いよいよ最後の山場が始まる…/原ゆみこのマドリッド

2022.04.01 19:00 Fri
©︎RFEF
「しばらくは代表戦ともお別れね」そんな風に私が寂しく思っていたのは木曜日、2022年W杯グループリーグ抽選がもう金曜にはドーハで行われると知った時のことでした。いやあ、昨年中に本大会出場を決めていたスペイン代表は今回、お気楽な親善2試合をプレーしただけなんですけどね。それでも世間が盛り上がっているのはやはり、このアルバニア戦、アイスランド戦で連勝。しかも土壇場にダニ・オルモ(ライプツィヒ)のゴールで2-1とRCDEスタジアムで辛勝した後、13年ぶりに訪れたリアソル(RFEF1部/実質3部のデポルティーボのホーム)での試合ではgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露して、決定力不足の懸念を払拭してくれたせいだったかと。

ええ、ルイス・エンリケ監督も「no tenemos un delantero de 30 goles/ノー・テネモス・ウン・デランテーロ・デ・トレインタ・ゴーレス(ウチにはシーズン30得点するFWはいない)が、他の方法でゴールを奪えるから必要ない」と言っていましたからね。実際、2012年以来、国際メジャータイトルから遠ざかっているスペインとはいえ、昨年夏のユーロ2020では準決勝まで進み、PK戦でオルモとモラタ(ユベントス)が失敗して敗退。その秋にはミラノでのネーションズリーグ・ファイナルフォー準決勝でイタリアにリベンジを果たしたものの、決勝でフランスに負け、惜しくも準優勝という進歩を見せているため、次のW杯ではいよいよ優勝かなんて、淡い夢を抱いたりもするんですが、何にせよ、遥か先の11月の話となれば、今から取らぬ狸の皮算用をしても仕方ない?
とりあえず、先にそのアイスランド戦がどんな試合だったのか、お伝えしていくことにすると、先週土曜のアルバニア戦から、リピートしたスタメンはモラタだけ。RdT(ラウール・デ・トマス、エスパニョール)がラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での練習中に肩を負傷、離脱しなければ、おそらくCFもローテーションしていたかと思いますが、それが大当たりだったんですよ。そう、最初の試合では代表キャプテンとしてデビューしながら、クラブでもほとんど経験がなかったか、「El árbitro me enseñó la moneda y la quería coger/エル・アルビトロ・メ・エンセニョ・ラ・モネダ・イ・ラ・ケリア・コヘール(審判がコインを見せたから、取ろうと手を出しちゃった)」と、キックオフ前のコイントスでやらかしてしまったことを告白していた当人ですが、この日はジョルディ・アルバ(バルサ)がスタメンで入ったから大丈夫。

序盤はコケやマルコス・ジョレンテのアトレティココンビやカルロス・ロレス(バレンシア)、オルモらにシュート機会を譲っていた彼でしたが、いよいよ前半36分にはチャンスが巡ってくることに。昨年6月、ユーロ前の調整試合だったブタルケでのリトアニア戦でルイス・エンリケ監督のチームがブスケツ(バルサ)の陽性でコロナ隔離となったため、U21代表のメンバーがA代表を名乗ってプレーした時に仮デビューを果たしていたギジャモン(バレンシア)が、カンテラーノ(Bチーム出身の選手)の先輩に向けてスルーパス。ソレルはボールに触れず、エリア内で受けたモラタが敵DFをかわしてシュートを決め、先制点を挙げてくれたとなれば、やっぱり今のスペインのエースは彼で決まり?

続いて38分にはゴールに向かって突進したオルモがビャルナルソン(アダナ・デイルスポル)に倒されてもらったPKもモラタが決め、いやまあ、この時はスペシャリストのジェラール・モレノ(ビジャレアル)もオジャルサバル(レアル・ソシエダ)も招集されていなかったため、昨季のレアル・マドリー戦でPKハットトリックという偉業を達成しているソレルの方が、キッカーとして信頼できるんじゃないかと思った私でしたけどね。これでリードを2点に広げ、ハーフタイムに入ったスペインは後半になっても手を緩めません。
ええ、再開1分にはもう、ソレルのスルーパスをジョルディ・アルバが左サイドから上げ、その日、前線の右でプレーしていたジェレミー・ピノ(ビジャレアル)が、「Entre con todo, no se ni con que remate pero entro(エントレ・コン・トードー、ノー・セ・ニ・コン・ケ・レマテ・ペロ・エントロ(全力で突っ込んで、どこでシュートしたのかわからないけど入った))」という、ヘッドもどきで3点目をゲット。いやあ、19才の彼もペドリ(19才)、ガビ(17才)のバルサ勢に続く、代表のティーンエイジャー選手なんですけどね。最近のスペインは若手の台頭が著しいのも見ていて、楽しいかと。

そして13分にはモラタ、アルバ、オルモがフェラン・トーレス(バルサ)、マルコス・アロンソ(チェルシー)、サラビア(スポルティングCP)に交代、チームをリフレッシュしたところ、ベテランも負けていませんね。次は左SBの座を33才のアルバ、今回は負傷でいない26才のガヤ(バレンシア)と争っている31才のマルコス・アロンソがピッチに入ってすぐ上げたクロスを29才、身長174センチのサラビアがヘッドで決めて4点目。まあ、長身揃いのアイスランドDF陣もダメダメ状態時のアトレティコ化していると言いますか、かなり情けないんですが、このコンビは27分にもリピートします。今度はマルコス・アロンソのゴール前へのキラーパスをサラビアが押し込んで、はい、これでmanita(マニータ/5得点のこと)完成です(最終スコア5-0)。

もうこうなると、フェランもオルモもアルバニア戦でゴールを挙げていますし、モラタもセルヒオ・ラモス(PSG)とアルフレド・ディ・ステファノ(マドリーのレジェンド)を越えて、代表歴代7位の通算27得点としましたしね。ルイス・エンリケ監督もW杯用のFWメンバー候補が多すぎて、選ぶのに四苦八苦するのは確かかと。ただ、やはり今回の大会は夏ではなく、冬まで待たないといけないだけに、選手たちも今季の残りと来季序盤で好パフォーマンスを挙げることが、カタールに行くためには必須。その点、プレー時間を増やすため、PSGからレンタル移籍でポルトガルのクラブに移り、しっかりレギュラーになっているサラビアなど、賢くやっていると思いますが、彼がRMカスティージャから、弟分のヘタフェに修行に来た10年前を記憶している私にしてみれば、まったく光陰矢の如しですよ。

スペインのW杯優勝からも12年経つだけにそろそろまた、代表フィーバーで国内が沸いてくれたら嬉しいんですが、「El factor suerte es importante, como vimos en Sudáfrica/エル・ファクトール・スエルテ・エス・インポルタンテ、コモ・ビモス・エン・スダアフリカ(南アフリカで見たように、ツキのあるなしが大事)」というルイス・ガルシア監督の言葉も真実ですからね。ビッグな大会を制するにはやはり運も必要なんですが、まずは6月前半と9月のネーションズリーグ、ポルトガル、チェコ、スイスとの対戦で足慣らしをして、少なくとも万全の態勢で本大会に乗り込めるといいのですが。

え、それでもう、週末にはリーガの試合が戻って来るんだろうって?その通りでこの30節、マドリッド勢の初陣を切るのはヘタフェ。土曜の午後2時(日本時間午後9時)、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにマジョルカを迎えるんですが、どうやらダミアンと一緒にウルグアイ代表に行っていたオリベイラの体調が微妙なよう。前節のアスレティック戦で退場したクエンカとヤンクトも出場停止ですしね。その上、このparon(パロン/リーガの停止期間)中にはマタが肩を負傷、手術して今季絶望というショックなニュースもありましたが、残り9試合となれば、もう嘆いているヒマはないかと。

何せ、ここ6試合白星のない15位の彼らにとって、勝ち点差3で18位のマジョルカは残留争いの直接ライバルですからね。相手はルイス・ガルシア監督が解任され、新たに招聘されたアギーレ監督のデビュー戦となるんですが、この時期になっての指揮官交代には、日本代表でW杯出場権を勝ち取って、意気揚々と帰って来た久保建英選手もちょっと戸惑ったりする?今季、いまだにアウェイ勝利のないヘタフェだけに、マジョルカ、ビジャレルベティス、ラージョと残っているホーム4試合には全勝するぐらいの気構えでいってほしいものです。

そして土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からの時間帯には兄貴分、レアル・マドリーがセルタとのアウェイ戦となるんですが、代表戦週間があったおかげで、クラシコ(伝統の一戦)でバルサに0-4の大敗を喰らったことをほとんど、世間から忘れられてしまったのはラッキーだったかと。おまけにリハビリ中でフランス代表の親善試合を免除されたベンゼマとメンディもじっくり回復の時間が取れ、木曜にはチーム練習に合流できましたしね。ただ、彼らには来週水曜にチェルシーとのCL準々決勝1stレグが控えているため、リーガは2位のセビージャと勝ち点差9とまだ余裕ですし、2人がビゴ(スペイン北西部、セルタのホームタウン)遠征に参加するかはまだわかりません。

その他、急性胃腸炎を患っていたクロースは全快。南米代表組のビニシウスは累積警告で月曜に早帰り、カセミロ、ミリトン、ロドリゴらのブラジル勢同僚と、お隣さんのルイス・スアレス、ヒメネスと共にウルグアイ代表のW杯出場権獲得に尽力してきたバルベルデも無事、戻ったんですが、セルビア代表に行っていたヨビッチは足首を負傷、そしてお留守番組でもイスコが背筋痛でお休みの予定だとか。うーん、チームの最高年棒コンビはアザールが火曜に足首の補助プレートを除去する手術を受け、全治6週間になっちゃいましたからね。

