犠牲者が出ない試合はない…/原ゆみこのマドリッド
2021.11.10 23:00 Wed
「4人目の交代は避けられたのね」そんな風に私がホッとしていたのは火曜日、週末のオサスナ戦でレアル・ソシエダの首位防衛に貢献する先制ゴールを挙げた後、足首を打撲。ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でのスペイン代表合宿には初日の月曜から参加していたものの、1度もグランドに姿を見せることのなかったミケル・メリノが残留し、ギリシャ遠征に同行することになったと聞いた時のことでした。いやあ、2022年W杯予選ラスト2試合をプレーする11月の招集リストは先週金曜には発表されていたんですけどね。
その翌日にはセルタ戦でアンス・ファティ、エリック・ガルシア、そしてU21スペイン代表に招集されていたニコら、バルサ勢からケガ人が一気に発生。ルイス・エンリケ監督はすぐにラウール・デ・トマス(エスパニョール)とディエゴ・ジョレンテ(リーズ)を追加招集したんですが、日曜にもヘタフェ戦序盤に負傷したダンジュマの代わりに入ったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)も打撲でハーフに交代。こちらはメンバー24人で乗り切るか、やはり追加招集かで迷ったようですが、もう歴史は繰り返すですよね。10月のネーションズリーグ・ファイナルフォー用の初期リストに選ばれながら、負傷が再発したペドリ(バルサ、今も負傷のリハビリ中)の代わりに招集された後、自身もネンザして、セルジ・ロベルト(バルサ、現在はまた負傷で離脱中)に席を譲っていたブライス・メンデス(セルタ)が月曜午後には合流することに。
大体がして、元々、今回はオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ)らがケガで招集できず、ルイス・エンリケ監督も苦悩の末に作成したリストだったんですけどね。その後もこれでもかというようにドンドン、選手たちが脱落していくのを目の当たりにすると、本当に最近は試合数過多の影響が出てきている気がしますが、泣き言を言っていても始まりません。現在、首位のスウェーデンと勝ち点差2で2位にいるスペインはたとえ、3位に落ちたとて、来年3月に12チームが参加。一発勝負の準決勝と決勝でW杯出場ヨーロッパ枠残り3席を争うプレーオフにはネーションズリーグの結果で行けるとはいえ、朗報は早いに越したことはないかと。
まずは木曜、ジョージアvsスウェーデン戦の結果を確認した後、午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)から、アテナのオリンピック・スタジアムで開催されるギリシャ戦に勝って、日曜にセビージャ(スペイン南部)のカルトゥハでスウェーデンとの直接対決に挑むことになりますが、うーん。ラス・ロサスのグランドで週末の敵から一転、チームメートとなったブスケツ、ジョルディ・アルバ(バルサ)とブライス・メンデス、コケ(アトレティコ)とカルロス・ソレル、ガヤ(バレンシア)らの間にどういう会話があったのかはさておき、再招集となったモラタ(ユベントス)やダニ・オルモ(ライプツィヒ)もまだ負傷明けで本調子ではなさそうですしね。ゴールは現在、7得点で国産ピチチ(得点王)である、初招集のラウール・デ・トマスに頼ることになるんでしょうか。
え、それでparon(パロン/リーガの中断期間)直前のリーガはどうだったのかって?いやあ、どうも今回はマドリッドの両雄に吉凶くっきり差が出てしまってねえ。まずは土曜にレアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウで兄弟分ダービーに挑んだんですが、立ち上がり、開始40秒もしないうち、ラージョのアルバロ・ガルシアがエリア内からフリーで撃ったシュートが決まっていれば、試合の展開もかなり違ったものになっていたかと。それが前半中はエスタディオ・バジェカスと比べて、どうにも縦が長いピッチに慣れなかったんですかね。4分、カルバハルのクロスをベンゼマが落とし、ビニシウスが決めたゴールはオフサイドで免れたものの、15分にはアセンシオのアシストでベンゼマに先制点を奪われてしまうことに。更に38分にもアラバのクロスからベンゼマが再び決め、先日のCLシャフタール戦同様、doblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)を達成しているって、もしや今年のバロンドールの本命が彼というのはあながちウソではない?
