今回は時間稼ぎができた…/原ゆみこのマドリッド

2021.10.16 21:00 Sat
©Atlético de Madrid
「クルトワの言った通りになったわ」そんな風に私が茫然としていたのは金曜日、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)に続き、ネーションズリーグ・ファイナルフォーに参加したスペイン代表のオジャルサバル(レアル・ソシエダ)が練習中、ハムストリングに小さい肉離れを起こし、戦線離脱したという報を聞いた時のことでした。いやあ、クルトワがトリノでの3位決定戦の後、近年の試合数過多やバケーションの少ないことをあげつらい、このままだと皆、ケガしてしまうと怒っていたのは半分、ベルギーがイタリアにも2-1と負け、計5失点の4位で大会を去ることになったせいによる、八つ当たりもあるんじゃないかと思っていた私ですけどね。

右足中足骨の骨折が判明したフェランに関しては実際、ケガをしたのは準決勝のイタリア戦でのことだったため、絶対決勝に出たいという当人の意欲も災いした感があって、この夏の東京オリンピック・グループリーグ初戦で足首を捻挫。大会中に復帰するため、ムリにトレーニングしたものの、以降の試合には出られず、帰国してみれば、実は足首の靭帯を3つも断裂していることがわかり、今でもリハビリ中のセバージョス(レアル・マドリー)にちょっと似ている気もしますけどね。まあ、後者はこのところ、ルイス・エンリケ監督に呼ばれていないのが不幸中の幸いで、イタリア相手に2ゴールを決めて、スペインに決勝進出をもたらす原動力となったフェランが全治2カ月半、つまり2022年W杯出場が懸かった11月の予選2試合にも出られないのはあまりに痛いかと。
一方、オジャルサバルも決勝のフランス戦で先制ゴールを挙げた貴重なスペイン代表の得点源なんですが、こちらは今年の夏、ユーロ2020と東京オリンピックを梯子した6選手のうちの1人。このネーションズリーグ・ファイナルフォー中も24才という若さを過信したか、「バケーションがなくても、今のフィジカルコンディションはベストで、それを利用したい」と言っていましたが、いやいや。だってえ、同じ梯子組、18才のペドリ(バルサ)ですら、9月に負傷して、ミラノに行くことができなかったんですよ。

ダニ・オルモ(ライプツィヒ)もリーグ開幕からケガでまだ出場していませんしね。とりあえず、GKウナイ・シモン(アスレティック)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、エリック・ガルシア(バルサ)は元気なようですが、ユーロオンリーだったジェラール・モレノ(ビジャレアル)やモラタ(ユベントス)もファイナルフォーには負傷で招集できず。これじゃ、ルイス・エンリケ監督もギリシャ、スウェーデンを連続撃破して、グループ首位でW杯出場権を手に入れるはずの2試合に一体、誰が使えるか、今から気が気ではない?

まあ、国際大会や代表戦数についてはFIFAやUEFA、各大陸連盟が考えることなので、今は置いておくとして、この土曜にもう再開するリーガの話もしていかないと。実はこの9節は9月のparon(パロン/リーガの停止期間)直後の節同様、CONMEBOL(南米サッカー連盟)のW杯予選3試合開催と翌週火曜にCLグループリーグをプレーするチームの過密日程を慮って、2カードが延期となっているんですが、今回はそれがスペイン首都の両雄に当たることに。ええ、グラナダvsアトレティコ戦とレアル・マドリーvsアスレティック戦なんですが、ヨーロッパの大会のないマドリッドの弟分たちは2週間ぶりにリーガ戦に挑みます。
先陣を切るのは前節にレアル・ソシエダと1-1で分け、8試合で勝ち点1の最下位という最悪の流れを断ち切るため、ミチェル監督を解任し、キケ・サンチェス・フローレス監督を招聘したヘタフェ。同じく、パコ・ロペス監督から、ハビエル・ペレイラ監督(河南嵩山龍門との契約を破棄して就任)になったレバンテと土曜にシュタット・デ・バレンシアで対戦となるんですが、向こうは新任指揮官が中国から来るのに時間がかかり、まだ数回しか、チームのセッションを率いておらず、これは代表戦週間入り直後から、ダブルセッションを重ねてきたキケ監督の方に有利に働くかも。幸い、各国代表組に南米勢はおらず、キャプテンのジェネ(トーゴ)も、マクシモビッチとミトロビッチのセルビアコンビなど、それこそW杯予選グループ首位で意気揚々と水曜には戻って来ていますからね。

まだビトロとマタはケガが治っていないようですが、キケ監督も「No son jugadores rotos, no son jugadores que están mentalmente atravesando un drama/ノー・ソン・フガドーレス・ロトス、ノー・ソン・フガドーレス・ケ・エスタン・メンタルメンテ・アトラベサンドー・ウン・ドラマ(選手たちは壊れている訳じゃなく、メンタル的に悲劇に浸ってもない)」と言っていたように、チームは前向きになっているようですからね。このレバンテ、セルタ、グラナダ、エスパニョールと続く、上位陣との試合がない間に白星を稼いでいけば、降格圏脱出も早々にできると思いますが、さて。怖いのはやはり、まだ今季勝利のない相手も同じことを考えていることですが、果たして新監督効果勝負はどちらに軍配が挙がるんでしょうか。

そして翌日曜午後2時からエスタディオ・バジェカスにエルチェを迎えるのがラージョなんですが、丁度、前節からキャパ100%の入場が可能になったのを機にクラブは遅ればせながら、今季のabono(アボノ/年間指定席)を発売。ところが、またシステムトラブルでサイトがダウンしたようで、木曜にはスタジアムにファンが詰めかける騒ぎになっていましたが、購入できてもそのカードを受け取るのに試合前日、メトロでもっと遥か先まで南下して、駅から徒歩30分の練習場まで行かないといけないって、いやホント、このクラブ、大丈夫?テレ・マドリッド(ローカルTV局)の現地レポでは、年少の子供の席が親と反対のスタンドになっていたとかいう話もありましたし、この辺がやはり、試合中など、何かというと、「Presa vete ya!/プレサ・ベテ・ジャ(プレサ会長、もう出て行け)」のカンティコが始まってしまう理由なのかもしれません。

え、それよりコロンビア代表に行っていたファルカオがちゃんと戻って来られるのか方が気になるって?いやあ、ウルグアイ、ブラジル、エクアドルとの3試合に彼が出場しながら、全部スコアレスドローで終わったというのも何ですが、エルチェにも同僚のモヒカがいて、エスクリバ監督が金曜の午後には着くと言っていたため、おそらくファルカオも一緒かと。加えて、相手はチリから帰って来るエンソ・リコが土曜着と、あと2人の各国代表組がバリウ(アルバニア)とディミトリエフスキ(マケドニア)のヨーロッパ勢であるラージョはむしろ、余裕のある方なんですが、代表戦前はオサスナに1-0で負けていますからね。それでも6位の高みにいるとはいえ、EL出場権はともかく、なるたけ早く1部残留を確定させるためにも、ファルカオのゴールがまた見られるといいですよね。

一方、今週末は試合がなく、火曜にそれぞれ、アウェイでシャフタール、ワンダ・メトロポリターノでリバプールとのCLグループリーグ3節を迎える兄貴分たちはというと。まずは南米に出向していた選手たちの動向から話すと、マドリーからブラジル代表に招集されたカセミロ、ミリトン、ビニシウスは悲喜こもごも。というのも親知らずで歯茎が腫れて、1試合も出ずに直帰したカセミロは十分休めたものの、ミリトンは2試合目のコロンビア戦で右脚を負傷。3試合目には出ずに戻り、それ程、重傷ではなかったのは良かったんですが、ビニシウスなど、初戦のベネズエラ戦に途中出場しただけで、あとはベンチ観戦だったなんて、一体、何のための長旅だったんでしょう。