W杯ヨーロッパ予選プレーオフ準決勝オーストリア戦で2ゴールと活躍、ウェールズを紛争中で6月まで延期となっているスコットランドvsウクライナ戦の勝者と決勝を戦うところまで導いたベイルも火曜の親善試合チェコ戦で、またどこかの痛みで10分程しかプレーせず。バルデベバス(バラハス空港の近く)での木曜の練習には出ていたため、回復しているようにも見えますが、彼の場合はまったく先が読めませんからね。それ以上に気になるのはアンチェロッティ監督がPCR検査陽性となり、ここ数日、自宅隔離していることですが、もうコロナに関しては陽性でも仕事に出てOKとなったスペイン。バライドスのベンチにマスク姿のイタリア人指揮官の姿があっても全然、構わないようですよ。

一方、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、ワンダ・メトロポリターノにアラベスを迎えるアトレティコは代表戦週間前からのリハビリ組、ヴァス、クーニャも鼻の気道を治すミニ手術をしたカラスコも今週はマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションに参加。欠場は前節ラージョ戦でレッドカードをもらって、2試合の処分を課されたコレア、累積警告となったコケだけかと思われたんですけどね。メキシコ代表から、やはり累積警告で早帰り、マドリッドでチームメートたちがエル・サルバドルに勝って、W杯出場権を勝ち取るのを応援していたエレーラが水曜にハムストリングを痛め、10日間離脱に。

来週火曜のCL準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグにも出られなくなってしまったのは残念ですが、リーガの相手はここ5試合白星のない降格圏19位のチームですからね。それに遅れを取るようでは、グアルディオラ監督率いるプレミアリーグ首位のチームを前に何ができる?その脇で朗報と言っていいのか、ポルトガル代表でトルコ戦、北マケドニア戦を勝ち抜き、何とか、グリーズマン(フランス)、コレア(アルゼンチン)、スアレス(ウルグアイ)、クーニャ(ブラジル)ら、同僚FWたちとW杯出場で肩を並べることができたジョアン・フェリックスは22分しか、プレーをせずにポルトから帰還。

おかげでケガもなく、疲労も溜まっていないのはアトレティコファンにとって、有難いんですが、当人は代表でのステータスがCL16強対決で敗退させたマンチェスター・ユナイテッドのクリスチアーノ・ロナウドはともかく、ブルーノ・フェルナンデスやこれから対決するベルナルド・シウバより低いのはちょっと不満かも。何はともあれ、ここ5連勝でようやく5位のベティスと勝ち点差4をつけたアトレティコですから、残り9試合でもしっかりゴールやアシストでチームに貢献。来季のCL出場権獲得に成功すれば、6月のネーションズリーグの頃には彼も代表でスタメン入りができるんじゃないでしょうか。

そして今回、1チームだけ日曜開催となったのはラージョでグラナダとのアウェイゲームなんですが、今年になって、リーガで急に勝てなくなった彼らはとうとう、白星なしが10試合まで積み重なりましたからね。せっかく北マケドニアでW杯プレーオフ決勝まで行ったGKディミトリエフスキも最後の壁が越えられず、負傷中のファルカオもマドリッドでコロンビアの予選敗退を嘆くことになったんですが、とにかくここは気持ちを切り替えて、早いところ、1部残留を確定してほしいもの。

グラナダも16位、降格圏とは勝ち点差2という、残留争い真っ只中のチームですしね。相変わらず、ゴール日照りは引きずっているイラオラ監督のチームではあるものの、新たにカーボベルデ国籍を取得して、代表デビューしたベベなど、親善2試合で2得点挙げてきたそうですし、今度こそ、流れを変える勝利を掴んでくれるんじゃないかと期待しています。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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代表戦の宴は終わった…/原ゆみこのマドリッド