とはいえ、そんな逆境にもめげず、弟分は最後の最後まで意地を見せてくれます。46分にはバリウのシュートを発端にGKクルトワが座り込んでいる間、バレンティンがカマビンガに倒されながら蹴ったボールをクロースがゴールライン前でクリア。続くウナイ・ロペスのシュートはクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という、同点のビッグチャンスがあったんですが、ロスタイムが3分しかなかったのが災いしましたかね。イラオラ監督もこの件に関しては、「Cuando vas ganando te ponen 9 o 10 y perdiendo 2 o 3/クアンドー・バス・ガナンドー・テ・ポネン・ヌエベ・オ・ディエス・イ・ペルディエンドー・ドス・オ・トレス(勝っている時は9分、10分あって、負けている時は2分、3分しかない)」と愚痴っていたものですが、「probablemente no habría tenido incidencia en el marcador/プロバブレメンテ・ノー・アブリア・テニードー・インシデンシア・エン・エル・マルカドール(おそらくスコアに変化はなかったかもしれない)」という見解も結構、妥当だったかと。
何せ、エルチェ戦、CLシャフタール戦とここ3試合、マドリーは2-1の僅少差で、最後はドキドキさせられながらもしぶとく勝利していますからね。今季のラージョはまだアウェイでは1勝しかしていませんし、兄貴分に負けても6位のままと、昇格組にしては文句のつけようのないポジションにいるとなれば、そうそう物議を醸す必要もないんですが、ショックは1日置いてやって来ることに。というのも前の試合での打撲で先発を外れたファルカオだったんですが、マドリー戦でのケガは部位も違うし、大したことはなさそうというイラオラ監督の予想が大外れ。ええ、右太ももの肉離れで全治1カ月となり、次節のマジョルカ戦を含め、しばらく彼のゴールを当てにできないラージョも大変ですが、現在4位ながら、まだW杯出場への道半ばのコロンビア代表のブラジル、パラグアイ戦にも出られないとは、まったくツイていません。
一方、「80分までは5、6点取れそうな強いチームを見ることができた。Cuando tú encajas un gol y te quedan 10 minutos es normal que te venga un poco de miedo/クアンドー・トゥ・エンカハス・ウン・ゴル・イ・テ・ケダン・ディエス・ミヌートス・エス・ノルマル・ケ・テ・ベンガ・ウン・ポコ・デ・ミエードー(ゴールを入れられて、あと10分残っているなら、少々、恐怖を感じるのは普通だ)」と話していたアンチェロティ監督は至って満足そうで、何せ同日はバルサがまたしても躓いて、とうとう勝ち点差が10まで開きましたからね。順位も2位とはいえ、首位のレアル・ソシエダとはたったの1差で、しかも消化試合が1つ少ないとなれば、ここでリーガ中断となるのは勿体ない?
ちなみに今回、マドリーから各国代表に出向する選手は、ほぼ1年ぶりにスペイン代表に復帰したカルバハルやアトレティコとの試合で負傷したフィルミノ(リバプール)の代わりにブラジル代表追加招集となったビニシウスを含めて12人。クラブの試合にはまったく出ずにウェールズ代表に行ってしまったベイルや最近、完全に控え待遇となってしまい、ベルギー代表に活路を見出したいアザールなどがケガして帰って来ないといいんですが、一番、困るのはやはり、ベンゼマ(フランス)とクルトワ(ベルギー)に障りがあることでしょうか。
そして翌日曜、もう1つの弟分ヘタフェがラ・セラミカで前半10分、トリゲロスに決められた1点をアタッカー総動員しても返せず、ビジャレアルに1-0で敗戦。またしても最下位脱出に失敗して、リーガ再開後のカディス戦に全てを懸けることになった後、アトレティコがメスタジャでバレンシアを対戦したんですが、こちらは開始早々8分にアクシデントに見舞われます。ええ、トリッピアーが左肩を脱臼してしまい、急遽、ベルサイコが入ることになったんですが、これに関してはそれ程、影響はなかったかと。35分には引いて守るバレンシアの隙間を縫って、コレアが送ったスルーパスをルイス・スアレスが先制点にしてくれましたしね。でも、困りますよねえ。せっかくのリードを後半5分にはゲデスのシュートをサビッチが胸に当て、オウンゴールで同点にされているようでは。
