーションする可能性もありますけどね。どうやら体力も超一流のここの選手たちは逆に中3日ぐらいの方が調子を維持できるよう。コパ・デル・レイ決勝でアスレティックに負け、落ち込んでいたアギーレ監督のチームもあれから1週間経つだけに完全に切り替えて、リーガの1部残留達成一本に絞っているため、この狭間試合はちょっと苦労するかもしれませんね。 そして翌水曜、お隣さんに負けじと、メトロポリターノに繋がる沿道をぎっしり埋めたファンのお出迎えを受け、赤白青のモザイクでスタンドが彩られた中、アトレティコもドルトムント戦をスタートさせたんですが、助かりました。何せ、メトロポリターノは密閉仕様じゃありませんからね。あそこまでヒートアップしたファンの歌声をドーム型スタジアムで聞かされた日には、耳の鼓膜が持ちませんって。3、4000人と言われたドルトムントファンもかなり応援の声量が高く、しかもそれが前半早々、4分にはGKコベルからボールを受けたマートセンが大ポカ。横に出したボールをデ・パウルに奪われ、そのシュートで先制されながらもちっとも衰えないって、やっぱりジグナル・イドゥナ・パルクは地獄になる? といってもメトロポリターノでは絶対的にアトレティコファンの方が多かったため、ドルトムントの選手たちもプレッシャーを感じていたんでしょう。さすがに中8日あっただけあって、この日は積極的にプレスをかけていったシメオネ監督のチームは32分にも敵のミスを利用。ええ、モリーナのスローインをDFが中途半端に弾き、それを拾ったモラタがグリーズマンへ。そのアシストでサムエル・リノが2点目を決めてくれたとなれば、当人もその5分前にイエローカードをもらい、2ndレグが出場停止になった懺悔は済ませたと思った? でも2-0で始まった後半、アトレティコはモラタ、グリーズマン、モリーナもシュートを決められず、追加点が取れなくてねえ。ハーフタイムにテジッチ監督が「メンタル的に落ち着くように」と選手たちにアドバイスしたドルトムントはエンメチャがブラントに代わったのも良かったようで、だんだんボールを持つようになったんですが、ホント、後悔先に立たずの典型だったのは30分。グリーズマンの蹴ったFKをゴール前からシュートしたリノがGKコベルに弾かれていなければ、3点差となり、2ndレグで逆転される悪夢から、かなり遠ざかれたはずだったんですが…。 それどころか、「Mantener el nivel de lo que se hizo 70 minutos es muy difícil/マンテネール・エル・ニベル・デ・ロ・ケ・セ・イソ・セテンタ・ミヌートス・エス・ムイ・デフィシル(70分間やってきたこことのレベルをずっと維持するのはとても難しい)」とシメオネ監督も言っていたように、アトレティコがガス切れしていた36分、とうとうブラントが入れたパスから、フルクルクから代わっていたFWアラーに1点を返されてしまったから、さあ大変!実際、その後もバイノー=ギデンスやブラントのシュートがゴールバーに当たり、かろうじて同点を免れるというシーンもありましたからね。試合は2-1で終わり、もちろん、「Hemos ganado, que es lo importante/エモス・ガナードー、ケ・エス・ロ・インポルタンテ(ボクらは勝った。それが大事なこと)」(グリーズマン)というのは正論ですが、こんな僅差では…。 何せ、珍しく長い間、元気だったメンフィス・デパイが先週土曜の練習でまた筋肉を痛め、全治3、4週間となってしまったため、今のアトレティコにはCFがこのところ、ゴール乾季に入ったモラタしかいませんからね。うっかりドルトムントに追いつかれ、点を取らないといけなくなった時、誰を頼りにしていいのかもわからない有り様なんですが、それは土曜午後2時(日本時間午後9時)のジローナ戦も同じこと。ただ、勝ち点2差の5位アスレティックは先週末からずっと、コパ優勝祝い漬けで、木曜にガバラ(ビルバオの運河を航行する運搬船)で水上パレード、その後もパスで市内パレードと延々と続いていたのはともかく、その前日にも街中に選手たちが現れて、ファンとゲリラ祝勝イベントまでしていましたからね。 おそらく日曜のビジャレアル戦では勝てないんじゃないかと思いますが、アトレティコも相手が勝ち点差が7差ある3位と手ごわいため、負傷から復帰したばかりのヒメネスや試合後、また足首に氷を巻いていたグリーズマンらに休養を与える訳にいかないのが辛いところ。合法的に休めるのは出場停止となるバリオスだけですが、結局、中8日あっても選手たちのスタミナが持続するのは70分までとわかってしまった今、あとはシメオネ監督が途中交代などでコマメに調整するしかないかと。 そしてヨーロッパの大会もなく、コパ決勝のせいで2週間試合がなかったヘタフェとラージョは土曜にエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーとなるんですが、すでに残留確定見込みラインまであと勝ち点2で、当面の目標がなかったボルダラス監督のチームには朗報が。