「ようやくサンティアゴ・ベルナベウで公式戦が見られるんだ」そんな風に私が気分を切り替えていたのは木曜日、いよいよ佳境に入ったSemana Santa/セマーナ・サンタ(イースター週間)とは裏腹に、この週末から、ようやくparon(パロン/リーガの停止期間)明けとなる30節の予定を見ていた時のことでした。いやあ、普段の各国代表戦週間はTV観戦ばかりで、しかもスペイン代表の試合はTVE(スペイン国営放送)が中継してくれるため、あまり家から出ることもないんですけどね。それがこの3月はレアル・マドリーが先週土曜、コロナ禍とスタジアム改装工事で開催が見送られていたコラソン・クラシックマッチを5年ぶりに再開。 おかげでスタジアムに行けることになったとはいえ、要はマドリーとポルトのOB選手がプレーするチャリティイマッチですからね。カシージャス、ジダン、フィーゴ、ラウールといった、かつてのスター選手を見られたのは嬉しかったとはいえ、真剣勝負を期待すべくもなく、おまけにマドリーは0-1で負けてしまう始末。その欲求不満を解消すべく、再度、火曜にベルナベウでスペインvsブラジルの親善試合を観戦したんですが、詳細はまた後で話すとしても、結果は黒白つかずのドローとはいやはや。こうなると必然的に日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのアスレティック戦に期待するしかないんですが、ええ、相手は前節、アトレティコからCL出場圏の4位を奪ったチームですからね。 なるたけ早くリーガ優勝を決めたいお隣さんが塩を送ってくれるのを待つのも、ちょっと情けないんですが、何せ、そのブラジル戦ではアトレティコから1人参加のスペインのエース、モラタが相変わらず、スランプ継続中なのを再確認。リーガも残り9試合しかありませんし、この2カ月で彼が復調してくれないことには、この夏、ユーロ2024をプレーするデ・ラ・フエンテ監督のチームも困ってしまうはずなんですが、こればっかりはねえ。 まあ、そんなことはともかく、ユーロ用招集リストが出る前最後となるスペインの親善試合がどうだったかお伝えしていくことにすると、いやあ、マドリッドでやってくれるのは本当に有難いもの。というのも対戦相手も近場で練習してくれるからで、前日月曜にブラジルはベルナベウではなく、バルデベバス(バラハス空港の近く)にあるマドリー練習場で記者会見とセッションを実施。時間も午後3時30分からと都合が良かったため、低気圧ネルソンの接近で天候に不安はあったものの、私も久々に行ってみることに。 それがメトロのフェリア・デ・マドリッド駅から歩くこと30分、マドリーの練習見学に使うゲートに着いてみれば、警備員に入口は反対側のゲートと言われ、広大な敷地外縁に沿って、更に追加で30分歩く破目になるとは!ようやく辿り着いた頃はすでに会見の予定時刻を過ぎていたものの、私と同じ目に遭って、ただし大半は自家用車やタクシー、Uberなどでグルグル回ってから来た取材陣が入場の順番を待っている有り様。更にあるあるで、ブラジルのチームバス到着もかなり遅延したため、反人種主義をテーマにしたこの親善試合の主役、昨年から数々の被害に遭っているビニシウスが現れたのは午後4時過ぎだったかと。 その会見も練習場のプレスルームを満員にしたブラジル人記者たちの質問が途切れないわ、自らの受けた人種差別的な野次や行為に、「Cada vez me siento más triste, cada vez tengo menos voluntad de jugar/カーダ・ベス・メ・シエントー・マス・トリステ、カーダ・ベス・テンゴ・メノス・ボルンタッド・デ・フガール(その度により悲しく感じて、プレーする意志が減っていく)」というビニシウスが途中で泣いてしまうハプニングがあるわで、結構、長かったんですけどね。結局、エスタディオ・ディ・ステファノでの練習が始まったのは午後5時近くとなり、いえ、この夏のマドリー入団が決まっている17才のFW、エンドリッキ(パルメイラス)を遠目でも見られたのは収穫でしたよ。 おかげでセッション後に開かれたドリバウ・ジュニオール新監督の会見など、午後6時半ぐらいになっていましたが、さすがサッカーがお国の一大事であるブラジル。延々と先日、ウェンブリーでイングランドに0-1で勝った試合でのチームや選手についての質疑応答ばかりで、スペイン代表の選手をどう評価しているかは全然、わからず仕舞いに。まあ、所詮は親善試合ですから、別にいいんですが、昨年はアンチェロッティ監督が今年の夏から、ブラジル代表監督に就任すると散々、言われながら、12月にマドリーと契約を2年延長。そこで白羽の矢が当たったドリバウ監督の手腕たるや如何にと楽しみにして、火曜の夜、ベルナベウに向かったところ…。 先週金曜のコロンビア戦では実験的なメンバーを並べ、ロンドン・スタジアムで0-1と負けていたスペインだったものの、この日の試合でデ・ラ・フエンテ監督はユーロ用のAチームを披露したんですよ。いえ、まだコロナ禍だった2021年、前回のユーロため、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での合宿中にブスケツ(現インテル・マイアミ)が陽性となり、隔離されたため、急遽、U21をA代表に格上げして、ブタルケでリトアニアとプレーした親善試合に出場。おかげで代表1キャップを稼ぎながら、U21卒業後、A代表からお声が掛からず、今回、ガジャ(バレンシア)の負傷で追加招集された、元ヘタフェのククレジャ(チェルシー)は違うんですけどね。 ロンドンから戻ってすぐ、祖父が亡くなり、この3日間の練習に1度も参加しなかったロドリ(マンチェスター・シティ)がモラタから譲ってもらったキャプテンマークを着け、GKウナイ・シモン(アスレティック)、CBラポール(アル・ナスル)、ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)、そして右SBにビニシウスとロドリゴを一番良く知るカルバハル(マドリー)とベテランの多いスタメンだったんですが、早い時間から躍動したのは左右のウィングに入った若い2人。21才のニコ・ウィリアムス(アスレティック)と16才のジャマル(バルサ)が本家ブラジルも真っ青というばかりの個人技で切り込んで、敵ゴールを脅かしていたんですが…いや、でも12分、ジャマルがジョアン・ゴメス(ウォルバーハンプトン)にぶつかって倒れたのがペナルティって、甘すぎじゃない? 何せ、この試合にはVAR(ビデオ審判)がいませんでしたからね。ダニ・オルモ(ライプツィヒ)にキッカーを譲ってもらったロドリがPKを決めて、早くもスペインは先制したんですが、一転、36分にオルモがジャマルからスルーパスをもらい、敵DF2人かわして決めた2点目は完璧なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)と言っていいかと。昨年9月の代表戦で負傷し、しばらく招集が途切れていた当人も3月上旬にCL16強対決2ndレグでベルナベウを初訪問。マドリーに敗退してしまった試合のリベンジができたのは良かったんですが、いやあまさか、そのゴールの余韻も覚めやらぬ40分、GKウナイ・シモンがロドリからのバックパスを受け、何を思ったか、真正面のロドリゴにボールを送る大ポカを犯してしまうとは! いやあ、それまでは時折、カウンターが見られる程度のブラジルだったんですけどね。せっかくのプレゼントを利用しない訳はなく、ロドリゴのvaselina(バセリーナ/ループシュート)で1点を返されてしまったんですが、2-1で迎えた後半はドリバウ監督が選手4人交代の荒療治を決行。中でもラフィーニャ(バルサ)と代わったエンドリッキが最初からフルスロットルで、5分もしないうち、イングランド戦に続く、代表2ゴール目を挙げてしまったから、ビックリしたの何のって。それはCKからのプレーで、ラポールがヘッドクリアしたボールをvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込んだところ、ル・ノルマンに当たって、ネットに収まったんですが、いやあ。 来季から自分がプレーするスタジアムの観客にどでかい名刺を叩きつけてくれましたが、未来のマドリー前線トリオが続いたのは26分にビニシウスが下がるまで。もちろん、ファンから大きな拍手を浴びて、ドウグラス・ルイス(アストン・ビラ)と交代したんですが、それと対照的だったのはモラタ。ええ、大したことはしていなかったのは否定しませんが、36分にオジャルサバル(レアル・ソシエダ)と交代した際、スペイン代表を応援するファン主体のスタンドから、pito(ピト/ブーイング)を受けているんですから、たまったもんじゃありませんって。 うーん、元々、ベルナベウのファンは要求が高くて、マドリーの選手でもプレーがひどいとピーピーやられるのは珍しくない光景なんですけどね。モラタの場合、数年前、お膝元のメトロポリターノで代表親善試合があった時やセビージャのカルトゥーハでもブーイングされていたため、やはりどこか、ファンをイラッとさせるところがあるんじゃないかと。といっても、私は怒ってもブーイングはしませんが、これって、スペインのサッカー文化のようなものですからね。 人種差別的であろうとなかろうと、侮蔑的な野次やカンティコ同様、いくらデ・ラ・フエンテ監督が「Me duele en el alma que en mi país se pite a un jugador de la selección/メ・ドウェレ・エン・エル・アルマ・ケ・エン・ミ・パイス・セ・ピテ・ア・ウン・フガドール・デ・ラ・セレクシオン(私の国で人々が代表選手をブーイングするのは心が痛む)」と抗議しても、完全になくすのは不可能な気がしますが、さて。それでもモラタはチームメートから信頼されていて、ロドリも「Muy agradecido a Álvaro por el gesto, habla de la gran persona que es/ムイ・アグラデシードー・ア・アルバロ・ポル・エル・ヘストー、アブラ・デ・ラ・グラン・ペルソナ・ケ・エス(モラタの気遣いにはとても感謝している。素晴らしい人柄を示すものだ)」と褒めていたぐらい。 それだけに42分、カルバハルがベラウド(PSG)に倒されて、またしても何ちゃってPKを獲得。再びロドリがゴールを沈めて、スコアが3-2となった後、ジャマルがヘスス・ナバス(セビージャ)と交代した時、バルサの選手なのにスタンドから喝采を浴びているのを見たりすると、やっぱり人柄だけじゃ、サッカー選手はダメなんじゃないかと思ってしまったりもするんですが、いやあ。試合の方は親善ながら、ロスタイムが5分もあったのも珍しかったんですが、最後の最後で審判に辻褄を合わされてしまったから、さあ大変! そう、50分、カルバハルがエリア内で倒れた姿勢からガレノ(ポルト)のふくらはぎを手でつかんで転がして、今度は自分がブラジルにPKを献上しちゃったんですよ。パケタ(ウェストハム)がウナイ・シモンを破り、結局、3-3で終わったんですが、この時、ベンチから両チームの選手たちが出て来て、一悶着起きそうだったのはやっぱり、ビニシウスの口が原因だった?ちなみにこの引分けにデ・ラ・フエンテ監督は、「Salimos muy reforzados/サリモス・ムイ・レフォルサードー(ウチはとても力を与えられた)。このチームが遠くまで行けるという手応えを得たからね」と言っていたんですが、それはちょっと微妙なところ。 だってえ、スペインの2点はVARがあったら、おそらく認められていないだろうPKで、守備もまだまだ完璧ではありませんからね。しかも攻撃はジャマルとニコ・ウィリアムスの若輩者2人に頼りきりとなると、強豪ひしめくユーロでどうなるか、私はちょっと不安なんですが、まあ、大会用招集リストが出るのは5月末ですからね。それまでにもう、23人中20人は確定している言われるメンバーにも何が起きるかわかりませんし、今から考えていても仕方ないんですが、モラタの復活はアトレティコの命運を左右する重大案件。 何せ、フランス代表でネンザしたカマビンガも軽傷で済み、アスレティック戦には各国代表に行った14人全員が出場可能。ただしビニシウスは累積警告で出場停止というマドリーが、4月6日に迫ったコパ・デル・レイ決勝で頭がいっぱいになっている相手に勝利しても、月曜午後9時にラ・セラミカでビジャレアル戦となるシメオネ監督のチームが勝たないことには4位奪還ができませんからね。 週末3連休の後、火曜から練習を再開したチームには、足首完治のため、フランス代表を離脱してきたグリーズマンも合流し、ヒメネスも先発OKになったという朗報もあるんですが、アルゼンチン代表でアメリカツアーに行ったデ・パウルとモリーナは出場停止。おまけに今季は超苦手のアウェイ戦かつ、黄色のユニを着たチームに勝つというダブルジンクス破りをしないといけないとなると、まったく楽観的になれないのは私だけではない? そしてこの週末、マドリッドの弟分チームたちはまず、土曜にヘタフェが16位のセビージャをコリセウムに迎えるホームゲームなんですが、彼らは前節にジローナ戦に勝って、残留確定目安の勝ち点40にあと2と迫っていますからね。ここは一気に上がりとなってもらいたいところですが、ラージョの方は日曜にセルタとのアウェイ戦。各国代表戦前にイニゴ・ペレス新監督がベティス戦で初勝利を挙げ、一息ついたとはいえ、15位の彼らが来季も1部でプレーするためにはあと勝ち点11は欲しいところかと。17位の相手も今は降格圏から勝ち点5離れているんですが、とにかく残り試合もどんどん少なくなっていきますし、この先、リーガの最終パートはガチで削り合う対戦が増えていくんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.29 21:00 Fri