同じことはお隣さんのコレアにも言えて、こちらはまったく出場機会がもらえず。いえ、デ・パウルの方は3試合全部先発で、3-0と勝ったウルグアイ戦ではゴールも挙げる活躍ぶりだったんですけどね。ビニシウスにしろ、コレアにしろ、今季は開幕からゴールづいていたものの、最近はスランプ気味という共通点がありますが、まあ、首位と2位、どちらも代表もW杯出場圏内にいるのは喜ばしいことかと。何せ、両チームから選手が派遣されているウルグアイはこの3試合、1分け2敗で5位に落ち、このままだと大陸間プレーオフに行く破目になりますからね。その上、マドリーはバルベルデが皆勤、アトレティコもルイス・スアレスが3連続先発しながら、彼の得点はブラジルに4-1で負けた最後の試合で焼石に水のFKゴールだけなんですよ。

更にアトレティコのヒメネスは1試合目のコロンビア戦で太ももを負傷して帰還と、いよいよグループ内最強の敵、リバプールが2年前の16強対決敗退のリベンジを懸けて乗り込んでくるというのに、サビッチの出場停止処分もまだ終わっていないとあって、少々、シメオネ監督のチームは守備体制が不安なんですけどね。木曜にはコケ(スペイン)、グリーズマン(フランス)、カラスコ(ベルギー)のネーションズリーグ・ファイナルフォー組がチーム練習はお休みだったにも関わらず、マハダオンダ(マドリッド近郊)に出勤していたと聞いたため、翌日は私も見学に行ってきたんですが、開始から15分間のマスコミ公開中にはリハビリ最終段階にいるはずのマルコス・ジョレンテやクーニャはヒメネス同様、グラウンドの片隅にあるテント内のジムにいたようで、姿は見えず。

いやあ、先日はシメオネ監督がアルゼンチンのメディアから受けたインタビューで、マハダオンダにも以前はなかった完璧なジム設備が今では整ったし、選手たちが朝食や昼食を一緒に食べられるようにもなったと話していたんですけどね。それでも「ウチには使えるグラウンドが2つしかない。Son dos canchas que nos pueden ver desde afuera cotidianamente/ソン・ドス・カンチャス・ケ・ノス・プエデン・ベル・デスデ・アフエラ・コティディアーナメンテ(日常的に外から見ることができる2つのグラウンドだ)。キャンバス地で周りは覆ったが、日光の当たり具合によっては見えてしまうんだから、同じだよ」と、お隣さんの入り口から15分は歩かないとグラウンドに着かない、バルデベバス(バラハス空港の近く)のような広大な練習場が欲しいみたいでしたけどね。

といっても何回か、外縁を周ったことのある私も、ま、キャンバス地に穴が開いている時はありましたが、逆にクラブの人から注意されるのが怖くて、そうそう覗き見はできず。個人的には昔のようにファンがフェンスに張り付いて応援しているぐらいの方が、チームに親しみが持てるんじゃないかと思ったりもするんですが、こればっかりはねえ。結局、内通者がいるようなマルカやAS(大手スポーツ紙)の記事で、その日は後からジョレンテが出て来て、ボールを蹴っていたとか、コンドグビアを急造CBとして使っていたとか、知るしかなかったんですが、まだ日にちもありますし、もっと近くなってから、リバプール戦の先発予想などはお知らせしていきたいかと。

一方、マドリーではミリトンだけでなく、水曜にはオーストリア代表のデンマーク戦でアラバも左ヒザをケガしたと報じられ、シャフタール戦に向けて暗雲が垂れ込めたんですが、金曜には2人共、火曜までに回復できる見込みに。うーん、セバージョス、ベイル、カルバハルはもちろん、ネーションズリーグ・ファイナルフォー準決勝フランス戦でハムストリングの筋肉痛と診断されたアザールには悪い前例もあって、ちょっと微妙なんですが、カセミロやフランスU21代表を早退して、足の甲の治療に専念したカマビンガも18才と若いせいか、もう治ったようですしね。この2週間でイスコ、アセンシオ、メンディ、マルセロらも普通に練習できるようになったため、キエフでのシャルタール戦で人材不足に陥るということはなさそうな。