というのもコパでEL出場圏にいるアスレティックが優勝したため、コンフェレンスリーグ出場権がリーガ7位に与えられることになったからで、現在、バレンシアが占めるそこまでなら、勝ち点6差。まあ、11位のヘタフェが到達するには4チームも抜かさないといけないので、難行ではありますが、高みを目指すにこしたことはありませんからね。16位のラージョの方はあと2、3勝しないと、残留確定とならないんですが、今は降格圏と勝ち点差5あるため、イニゴ・ペレス監督もこのparon(パロン/リーガの停止期間)は落ち着いて練習できたんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.12 20:30 Fri

この決勝は他人事だったけど…/原ゆみこのマドリッド

「これは教訓になるわね」そんな風に私が気を引き締めていたのは日曜日、コパ・デル・レイ決勝が午前1時近くにようやく終わった時のことでした。いやあ、アトレティコが準決勝2ndレグでボコボコにやられ、決勝がアスレティックvsマジョルカというカードになったため、わざわざセビージャのカルトゥーハまで見に行く理由もなし。おまけにTVE(スペイン国営放送)の中継があり、自宅でTV観戦できたため、別に決着がつくのが翌日にもつれ込んだことはそれ程、気にならなかったんですけどね。 午後10時に始まった試合が何故にそんなに長引いたかと言えば、もちろん、マジョルカが2匹目のドジョウを狙い、ひたすらPK戦突入を目指して、延長戦を戦っていたからなんですが、残念ながら、準決勝レアル・ソシエダ戦と同じ結末にはならず。そう、レアル・アレナでの2ndレグのPK戦同様、第1キッカーにムリキ、それからモルラン、マスカレルはベンチ待機だったため、ラドンジッチの順番を繰り上げたところ、コソボ人エースこそ、この日もしっかりPKを成功させたものの、モルランがGKアギレサバラに止められてしまったのが誤算でしたかねえ。 それで動揺したか、ラドンジッチも大きく撃ち上げてしまっては。ソシエダ戦で相手の第1キッカーだったオジャルサバルを弾き、試合中にもブライス・メンデスのPKを防いでいたため、一躍、parapenarti(パラペナルティ/PK止め屋)として脚光を浴びていた、マジョルカのGKグレイフがアスレティックのキッカーには歯が立たなかったのも災難で、ええ、ラウール・ガルシア、ムニアイン、ベスガ、ベレンゲルと全て、ゴールになってしまいましたしね。おかげで4人目のアントニオ・サンチェスは決めたものの、結局、アギーレ監督のチームは4-2で負けてしまったんですが、これを我が身としてほしいのはアトレティコ。 というのも今週はまだ1stレグですが、2ndレグとの間が1週間しかないCL準々決勝ドルトムント戦が来るからで、ええ、16強対決のインテル戦2ndレグにPK戦で勝ったせいで、過信されても困りますからね。あの時だって、メンフィス・デパイ、リケルメ、コレアは成功したものの、2番目に蹴ったサウールはGKゾマーに止められてしまい、GKオブラクがアレクシス・サンチェスとクラーセンを連続セーブという奇跡があってこその勝利だったとなれば、準々決勝2ndの後の週末にはリーガもありますし、余分な延長戦で体力を消耗することなく、いい結果を出してもらいたいものですが…。 まあ、そんなことはともかく、ようやく各国代表戦週間が明けたリーガを再びparon(パロン/停止期間)に追いやって、大々的に開催されたコパ決勝がどんな試合だったか、一応、お話ししておくと。いやもう、これがアスレティックとマジョルカのファンが大盛り上がりで、うーん、カルトゥーハには5万人ぐらいしか、入らないんですけどね。それがチケットを買えなかったファンまでが大移動して、試合当日にはセビージャに10万人のアスレティック勢、地中海を渡らないと来られないマジョルカ勢も2万5000人程、集結していたんですが、更にはサン・マメスでのパブリックビューイングも5万人の満員御礼だったなんてと聞くと、彼らのコパへの思い入れがわかるってもの? 試合の方はクラブが警告を出したのが功を奏して、ええ、これまでバスク地方に本拠を置くアスレティックがファイナリストになる度、場内がスペイン国歌へのpito(ピト/ブーイング)の嵐になり、パルコ(貴賓席)に主賓として座るスペイン国王フェリペ6世に決まりの悪い思いをさせていたんですけどね。ようやくそれがなくなったのは良かったんですが、開始24秒でニコ・ウィリアムスが撃ったシュートが外れながら、何と先手を取ったのはマジョルカだったから、ビックリしたの何のって。 それは前半21分、CKからの攻撃でサム・コスタが頭で流したボールはゴール前左から、ジオ・ゴンサレスのシュートはプラドスに当たり、コペテの撃ち直しもアギレサバラに弾かれてしまったんですけどね。