誰もゴールを入れてくれなかった…/原ゆみこのマドリッド

「火曜はもっと景気いい試合になるといいけど」そんな風に私が願っていたのは土曜日、お昼のサンティアゴ・ベルナベウでコラソン・クラシックマッチを見た後のことでした。いやあ、レアル・マドリーのOB選手がプレーする、このチャリティマッチが開かれるのも5年ぶり。2020年3月開催予定だったポルト戦がコロナ禍で中止となって以来、スタジアムの全面改装工事が佳境に入り、ずっとやっていなかったんですけどね。チケットも7ユーロ(約1200円)からと格安だったため、新しくなったベルナベウで、かつてのスター選手たちを見る絶好の機会と、観客7万人の大入りとなったんですが、まさかマドリーのゴールを1つも祝えないとは一体、誰が予想した? そう、前半9分には、マドリーからポルトに移り、心臓発作で一命を取り留めた後の2020年に引退。ようやくこのオマージュ試合を迎えることができたGKカシージャスがポルトOBのマレク・チェフに先制点を奪われ、その1点を最後まで返せなかったんですよ。0-1で負けて、過去10回あったコラソン・クラシックマッチ初のマドリー敗戦、しかも初の無得点試合となったのも意外でしたが、39分で交代し、後半27分から、今度はポルトのGKとして出場。そこへまだまだ、現役時代と相違ない体躯をしたバプチスタが狙ってきたりしたため、最悪、カシージャスが1人で2失点するよりは全然、良かった? ラウール、モリエンテス、ジダン、フィーゴ、ロベルト・カルロス、ソラリ、シードルフと往年のギャラクティコメンバーをスタメンに並べ、他にもアルベロア、グラネロ、パボン、最後は現クラブ渉外担当ディレクターのブトラゲーニョ氏までピッチに入って、お家芸の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を試みたマドリーでしたけどね。一番気の毒だったのはラウールで、30分までプレーした後、午後6時には指揮官を務めるRMカスティージャの試合があるため、エスタディオ・ディ・ステファノに直行。そちらでもカステジョンに0-2で負けるという、ダブルショックを受けることになりましたが、何はともあれ、懐かしい顔が見られて、ファンが喜んでいたのは良かったんじゃないでしょうか。 そしてこの各国代表戦週間、ベルナベウは火曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)にも親善試合を迎えるんですが、それがスペインvsブラジルという、とりわけマドリディスタにとっては屈指のカードなんですよ。というのもミリトンこそ、先週のバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習中に反対側のヒザの半月板を損傷し、paron(リーガの停止期間)後に復帰の予定が今季絶望に変わってしまったGKクルトワのような不幸がない限り、夏に負ったヒザの靭帯断裂からのリハビリ終了秒読み段階にいるため、ブラジル代表には参加していませんが、ビニシウスとロドリゴは土曜にあったウェンブリーでのイングランドとの親善試合に先発。 同僚のベリンガムと競い合ったばかりか、後半35分にはビニシウスのシュートがGKピックフォード(エバートン)に弾かれたところを押し込み、代表初ゴールをゲット。0-1の勝利をブラジルにもたらしたエンドリッキ(パルメイラス)もやって来ますからね。そう、彼は来季のマドリー入団が決まっている17才のFWで、当人もファンもベルナベウデビューを楽しみにしているんですが、果たして昨年12月にアンチェロッティ監督がマドリーとの契約を2026年まで延長し、完全にブラジル代表監督就任のオプションがなくなった後、拝命を受けたドリバウ・ジュニオール新監督のプランは如何に。 ただ、それを迎え撃つマドリー勢がカルハバルとホセルの2人だけというのは、昨今のスペイン代表におけるリーガの巨頭のプレゼンスの低下をまざまざと示しているんですが、ええ、ご存知の通り、ブライムは父方の祖父の故郷であるモロッコ代表を選び、金曜には1-0と勝ったアンゴラとの親善試合でデビューしちゃいましたからね。ナチョ、ルーカス・バスケス、フラン・ガルシアらにもユーロに行くチャンスはあるとはいえ、その前最後の3月の招集リストにデ・ラ・フエンテ監督は名前を加えなかったため、かなり難しいというのが現実。 となるとマドリー選手をヨーロッパ各国の代表戦で楽しむのはむしろ、土曜に同僚リュディガーの説得もあって、とうとう3年ぶりに復帰したクロースのアシストで開始7秒にビルツ(レバ-クーゼン)が先制点を挙げたドイツ、その対戦相手で最後は0-2で負けてしまったとはいえ、来季入団の可能性の高いエムバペ(PSG)に加え、チュアメニとカマビンガがプレーしたフランス。38才ながら、モドリッチが未だにチームを牽引しているクロアチア、マドリーではあまりプレーを見る機会のないギュレルのいるトルコ辺りの試合になるかと。そうそう、火曜には今季最後までマドリーの正GKを務めるルーニンがユーロ出場権を懸けて、アイスランドと対戦するウクライナのプレーオフ決勝もありましたっけ。 え、それで肝心のスペインの調子はどうなんだって?いやあ、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での合宿が始まって3日目、水曜にはルビアレス前会長時代、スペイン・スーパーカップの開催地を6年間、サウジアラビアにする契約やコパ・デル・レイ決勝スタジアムを4年間、カルトゥーハにするというアンダルシア州との契約に汚職や横領、マネーロンダリングの疑いがあるとして、協会本部に捜査当局のガサ入れが入るという、異常事態があったにも関わらず、同じ敷地内で普通に練習を続けていたチームは木曜にロンドンに移動。 翌金曜にコロンビアとロンドン・スタジアムで親善試合となったんですが、これがまったく期待外れだったんですよ。いえ、試合前、協会のXで初出のユーロ用第2ユニがロッカールームに吊るされているビデオを見た時は、ネックの後ろについている赤いカーネーションを含め、レモンイエローの色調があまりに可愛くて、明日にでも実物を見にショップに寄ろうと思ってしまったぐらいだったんですけどね。それがいざ、選手たちが着てピッチに出て来てみれば、脇から裾にかけて入っているグレーの部分とパンツまで続く赤いラインのせいで、亜流のウルトラマンみたいに見えてしまったのは残念だったかと。 そんなことはともかく、この日はデ・ラ・フエンテ監督もユーロ前に選手を試すいいチャンスと思ったか、先発に負傷のせいでなかなか、代表に戻って来られなかったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、そして久方ぶりとなるサラビア(ウォルバーハンプトン)を並べ、ホセルをトップに置く布陣でスタート。GKもレギュラーのウナイ・シモン(アスレティック)ではなく、先日はCL16強対決ポルト戦2ndレグのPK戦で活躍して、注目を浴びたダビド・ラジャ(アーセナル)がデビューしたんですが、それでも前半のうちは特に守備に問題はなく、上手くコロンビアを抑えていたんですけどね。 ただ、攻撃の方はミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)や、こちらは初招集で即デビューとなったビビアン(アスレティック)のヘッドが外れたり、グリマルド(レバークーゼン)の積極性が光ったりといったことはあったものの、ゴールを奪うには至らず。0-0のまま、後半が始まったところ、いやあ、3分のジェラール・モレノのvolea(ボレア/ボレーシュート)がGKバルガス(アトラス)にparadon(パラドン/スーパーセーブ)されていなければねえ。それみたことか、15分には後半から出場したハメス・ロドリゲス(サン・パウロ)から始まったプレーでルイス・ディアス(リバプール)に左サイドから切り込まれ、ビビアンが及ばなかったせいもあって、ラストパスがファーサイドへ。ペドロ・ポロ(トッテナム)の見守る前、ダビド・ムニョスのジャンピングボレーで叩き込まれては、交代出場していたGKレミロ(レアル・ソシエダ)だって、どうしようもありませんって。 先制されてしまったスペインは同点を目指して、即座にジェラール・モレノとオジャルサバルを下げ、モラタ(アトレティコ)とニコ・ウィリアムス(アスレティック)を投入。それでもラチが明かないとなると、27分にはサラビアから、ジャマル(バルサ)に代え、16才のFWにゴールを託したんですが…ダメでした。ええ、最後の6人目の交代枠など、アタッカーではなく、初招集の17才、CBクバルシ(バルサ)のデビューに使われていましたからね。そのまま、0-1で終わり、昨年のユーロ予選スコットランド戦以来となる2敗目を喫したデ・ラ・フエンテ監督は、「No ha faltado ambición ni ganas de competir/ノー・ア・ファルタードー・アンビシオン・ニ・ガナス・デ・コンペティル(ウチに野心や競う意欲が欠けていたということはない)」と言っていたものの、やっぱり公式戦じゃないというのが影響していたのかも。 そして翌土曜の午後2時にマドリッドに戻って来たチームは夕方から、サッカー協会施設のグラウンドで遅ればせながら、一般公開練習を実施。私も見に行ってみたところ、すでに世間はセマナ・サンタ(イースター週間)の休暇に入っているせいもあって、相変わらずの盛況でしたね。試合翌日ということで、長い時間プレーした選手はrondo(ロンド/輪の中の選手がボールを奪うゲーム)だけで終わり、他もpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)ぐらいで、大したことをした訳ではないんですが、この公開練習の一番の魅力はセッションが終わった後、選手全員がフェンス際まで来て、ファンサービスしてくれることかと。 それがふと気づくと、モラタとロドリゴ(マンチェスター・シティ)の姿が見えず、いえ、後者は家庭の事情で合宿を離れていたようなんですけどね。前者は胃腸の調子が悪かったそうで、うーん、もしやアトレティコの天敵、黄色のユニを着せられて、当たったなんてことある?まあ、日曜のセッションには普通に参加していたので、ブラジル戦ではしっかりスペインのエースを務めて、古巣の本拠地で郷愁に浸るのも悪くはないかと思いますが、さて。そういえば、まだトップチーム歴の浅いジャマルとクバルシはこれが初ベルナベウ体験で、4月21日にクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)を控えて、いい予行演習ができそうな。一応、この試合、デ・ラ・フエンテ監督は仮想Aチームを並べてくるはずなので、コロンビア戦よりはしゃきっとしたスペインが見られるはずですが、うっかり2連敗となった日にはユーロ悲観論が台頭してきそうですね。 そして最後にちょっとだけ、アトレティコの近況もお話ししておくと、この週末は土日月が休養日で、練習は火曜の夕方までないんですが、足首のネンザを完治させるべく、フランス代表を離脱してきたグリーズマンのリハビリは順調に進んでいるよう。同じく、CL16強対決インテル戦1stレグで太ももを負傷したヒメネスも金曜には部分的にチーム練習に参加して、2人共、今週中には完全に合流できる見込みなのだとか。 何せ、代表戦明けのリーガは4月1日(月)のビジャレアル戦と時間はたっぷりありますからね。その分、鬼門のアウェイ戦、しかも黄色ユニチームとの対戦まで、各国代表から帰って来る選手にも余裕があるのは有難いんですが、よくよくスケジュール帳を見てみると、その次の週末はアスレティックとマジョルカのコパ決勝があるため、リーガはお休みに。要はCL準々決勝ドルトムント戦1stレグまでも中8日あるため、疲れやすい今季のシメオネ監督のチームにとっては願ってもないんじゃないかと思いますが…その後はまた週2試合ペースに戻るため、ジグナル・イドゥナ・パルクで黄色のユニに挑むドルトムント戦2ndレグを含め、やっぱりリーガ4位奪還は厳しい戦いになりそうです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.25 21:00 Mon

