ブラジル戦で思い出したこと/六川亨の日本サッカー見聞録
2022.06.05 22:55 Sun
さてブラジル戦である。W杯南米予選は8位で敗退したパラグアイは、正直物足りない相手だった。ここはやはり、「サッカー王国」との対戦で日本の現在地が測れるというものだろう。
その前に、日本は意外ではあるがブラジルと数多く対戦している。ご存じのように過去のW杯優勝国は南米ならウルグアイ、アルゼンチン、ヨーロッパではイタリア、ドイツ(西ドイツ時代を含む)、イングランド、フランス、スペインの8チームに限られる。
この8カ国のうち、南米のアルゼンチンには2010年のキリンチャレンジカップで岡崎慎司の決勝点により初勝利を奪っている。さらにウルグアイとは2018年のキリンチャレンジカップで南野拓実の2ゴールや大迫勇也、堂安律のゴールから4-3で勝利した。
ヨーロッパ勢に目を向けると日韓W杯の前年に柳沢敦の鮮やかなボレーからイタリアとは1-1で引き分け、イングランドとは2004年にマンチェスターで対戦して小野伸二の同点ゴールで1-1と引き分けている。さらにフランスとなると2012年にサンドニで対戦し、試合終盤の香川真司のゴールで1-0の勝利を収めた。
カタールW杯で対戦するドイツとは2006年のドイツW杯直前の試合で高原直泰の連続ゴールで2-0とリードしながらクローゼとシュバインシュタイガーにゴールを許し、惜しくも引き分けた。そしてスペインとは2001年にコルドバで初対戦し、このときは0-1で敗れている。
日本が初めてブラジルと対戦したのは、Jリーグが誕生する前の1989年のこと。横山謙三監督率いる日本は、翌年のイタリアW杯予選は1次リーグであっけなく敗退した。92年のバルセロナ五輪の出場を目ざすのか、それとも94年のアメリカW杯に目標を切り替えるのか。そのどちらにも明確な答えを出せず、まさに日本サッカー“暗黒の時代"だった。
それでも強化のために南米遠征を実施し、アルゼンチンではエストゥディアンテスやボカ・ジュニアーズ、インデペンディエンテと対戦(1分け2敗)。その後はブラジルに移動し、コリチーバやパルメイラスと対戦したが、なんとそこでブラジルとの初マッチメイクも実現した。
この試合を取材したメディアは、現地に在住する日本人カメラマンだけだったと思う。試合にはまだブラジルでプレーしていた三浦知良も日本の応援に駆けつけた。
日本の主力は若手の井原正巳や、長谷川健太、水沼貴史といったところ。対するブラジルはベベート、ロマーリオ、カレッカ、ブランコ、ドゥンガ、アウダイール、マウロ・ガルボン、GKタファレルとほぼベストの布陣だ。
試合は後半から出場したビスマルクの決勝点で1-0と勝ったものの、ハーフタイムに8人が交代する、ブラジルにとっては練習試合のようなもの。それでもビスマルクだけでなく後半から出場した選手にはジョジマール、アレモン、シーラスら翌年のイタリアW杯に出場するメンバーもいたのだから、やはり錚錚たる顔ぶれだった。ちなみに監督はジーコの兄のエドゥが務めた。
この一戦後、日本は親善試合で7試合、コンフェデレーションズカップで3試合、そしてドイツW杯のグループリーグで1試合の計12試合ブラジルと対戦しているが、01年のコンフェデ杯(0-0)と05年のコンフェデ杯(2-2)で引き分けたのが最高の成績だ。
直近では2017年にヴァイッド・ハリルホジッチ監督の自宅に近いリールで対戦したものの、ネイマール、マルセロ、ジェズスのゴールで1-3と完敗している。当時の試合に出ていて今回も日本代表に招集されているのはGK川島永嗣、DF長友佑都、吉田麻也、MF遠藤航、原口元気、FW浅野拓磨の6人だが、果たして6日のブラジル戦ではどんな成長曲線を見せてくれるのか。