でも大丈夫、13分にはこのところ、アトレティコ時代第1期の調子を取り戻しつつあったグリーズマンがjugadon(フガドン/スーパープレー)を披露。自陣センター近くでギジャモンからボールを奪うと、そのまま一気にドリブルで敵エリア前まで上がり、豪快なシュートを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。グリーズマンはその3分後にもスアレスにスルーパスを送り、うーん、そこからゴール前でもつれて、最後はベルサイコが押し込んだところ、VAR(ビデオ審判)による判定で3点目がスコアボードに挙がるのにはちょっと、時間がかかったんですけどね。これで1-3となれば、アトレティコの勝利を疑う者は1人もいなかったはずが…。
「Ha sido un grandísimo partido, con 80-85 minutos muy buenos/ア・シードー・ウン・グランディシモ・パルティードー、コン・オチェンターノベンタ・ミヌートス・ムイ・ブエノス(素晴らしい試合だった。80-85分まではとても良くて)」(シメオネ監督)というのはお隣さんと同じとはいえ、その後が大違い。後半終盤になると、ヤケに敵に攻め込まれていたアトレティコは守備固めにコレアに代えて、コンドグビアを入れていたんですけどね。もしや昨季の11月、主力選手の大量放出で沈みゆく船のごときだったチームを見捨て、アトレティコに移籍したことを許していなかったバレンシアファンからpito(ピト/ブーイング)を受けでもして、頭に血が昇ってしまったんでしょうか。
ロスタイム2分、その彼がカウンター攻撃で敵陣に向けてドリブルを始めたんですが、いつまで経ってもパスを出さず。シメオネ監督までが、「Qué haces Kondogbia?, ¿Qué haces?/ケ・アセス・コンドドグビア?ケ・アセス(コンドグビア、何やってるんだ?)」と叫んでいましたが、案の定、最後はバレンシアの選手に囲まれて、ロストボールすることに。それを起点として、また上がって来た相手はガヤのクロスをこちらも40分に入ったウーゴ・ドゥロが押し込んで1点差に迫ります。ええ、迫られたんですが、でもまだアトレティコは勝っていたんですよ!それが、イラオラ監督も実に的を得たことを言ったもの。悪夢のロスタイム7分、グリーズマンが左サイドで犯したファールから、FKをゲデスが上げたところ、ドゥロを誰もカバーしておらず、ヘタフェからバレンシアに呼んでくれたボルダラス監督への恩返し同点ヘッドを決められているって、ちょっとお、これは一体、誰の責任?
はい、「El entrenador se equivocó y el equipo cayó por culpa del entrenador/エル・エントレナドール・セ・エキボコ・イ・エル・エキポ・カジョ・ポル・クルバ・デル・エントレナドール(監督が間違えたから、チームは監督のせいで勝ち点を落とした)」というのはシメオネ監督の弁。でもねえ、先日のリバプール戦でも易々と2点を奪われていたように、このところの彼らの守備面におけるダメダメぶりは今に始まったことじゃないですからね。「Los errores se pagan en el fútbol y cuando uno no aprende, paga/ロス・エローレス・セ・パガン・エン・エル・フトボル・イ・クアンドー・ウノ・ノー・アプレンデ、パガ(サッカーではミスのツケを払う。学ばないとツケを払う)」(シメオネ監督)なのは当然なんですが、いやお願い、ちょっとは学習してくださいよ。これじゃ全然、土曜に前半3点リードしながら、後半、セルタに反撃を許し、ロスタイム6分にイアゴ・アスパスに同点ゴールを決められていたバルサを笑っていられませんって。
実際、こんな形で3-3の引分けに持ち込まれたら、「Hoy es casi como si hubiésemos perdido/オイ・エス・カシー・コモ・シー・ウビエセモス・ペルディードー(今日はほとんど負けたようなもの)」(コケ)ですが、何せ、10月の代表戦後の彼らはベティスに勝っただけですからね。あとはCLリバプール戦に連敗、リーガはレアル・ソシエダ、レバンテ、バレンシアと引分けとパッとしないんですが、守備の特訓をしようにも今回の代表戦では11人が各国に出向。せめて居残り組のエルモーソ、フェリペ、ロディ、ベルサイコらDF陣は鋭意努力して、少しでもGKオブラクの負担を軽減してあげられるようになってほしいものですが、さて。一応、こんなアトレティコでもリーガはマドリーと勝ち点差4の4位ですし、再来週のオサスナ戦にはジョレンテも戻って来られそうなので、まだ絶望することはない…はずです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