ただでさえ、親善試合は力が入らないのに…/原ゆみこのマドリッド

「何か、いつもの代表戦週間と勝手が違うわね」そんな風に違和感を覚えていたのは木曜日、スペイン代表が久々の親善試合でコロンビアと対戦する前日のことでした。いやあ、招集された選手がラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会本部で合宿に入るのは昨年11月以来とあって、いつものように初日の一般公開練習を見に行くのを私も楽しみにしていたんですけどね。それが今回は公式戦でなかったせいか、選手たちは通常より遅い月曜夕方に集合。おまけにその日は6月15日のクロアチア戦を皮切りに、20日にはイタリア戦、24日にはアルバニア戦ともう、グループリーグの予定が決まっているユーロ2024に備え、彼らは夜までCM撮影などに駆り出され、一切練習しなかったんですよ。 翌日から、グラウンドでのセッションが始まったものの、火水木全てが完全非公開だった上、水曜にはサッカー協会本部が警察のガサ入れを受けるという異常事態が発生。その原因となったのは、ルビアレス氏がサッカー協会会長だった2019年、スペイン・スーパーカップをファイナルフォー形式にして、サウジアラビアで開催することを決定。その対価として6年間で2億4000万ユーロ(約400億円)受け取るという契約に汚職、横領、そして中国のビットコイン会社を通じたマネーロンダリングの疑いがあったせいなんですが、いえ、本部のあるビルが蜂の巣をつつくような騒ぎになっていたとて、それを取材するメディアが終日、柵の前に陣取っていたって、選手たちにはまったく影響はなかったんですけどね。 実際、水曜に定例記者会見に登場した、コロンビア戦での先発が見込まれているGKダビド・ラジャ(アーセナル)なども、「何なのかも知らない。Nos hemos levantados, hemos desayunado... y hemos entrenado con normalidad/ノス・エモス・レバンタードス、エモス・デサジュナードー…イ・エモス・エントレナードー・コン・ノルマリダッド(ボクはら起きて、朝ごはんを食べて、普通に練習した)」と言っていたんですが、まあ、そうでしょう。協会本部ビルはグラウンドを挟んだところにあるんですが、選手たちがもっぱら過ごすのは宿泊所やジムなどがある逆サイドの区画。何かイベントでもない限り、本部ビルに立ち入ることはないため、それこそ対岸の火事とはいえ、まったく。 そう、昨夏にスペイン女子がワールドカップに初優勝した時に表彰式でジェニ・エルモーソ(パチューカ)に同意のないキスしたのが大問題となり、その後、FIFAによる停職処分もあって、9月にはとうとう辞任をしたルビアレス前会長だったんですけどね。本当にロクなことをしてこなかったようで、今回の事件では協会の法律顧問など、すでに逮捕者が7人に。もちろん当人にも逮捕状が出ていて、彼が現在、ドミニカ共和国にいるため、身柄拘束できないようですが、せっかく代表選手たちの様子を知ろうとニュースを見ても、どこの局もこの汚職事件一辺倒では、迷惑極まれりですって。 何と言っても今回の代表戦はユーロ大会用招集リストが出る前の最後となるリハーサルですからね。それもこの金曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)から、ロンドン・スタジアムでキックオフとなるコロンビア戦、そして来週火曜にサンティアゴ・ベルナベウでホセル、カルバハルらがレアル・マドリーの同僚、ビニシウス、ロドリゴ、そしてこの夏の入団が決まっているエンドリック(パルメイラス)らと対決するブラジルとの親善試合のためには26人招集されているものの、ドイツの本大会に行けるのはたったの23人。よって現在、選手たちも代表内でしのぎを削っている状態なんですよ。 一応、今回の新顔を挙げておくと、合宿前日はメトロポリターノで0-3とアトレティコを零封するのに貢献した17才のCBクバルシ(バルサ)、ダビド・ガルシア(オサスナ)が負傷中で抜擢されたCBビビアン(アスレティック)、そして先週末のリーガ戦でガヤ(バレンシア)がケガしたため、急遽、イギリスから呼ばれた、ヘタフェファンには懐かしい左SBククレジャ(チェルシー)の3人。それ以外にも出戻り組として、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ジェラール・モレノ、アレックス・バエナ(ビジャレアル)、サラビア(ウォルバーハンプトン)、パブロ・ポロ(トッテナム)らがいるんですが、それより何より、リーガの2巨頭からはマドリーが前述の2人だけ、バルサもあとは16才のジャマルだけとは、いやはや時代も変わったもの。 いえ、バルサに関しては常連だったガビ、ペドリ、フェラン・トーレスらを負傷で呼べないという事情があるんですけどね。アトレティコも11月に初招集されたリケルメが落ちて、またモラタの1人参加に戻り、一番選手が多いのはレアル・ソシエダで5人、続いてアスレティックの4人。これも以前に比べると、試合で背中のネームを見ないと、誰が誰だかわからない選手が多くなった理由かと思いますが、選ぶのはスペイン北部出身で、現役時代をアスレティックで過ごしたデ・ラ・フエンテ監督ですからねえ。とりあえず、コロンビア戦の翌日、土曜午後7時(日本時間翌午前2時)にはラス・ロサスで公開セッションが予定されているため、興味があるファンはスペイン男子代表のツイッターで練習のライブ配信を見てみるのもいいかもしれませんよ。 え、今週末は試合がないマドリッドのクラブの近況も知りたいって?そうですね、実は火曜にはマドリーファンに大ショックを与えるニュースが入ってきて、それはGKクルトワの再負傷。うーん、昨年の8月、リーガが始まる直前に右ヒザの靭帯を断裂した彼は、このparon(パロン/リーガの停止期間)中にカンテーラ(ユースチーム)と練習試合を2回して、不具合がなければ、31日のアスレティック戦で先発するという噂まであった程、復帰が近づいていたんですけどね。それがバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でのセッション中、左ヒザをケガして、翌日には半月板の手術を受けることに。 全治2カ月ということで、一転、今季絶望になってしまったんですが、とはいえ、GKに関してはクルトワの代理として、チェルシーから緊急レンタル移籍をしてきたケパを押しのけ、万年控えだったルーニンがレギュラーとして定着。特に大きなポカをすることもなく、時にはparadon(パラドン/スーパーセーブ)でリーガの首位を走るマドリーを支えていますからね。当面、問題はないはずですが、ちなみにそのルーニンはこの代表戦週間中、マドリーでただ1人、公式戦をプレー。 そう、ユーロ出場最後の3席を争うウクライナ代表で木曜にプレーオフ準決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦に挑んだんですが、オウンゴールで1点リードされた後、終盤にヤレムチュク(バレンシア)とドブビク(ジローナ)が立て続けにゴールを挙げ、1-2で逆転勝ちしたんですよ。これで来週火曜にはイスラエルに1-4で勝ったアイスランドと決勝となったため、もしユーロ行きが決まれば、当人のモチベーションもますます高まるんじゃないでしょうか。 そしてクルトワとあまり変わらない時期にやはりヒザの靭帯を断裂し、ずっとリハビリを続けてきたミリトンは無事、4月には現場復帰できそうなんですが、何せ、ルーニン以外は親善試合とはいえ、計14人も各国代表に招集されているマドリーですからね。これまで留守番組だったブライムまで、とうとうモロッコ代表を選択して、出向してしまったため、アンチェロッティ監督も気が気ではないでしょうが、いつもは大西洋横断の長旅をしないといけないビニシウス、ロドリゴ、そしてバルベルデ(ウルグアイ)らがヨーロッパ内の移動に留まってくれるのは慰めになる? 一方、先週末のバルサ戦でも後半からしか出られなかったように、まだ足首のネンザが完治していないグリーズマンがフランス代表を即離脱。水曜にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でリハビリトレを始めているアトレティコはというと。いやもう、リーガではアスレティックに抜かれて5位に落ち、更に代表戦後にはCL準々決勝ドルトムント戦1stレグも迫っているとあって、シメオネ監督にしてみれば、もっと沢山の選手にみっちり稽古をつけたいところだったと思いますけどね。レマル、ヒメネス、そして延長、PK戦の死闘となったインテル戦2ndレグで負傷したエルモーソもいないため、火曜からセッションをこなしたトップチームのフィールドプレーヤーはたったの10人という有り様だったよう。 大体がして、GKなんて、オブラク(スロベニア)とモルドバン(ルーマニア)共々、出向してしまったため、カンテラーノ(アトレティコBの選手)しか、いませんからね。これではザル守備改善の練習も中途半端になってしまいそうですが、このところ、体力の低下に悩んでいる選手たちには土日月と3連休できるのは吉かも。唯一、気掛かりなのは、チームの中でも劣化が激しいデ・パウルとモリーナが揃って、アルゼンチン代表のアメリカツアーに行っていることですが、2022年にはワールドカップ優勝を果たした仲間に薫陶されて、シーズン終盤では調子を上げてくれることを祈るしかありませんね。 ちなみに各国代表に行っている選手は弟分チームにもいて、ラージョはディミトリエフスキ(北マケドニア)、ラティウ(ルーマニア)、バリウ(アルバニア)、パテ・シス(セネガル)、ベベ(カーボベルデ)の5人。折しもイニゴ・ペレス監督のチームは先週末、9試合ぶりに白星を挙げ、しかもエスタディオ・バジェカスでベティスを倒して、待望の今季ホーム2勝目をゲットしたばかりだっただけに、ここで試合に間が空くのは痛し痒しだったかもしれないんですけどね。逆に31日に当たる再開後初戦の相手、セルタなどは前節、ベニテス監督からBチームを率いていたヒラルデス監督に代わってセビージャに勝った後、新しい指揮官にチームを把握する時間ができるのは有難い? 何にしろ、17位のセルタと15位のラージョの差は勝ち点2差だけとはいえ、降格圏18位のカディスとは7差に開いたため、少しは落ち着いたはずですが、その一方でヘタフェは代表に出向するのが今回はジェネ(トーゴ)とアルデレテ(パラグアイ)の2人だけ。珍しくセルビア代表に呼ばれなかったマキシモビッチのパナシナイコス来季入団がこの木曜に早くも発表されていたのにはちょっと、驚かされましたが、こちらは10位、あと勝ち点2で残留も達成と、快適な位置にいますからね。そろそろ、ボルダラス監督も自身2度目となるヨーロッパの大会出場を狙う算段を練っている頃かもしれませんが…それにはまず、30日にコリセウムに迎えるセビージャに勝つことが必須でしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.22 20:00 Fri