ただ、ゴールアベレージの差でアトレティコを抑え、リーガ首位を保っているマドリーですが、代表戦週間前の成績は3試合白星なしと低迷気味。何より、サンティアゴ・ベルナベウでのCLシェリフ戦、RCDEスタジアムでのエスパニョール戦をどちらも最少得点差で落としたのは頂けなかったんですが、今はベンゼマが乗りに乗っていますからね。ただ、その彼が今年のバロンドール賞に輝けるかという話題以外、ここ数日はエムバペ(PSG)やポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)ら、来季の補強選手候補ばかり、取り沙汰されていたため、もしかしてスペインメディアのマドリー番記者も他にファンの夢を膨らませるネタがないのかなという気もしましたが、さて。何はともあれ、昨季のCLではエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)でも、NSCオリンピスキーでも負けてしまったシャフタールにはちゃんとリベンジしておかないといけませんよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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「差がありすぎて悲しいわ」そんな風に私が溜息をついていたのは水曜が終わる頃、道沿いのお店からはみ出して、そこら中でお祝いを続けている大勢のレアル・マドリーファンを避けながら、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)から家までの数ブロックを歩いていた時のことでした。いやあ、CL準々決勝2ndレグがあった今週は火曜水曜と続けて、バル観戦することになったんですけどね。火曜のドルトントvsアトレティコ戦ではキックオフ30分前に入って、余裕でTVが見やすいテーブル席をゲット。それが水曜のマンチェスター・シティvsマドリー戦では1時間近く前に行ったにも関わらず、すでに満席状態に。 奇跡的に1つだけ空いていたカウンター席を見つけ、立ち見するファンの隙間から、試合を追わないといけなかったのは、まあ、マドリーのCLビッグマッチでは恒例のことですからね。おまけに延長戦に突入し、120分中100分以上はシティに攻められっぱなしだったアンチェロッティ監督のチームが最後はPK戦で勝ったとなれば、店内がお祭り騒ぎになったのも当然ですが、え?アトレティコだって、16強対決のインテル戦2ndレグでは早いうちに2点ビハインドになりながら、グリーズマンとメンフィス・デパイのゴールで2-2に追いつくと、最後はGKオブラクが敵の2本弾いて、PK戦で突破していなかったかって? まあ、そうなんですが、あれは7万人近いアトレティコファンの応援に支えられ、当時はコパ・デル・レイ以外、1年以上無敗を保っていたメトロポリターノのマジックがあってこそでしたからね。一歩、ホームを離れれば、今回のような悲惨な結末になるのは十分、予測できたんですが、それがお隣さんときたら、マドリーファン3000人は駆けつけたものの、もちろん圧倒的に少数派。しかもここ6年間、昨季4-0で彼らが負けた準決勝2ndレグを含め、CL31試合無敗(2引分け)の難攻不落の要塞、エティハド・スタジアムで勝ってしまうとはやっぱり、”Reyes de Europa/レジェス・デ・エウロッパ(ヨーロッパの王者)”を自称するだけのことはある? そのリーガでも首位独走するマドリーが今季、公式戦42試合で唯一、負けたのがリーガ前半戦とコパ16強対決のアトレティコ戦だけというのはまさに皮肉なんですが、それもメトロポリターノでの話ですからね。しかも同じ水曜日、アーセナルにアリアンツ・アレナで1-0と勝ち、総合スコア3-2で準決勝に進出したバイエルンと当たる4月30日の1stレグはアウェイで、5月8日の2ndレグをサンティアゴ・ベルナベウでプレーできるとなれば、いよいよ、Decimoquinto(デシモキント/15回目のCL優勝)への秒読み態勢に入ったと言っていいかと思いますが…まあ、とりあえず、マドリッド勢の2試合がどんなだったか、お話ししていくことにしましょうか。 火曜のアトレティコは1週間前の1stレグで2-1勝利と1点リードして、ジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込んだんですが、開始2分にはいきなり大ピンチが到来。そう、敵陣でモラタがボールを失ったことがキッカケでドルトムントのカウンターを喰らい、エリア内からザビッツァーにシュートを撃たれた時には思わず、私も目を瞑ってしまったんですが、幸い、この時は出場停止のサムエル・リノの代わりに入っていたアスピリクエタがボールをカットしてくれて、事なきを得ることに。するとその2分後にはビッグチャスが巡って来て、こちらもカウンターで抜け出したモラタが敵陣を独走すると、GKコベルと1対1となったんですが、うーん、彼は今季、すでに1シーズンで決められるゴール数の上限に達してしまったんでしょうかね。vaselina(バセリーナ/ループシュート)を外してしまい、アトレティコがリードを2点に広げられなかったのは本当に痛かったかと。 実際、メトロポリターノでの遠慮がちな前半とは真逆で、時間が経つにつれ、Gelbe Wand(黄色の壁)に後押しされたドルトムントはアトレティコ陣内を跋扈するようになっていたんですが、他にも味方内に敵がいてはねえ。34分、直近のW杯王者の一員とはいえ、すでに今季の不調ぶりは言い尽くされているにも関わらず、シメオネ監督には同胞のアルゼンチン人枠があるのか、先発に入ったモリーナが自陣右サイド奥で回収したボールをフンメルスにパス。それが1stレグでも途中出場でゲームの流れを変えたブラントに繋がって、エリア内左から、シュートを決められてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。 ただこれだけなら、まだ総合スコア同点ですから、焦ることはなかったんですが、39分にも同じエリア内右から、マートセンに逆転の2点目を入れられてしまったから、さあ大変!ええ、モラタはあんな調子ですし、週末のジローナ戦で2ゴールを挙げたグリーズマンもやはり、ドルトムント戦1stレグから中2日、そのリーガ戦からまた中2日で迎えたこの試合では前半からもう疲れていたんでしょうか。パスミス連続で、デパイも負傷でいない今、一体、どうすれば、アトレティコが得点できるのかと頭を抱えたものでしたが…。 それが、シメオネ監督が後半頭から、モラタ、モリーナ、そしてイエローカードをもらっていたアスピリクエタをコレア、バリオス、リケルメに一斉交代したのが功を奏したんですよ。いえ、CKからエルモーソがヘッドしたボールをフンメルスがクリアしようとして、オウンゴールとなった時はまだ、ジローナ戦でのツキがまだ続いているのかと希望が持ったぐらいだったんですけどね。12分にはコケのラストパスをやはり、エリア内でGKと1対1になりながら、外していたコレアがモラタと対照的に19分、リケルメのシュートが弾かれたボールを1度は敵DFに当てながら、2度目のトライでゴールに入れて面目躍如。まさかまさかの総合スコア3-4に逆転返ししてしまったから、ビックリしたの何のって。 でもねえ、以前のアトレティコなら、これで後は守り倒して勝てていたはずなんですが、今季の彼らは「No supimos cuidar el resultado. No fuimos inteligentes/ノー・スピモス・クイダール・エル・レスルタードー。ノー・フイモス・インテリヘンテス(ボクらは結果をケアすることを知らず、賢くなかった)」(デ・パル)というのがデフォルトなんですよ。メトロポリターノのアトレティコ同様、この日はスタンドのファンが一体となった応援に力づけられたドルトムントは26分、ザビッツァーのクロスをフュルクルークがヘッドして同点ゴールをゲット。その3分後にもまた、エリア内に入ったロングパスをアトレティコのDFたちがクリアできずにいるのをいいことに、駆け込んできたザビッツァーがとうとう勝ち越し点を挙げてしまったとなれば、もうお先真っ暗ですって。 ええ、アトレティコのベンチにはFWがBチームのニーニョしかおらず、前線を強化する術がもうありませんでしたからね。