こぼれ球をキャプテンのライージョがダニ・ロドリゲスに繋いだところ、3度目の正直で入るとはまさに執念の賜物。いやあ、アスレティックも38分にはジュリとの連携でニコがゴールを決めたんですけどね。こちらはオフサイドだったため、試合は0-1で折り返すことに。 バルベルデ監督がプラドスをベルガに代えた後半は、逆に19秒にラリンが撃って、アギレサバラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という形で始まったんですが、コパ優勝最多31回のバルサに続く、24回で2位につけながら、ここ40年間、上積みできず。そのアスレティックが悔しさをバネにして、同点に追いついたのはすぐのことでした。5分には、リーガ前節のレアル・マドリー戦を筋肉痛でお休みしていたニコがダニ・ロドリゲスからボールを奪い、サンセットにラストパスを送ると、そのシュートでゴールが入ったんですが、何せ、その先はまったくスコアが動かなくってねえ。 アギーレ監督もアスレティックの攻撃陣を抑える方を優先したか、16分にはもうラリンを引っ込め、中盤を増やしたのはいいんですが、延長戦に入っても今季のコパで最多6得点を挙げているアブドン・プラッツを入れなかったのは何故?同様に延長戦から、イニャキ・ウィリアムス、サンセット、グルセタを引っ込め、ラウール・ガルシア、ムニアインらベテランとベレンゲルを入れたアスレティックも最後まで、やはり6得点しているビジャリブレを入れなかったとはいえ、これはやっぱり、PK戦の成功体験がマジョルカは忘れられなかった? 実際、ぶっつけ本番だったソシエダ戦と違い、「Esta vez incluso habíamos ensayado los penaltis/エスタ・ベス・インクルソ・アビアモス・エンサジャードー・ロス・ペナルティス(今回はPK戦の練習までした)」(アギーレ監督)そうですしね。結果はバルベルデ監督も「Llevábamos tiempo preparándolo y sobre todo he elegido a los que han entrado de refresco/ジェバモス・ティエンポー・プレパランドロ・イ・ソブレ・トードー・エ・エレヒードー・ア・ロス・ケ・アン・エントラードー・デ・レフレスコ(ウチはしばらくの間、準備していて、とにかくPKキッカーにはリフレッシュで入った選手を選んだ)」と言っていたように、アトレティコとの準決勝1stレグでもメトロポリターノから、希少な白星を持ち帰るPKを決めたベレンゲルが4人目として、アスレティック優勝の殊勲者に。 それでもビジャリブレはピッチでのお祝いで、2021年のスペイン・スーパーカップ優勝時にも披露した、趣味のトランペットでカンティコを演奏するという晴れ舞台があったんですけどね。アブドン・プラッツなど、マルカ(スポーツ紙)の決勝前インタビュー企画に乗せられて、趣味の陶芸でコパトロフィーを作り、今でもマジョルカの教室で焼かれるのを待っているというのに、こうなるとあの作品、一体、どうしたらいいんでしょう。 え、これまで4度もコパ決勝をプレーしながら、1度も勝てなかったムニアインがとうとう、31才で悲願のトロフィーを掲げた後、カルトゥーハで遅い時間まで祝っていたアスレティックはその夜、セビージャに宿泊。翌日、ビルバオに戻って早速、伝説のガバラ(市内の運河を航行する木材運搬船)で水上パレードしたのかって?いやあ、それがコパでは控えGKだったウナイ・シモンも「Ha costado 40 años. Existe. La Gabarra existe. A ver si ahora flota/ア・コスタードー・クアレンタ・アーニョス。エクシステ。ラ・ガバラ・エクシクテ。ア・ベル・シー・アホラ・フロタ(40年かかった。あるよ、ガバラはある。今も浮かぶかどうか見てみよう)」と言っていたんですけどね。 やはりオープンデッキバスでの普通の市内パレードとは違い、運河は交通規制が複雑らしくて、ガバラはすでに大金を投じて整備され、乾ドックで待機しているものの、木曜まで出航できないのだとか。まあ、その際には街を挙げてのお祭りになるはずですが、ガバラと並走するボートや小型船に乗るにはかなりの値段がつけられているため、ファンの大半は河岸から、見学することになるよう。ただこの遅いお祝いはアトレティコにとっては渡りに船で、ええ、リーガ前節で4位をアスレティックから奪還したとはいえ、勝ち点差はたったの2ですからね。 その2日後にビジャレアルを迎えるサン・マメスでの一戦もお祭り気分が覚めていないはずなので、土曜のメトロポリターノでのジローナ戦で一気に5差にして、そのままシーズン最後までCL出場圏を守ってもらいたいものですが、まあそれは先の話。