その翌日にはセルタ戦でアンス・ファティ、エリック・ガルシア、そしてU21スペイン代表に招集されていたニコら、バルサ勢からケガ人が一気に発生。ルイス・エンリケ監督はすぐにラウール・デ・トマス(エスパニョール)とディエゴ・ジョレンテ(リーズ)を追加招集したんですが、日曜にもヘタフェ戦序盤に負傷したダンジュマの代わりに入ったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)も打撲でハーフに交代。こちらはメンバー24人で乗り切るか、やはり追加招集かで迷ったようですが、もう歴史は繰り返すですよね。10月のネーションズリーグ・ファイナルフォー用の初期リストに選ばれながら、負傷が再発したペドリ(バルサ、今も負傷のリハビリ中)の代わりに招集された後、自身もネンザして、セルジ・ロベルト(バルサ、現在はまた負傷で離脱中)に席を譲っていたブライス・メンデス(セルタ)が月曜午後には合流することに。
まずは木曜、ジョージアvsスウェーデン戦の結果を確認した後、午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)から、アテナのオリンピック・スタジアムで開催されるギリシャ戦に勝って、日曜にセビージャ(スペイン南部)のカルトゥハでスウェーデンとの直接対決に挑むことになりますが、うーん。ラス・ロサスのグランドで週末の敵から一転、チームメートとなったブスケツ、ジョルディ・アルバ(バルサ)とブライス・メンデス、コケ(アトレティコ)とカルロス・ソレル、ガヤ(バレンシア)らの間にどういう会話があったのかはさておき、再招集となったモラタ(ユベントス)やダニ・オルモ(ライプツィヒ)もまだ負傷明けで本調子ではなさそうですしね。ゴールは現在、7得点で国産ピチチ(得点王)である、初招集のラウール・デ・トマスに頼ることになるんでしょうか。
え、それでparon(パロン/リーガの中断期間)直前のリーガはどうだったのかって?いやあ、どうも今回はマドリッドの両雄に吉凶くっきり差が出てしまってねえ。まずは土曜にレアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウで兄弟分ダービーに挑んだんですが、立ち上がり、開始40秒もしないうち、ラージョのアルバロ・ガルシアがエリア内からフリーで撃ったシュートが決まっていれば、試合の展開もかなり違ったものになっていたかと。それが前半中はエスタディオ・バジェカスと比べて、どうにも縦が長いピッチに慣れなかったんですかね。4分、カルバハルのクロスをベンゼマが落とし、ビニシウスが決めたゴールはオフサイドで免れたものの、15分にはアセンシオのアシストでベンゼマに先制点を奪われてしまうことに。更に38分にもアラバのクロスからベンゼマが再び決め、先日のCLシャフタール戦同様、doblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)を達成しているって、もしや今年のバロンドールの本命が彼というのはあながちウソではない?
後半になってもマドリーの猛攻は続いたんですが、後でクロースも「Si metemos el tercero está acabado el partido/シー・メテモス・エル・テルセーロ・エスタ・アカバードー・エル・パルティードー(もし3点目を取っていたら、試合は終わっていただろう)」と悔やんでいたように追加点は生まれず。そんな中、イラオラ監督がいよいよ、待望のファルカオを24分に投入したんですよ。するとその7分後、一度は撃ち損じたボールをアルバロ・ガルシアがゴール前に戻したところ、el Tigre(エル・ティグレ/虎、ファルカオの愛称)が完璧なヘッド。これで1点差に迫り、チームの気勢も上がったんですが、それから少ししかしないうちにその彼がケガして交代することになるとは!