おまけにジローナ戦である程度、ローテーションはしていたものの、さすが3連戦目となると、選手の消耗度が激しく、だってえ、彼らはスタメンの平均年齢が30.6才の高齢化チームなんですよ。当然、若いバリオスやリケルメもその先輩たちのスピードに合わせて動かないといけないため、とても再逆転するどころではなく…今季のアウィエイ弱者、黄色のユニアレルギーを再確認させる如く、4-2(総合スコア5-4)で敗退してしまいましたっけ。 いえまあ、CL8強の中で最弱と言われていたドルトムント相手にこんな調子じゃ、たとえ、勝ち抜けていたとて、明るい未来は望めなかったでしょうからね。ただ、シメオネ監督も「No tuvimos contundencia y de tenerla hubiéramos ganado 6-4/ノー・トゥビモス・コントウンデンシア・イ・デ・テネールラ・ウビエラモス・ガナードー・セイス・クアトロ(ウチには決定力がなかった。あれば、6-4で勝っていただろう)」と言っていたように、優勢だった1stレグでもリノが絶好機にシュートを止められて、3点目を挙げられず。この日のモラタ、コレアも信じられないチャンスをムダにしてしまっているだけに、この問題の根は深いかと。 ただ同日、やはり1stレグで1点差勝ちしていたバルサも、こちらはアラウホの早期退場などもあり、ホームでも先制しながら、1-4という大逆転敗退(総合スコア4-6)。おかげで2025年に始まるFIFAクラブW杯出場権が手に入ったため、アトレティコが世間から叩かれることはあまりなかったんですけどね。何せ、まだリーガは7試合あって、5位のアスレティックと勝ち点4差の彼らは死ぬ気で4位のCL出場権を守らないといけませんからね。うちホーム3試合、アウェイ4試合となると、全然、安心できませんが、とにかく、中4日となる日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのアラベス戦では少しでも内弁慶を返上してくれるといいのですが。 そして水曜のマドリーは1stレグで3-3の引分けとまったくイーブンの状態でマンチェスター・シティに挑んだんですが、いえ、前半12分にカルバハルのロングボールをベリンガムが受け、バルベルデ、ビニシウスと繋いで、最後はCLキラーのロドリゴが2度撃ちでGKエデルソンを破って先制点をゲット。その時はさすが得意の大会だけあって、仕事が早いと感心したものだったんですけどね。それ以降は防戦一方で、とにかく、あんなにも長く自陣エリア付近に閉じ込められているマドリーを見るのは私も初めてだったような。 その状態は後半になっても変わらず、いやあ、シュートもかなり撃たれていたんですけどね。それでも得点できないのに業を煮やしたグァルディオラ監督が27分にグリーリッシュに代えて、ドクを投入。31分にはそのドクがエリア内奥から出したパスをリュディガーが遠くにクリアできず、とうとうデ・ブルイネに同点ゴールを入れられてしまうことに。はい、もちろんこれは根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)スイッチオンの状況で、通常のマドリーならば、勝ち越しゴールを求めて、邁進するはずと思いきや、いやあ、どうなっているんですかね。この日は変わらず、シティに囲まれて専守防衛のままだったため、それこそ、バルに詰め掛けたマドリーファンたちは頭を掻きむしっていたんですが…。 結局、試合は1-1のまま延長戦に突入し、後でロドリなど、「Imagino que en sus planes estaba llegar a la tanda de penaltis/イマヒノ・ケ・エン・スス・プラネス・エスタバ・ジェガール・ア・ラ・タンダ・デ・ペナルティス(彼らのプランはPK戦に持ち込むことたったと思う)」と言っていたんですけどね。実際、アンチェロッティ監督も「Ganar aquí se podía hacer sólo de esta manera/ガナール・アキー・セ・ポディア・アセール・ソロ・デ・エスタ・マネラ(ここで勝つにはこの方法しかない)」と認めていたため、それは正しかったんですが、でもお、コパ準決勝、決勝をPK戦で片をつけようとしたマジョルカでなく、彼らはマドリーなんですよ。 それがシティに33本(うち枠内9本)もシュートを撃ちまくられ、CKも18回蹴られ、ポゼッションもたった33%という状態でPK戦入り。もちろん、「El Real Madrid es el único que puede ganar de esta manera con una ocasión y defendiendo/エル・レアル・マドリッド・エス・エル・ウニコ・ケ・プエデ・ガナール・デ・エスタ・マネラ・コンン・ウナ・オカシオン・イ・デフェンディエンドー(マドリーはたった1度のチャンス、あとは守るだけという方法で勝てる唯一のチーム)。上手く守ったけど、自陣エリアから出なかった」(ロドリ)というのも、ある意味、マドリーのメリットではありますけどね。 実際、アンチェロッティ監督の息子、ダビテ・アシスタントコーチが゛「Jude es lanzador, Lucas es un gran lanzador, Nacho es un jugador con mucha experiencia y personalidad y Antonio es un jugador con huevos/ジュード・エス・ランサドール、ルーカス・エス・グラン・ランサドール、ナチョ・エス・ウン・フガド-ル・コン・ムーチャ・エクスペリエンシア・イ・ペルソナリダッド・イ・アントニオ・エス・ウン・フガドール・コン・ウエボス(ベリンガムはキッカー、ルーカス・バスケスも偉大なキッカー、ナチョは経験豊富でパーソナリティのある選手で、リュディガーは根性がある選手だ)」という理由で選んだPK戦のキッカーは最初に蹴ったモドリッチ以外、皆、成功。 シティに詳しいGKケパ(チェルシーからレンタル)や代表仲間に関してのモドリッチのアドバイスもあって、GKルーニンが相手の第2キッカー、ベルナルド・シウバのPKを動かずにキャッチ、続くコバチッチも止めるというお手柄を挙げ、最後はPK戦3-4で勝ち抜けたとはいえ、ちょっとスッキリしなかったのはきっと、私だけではなかったかと。まあ、バルのマドリーファンたちは狂喜乱舞していたため、別にいいんでしょうけどね。ちなみに守りすぎでこむら返りを起こし、交代せざるを得なくなったカルバハルとビニシウスもケガはしていないことが翌日にはわかり、日曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのベルナベウでのクラシコ(伝統の一戦)には出場可能だそう。 ここでCL準々決勝敗退で尾羽打ち枯らしたバルサを叩いて、一気にリーガ優勝をほぼ確実にしてしまえば、バイエルンとの準決勝にも心置きなく挑めるというものですが、そうそう、今週末はマドリッドの弟分2チームもホームゲーム。土曜にはラージョがエスタディオ・バジェカスにオサスナを迎えるんですが、折しも相手は月曜に0-1で負けたバレンシア戦でPKに失敗し、戦犯となったエースのブドミルが肋骨を3本骨折で今季絶望に。となれば、ゴール日照りに悩むイニゴ・ペレス監督のチームには1-0でもいいから、是非とも白星を挙げて、勝ち点40の残留ラインに少しでも近づいてほしいところかと。 一方、前節、そのラージョとの弟分ダービーでスコアレスドローに終わったヘタフェは日曜にレアル・ソシエダをコリセウムに迎えるんですが、こちらは勝ち点40まであと1つですからね。それだけでなく、同じ勝ち点で1つ下の11位にいるオサスナのアラサーテ監督は8差のコンフェレンスリーグ出場圏到達を諦めてしまったようですが、ボルダラス監督のチームはもうちょっと野心を持ってくれることを期待。ええ、直近のホームゲーム、セビージャ戦での差別的野次のせいで、一度はスタンドの一部閉鎖を命じられた処分も上訴委員会が撤回してくれましたからね。今季はもう、残り試合も少ないですし、相手がEL出場圏の6位であっても、決して臆することないプレーをファンの前で見せられたらいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.19 20:00 Fri