試合のなかった先週、彼らは水曜と日曜を練習休みにして、木曜夕方にはゲリラ的にシメオネ監督時代前期の大功労者、ゴディンを称えるペーニャ(ファンクラブ)主催のイベントをスタジアムの講堂で当人、現役選手やスタッフも大勢参加で開催していたりしたんですが、とにかく今のアトレティコはCLドルトムント戦に全集中なんですよ。 ええ、直近のビジャレアル戦ではようやく苦手のアウェイで勝利、おまけに天敵の黄色いユニのチームを破ったにも関わらず、本格的に練習を再開した木曜には、シメオネ監督がマハダオンダ(マドリッド近郊)グラウンドでセッションを一時停止して、選手たちにとうとう、「サッカーは歩いてないで、走らないといけない」という訓示をしたらしいですしね。その通り、ラ・セラミカでのようにたらたらプレーしていたら、ブンデスリーガの上位チームには絶対、敵わないことを彼らに自覚してもらいたいのはファン共通の願いかと。 おかげでクラブのメディアへのインタビューでは、グリーズマンなども「Ellos están muy bien, vienen de ganar al Bayern y hay que estar atentos a cualquier detalle/エジョス・エスタン・ムイ・ビエン、ビエネン・デ・ガナール・アル・バイエルン・イ・アイ・ケ・エスタル・アテントス・ア・クアルキエル・デタジェ(彼らはとてもいい状態で、バイエルンに勝ったばかり。だから、どんなディテールにも注意しないと)」と慎重になっていたんですが、大丈夫。バイエルンに0-2で勝った後、折しも土曜のシュツットガルト戦でドルトムントは0-1と負け、CL出場権争いをしているライプツィヒを抜くことができませんでしたしね。インテル戦の前も悲観視されながら、何とか勝ち抜けたアトレティコだけに可能性は決してゼロではありませんが、何にしても水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からの1stレグでよっぽどの大勝をしない限り、私が安心できることはないような気がします。 そしてアトレティコ同様、中8日で火曜午後9時にマンチェスター・シティをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるマドリーも休養日を交えながら、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でずっと準備をしていたんですが、こちらはもっと日程的に有利なんですよ。というのもシティはミッドウィークにアストン・ビラ戦をこなした後、土曜にもクリスタル・パレス戦と、ずっとハードスケジュールが続いているからですが、それが2試合共、4得点勝利しているとなれば、決して侮れませんって。 実際、昨季のCL準決勝でも1stレグがホーム開催となったマドリーはベルナベウで1-1と引分けた後、エティハド・スタジアムでの2ndレグで4-0と大敗。よって、こちらもアトレティコ同様、初戦で余裕の勝利を挙げておかないと、いくら根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がお家芸の彼らとはいえ、アウェイでは辛いものがありますからね。ただ去年、シティにやられまくってしまったのには事情もあって、マドリーは2ndレグの直前、コパ決勝のオサスナ戦で優勝したものの、中日が少なかったのが致命的だったよう。 それだけに今回、グァルディオラ監督に文句を言われる筋合いはないんですけどね。この準々決勝には休養十分で挑める上、前節のアスレティック戦では昨夏にヒザの靭帯断裂をしたミリトンも復帰して、現在、負傷欠場者はクルトワとアラバだけ。となると、逆にアンチェロッティ監督も起用したい選手が多すぎて、スタメン選びに困っているんじゃないかと思いますが…何はともあれ、マドリッドで2日連続CLの試合が見られるのは嬉しいですよね。 そしてこの2週間、丸々空いてしまったヘタフェとラージョがエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーに挑むのは週末土曜とまだかなり先なんですが、直近のセビージャ戦でコリセウムのファンの差別的野次を告発されたヘタフェには競技委員会から、厳しい処分が。ええ、アルゼンチン人のアクーニャが「mono(モノ/サ猿)」と侮辱された件で2万7000ユーロ(約450万円)の罰金と、そのファンがいた区画を3試合に渡って閉鎖しないといけなくなったんですが、すでに犯人は発見済み。クラブは元凶のアボナードー(年間チケット所有者)を追放処分にするようですが、実際、その罰金を当人に付け替えることができれば、一番お灸をすえられるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.08 22:40 Mon
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly