「非常に良い準備をしてくれた」と森保一監督は選手たちを称賛、10名が継続スタメンの判断は「絵を合わせるため」

2021.11.12 06:15 Fri
Getty Images
日本代表の森保一監督が、ベトナム代表戦を振り返った。

11日、日本はカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第5戦でベトナムと対戦。アウェイの地で前半戦最後の試合を迎えた。
チャーター機の遅れがあり、ヨーロッパから合流する選手たちは前日練習のみで試合に臨むこととなった中、スターティングメンバーには、合流が遅れた吉田麻也冨安健洋守田英正伊東純也南野拓実と5名を起用。10月のオーストラリア代表戦からは酒井宏樹に代えて山根視来を起用するのみの変更となった。

試合は17分、南野拓実のグラウンダーのクロスをファーサイドで伊東が詰めて日本が先制。さらにカウンターから41分に伊東がスーパーゴールを決めるが、これはVARのチェックの結果、田中碧がオフサイドだったとして取り消される。

後半も日本がチャンスを作り続けたが、ゴールを奪えず。それでも0-1でなんとか勝利を収め、勝ち点3を獲得した。
勝利した感想は「移動のアクシデントがあったり、練習の時間も削られた中、選手たちが落ち着いてアクシデントを乗り越えてくれて、限られた時間の中で、非常に良い準備をしてくれたなと思っています」とコメント。「短いトレーニングの時間で一緒に過ごす中で、コミュニケーションをうまくとってくれて、試合に向けてのイメージをよくしてくれたと思います」と選手たちの行動が良かったと振り返った。また「選手たちがアクシデントや想定外のことを当たり前、それを含めて想定内と冷静に準備してくれたことが結果につながったと思います」と、アクシデントを乗り越えた判断を称えた。

そんな中、前述の通りチャーター機のアクシデントで遅れた選手から5名がピッチに立った。コンディション面の問題もありそうな中、スタメンを選んだ理由については「選手たちの様子を見ていない想像の範囲であれば、長距離移動、アクシデントがあって、コンディションが良くないことを考えられるかもしれないですが、まず、遅れて合流してきた11人の顔を見た時に、凄くみんな良い顔をしていて、疲れた様子が見受けられませんでした」と、実際に選手と対面した時の印象が想像以上に良かったと明かした。

その理由については「それはなぜかというと、途中足止めを食らった給油地で、長時間機内に閉じ込められた状態でしたが、そこで上手く気持ちを切り替えて、今できることは何なのかと考えて、睡眠と休養をとってくれました」と選手が良い判断をし、長時間の機内での過ごし方でリカバリーを行っていたとコメント。「時間があった中、選手たちが試合に向けてすでに良いコミュニケーションをとってくれていました。アクシデントの中で、試合に向けて何ができるのかということで、週末の試合からのリカバリーをメンタル的にもフィジカル的にもアクデントの中でしてくれて、私が会った時の顔色、雰囲気を見た時に、トレーニングで様子を見なければとは思いましたが、試合に向けてトレーニングを1日やることで十分試合の中でプレーできる状態になるという判断をしました。疲労感がほとんどなかったのが大きかったです」と、長時間の移動とは感じない状態だったという。

今日の試合では5名の交代枠を使った森保監督。最初に左サイドの2人である長友佑都(FC東京)と南野拓実(リバプール)を代えた理由については。「本人たちもまだ走れる、戦える状態だったと思いましたが、チームとしてさらに勢いよく、前に向かって推進力を持てるような交代をしようとして枠を使いました」と、中山雄太(ズヴォレ)、浅野拓磨(ボーフム)を起用した意図を明かした。「佑都は前線にパスを出せますが、中山雄太は左利きの特徴を出して、勝っている状況を生かして、浅野を生かすために背後にパスを配球するというところで、もちろん守備も大切ですが、相手が出てくる中で攻撃の推進力を持てるようにと枠を使いました」と、より縦の関係で相手を崩すための策だったと語った。

長友はこれで最終予選3試合連続で途中交代。徐々に下がる時間が早くなってきている。その点について森保監督は、「戦い方という部分、中山雄太が左利きという部分で、チームとして守備から良い攻撃にというところはコンセプトとして変わりないですが、彼の特徴を生かして守備を安定させて、攻撃も左利きの特徴を生かして前線に配球できるということ。タイミングよくオーバーラップして攻撃参加することも試合で幅を広げてくれているので交代枠として使っています」と、長友とは違う特徴の中山を入れて、アクセントにしたいとコメント。「佑都も90分走り切れると思っていますし、他のところで交代枠を使おうかとも考えたましたが、中山がこれまでも良いプレーをしてくれていたので、ベトナムが出てくる中で我々にとって良い手を打とうとしました」と、短い時間でもしっかり試合でアピールできている中山を使いたいと考えたと明かした。

ベトナムとは身長差もあり、高さでは優位に立てる日本。後半に入りCKの数も増えたが、惜しいチャンスすら作れない状況に終わった。

セットプレーからゴールが奪えていない現状については「我々も認識していて準備しています」とコメント。「選手たちもキッカー、入り方を含めて、CK、FKから得点を奪えるのかというのを、色々な工夫をしながらやっているところです」と、対策はしているという。しかし、「高さ的にといっても凄く差があるわけではないですし、相手も必死に守備をする中で得点をするのは簡単ではないですが、セットプレーから得点がない、これから戦う課題としてチームとして取り組んでいきたいと思っています」と、この先の戦いにおいても重要となるセットプレーの精度は上げたいとした。

また、今回のシステムは[4-3-3]で臨み、メンバーもケガの酒井宏樹(浦和レッズ)以外は変更しなかった。その点については「戦い方の部分で、今回招集させてもらったFP25人、GK3人を含めて、全員がベトナム戦に向けて良い準備をしてくれました」とコメント。「残念ながら酒井宏樹は足の痛みでプレーすることは不可能でしたが、残った24名とGKは試合に向けて昨日のトレーニングでも見せてくれました」と、酒井以外の全員が起用できる状態だったとした。

その中で「戦い方として、直近の試合のオーストラリア戦から、山根視来を加えただけで選手全体を変えなかったという部分については、コンディションを見てということと、遅延があった選手をサブから、元々予定通り2日、3日前からベトナムにいる選手をスタートから起用することも考えました」と違うスタメンを組むことも考えたという。ただ、それにはあまりにも時間がなく、擦り合わせが難しいと考えたとのこと。「全体で練習できる時間が試合の前日の公式練習1時間のみということで、コンディションを上げるトレーニングをしなければいけない上、色々確認しなければいけないということで、ヨーロッパからきた選手たちが起用できるという状態と、トレーニングやミーティングをする中で、絵を合わせるということは選手を変えると難しい作業だと感じました」と、分かりあっているメンバーで臨む方がリスクがないとし、コンディションも問題がないと判断できたため、オーストラリア戦を踏襲したと語った。

その中で、右サイドバックに山根を起用した理由は「山根に関しては、室屋ももちろん我々がボールを握りながらでもハードワークで推進力を持って攻撃に絡めると思いましたが、よりボールを握りながらの戦いの中で、山根の良さを生かせると考えて起用という選択になりました」と、ボールを持てて色々なパスや攻撃参加ができる山根をチョイスしたようだ。

なお、酒井の状態については「ベトナム戦に向けてはプレーするのが難しいという報告を受けていましたが、次のオマーン戦でプレーできるようにと別メニューで調整しています」と語り、「最終的にはこれから経過観察して、試合に出られるかどうかを見極めていきたいと思います。現段階では次のオマーン戦でプレーするように準備しています」と、残り期間でのコンディションを見ていくと語った。

ただし、この試合もゴールは「1」。多くのチャンスを作りながらも、決定力をまた欠くこととなった。その点については「もちろん追加点を奪えた方が良い試合だったと思いますし、我々が今後W杯の出場権を掴むためにより多くのゴールがあった方が、得失点差を考えても優位になると認識していますので、今日の試合も1-0から2-0、さらに追加点に繋げられればという理想はありました」と、追加点は欲しかったとコメントした。

この試合では、伊東のスーパーゴールが取り消されたということもあったが「レフェリーによってはオフサイドではなかったかもしれないです。ジャッジは100%リスペクトしてますが、2点目は取っていたと考えても良いと思います」と、複数得点が取れていた戦いだったとし、「2点目を奪うチャンスはたくさんできていたので、決めきればというのはありました。そこはチームとして、攻撃のチャンスを作ってくれた選手たちには、さらに要求していきたいと思います」と、それでも決めるべきシーンがあると課題を口にした。

ただ、ベトナムの守備も悪くなかったとし、「現地にいると一番わかりやすいと思いますが、ベトナムもタフで球際も強く、守備が整理されているので、あれだけチャンスを作れたことを選手たちがやってくれたことを評価したいと思います。追加点、もっと得点を奪えるように準備したいと思います」と、今後に向けて高めていくと語った。

ベトナム戦では、サウジアラビア代表戦に続いて2度目の5人交代を行った森保監督。「代表活動に参加している選手たちは所属クラブで存在感を発揮して、代表活動に参加しています。できれば全員ピッチに立たせてあげることができればと思っています」と、なるべく多くの選手を使いたいと、これまでと同じ考えを語った。

ただ「今はなかなかそういう状況を作ってあげられないということは、選手たちにはストレスをかけているなと思っています」と、決まった選手ばかりを起用することになっていることは認識している様子。実際に小種されても起用されていない選手はこれまでも多い。

また、交代枠を余らせる点については「交代枠を使ったり使わなかったりというのがある中で、我々の試合を見て色々な方々が批評してくださいますが、試合の流れを見ながら最善だということで交代枠を使わせてもらっています」とし、「結果が全て勝てるわけではありませんが、勝利を目指して少しでも良い戦いができるということで、交代枠の選択をしているので、そこは理解していただければと思います」と、ピッチ内の状況、結果を出すための最善策を選んでいる結果だと語った。
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