もっとCLが続いてほしい…/原ゆみこのマドリッド

「いきなりクライマックスが来ちゃった」そんな風に私が武者震いをしていたのは月曜日、午前中にマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習を済まし、午後にはバラハス空港から旅立つアトレティコの選手たちの写真をXで見た時のことでした。いやあ、1カ月近くかけて、トロトロやっていたCL16強対決と違い、準々決勝、準決勝になると、2週間で決着がつく短期決戦になるのはわかっていたんですけどね。それが昨季など、何をトチ狂ったか、シメオネ監督のチームはグループリーグで最下位敗退して、年明けからヨーロッパの大会とは完全に無縁に。 よって、レアル・マドリーだけを追っていれば良かったため、あまりせわしい思いをした記憶はなかったんですが、今季は両者共に準々決勝まで残っていますからね。しかもホームとアウェイの順番が一致して、先週は火水の連夜、1stレグを見にサンティアゴ・ベルナベウ、メトロポリターノに足を運んだかと思いきや、今週は2晩続けて、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のお世話になることに。しかもどちらも1stレグで大差をつけられず、アトレティコはドルトムントに2-1勝利、マドリーはマンチェスター・シティと3-3の引分けと、これって、延長戦突入の長丁場になることを覚悟しないといけない? それでも揃って勝ち抜けてくれれば、4月の末から5月の第2週にかけて開催される準決勝ではホーム、アウェイの順番が分かれてくれるんですが、え?最悪の場合、パリで2-3とPSGに勝ったバルサも含め、スペイン勢全てがこのラウンドで消える可能性もあるんじゃないかって?うーん、一応、3チーム共、先週末のリーガで勝利して、流れは悪くないんですが、リーグ1の試合が延期されてプレーしていないPSGはともかく、ドルトムントも土曜にはメンヘングラッドバッハにザビッツァーの2得点で1-2と勝利。 メトロポリターノで2ndレグに希望を繋ぐゴールを挙げたハラーがその試合で負傷し、出られないのは助かりますが、かの「Gelbe Wand(黄色い壁)」立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクには4000人駆けつけるとはいえ、所詮、アトレティコファンは少数派というのは怖いかと。それ以上に大変そうなのは、実力的にガップリ五分に見えたシティにエティハド・スタジアムで勝たないといけないマドリーで、何せ、グアルディオラ監督のチームは先週末のプレミアリーグでルートンに5-1と大勝。リバプールとアーセナルが負けたことも相まって、とうとう単独首位に。マドリッドでは食中毒で試合に出られなかったデ・ブルイネも完全復帰しているため、それこそリーガ首位独走チームのお手並み拝見といったところでしょうが、ホント、どうなることやら。 まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにすると、金曜の私は久々にブタルケを訪問。ずっと2部の首位で頑張っているレガネスを応援するためだったんですが、それがちょっと目を離しているうちにファンが物凄く盛り上がっていてねえ。相手が2位のエスパニョールで、しかも4年前、冬の市場が閉じた後、契約解除金を支払ったバルサに特例移籍。アギーレ監督(現マジョルカ)の残留達成計画を狂わせて、2部降格の一因になったブライトワイテが初めて古巣訪問するというのもあったんでしょうか。 2部時代では最多記録となる1万2573人の観客でブタルケは超満員となり、1部の試合でも見たことない程の熱気だったんですが、残念なことに気合がから滑りしちゃいましたかね。レガネスはゴールを挙げられず、ここ3試合連続となるスコアレスドローで終わってしまうことに。いえまあ、それでもエイバル、エスパニョール、バジャドリーと同じ勝ち点で2位から4位につける後続とは勝ち点4差あるため、首位の座は安泰なんですけどね。まだ残り7試合もあるため、ボルハ・ヒメネス監督も今一度、手綱を引き締めて、白星基調を取り戻さないと、シーズン前はただの夢だった1部再昇格が決まるのも6月2日の最終節近くまでかかってしまうかもしれませんが、こればっかりはねえ。 そして土曜は1部のマドリッド勢が揃ってプレーしたんですが、先陣を切ったのは午後2時から、メトロポリターノにジローナを迎えたアトレティコ。何せ、コパ・デル・レイ決勝で1週間以上空いた後、一転、過密日程に入り、CLドルトムント戦1stレグとこの試合、そして2ndレグも中2日でこなさないといけない彼らでしたからね。シメオネ監督も中8日空いても70分ぐらいまでしか体力が持たない選手たちに配慮して、その日は6人も先発を変えていたんですが、久々のデーゲームでしかも、いきなり気温が夏モード入りというのが影響したんでしょうか。 だってえ、開始4分にはサビーニョの独走を許し、エレーラ、コウトとパスを繋がれ、ゴール左前にいたドブビクに易々と先制点を決められているんですよ。相手は勝ち点7差あるとはいえ、1つ上の3位で、4位から3位に上がってもあまり大差はないとはいえ、アトレティコには5位アスレティックを引き離して、CL出場圏を死守するという使命がありますからね。その後もしばらく、ジローナに主導権を握られていたため、20分にはシメオネ監督がシステムを4-4-2から、5-3-2に戻すなど、懸命に立て直しを図ったところ…。 いやあ、ドルトムント戦でもそうでしたが、今はアトレティコにはツキがあるんですよ。水曜も彼らの2得点は相手の守備ミスのおかげだったんですが、この日は34分、グリーズマンが蹴ったFKをエルモーソがヘッドしたところ、まさかミゲール・グティエレスが手を伸ばしてクリアしてくれるとは!有難くもらったPKをグリーズマンが決め、12月以来となるリーガゴールで同点にしてくれたんですが、40分にはサウールが足首を打撲して、急遽、モラタと交代するというアクシデントも。 するとそれが更に幸運を呼んで、いえ、モラタのゴール乾季が終わった訳じゃないんですけどね。前半ロスタイム6分には彼がラインを越えそうになっていたボールを救い、そこからゴール前に上げたクロスをコレアが敵DF2人の間でヘッドして、勝ち越しゴールを奪っているんですから、ビックリしたの何のって。え、でもそれもロスタイムが始まってすぐ、レイニウドがエリア内でサビーニョを倒しながら、主審もVAR(ビデオ審判)もお目こぼししてくれたからだろうって? まあ、確かにミチェル監督も後で「論理的でないのは、せめてチェックするようにVARが介入しなかったことだ。主審がエリア外だったかもとか、勝手に転んだだけかもとか、迷うのはわかるが、es una patada, es penalti/エス・ウナ・パタダ、エス・ペナルティ(あれは蹴られた。ペナルティだ)」と怒っていたんですけどね。その辺もアトレティコがラッキーだったということでしょうが、2-1で迎えた後半頭から、シメオネ監督はヒザの靭帯断裂から復帰して以来、ペナルティ癖がついてしまったレイニウドをビッツェルに交代することに。 そのおかげもあって、後半はほとんど守備でピンチを迎えることのなかったアトレティコですが、ええ、5分にはデ・パウルのクロスをソリスがエリア内でクリアミスし、こぼれ球を拾ったグリーズマンが3点目を入れてくれましたしね。ちなみにこのゴールの後、当人がデ・パウルと一緒に踊っていたのは、「Mi hijo Amaro quería un baile y se lo mandé a De Paul para hacerlo para Amaro/ミ・イホ・アマロ・ケリア・ウン・バイレ・イ・セ・ロ・マンデ・ア・デ・パウル・パラ・アセールロ・パラ・アマロ(ボクの息子、アマロが踊りを見たがっていて、デ・パウルにアマロのためにやるように命じたんだ)」(グリーズマン)ということだったよう。 それにはシメオネ監督も「Lo vi más suelto, más el, lo necesitamos así/ロ・ビ・マス・スエルトー・、マス・エル、ロ・ネセシタモス・アシー(ずっと伸び伸びしているように見える。彼らしくね。そういう彼が必要なんだ)」と目を細めていましたしね。2点差となった後は安心して、25分にはグリーズマン、リケルメをジョレンテ、サムエル・リノに、30分にはデ・パウルをアスピリクエタに代え、主力選手に疲れが溜まらないよう、またはベンチでお尻が痛くならようにプレー時間を配分できたのも、ドイツでの決戦を前に朗報だったかと。 結局、ジローナはドブビクの頼りになるウクライナ人仲間、ツィガンコフが負傷でおらず、交代で入ったポルトゥやストゥアーニも体調が完璧でなかったこともあって、アトレティコはそのまま3-1で勝利。直近のリーガホームゲームでバルサに負けて、1年以上ぶりに途切れてしまったメトロポリターノ不敗神話を再スタートすることになったんですが、とにかく火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのドルトムント戦まで、あまり時間がありませんからね。とりあえず、2回セッションをしただけで、チームは現地に向かったんですが、今回のお留守番は出場停止のリノと全治3、4週間のケガを負ったメンフィス・デパイ、そしてアキレス腱断裂からの復帰最終段階にあるレマルの3人。今回は引分けでもOKと油断することなく、同日同時刻にプレーするバルサvsPSG戦の勝者と当たる準決勝に進んでくれたらいいんですが…。 そして土曜は次の時間帯がラージョvsヘタフェの弟分ダービーだったんですが、さすがにアトレティコを途中で見捨てて、移動することはできなかったため、私はエスタディオ・バジェカスには行かず、試合の終盤をバルのTVで観戦することに。それがまた、ヨーロッパの大会と無縁な両者は2週間、じっくり調整できたにも関わらず、どちらもゴール日照りを克服することができなかったんですよ。スコアレスドローでそれぞれ、勝ち点1を上積みというのは一応、ラージョは降格圏との差が7に広がったため、レガネスと交代で2部降格という憂き目は回避できそうなんですけどね。 ヘタフェも残留確定ラインの40まであと1つと迫ったため、決して悪くはないんですが、10位の彼らが、せっかくアスレティックのコパ優勝で7位に下りてきたコンフェレンスリーグ出場権を掴むのはかなり遠い夢になってしまったかと。まあ、ボルハ・マジョラルが今季絶望になってから、CF不在となり、ボランチのマクシモビッチが前線に投入されているぐらいですから、ある意味、仕方ないんですけどね。せめて週末日曜にレアル・ソシエダを迎える試合ではマタなり、グリーンウッドなりが力を振り絞って、コリセウムのファンを喜ばせてあげられるといいのですが、それは続けてホームゲームでオサスナ戦を土曜に迎えるラージョも同じかと。 一方、そのまま私がバルに居座って、キックオフを待ったマジョルカvsマドリー戦では、もちろんアンチェロッティ監督もマンチェスター・シティ戦を考えて、大量5人のスタメンをローテーション。それでもコパ決勝でPK戦まで粘ったチームを称えるべく、ソン・モイシュはマジョルカファンで満員御礼となり、開始9分にはそのアスレティック戦で出番がなかったアブドン・プラッツの仮面をスタンドのファンが掲げて、労をねぎらったなんてことも。ただ、プレーのリズムはどちらも低調で、前半など、ライージョのヘッドをGKルーニンがparadon(パラドン/スーパーセーブ)したり、ベリンガムのシュートがゴールバーに弾かれたぐらいで終わってしまったのはガッカリでしたが、でも後半早々、見せ場が来たんですよ。 そう、3分にチュアメニがエリア外から放った一撃がモルラネスに当たって軌道が変わり、GKライコビッチが一歩も動けないまま、ネットを揺らしているんですから、ホント、マドリーはFW以外も恐ろしい。当人も「Sé que puedo chutar, lo trabajamos mucho en el entrenamiento/セ・ケ・プエド・チュタール、ロ・トラバハモス・ムーチョ・エン・エル・エントレナミエント(自分がシュートできるのは知っているし、練習で沢山取り組んでいる)」と言っていたんですけどね。世の中にはいくら撃っても入らないMFも多いため、やっぱりこれは才能あってこそ? ただ、マドリーもそれ以上は点が入らず、いえ、26分にはバルベルデのシュートがナスタシッチにゴールライン前でクリアされるなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も20分頃にはベリンガム、ブライムをビニシウス、カマビンガに、続いてモドリッチをカルバハルに代え、ヒザの靭帯断裂からの復帰でまだ慣らし運転中のミリトンにもロスタイムの4分を与えるなど、粛々とプレー時間を調整。ダルデルのvolea(ボレア/ボレーシュート)もルーニンに弾かれてしまったマジョルカはコソボ人エースのムリキ、途中出場のアブドン・プラッツも火を吹くことはなく、そのまま試合は0-1で終了したんですが、おかげでマドリーが勝ち点8差を保ったまま、日曜にバルサをサンティアゴ・ベルナベウに迎えられることになったのは良かったかと。 実際、リーガの次節はクラシコ(伝統の一戦)で、ここで勝てば、ほぼマドリーの優勝も決まりとなるんですが、何せ、今はどちらのチームもCL準々決勝2ndレグで頭がいっぱいですからね。それこそ、バルサは火曜のPSG戦で、マドリーは水曜午後9時からのマンチェスター・シティ戦で勝ち上がれるかどうかで、選手たちの士気も変わってくるはずですが、果たして結果は如何に。ちなみにチュアメニが出場停止でエティハドでプレーできないマドリーはCBスタメンがリュディガーとナチョになるようですが、昨季のように4点取られても、今度は決して撃ち負けない根性を見せてくることを期待しています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.16 20:30 Tue

まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド

「長い1週間になりそうね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL準々決勝1stレグ4試合の結果が入った決勝までのトーナメント表を眺めていた時のことでした。いやあ、火曜にプレーしたレアル・マドリーvsマンチェスター・シティ、アーセナルvsバイエルンがどちらも引分けに終わった時はまだ、今はもうアウェイゴールルールもないため、2ndレグの一発勝負になったなぐらいの気分だったんですけどね。水曜のアトレティコvsドルトムント、PSGvsバルサの方はどちらもスペイン勢が1点差で勝利という微妙なもので、それでもチャビ監督のチームは2ndレグを今季はカンプ・ノウ建て替えで、仮宿のモンジュイックとはいえ、ホームで戦えるんですよお。 翻って、アトレティコはかの「Gelbe Wand(黄色い壁)」が立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込まないといけず、ええ、今季の彼らのアウェイ弱者ぶりはつとに有名で、更に苦手の黄色ユニのチーム相手となると、いえ、先日、全身黄色でプレーして、とうとう1年以上続いたメトロポリターノのリーガ不敗神話を終わらせたバルサに倣ったんでしょうか。黒のアウェイユニでなく、一番黄色味が強いカップ戦用ユニで挑んだドルトムントとの1stレグではかろうじて、勝つことはできたんですけどね。一応、リーガ前節のビジャレアル戦でもアウェイ&黄色ユニというダブルジンクスを破っているとはいえ、1点なんて、何の弾みで引っくり返されるかわからないじゃないですか。 うーん、それでもシメオネ監督は「CL準々決勝の4試合を見れば、estamos contentos, es muy difícil ganar/エスタモス・コンテントス、エス・ムイ・デフィシル・ガナール(勝つのはとても難しいから、満足している)」と言っていたんですけどね。すでにビジター用チケット4000枚は完売。決して安くはない飛行機代を払って、現地まで2ndレグの応援に行くアトレティコファンの勇気にはただただ、敬服するしかないかと。 まあ、そんなことはともかく、まずは火曜のビッグマッチ、3500人のイギリス人ファンがサンティアゴ・ベルナベウに駆けつけたマンチェスター・シティ戦1stレグから、どんなだったか、お伝えしていくことにすると。さすがにこの高みまで来ると、勝負は2ndレグまでつかなくても、いても立ってもいられなくなるのか、スタジアム周辺は午後7時頃から、チームバスのお出迎えをする何千人もののファンで凄いことに。でもねえ、せっかくメトロポリターノでのドルトムントの記者会見と練習見学から直行し、チームの到着時間前に現地にいた私だったものの、バスが入って来るゲートに通じるパドレ・ダミアン通りが封鎖されていることを知らなかったのが致命的でした。 結局、レアル・マドリーTVの中継を見てお茶を濁すしかなかったんですが、まあ、激混みの中、bengala(ベンガラ/発煙筒)などの火も見えましたしね。煙いのと怖いのを我慢するよりは良かったかと。その頃にはすでに発表されていたマドリーのスタメンには意外性がなく、驚かされたのはスタジアムに入ってから知ったシティの方で、ええ、デ・ブルイネが先発じゃなかったんですよ。後でグァルディオラ監督は「ホテルでのミーティングではスタメンだったが、ロッカールームに着いたら、プレーできないと言ってきた。Tenía vómitos y se ha encontrado muy mal/テニア・ボミトス・イ・セ・ア・エンコントラードー・ムイ・マル(嘔吐して、とても気分が悪いようだった)」と説明していたんですが、もしや、その代理として出場したコバチッチは古巣のピッチが踏めて嬉しかった? それにしたって、CL用の大幕とスタンド全面モザイク、更に屋根を閉じているせいで一層、ファンの歌声やpito(ピト/ブーイング)の音響効果が高まった新装ベルナベウの雰囲気に酔っていたのが、ホームチームの方だったとは。そう、開始45秒にシティのカウンターに泡を喰らい、その日、CBに抜擢されたチュアメニが駆け上がるグリーリッシュにタックル。早々にイエローカードをもらい、しかも累積警告で2ndレグに出られなくなってしまったのは、後でアンチェロッティ監督が悩めばいいことですが、まさか、ベルナルド・シウバの蹴ったFKをGKルーニンが逃し、2分には先制点を取られてしまうとは一体、どういうこと? でも大丈夫。マドリー相手にリードするには時間の工夫が必要っていうのはとりわけ、お隣さんなどはよく知っているんですが、そう、彼らのDNAに刷り込まれたremontada(レモンターダ/逆転劇)根性が発動してしまいますからね。案の定、12分には長いポゼッションの後、カルバハルからパスを受けたカマビンガがエリア外からシュート。これがルーベン・ルイスに当たってオウンゴールとなり、あっという間に同点に。更にその2分後にはビニシウスが自陣から放ったロングボールをロドリゴが受け、エリア内から撃ったところ、アカンジに当たったせいでトロトロになりながら、ゴールに入ったから、ビックリしたの何のって。 いやあ、これには直近のアスレティック戦でビニシウスが出場停止となり、代理で左サイドを務めたロドリゴが2ゴールと活躍したため、逆にビニシウスの方をセンター寄りに、ロドリゴを左サイドに置いたアンチェロッティ監督の作戦のおかげもあるんですけどね。一応、この速攻逆転でマドリーも落ち着いたか、前半は2-1のままで終わったんですが、そこは相手も昨季のCL王者。後半が始まって、ボールポゼッションが増えてきたシティは21分、マドリーが「Nos descansamos un poco, dejamos de presionar por cansancio/ノス・デスカンサモス・ウン・ポコ、デハモス・デ・プレシオナル・ポル・カンサンシオ(ウチはちょっと休んじゃって、疲れから、プレスをかけるのを止めた)」(バルベルデ)ところを狙い、フォーデンがエリア前から、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、2-2にしたんですよ。 その5分後にも今度はグバルディオルがやはり、エリア前からのシュートを決めて、2-3の逆転返しをされてしまったとなれば、アンチェロッティ監督が慌てて、モドリッチとブライムを投入したのも当然だったかと。実際、その交代は的を得ていて、ええ、34分にはモドリッチのパスから、ビニシウスがクロスを挙げ、バルベルデのvolea(ボレア/ボレーシュート)で3-3に追いつくことができましたからね。これがもし、2ndレグで準決勝進出が決まるのであれば、絶対、マドリーはあと1点取っていたはずと私は確信しているんですが、生憎、この日は1stレグ。 どちらにしろ、来週水曜にはエティハド・スタジアムで再戦となるため、マドリーもレモンターダ根性を振り絞らず、最後は3-3で分けたんですが、え?「El empate parece como el del año pasado, como si fuera una derrota/エル・エンパテ・パレセ・コモ・エル・デル・アーニョ・パサードー、コモ・シ・フエラ・ウナ・デロータ(去年みたいな引分けだから、負けたようなもんだ)」とバルベルデは嘆いていなかったかって?