喜びは長続きしなかった…/原ゆみこのマドリッド

「このまま3週間もCL圏外なのは辛いわね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)が始まった日のことでした。いやあ、リーガ29節最後の試合でアトレティコは黄色のユニを着たバルサにメトロポリターノで完敗し、一足早くアラベスに勝って、追い越されていたアスレティックから4位の座を取り戻すことができず。それでも勝ち点差は1だけですし、まだ残り9試合もあるため、何とかする余地は十分、あるんですが、問題なのは昨季の1月に同じバルサに負けて以来、無敗だったホームの神通力より、黄色のユニの呪いの方が強かったこと。 そう、リーガ再開の30節は大多数のファンの応援を受けられないアウェイでのビジャレアル戦で、すでに今季、アトレティコが負けているラス・パルマスやカディスと同じ黄色のユニで相手がプレーするため、もう初めから勘定に入れていなかったんですけどね。その週はアスレティックもサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリー戦となるため、差が開く心配はしなくていいですが、その次の週末、4月6日にバルベルデ監督のチームがコパ・デル・レイ決勝をマジョルカと戦う間、アトレティコは10日のCL準々決勝ドルトムント戦1stレグに備えてお休みできることに。 そのメトロポリターノでの試合でも相手が黄色の第1ユニで戦うことに決めたら、かなりヤバそうですが、リーガのホームゲームで対戦するチームでもジローナのアウェイユニが黄色と赤。その他、黄色属性ユニの相手はいないとはいえ、そう、お隣さん同様、彼らだって先日、いきなり濃紺の第4ユニを発売していたように、4月末にメトロポリターノで直接対決となるアスレティック、いえいえ、残留争いが厳しくなってきたら、セルタだって、急遽、黄色のユニを作って、メトロポリターノのピッチに立つことぐらい、してくるのでは? そんなことになったら、今季のCLに優勝して、来季の出場権を得るか、参加チームが32から36チームに増える新フォーマットの来季はスペインの出場枠が5つに増えてくれることを、ファンは真剣に祈らないといけなくなってしまいますが、まあそれはそれ。とりあえず、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、見ていくことにしましょうか。 29節では、マドリーが先陣を切って、土曜にオサスナ戦に挑んだんですが、この日もベリンガムが出場停止2試合目でプレーできず。それが全然、影響なくて、だってえ、前半4分、今季はラージョから河岸を変えていたカテナから、敵陣エリア前でボールをビニシウスが奪い、早くも先制ゴールを挙げているんですよ。ただ、その時はまだエル・サダルの熱いファンの声援を受ける相手も闘志を失わず、7分にはCKから、カルバハルがヘッドクリアしたボールをファーサイドにいたエランドがブドミルにラストパス。マスクを着けたクロアチア人FWに今季自身14得点目を決められ、同点に追いつかれてしまうことに。 すると18分、エリア内左奥からのバルベルデの折り返しを汚名返上すべく、カルバハルが右足の外側で蹴り入れて、再びマドリーはリードを奪ったんですが、前半はまたしても主審に抗議したビニシウスがイエローカードをもらい、累積警告でアスレティック戦に出場停止となったぐらいで終了。いやあ、実際、ハーフタイムでロッカールームに戻る際、当人も「Todos los partidos me saca tarjeta este árbitro, es increíble/トードス・ロス・パルティードス・メ・サカ・タルヘタ・エステ・アルビトロ、エス・インクレイブレ(この審判は全ての試合でボクにカードを出す。信じられないよ)」と文句を言っていたぐらい、この日のマルティネス・ムヌエラ主審と彼の相性が最悪なのは本当みたいですけどね。 もうすでに彼には3、4回イエローカードをもらっているからですが、昨季など、マドリーOBのセルヒオ・ラモス(現セビージャ)じゃあるまいに、トータル14枚にもなりましたからね。その半数近くが抗議によるものとなれば、いくらアンチェロッティ監督が、「Va a mejorar porque es un chico serio, humilde e inteligente/バ・ア・メホラル・ポルケ・エス・ウン・チコ・セリオ、ウミルデ・エ・インテリヘンテ(マジメで謙虚、賢い子だから改善するだろう)」と庇おうと、更生できるか怪しいものですが、それとビニシウスのサッカーのパフォーマンスは全然無関係。そう、私が次の時間帯の試合を見にコリセウムに向かうため、バル(スペインの喫茶店兼バー)を出ないといけず、見られなかった後半、またしても彼は得点していたんですよ。 いえ、その前には16分、GKルーニンのゴールキックを頭でベルベルデがセンターから流したボールを受け、ドリブルで敵エリア内まで駆け上がり、GKエレーラとの1対1のシュートでブライムが3点目を決めているんですけどね。こうまで立派にベリンガムの代理を務めているところを披露されると、当人がこの3月の代表招集でU21まで勤め上げながら、なかなかお声のかからなかったスペインA代表ではなく、祖母の出身国であるモロッコを選んだのを残念に思うファンも増えそうですが、ビニシウスのゴールが入ったのは20分のこと。今度はセンターからロドリゴ、バルベルデと繋がる速攻カウンターでエリア内左から、エレーラを破っていましたが、これで4点目となれば、すでに勝敗は決したかと。 まあ、オサスナも後半ロスタイムには意地を見せ、アレソのラストパスからイケル・ムニョスが2点目を挙げたため、スコアは2-4で終了したんですけどね。先日のセルタ戦でマドリー初ゴールを挙げ、この日も後半40分からの出場となったギュレルがロングシュートを放ち、ゴールバーに当てるという惜しいシーンもあったようですが、このまま首位固めが順調に行けば、彼の出番もだんだん増えていくのでは?それには何より、これで勝ち点10と離れた2位ジローナとの差を弟分が確定させることが大事だったんですが…。 いやあ、驚かされましたよ。ジローナを迎えたヘタフェは、うーん、半月板損傷のボルハ・マジョラルに加え、グリーンウッドも出場停止で欠いた前節のバレンシア戦でラタサとマタをスタメンで並べながら、1点も取れずに負けてしまったせいですかね。この日のボルダラス監督は2人をベンチに置き、MFのオスカル・ロドリゲスとマクシモビッチが適宜、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)を務める陣形を選択。どうやらミチェル監督もこれには混乱させられたよう。 ツィガンコフら、欠場者が多かったジローナ相手にどちらかと言えば、押し気味にゲームを進めていたヘタフェはとうとう、33分、イアリス・モリバが入れたラストパスをジェジュがエリア内から撃ち込み、この1月に加入した若い新戦力2人で先制点を取ってしまったから、ビックリしたの何のって。そのまま1-0で試合は進み、ええ、ようやくマタが入ったのは後半22分だったんですけどね。その日はドブビクが6本もシュートを放ちながら、まったく精度がなかったおかげもあって、最少得点差で4試合ぶりの白星を挙げたとなれば、ヘタフェファンだけでなく、マドリーファンも弟分を見直すことになった? まあ、おかげで10位に上がったとはいえ、ヘタフェはEL出場権6位のレアル・ソシエダと勝ち点8差ありますからね。