とはいえ、そんな逆境にもめげず、弟分は最後の最後まで意地を見せてくれます。46分にはバリウのシュートを発端にGKクルトワが座り込んでいる間、バレンティンがカマビンガに倒されながら蹴ったボールをクロースがゴールライン前でクリア。続くウナイ・ロペスのシュートはクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という、同点のビッグチャンスがあったんですが、ロスタイムが3分しかなかったのが災いしましたかね。イラオラ監督もこの件に関しては、「Cuando vas ganando te ponen 9 o 10 y perdiendo 2 o 3/クアンドー・バス・ガナンドー・テ・ポネン・ヌエベ・オ・ディエス・イ・ペルディエンドー・ドス・オ・トレス(勝っている時は9分、10分あって、負けている時は2分、3分しかない)」と愚痴っていたものですが、「probablemente no habría tenido incidencia en el marcador/プロバブレメンテ・ノー・アブリア・テニードー・インシデンシア・エン・エル・マルカドール(おそらくスコアに変化はなかったかもしれない)」という見解も結構、妥当だったかと。
何せ、エルチェ戦、CLシャフタール戦とここ3試合、マドリーは2-1の僅少差で、最後はドキドキさせられながらもしぶとく勝利していますからね。今季のラージョはまだアウェイでは1勝しかしていませんし、兄貴分に負けても6位のままと、昇格組にしては文句のつけようのないポジションにいるとなれば、そうそう物議を醸す必要もないんですが、ショックは1日置いてやって来ることに。というのも前の試合での打撲で先発を外れたファルカオだったんですが、マドリー戦でのケガは部位も違うし、大したことはなさそうというイラオラ監督の予想が大外れ。ええ、右太ももの肉離れで全治1カ月となり、次節のマジョルカ戦を含め、しばらく彼のゴールを当てにできないラージョも大変ですが、現在4位ながら、まだW杯出場への道半ばのコロンビア代表のブラジル、パラグアイ戦にも出られないとは、まったくツイていません。
一方、「80分までは5、6点取れそうな強いチームを見ることができた。Cuando tú encajas un gol y te quedan 10 minutos es normal que te venga un poco de miedo/クアンドー・トゥ・エンカハス・ウン・ゴル・イ・テ・ケダン・ディエス・ミヌートス・エス・ノルマル・ケ・テ・ベンガ・ウン・ポコ・デ・ミエードー(ゴールを入れられて、あと10分残っているなら、少々、恐怖を感じるのは普通だ)」と話していたアンチェロティ監督は至って満足そうで、何せ同日はバルサがまたしても躓いて、とうとう勝ち点差が10まで開きましたからね。順位も2位とはいえ、首位のレアル・ソシエダとはたったの1差で、しかも消化試合が1つ少ないとなれば、ここでリーガ中断となるのは勿体ない?
ちなみに今回、マドリーから各国代表に出向する選手は、ほぼ1年ぶりにスペイン代表に復帰したカルバハルやアトレティコとの試合で負傷したフィルミノ(リバプール)の代わりにブラジル代表追加招集となったビニシウスを含めて12人。クラブの試合にはまったく出ずにウェールズ代表に行ってしまったベイルや最近、完全に控え待遇となってしまい、ベルギー代表に活路を見出したいアザールなどがケガして帰って来ないといいんですが、一番、困るのはやはり、ベンゼマ(フランス)とクルトワ(ベルギー)に障りがあることでしょうか。
そして翌日曜、もう1つの弟分ヘタフェがラ・セラミカで前半10分、トリゲロスに決められた1点をアタッカー総動員しても返せず、ビジャレアルに1-0で敗戦。またしても最下位脱出に失敗して、リーガ再開後のカディス戦に全てを懸けることになった後、アトレティコがメスタジャでバレンシアを対戦したんですが、こちらは開始早々8分にアクシデントに見舞われます。ええ、トリッピアーが左肩を脱臼してしまい、急遽、ベルサイコが入ることになったんですが、これに関してはそれ程、影響はなかったかと。35分には引いて守るバレンシアの隙間を縫って、コレアが送ったスルーパスをルイス・スアレスが先制点にしてくれましたしね。でも、困りますよねえ。せっかくのリードを後半5分にはゲデスのシュートをサビッチが胸に当て、オウンゴールで同点にされているようでは。