まあ、確かに昨季は準決勝1stレグをベルナベウで1-1、2ndレグではシティに4-0の大敗を喰らって敗退した記憶はまだ新しいですからね。ただ、アンチェロッティ監督は試合前、「Jugamos sin coraje y sin personalidad/フガモス・シン・コラヘ・イ・シン・ペルソナリダッド(勇気もパーソナリティも持たずにプレーした)」とその敗因を解明していたため、同じ轍を踏むことはないのでは? ええ、この日も昨季のベルナベウでの対戦同様、ハーランドに1本しかシュートを撃たせなかったリュディガーを2ndレグで控えにするなんて、もう絶対にやらないでしょうしね。ただ、不気味なのは試合後、ベルナベウのピッチの芝の状態が絨毯のようではなかったという、今季はまだ誰からも言われていない文句を言って、注目を浴びていたグァルディオラ監督が交代枠をまったく使わず、90分を終わらせそうだったこと。いえ、最後はフォーデンがふくらはぎにこむら返しを起こし、フリアン・アルバレスを入れる破目になったんですけどね。これって、もしや2ndレグに備えて、手を隠していたのかも。 何にせよ、エティハドではデ・ブルイネも出て来るでしょうし、また競ったいい勝負が見られるんじゃないかと思いますが、その前にマドリーは土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からマジョルカ戦に挑むことに。まあ現在、2位のバルサと勝ち点8差がある彼らですから、シティ戦2ndレグの後にはクラシコ(伝統の一戦)が来るとはいえ、ローテーションする可能性もありますけどね。どうやら体力も超一流のここの選手たちは逆に中3日ぐらいの方が調子を維持できるよう。コパ・デル・レイ決勝でアスレティックに負け、落ち込んでいたアギーレ監督のチームもあれから1週間経つだけに完全に切り替えて、リーガの1部残留達成一本に絞っているため、この狭間試合はちょっと苦労するかもしれませんね。 そして翌水曜、お隣さんに負けじと、メトロポリターノに繋がる沿道をぎっしり埋めたファンのお出迎えを受け、赤白青のモザイクでスタンドが彩られた中、アトレティコもドルトムント戦をスタートさせたんですが、助かりました。何せ、メトロポリターノは密閉仕様じゃありませんからね。あそこまでヒートアップしたファンの歌声をドーム型スタジアムで聞かされた日には、耳の鼓膜が持ちませんって。3、4000人と言われたドルトムントファンもかなり応援の声量が高く、しかもそれが前半早々、4分にはGKコベルからボールを受けたマートセンが大ポカ。横に出したボールをデ・パウルに奪われ、そのシュートで先制されながらもちっとも衰えないって、やっぱりジグナル・イドゥナ・パルクは地獄になる? といってもメトロポリターノでは絶対的にアトレティコファンの方が多かったため、ドルトムントの選手たちもプレッシャーを感じていたんでしょう。さすがに中8日あっただけあって、この日は積極的にプレスをかけていったシメオネ監督のチームは32分にも敵のミスを利用。ええ、モリーナのスローインをDFが中途半端に弾き、それを拾ったモラタがグリーズマンへ。そのアシストでサムエル・リノが2点目を決めてくれたとなれば、当人もその5分前にイエローカードをもらい、2ndレグが出場停止になった懺悔は済ませたと思った? でも2-0で始まった後半、アトレティコはモラタ、グリーズマン、モリーナもシュートを決められず、追加点が取れなくてねえ。ハーフタイムにテジッチ監督が「メンタル的に落ち着くように」と選手たちにアドバイスしたドルトムントはエンメチャがブラントに代わったのも良かったようで、だんだんボールを持つようになったんですが、ホント、後悔先に立たずの典型だったのは30分。グリーズマンの蹴ったFKをゴール前からシュートしたリノがGKコベルに弾かれていなければ、3点差となり、2ndレグで逆転される悪夢から、かなり遠ざかれたはずだったんですが…。 それどころか、「Mantener el nivel de lo que se hizo 70 minutos es muy difícil/マンテネール・エル・ニベル・デ・ロ・ケ・セ・イソ・セテンタ・ミヌートス・エス・ムイ・デフィシル(70分間やってきたこことのレベルをずっと維持するのはとても難しい)」とシメオネ監督も言っていたように、アトレティコがガス切れしていた36分、とうとうブラントが入れたパスから、フルクルクから代わっていたFWアラーに1点を返されてしまったから、さあ大変!実際、その後もバイノー=ギデンスやブラントのシュートがゴールバーに当たり、かろうじて同点を免れるというシーンもありましたからね。試合は2-1で終わり、もちろん、「Hemos ganado, que es lo importante/エモス・ガナードー、ケ・エス・ロ・インポルタンテ(ボクらは勝った。それが大事なこと)」(グリーズマン)というのは正論ですが、こんな僅差では…。 何せ、珍しく長い間、元気だったメンフィス・デパイが先週土曜の練習でまた筋肉を痛め、全治3、4週間となってしまったため、今のアトレティコにはCFがこのところ、ゴール乾季に入ったモラタしかいませんからね。うっかりドルトムントに追いつかれ、点を取らないといけなくなった時、誰を頼りにしていいのかもわからない有り様なんですが、それは土曜午後2時(日本時間午後9時)のジローナ戦も同じこと。ただ、勝ち点2差の5位アスレティックは先週末からずっと、コパ優勝祝い漬けで、木曜にガバラ(ビルバオの運河を航行する運搬船)で水上パレード、その後もパスで市内パレードと延々と続いていたのはともかく、その前日にも街中に選手たちが現れて、ファンとゲリラ祝勝イベントまでしていましたからね。 おそらく日曜のビジャレアル戦では勝てないんじゃないかと思いますが、アトレティコも相手が勝ち点差が7差ある3位と手ごわいため、負傷から復帰したばかりのヒメネスや試合後、また足首に氷を巻いていたグリーズマンらに休養を与える訳にいかないのが辛いところ。合法的に休めるのは出場停止となるバリオスだけですが、結局、中8日あっても選手たちのスタミナが持続するのは70分までとわかってしまった今、あとはシメオネ監督が途中交代などでコマメに調整するしかないかと。 そしてヨーロッパの大会もなく、コパ決勝のせいで2週間試合がなかったヘタフェとラージョは土曜にエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーとなるんですが、すでに残留確定見込みラインまであと勝ち点2で、当面の目標がなかったボルダラス監督のチームには朗報が。というのもコパでEL出場圏にいるアスレティックが優勝したため、コンフェレンスリーグ出場権がリーガ7位に与えられることになったからで、現在、バレンシアが占めるそこまでなら、勝ち点6差。まあ、11位のヘタフェが到達するには4チームも抜かさないといけないので、難行ではありますが、高みを目指すにこしたことはありませんからね。16位のラージョの方はあと2、3勝しないと、残留確定とならないんですが、今は降格圏と勝ち点差5あるため、イニゴ・ペレス監督もこのparon(パロン/リーガの停止期間)は落ち着いて練習できたんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.12 20:30 Fri