あまり大きな夢は見ない方が良さそうですが、14人も各国代表に出向するマドリーとは違い、こちらはトルコ代表常連のエネス・ウナルが1月にボーンマスに移籍、スペイン代表の呼び声が高かったマジョアルも今季絶望になってしまったため、今回はジェネ(トーゴ)とアルデレテ(パラグアイ)の2人だけ。今季限りでヘタフェを退団して、母国に近いチームに移籍するとアンヘル・トーレス会長がジローナ戦直前に暴露していたマクシモビッチもセルビアに呼ばれなかったようですし、3月30日に再びコリセウムにセビージャを迎える試合まで、チームがラストスパートに備えて、じっくり調整できるのは有難いかと。 そして翌日曜も弟分のいいニュースは続いて、そう、とうとうラージョが9月以来のホーム勝利を挙げたんですよ。エスタディオ・バジェカスにベティスを迎えた彼らは前半、今年になって1勝しかしていないための焦燥感か、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況アナにも「Rayo irreconocible/ラージョ・イレコノシブエレ(ラージョと認識できない)」と言われる程、フラストレーションの溜まるプレーぶりだったんですけどね。辛抱強く応援を続けるスタンドに応え、39分にはルジューヌの直接FKが GKルイ・シウバの手を弾いてゴールに入り、先制点をゲット。 1-0のリードのまま、この日も私はメトロポリターノに向かうため、ハーフタイムにスタジアムを出ないといけなかったため、うーん、後々考えれば、最後まで留まって、後半33分にはカメージョが最初はペッツェッラにブロックされながら、2度目のトライでゴールを決め、2-0で完勝。ファンと一緒に今季2度目の「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラタ(海賊人生)」を歌って、勝利を祝う選手たちの姿を見ている方が楽しかったんじゃないかと後悔したものでしたけどね。この節は18位のカディスが金曜にレアル・ソシエダに負けていたため、4まで縮まっていた降格圏との差も7に広がり、順位も15位と1つ上がったラージョだったんですが、残留確定目安の勝ち点40に到達するまでは、次節のセルタ戦を含め、あと4勝ぐらいはしておきたいところでしょうか。 そう、メトロポリターノに余裕を持って到着したかったのは、バルサにレンタル移籍中のジョアン・フェリックスがアトレティコファンにどのように迎えられるかを見たかったのもあったんですが、チャビ監督もちゃっかりしていますよね。スタジアム正面の地面にある100試合以上出場選手のプレートを汚されたり、スタメンアナウンスからpito(ビト/ブーイング)を受けるのをわかっていながら、当人の反骨心を当てにして、スタメンに並べてくるとは。おまけに相手には前日、カンセロが負傷で、試合前のアップ中にはクリステンセンが不調を訴え、先発できなくなったため、17才のフォントが左SBとしてデビュー。そして20才のフェルミンが中盤に入るという、17才で先日、スペインA代表に初招集されたCBクバルシを含め、カンテラーノ(バルサB)が3人も入ったとなれば、水曜にはCL16強対決2ndレグでセリエA独走首位のインテルを逆転敗退に追いやっているアトレティコだけに、何とかなるんじゃないかと思ったんですが…。 もう絶対、黄色のユニの呪いですよお。立ち上がりから、6分にはモラタがアラウホにエリア内でファールを受けながら、オフサイドでペナルティを取ってもらえなかったのは当人の悪癖故で、よくあることなんですが、そのすぐ後、バリオスがエリアすぐ前から撃ったシュートも僅かに外れてしまうことに。27分にもモラタのヘッドが決まらないなど、そのぐらいまではインテル戦の勢いを持続していたシメオネ監督のチームだったものの、30分を過ぎた辺りから、バルサが反撃を開始。ええ、最初はラフィーニャのヘッドから始まり、35分にはギュンドガンのスルーパスをレバンドフスキが折り返し、ゴール左前にいたジョアンが軌道を変えて、先制ゴールを奪われてもらったから、さあ大変! いえまあ、41分には抗議でイエローカードをもらったチャビ監督が、その1分後にはレッドカードで退席させられてしまうというアクシデントもあったんですが、バルサの選手が減った訳ではないですからね。後半は頭から、ネンザが完治していない足首の痛みに耐え、インテル戦で延長戦前半まで頑張ったグリーズマンと殊勲の総合スコア同点ゴールを挙げたメンフィス・デパイを入れ、攻勢に出るはずだったアトレティコなんですが、木金と完全休養して、練習は土曜しかしていないのに選手たちはまだ、CLの死闘からの疲労が抜けていなかったよう。 そう、再開1分にイエローカードをもらい、次節出場停止になったデ・パウルがその1分後、何と自陣エリア前でラフィーニャ目掛けてパスを出すという大ポカを犯してくれたんですよ。それが原因でレバンドフスキに決められしまったとなれば、選手たちが「2点目のゴールのダメージは大きかった。Nos sacó la energía para seguir competiendo/ノス・サコ・ラ・エネルヒア・パラ・セギール・コンペティエンドー(ウチは競い続けるエネルギーを奪われてしまった)」(シメオネ監督)としても仕方ない? 実際、12分にジョレンテのvolea(ボレア/ボレーシュート)とデパイのシュートを連続してGKテア・シュテーゲンに弾かれた後、コケやコレアがピッチに入ってもほとんどチャンスは作れず。それどこから、20分にはレバンドフスキのクロスを小柄なフェルミンにゴール前で悠々、頭で撃ち込まれ、3点目まで取られたとなれば、もうどうしようもありませんって。こうなるとさすがに、いつもは最後の最後まで諦めないアトレティコファンでも終了10分程前には席を立ち、スタンドはかなりスカスカになっていたんですが、いい判断です。少なくとも早帰り組はロスタイム2分、モリーナがビクトル・ルケに自陣エリア前で強烈なタックルを見舞い、最終デフェンダーであったため、一発レッドで退場するところを見ずに済んだんですから(最終結果0-3)。 何せチャビ監督になってから、もうこれでアトレティコはバルサに4連敗ですからね。元々、苦手にしている上、向こうは20才以下の選手を6人も使ってきたのに対して、彼らは半分が30才以上。インテル戦で17.5kmも走ったコケも「El esfuerzo del otro día nos ha pasado factura/エル・エスフエルソ・デル・オトロ・ディア・ノス・ア・パサードー・ファクトゥーラ(先日の努力のツケを払った)」と告白していたように、最近は連戦でムリが効かなくなっているのも心配ですが、その辺はシーズン前にフロントが考えないといけないことですからね。 おかげでバルサがジローナに取って代わり、首位と勝ち点8差の2位になったのはともかく、とりあえず今のアトレティコは各国代表に出向する7人以外、粛々と体力回復に努めるしかないないんですが、そうそう、月曜にフランス代表に行ったグリーズマンは足首完治を目指して、即Uターンとなるよう。他の選手たちも試合は全て親善試合ですしね。アメリカ興行をするアルゼンチン代表のデ・パウルとモリーナを除いて、ヨーロッパ内で移動が済むというのは朗報ですが、とにかく誰もケガをせず、戻って来てほしいものです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.19 21:00 Tue