でも大丈夫、13分にはこのところ、アトレティコ時代第1期の調子を取り戻しつつあったグリーズマンがjugadon(フガドン/スーパープレー)を披露。自陣センター近くでギジャモンからボールを奪うと、そのまま一気にドリブルで敵エリア前まで上がり、豪快なシュートを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。グリーズマンはその3分後にもスアレスにスルーパスを送り、うーん、そこからゴール前でもつれて、最後はベルサイコが押し込んだところ、VAR(ビデオ審判)による判定で3点目がスコアボードに挙がるのにはちょっと、時間がかかったんですけどね。これで1-3となれば、アトレティコの勝利を疑う者は1人もいなかったはずが…。
「Ha sido un grandísimo partido, con 80-85 minutos muy buenos/ア・シードー・ウン・グランディシモ・パルティードー、コン・オチェンターノベンタ・ミヌートス・ムイ・ブエノス(素晴らしい試合だった。80-85分まではとても良くて)」(シメオネ監督)というのはお隣さんと同じとはいえ、その後が大違い。後半終盤になると、ヤケに敵に攻め込まれていたアトレティコは守備固めにコレアに代えて、コンドグビアを入れていたんですけどね。もしや昨季の11月、主力選手の大量放出で沈みゆく船のごときだったチームを見捨て、アトレティコに移籍したことを許していなかったバレンシアファンからpito(ピト/ブーイング)を受けでもして、頭に血が昇ってしまったんでしょうか。
ロスタイム2分、その彼がカウンター攻撃で敵陣に向けてドリブルを始めたんですが、いつまで経ってもパスを出さず。シメオネ監督までが、「Qué haces Kondogbia?, ¿Qué haces?/ケ・アセス・コンドドグビア?ケ・アセス(コンドグビア、何やってるんだ?)」と叫んでいましたが、案の定、最後はバレンシアの選手に囲まれて、ロストボールすることに。それを起点として、また上がって来た相手はガヤのクロスをこちらも40分に入ったウーゴ・ドゥロが押し込んで1点差に迫ります。ええ、迫られたんですが、でもまだアトレティコは勝っていたんですよ!それが、イラオラ監督も実に的を得たことを言ったもの。悪夢のロスタイム7分、グリーズマンが左サイドで犯したファールから、FKをゲデスが上げたところ、ドゥロを誰もカバーしておらず、ヘタフェからバレンシアに呼んでくれたボルダラス監督への恩返し同点ヘッドを決められているって、ちょっとお、これは一体、誰の責任?
はい、「El entrenador se equivocó y el equipo cayó por culpa del entrenador/エル・エントレナドール・セ・エキボコ・イ・エル・エキポ・カジョ・ポル・クルバ・デル・エントレナドール(監督が間違えたから、チームは監督のせいで勝ち点を落とした)」というのはシメオネ監督の弁。でもねえ、先日のリバプール戦でも易々と2点を奪われていたように、このところの彼らの守備面におけるダメダメぶりは今に始まったことじゃないですからね。「Los errores se pagan en el fútbol y cuando uno no aprende, paga/ロス・エローレス・セ・パガン・エン・エル・フトボル・イ・クアンドー・ウノ・ノー・アプレンデ、パガ(サッカーではミスのツケを払う。学ばないとツケを払う)」(シメオネ監督)なのは当然なんですが、いやお願い、ちょっとは学習してくださいよ。これじゃ全然、土曜に前半3点リードしながら、後半、セルタに反撃を許し、ロスタイム6分にイアゴ・アスパスに同点ゴールを決められていたバルサを笑っていられませんって。
実際、こんな形で3-3の引分けに持ち込まれたら、「Hoy es casi como si hubiésemos perdido/オイ・エス・カシー・コモ・シー・ウビエセモス・ペルディードー(今日はほとんど負けたようなもの)」(コケ)ですが、何せ、10月の代表戦後の彼らはベティスに勝っただけですからね。あとはCLリバプール戦に連敗、リーガはレアル・ソシエダ、レバンテ、バレンシアと引分けとパッとしないんですが、守備の特訓をしようにも今回の代表戦では11人が各国に出向。せめて居残り組のエルモーソ、フェリペ、ロディ、ベルサイコらDF陣は鋭意努力して、少しでもGKオブラクの負担を軽減してあげられるようになってほしいものですが、さて。一応、こんなアトレティコでもリーガはマドリーと勝ち点差4の4位ですし、再来週のオサスナ戦にはジョレンテも戻って来られそうなので、まだ絶望することはない…はずです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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