そろそろブラジルからも初勝利を奪って欲しいと期待している6日の試合でもある。
【文・六川亨】
その前に、日本は意外ではあるがブラジルと数多く対戦している。ご存じのように過去のW杯優勝国は南米ならウルグアイ、アルゼンチン、ヨーロッパではイタリア、ドイツ(西ドイツ時代を含む)、イングランド、フランス、スペインの8チームに限られる。
ヨーロッパ勢に目を向けると日韓W杯の前年に柳沢敦の鮮やかなボレーからイタリアとは1-1で引き分け、イングランドとは2004年にマンチェスターで対戦して小野伸二の同点ゴールで1-1と引き分けている。さらにフランスとなると2012年にサンドニで対戦し、試合終盤の香川真司のゴールで1-0の勝利を収めた。
カタールW杯で対戦するドイツとは2006年のドイツW杯直前の試合で高原直泰の連続ゴールで2-0とリードしながらクローゼとシュバインシュタイガーにゴールを許し、惜しくも引き分けた。そしてスペインとは2001年にコルドバで初対戦し、このときは0-1で敗れている。
こうして振り返ると、W杯優勝国とは負け越しているとはいえ、そこそこの勝負を演じてきたことがわかる。ところが、ことブラジルに関しては0勝2分け10敗とまったく歯が立たない。
日本が初めてブラジルと対戦したのは、Jリーグが誕生する前の1989年のこと。横山謙三監督率いる日本は、翌年のイタリアW杯予選は1次リーグであっけなく敗退した。92年のバルセロナ五輪の出場を目ざすのか、それとも94年のアメリカW杯に目標を切り替えるのか。そのどちらにも明確な答えを出せず、まさに日本サッカー“暗黒の時代"だった。
それでも強化のために南米遠征を実施し、アルゼンチンではエストゥディアンテスやボカ・ジュニアーズ、インデペンディエンテと対戦(1分け2敗)。その後はブラジルに移動し、コリチーバやパルメイラスと対戦したが、なんとそこでブラジルとの初マッチメイクも実現した。
この試合を取材したメディアは、現地に在住する日本人カメラマンだけだったと思う。試合にはまだブラジルでプレーしていた三浦知良も日本の応援に駆けつけた。
日本の主力は若手の井原正巳や、長谷川健太、水沼貴史といったところ。対するブラジルはベベート、ロマーリオ、カレッカ、ブランコ、ドゥンガ、アウダイール、マウロ・ガルボン、GKタファレルとほぼベストの布陣だ。
試合は後半から出場したビスマルクの決勝点で1-0と勝ったものの、ハーフタイムに8人が交代する、ブラジルにとっては練習試合のようなもの。それでもビスマルクだけでなく後半から出場した選手にはジョジマール、アレモン、シーラスら翌年のイタリアW杯に出場するメンバーもいたのだから、やはり錚錚たる顔ぶれだった。ちなみに監督はジーコの兄のエドゥが務めた。
この一戦後、日本は親善試合で7試合、コンフェデレーションズカップで3試合、そしてドイツW杯のグループリーグで1試合の計12試合ブラジルと対戦しているが、01年のコンフェデ杯(0-0)と05年のコンフェデ杯(2-2)で引き分けたのが最高の成績だ。
直近では2017年にヴァイッド・ハリルホジッチ監督の自宅に近いリールで対戦したものの、ネイマール、マルセロ、ジェズスのゴールで1-3と完敗している。当時の試合に出ていて今回も日本代表に招集されているのはGK川島永嗣、DF長友佑都、吉田麻也、MF遠藤航、原口元気、FW浅野拓磨の6人だが、果たして6日のブラジル戦ではどんな成長曲線を見せてくれるのか。
そろそろブラジルからも初勝利を奪って欲しいと期待している6日の試合でもある。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
|
関連ニュース