奇跡はホームでしか起きない…/原ゆみこのマドリッド

「ダメだわ、これじゃ秘技メトロポリターノマジックが使えない」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、CL準々決勝抽選でアトレティコとドルトムントの対戦が決定。もちろん、マンチェスター・シティと3年連続で対決するお隣さんや、エムバペを連れたルイス・エンリケ監督がPSGを率いて里帰りするバルサを羨むことはなかったものの、2ndレグをジグナル・イドゥナ・パークでプレーしないといけないことがわかった時のことでした。いやあ、もうあれだけ絶望視されていた16強対決インテル戦2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)を起こし、準々決勝に進出できただけでも今季は儲けものと言えなくはないんですけどね。 おまけに8強に残った中で一番与しやすしと、どのチームも対戦を望んでいたドルトムントを引き当てたのは幸運だったとしても、実際、相手もアトレティコも国内リーグでは首位から遠く離れた4位なんですよ。テルジッチ監督のチームが5位ライプツィヒと勝ち点1で来季のCL出場権を争っているのも、アスレティックに勝ち点2差に迫られている彼らと似たようなものですし、何より怖いのはドルトムントのチームカラーが黄色だということ。そう、アウェイぼろぼろの今季、シメオネ監督のチームはリーガ前節も降格圏のカディスに負けるという醜態をさらしただけでなく、同じ黄色のユニをまとうラス・パルマスにもカナリア諸島遠征でやられているんですよ。 そのせいで私など、今から4月頭のラ・セラミカでのビジャレル戦を心配していたものですが、かてて加えて、ドルトムントのホームスタジアムでは有名な「Gelbe Wand(黄色の壁)」が立ちはだかることに。となると4月10日の1stレグでは、今季たった1分け1敗しかしていないメトロポリターノの神通力を借りて、3-0、いいえ、5-0ぐらいで勝っておかないと、とても突破はできないかと。そうは言っても、同様の夢を見ていたコパ・デル・レイ準決勝1stレグではよりによって、アスレティックに0-1で負け、案の定、サン・マメスでの2ndレグで3-0とぶちのめされていた記憶もまだ新しいですからね。 過去の対戦成績も2勝1分け3敗と微妙なドルトムントですし、直近2018-19シーズンのCLグルプリーグでもやはりアウェイでは4-0とボロ負けして、ホームで2-0の勝利。たとえ、何かの間違いで準決勝に進出できたとしても、PSG vsバルサ戦の勝者と当たるそちらも2ndレグがアウェイとなると…やはり6月1日のウェンブリーでアトレティコが2016年以来の決勝をプレーすることを望むなんて、とても恐れ多くてできやしない? まあ、そんな先のことを話していても仕方ないので、とりあえず、水曜のインテル戦がどうだったか、お伝えしていくことにしましょうか。前日、1stレグで1-1と引分けていたバルサがホームのモンジュイックでナポリを3-1と粉砕した後、サン・シーロでの1-0の敗戦を引っくり返すべく、メトロポリターノにインテルを迎えたアトレティコだったんですが、相手はその後もセリアAで4連勝。とうとう今年になってから、13連勝という破竹の勢いで乗り込んで来るというのに、アトレティコファンもやはり、ほぼ無敵のホームでは強気になれるんでしょうかね。 この日もスタジアム入りを大勢がお出迎えして、赤白のbegala(ベンガラ/発煙筒)の煙の中をチームバスは通り抜けて行ったんですが、そのファンの応援に選手たちが見事に応えてくれるとは!いえ、序盤からサムエル・リノ、モラタ、そしてインテル戦1stレグで負ったネンザから復帰してきたグリーズマンらが撃っていったものの、なかなか総合スコアを同点にするゴールは入らなかったんですけどね。それどころか、前半33分には得意のザル守備が発動。バレッラの折り返しのパスをディマルコに決められて、ミラノから来た3400人のティフォシを大喜びさせていたんですが、いやもう、この時は私も目の前が真っ暗になったと言わなかったら、ウソになるかと。 その3分後、「アスレティック戦にも出ようとしたけど、ダメだった。でも今日の試合はチームにもボクにも重要だったから、aunque aún me duele al hacer algunos gestos/アウンケ・アウン・メ・ドゥエレ・アル・アセール・アルグーノス・ヘストス(まだ何がしかの動きをする時、痛むとしても)、ムリしないといけなかったんだ」というグリーズマンがやってくれたんです!そう、コケがエリア内に入れたパスをパヴァールがクリアしようとしたボールが彼の元に落ちて来たところ、体をクルリと回してシュート。それがゴールとなり、再び総合スコアが1-2の1点差になったとなれば、また初心に戻って、同点を目指せば良かったんですが…。 それから全然、ゴールが入らなくてねえ。前半を1-1のままで終わった後、やはりグリーズマン、モラタ、ジョレンテらが後半も決められず、ようやく26分にはデ・パウル、リノをコレア、リケルメに代えてみても大勢は変わりません。時折、カウンターをかけてくるインテルにもトゥラムにフリーで撃たれて、幸い大きく枠を外れてくれるというドッキリシーンがあったため、34分にモラタ、モリーナがメンフィス・デパイ、バリオスに代わった辺りでは、ええ、彼らは土壇場に根性のレモンターダ体質が炸裂するお隣さんとは違いますからね。私もほとんど諦めていたんですが、いえいえ、とんでもない。 何と40分にはシュートをポストに当てていたデパイがその2分後、コケのラストパスから総合スコア2-2に追いつくゴールを挙げてしまったから、もう場内は蜂の巣をつついたような騒ぎに。でもねえ、これだと延長戦になるだけで、何せ昨今は体力不足著しいアトレティコですからね。とにかくあと1点取って、正規の時間内に勝って終わらせてもらいたかったんですが、後半ロスタイム、せっかくグリーズマンが絶妙のパスをリケルメに送りながら、当人がシュートを撃ち上げてしまってはどうしようもありませんって。 ほぼその時点で延長戦入りが確定し、私も30分帰りが遅れるだけでなく、惨めな気分でメトロに乗ることを覚悟したんですが、いやあ、意外でした。この日のアトレティコは疲れを見せず、いえ、延長戦前半にはジョレンテがアスピリクエタに、後半頭からは3週間のブランクもあって、とうとう走れなくなってしまったグリーズマンもサウールに交代しましたけどね。ただ、幾つかチャンスはあったものの、やっぱりゴールは入らず、とうとう最後はPK戦上等のプレーをしていたインテルの思うつぼになってしまうことに。 実際、試合中のPKもほぼ半分は失敗しているアトレティコですからね。PK戦でも2016年CL決勝やスペイン・スーパーカップなどでマドリーに負けている黒歴史ばかり記憶に残っているため、その時は私の思いも延長戦で負けるより、PK戦で負ける方がずっと悲惨という方向にシフトしていたんですが、それがこの日はシメオネ監督の企みがまんまと当たったんですよ。そう、「Aguantamos los cambios porque sabíamos que estaba la posiblidad del alargue/アグアンタモス・ロス・カンビオス・ポルケ・サビアモス・ケ・エスタバ・ラ・ポシビリダッド・デル・アラルゲ(試合が長引く可能性があることを知っていたから、選手交代を遅らせた)」(シメオネ監督)おかげで延長戦を耐え抜いただけでなく、PK戦のキッカーには途中出場の選手を指名。 まあ、その中でもサウールはGKゾマーに止められてしまいましたが、デパイ、リケルメ、コレアがしっかり成功する脇で、あとはGKオブラクの独壇場に。いやあ、これまでPK戦ではほとんど止められず、批判されていた彼でしたが、この日は相当、相手を研究していたんでしょうね。インテルの第2キッカーのアレクシス・サンチェスと第3キッカーのクラーセンを続けて弾き、最後は第5キッカーのラウタロが大きく撃ち上げてしまうって、え?これってもしや、奇跡じゃない(PK戦3-2)? とはいっても、「La afición no falla, nosotros podemos fallar, pero ellos nunca fallan/ラ・アフィシオン・ノー・ファジャ、ノソトロス・ポデモス・ファジャール、ペロ・エジョス・ヌンカ・ファジャン(ファンはしくじらない。ボクらはしくじることもあるけど、彼らは決してしくじらない)」(オブラク)とか、「全力は尽くすけど、結果を見れば、ボクらがホームで違うチームなのは明らか。Es gracias a la afición/エス・グラシアス・ア・ラ・アフィシオン(それはファンのおかげだ)」(グリーズマン)とか聞かされると、スタジアムで多数派の応援がないとアトレティコは勝てないのかと、頭が痛くなってしまいますけどね。 果てては、「全員がこの態度、プレーの激しさ、集中力でプレーしている時、ウチはアウェイでのチームとは違う」(コケ)なんて言われた日には、外に出ると何でそれができないのか、突っ込みたくもなりますが、まあ、それはそれ。「El equipo lo ha logrado desde el que nadie creía/エル・エキポ・ロ・ア・ログラードー・デスデ・エル・ケ・ナディエ・クレイア(チームは誰も信じていなかったところから、突破を達成した)」(シメオネ監督)というのは事実ですからね。今は褒めておくことにしますが、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはもう、リーガのバルサ戦がありながら、延長戦疲れで木金練習休みっていうのはいくら、またメトロポリターノ開催だからって、ホームに頼りすぎじゃないでしょうか。 そして他のマドリッド勢の週末の予定についても触れておくと、先陣を切るのは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、エル・サダルでのオサスナ戦に挑むマドリーなんですが、まあ、こちらはすでに先週にはCL準々決勝進出を決め、ミッドウィークフリーだった今週は余裕でしたからね。リーガも2位ジローナと勝ち点7差の首位とあって、丁度、マンチェスター・シティとの対戦が決まった直後にアンチェロッティ監督の記者会見があったのもタイミングの妙。おかげで2年前はサンティアゴ・ベルナベウでの準決勝2ndレグで奇跡のレモンターダをして、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に繋げながら、昨季の準決勝では2ndレグがエティハドだったせいもあったか、0-4の大敗を喫し、結果的に相手がCL初優勝を遂げるという、因縁のシティ戦に関しての質問の方が多くなることに。 まあ、それも仕方なくて、何せオサスナはもう11年もマドリーに勝っていないばかりか、今回はルベン・ペーニャ、ダビド・ガルシア、キケ・バラハ、アイマール・オロスと主力に負傷者が大量発生。となれば、出場停止処分2試合目となるベリンガムがいなくても不足はないかと思いますが、おまけに今節、3位と4位は星の潰し合いをしてくれますからね。あとは同じ土曜にコリセウムにジローナを迎える弟分のヘタフェが頑張ってくれれば、マドリーにとって、最高の形で来週のインターナショナルウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)を迎えられることになる? ただ、前節もバレンシアに1-0で惜敗してしまったボルダラス監督のチームが比較的、得意のホームとはいえ、今は首位奪還を諦め、CL出場圏に留まることに専念しているジローナを押しとどめることができるかどうかは微妙。ええ、エースのボルハ・マジョラルがヒザの半月板負傷で今季絶望になってしまい、ゴールを頻繁に挙げてくれる選手がいないのがやはり、堪えているようですからね。この試合ではグリーンウッドが出場停止から戻って来るのは朗報ですが、マタとラタサには更なる精進を期待するばかり。なるたけ早くあと5つに迫っている勝ち点40に達して、ファンを安心させてあげられるといいのですが。 一方、前線に負傷者がいる訳ではないのに、今季は慢性的にゴール不足に苦しんでいるもう1つの弟分、ラージョは日曜にベティスとエスタディオ・バジェカスでホームゲームなんですが、こちらは前節もアラベスに負けて、とうとう白星なしが9試合に。降格圏とも勝ち点4差になってしまいましたし、イニゴ・ペレス監督も就任から4試合が経ちながら、未だに勝てていないというのも心配なんですが、こればっかりはねえ。 幸い相手のベティスも先週、ビジャレアルに負けて順位を7位に落とすなど、それ程、調子がいい訳ではない上、今回はサバリー、ベジェリン、マルク・ロカを負傷で、チミ・アビラも出場停止で欠いているため、ラージョにも勝機はなくないんですけどね。要注意なのは1カ月半、ケガのリハビリをしていたイスコがついに戻ってくること。1試合1得点がやっとこの現状ではとにかく、絶対に失点を許さず、何とかRdT(ラウール・デ・トマス)やアルバロ・ガルシアが当たってくれることを祈るばかりですが…残り6試合、果たしてバジェカスのファンが「Vida de pirata(ビダ・デ・ピラータ/海賊人生)」を歌って、今季2度目のホーム勝利を祝うことはできる日は来てくれるんでしょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.16 22:00 Sat
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