この決勝は他人事だったけど…/原ゆみこのマドリッド

「これは教訓になるわね」そんな風に私が気を引き締めていたのは日曜日、コパ・デル・レイ決勝が午前1時近くにようやく終わった時のことでした。いやあ、アトレティコが準決勝2ndレグでボコボコにやられ、決勝がアスレティックvsマジョルカというカードになったため、わざわざセビージャのカルトゥーハまで見に行く理由もなし。おまけにTVE(スペイン国営放送)の中継があり、自宅でTV観戦できたため、別に決着がつくのが翌日にもつれ込んだことはそれ程、気にならなかったんですけどね。 午後10時に始まった試合が何故にそんなに長引いたかと言えば、もちろん、マジョルカが2匹目のドジョウを狙い、ひたすらPK戦突入を目指して、延長戦を戦っていたからなんですが、残念ながら、準決勝レアル・ソシエダ戦と同じ結末にはならず。そう、レアル・アレナでの2ndレグのPK戦同様、第1キッカーにムリキ、それからモルラン、マスカレルはベンチ待機だったため、ラドンジッチの順番を繰り上げたところ、コソボ人エースこそ、この日もしっかりPKを成功させたものの、モルランがGKアギレサバラに止められてしまったのが誤算でしたかねえ。 それで動揺したか、ラドンジッチも大きく撃ち上げてしまっては。ソシエダ戦で相手の第1キッカーだったオジャルサバルを弾き、試合中にもブライス・メンデスのPKを防いでいたため、一躍、parapenarti(パラペナルティ/PK止め屋)として脚光を浴びていた、マジョルカのGKグレイフがアスレティックのキッカーには歯が立たなかったのも災難で、ええ、ラウール・ガルシア、ムニアイン、ベスガ、ベレンゲルと全て、ゴールになってしまいましたしね。おかげで4人目のアントニオ・サンチェスは決めたものの、結局、アギーレ監督のチームは4-2で負けてしまったんですが、これを我が身としてほしいのはアトレティコ。 というのも今週はまだ1stレグですが、2ndレグとの間が1週間しかないCL準々決勝ドルトムント戦が来るからで、ええ、16強対決のインテル戦2ndレグにPK戦で勝ったせいで、過信されても困りますからね。あの時だって、メンフィス・デパイ、リケルメ、コレアは成功したものの、2番目に蹴ったサウールはGKゾマーに止められてしまい、GKオブラクがアレクシス・サンチェスとクラーセンを連続セーブという奇跡があってこその勝利だったとなれば、準々決勝2ndの後の週末にはリーガもありますし、余分な延長戦で体力を消耗することなく、いい結果を出してもらいたいものですが…。 まあ、そんなことはともかく、ようやく各国代表戦週間が明けたリーガを再びparon(パロン/停止期間)に追いやって、大々的に開催されたコパ決勝がどんな試合だったか、一応、お話ししておくと。いやもう、これがアスレティックとマジョルカのファンが大盛り上がりで、うーん、カルトゥーハには5万人ぐらいしか、入らないんですけどね。それがチケットを買えなかったファンまでが大移動して、試合当日にはセビージャに10万人のアスレティック勢、地中海を渡らないと来られないマジョルカ勢も2万5000人程、集結していたんですが、更にはサン・マメスでのパブリックビューイングも5万人の満員御礼だったなんてと聞くと、彼らのコパへの思い入れがわかるってもの? 試合の方はクラブが警告を出したのが功を奏して、ええ、これまでバスク地方に本拠を置くアスレティックがファイナリストになる度、場内がスペイン国歌へのpito(ピト/ブーイング)の嵐になり、パルコ(貴賓席)に主賓として座るスペイン国王フェリペ6世に決まりの悪い思いをさせていたんですけどね。ようやくそれがなくなったのは良かったんですが、開始24秒でニコ・ウィリアムスが撃ったシュートが外れながら、何と先手を取ったのはマジョルカだったから、ビックリしたの何のって。 それは前半21分、CKからの攻撃でサム・コスタが頭で流したボールはゴール前左から、ジオ・ゴンサレスのシュートはプラドスに当たり、コペテの撃ち直しもアギレサバラに弾かれてしまったんですけどね。こぼれ球をキャプテンのライージョがダニ・ロドリゲスに繋いだところ、3度目の正直で入るとはまさに執念の賜物。いやあ、アスレティックも38分にはジュリとの連携でニコがゴールを決めたんですけどね。こちらはオフサイドだったため、試合は0-1で折り返すことに。 バルベルデ監督がプラドスをベルガに代えた後半は、逆に19秒にラリンが撃って、アギレサバラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という形で始まったんですが、コパ優勝最多31回のバルサに続く、24回で2位につけながら、ここ40年間、上積みできず。そのアスレティックが悔しさをバネにして、同点に追いついたのはすぐのことでした。5分には、リーガ前節のレアル・マドリー戦を筋肉痛でお休みしていたニコがダニ・ロドリゲスからボールを奪い、サンセットにラストパスを送ると、そのシュートでゴールが入ったんですが、何せ、その先はまったくスコアが動かなくってねえ。 アギーレ監督もアスレティックの攻撃陣を抑える方を優先したか、16分にはもうラリンを引っ込め、中盤を増やしたのはいいんですが、延長戦に入っても今季のコパで最多6得点を挙げているアブドン・プラッツを入れなかったのは何故?同様に延長戦から、イニャキ・ウィリアムス、サンセット、グルセタを引っ込め、ラウール・ガルシア、ムニアインらベテランとベレンゲルを入れたアスレティックも最後まで、やはり6得点しているビジャリブレを入れなかったとはいえ、これはやっぱり、PK戦の成功体験がマジョルカは忘れられなかった? 実際、ぶっつけ本番だったソシエダ戦と違い、「Esta vez incluso habíamos ensayado los penaltis/エスタ・ベス・インクルソ・アビアモス・エンサジャードー・ロス・ペナルティス(今回はPK戦の練習までした)」(アギーレ監督)そうですしね。結果はバルベルデ監督も「Llevábamos tiempo preparándolo y sobre todo he elegido a los que han entrado de refresco/ジェバモス・ティエンポー・プレパランドロ・イ・ソブレ・トードー・エ・エレヒードー・ア・ロス・ケ・アン・エントラードー・デ・レフレスコ(ウチはしばらくの間、準備していて、とにかくPKキッカーにはリフレッシュで入った選手を選んだ)」と言っていたように、アトレティコとの準決勝1stレグでもメトロポリターノから、希少な白星を持ち帰るPKを決めたベレンゲルが4人目として、アスレティック優勝の殊勲者に。 それでもビジャリブレはピッチでのお祝いで、2021年のスペイン・スーパーカップ優勝時にも披露した、趣味のトランペットでカンティコを演奏するという晴れ舞台があったんですけどね。アブドン・プラッツなど、マルカ(スポーツ紙)の決勝前インタビュー企画に乗せられて、趣味の陶芸でコパトロフィーを作り、今でもマジョルカの教室で焼かれるのを待っているというのに、こうなるとあの作品、一体、どうしたらいいんでしょう。 え、これまで4度もコパ決勝をプレーしながら、1度も勝てなかったムニアインがとうとう、31才で悲願のトロフィーを掲げた後、カルトゥーハで遅い時間まで祝っていたアスレティックはその夜、セビージャに宿泊。翌日、ビルバオに戻って早速、伝説のガバラ(市内の運河を航行する木材運搬船)で水上パレードしたのかって?いやあ、それがコパでは控えGKだったウナイ・シモンも「Ha costado 40 años. Existe. La Gabarra existe. A ver si ahora flota/ア・コスタードー・クアレンタ・アーニョス。エクシステ。ラ・ガバラ・エクシクテ。ア・ベル・シー・アホラ・フロタ(40年かかった。あるよ、ガバラはある。今も浮かぶかどうか見てみよう)」と言っていたんですけどね。 やはりオープンデッキバスでの普通の市内パレードとは違い、運河は交通規制が複雑らしくて、ガバラはすでに大金を投じて整備され、乾ドックで待機しているものの、木曜まで出航できないのだとか。まあ、その際には街を挙げてのお祭りになるはずですが、ガバラと並走するボートや小型船に乗るにはかなりの値段がつけられているため、ファンの大半は河岸から、見学することになるよう。ただこの遅いお祝いはアトレティコにとっては渡りに船で、ええ、リーガ前節で4位をアスレティックから奪還したとはいえ、勝ち点差はたったの2ですからね。 その2日後にビジャレアルを迎えるサン・マメスでの一戦もお祭り気分が覚めていないはずなので、土曜のメトロポリターノでのジローナ戦で一気に5差にして、そのままシーズン最後までCL出場圏を守ってもらいたいものですが、まあそれは先の話。試合のなかった先週、彼らは水曜と日曜を練習休みにして、木曜夕方にはゲリラ的にシメオネ監督時代前期の大功労者、ゴディンを称えるペーニャ(ファンクラブ)主催のイベントをスタジアムの講堂で当人、現役選手やスタッフも大勢参加で開催していたりしたんですが、とにかく今のアトレティコはCLドルトムント戦に全集中なんですよ。 ええ、直近のビジャレアル戦ではようやく苦手のアウェイで勝利、おまけに天敵の黄色いユニのチームを破ったにも関わらず、本格的に練習を再開した木曜には、シメオネ監督がマハダオンダ(マドリッド近郊)グラウンドでセッションを一時停止して、選手たちにとうとう、「サッカーは歩いてないで、走らないといけない」という訓示をしたらしいですしね。その通り、ラ・セラミカでのようにたらたらプレーしていたら、ブンデスリーガの上位チームには絶対、敵わないことを彼らに自覚してもらいたいのはファン共通の願いかと。 おかげでクラブのメディアへのインタビューでは、グリーズマンなども「Ellos están muy bien, vienen de ganar al Bayern y hay que estar atentos a cualquier detalle/エジョス・エスタン・ムイ・ビエン、ビエネン・デ・ガナール・アル・バイエルン・イ・アイ・ケ・エスタル・アテントス・ア・クアルキエル・デタジェ(彼らはとてもいい状態で、バイエルンに勝ったばかり。だから、どんなディテールにも注意しないと)」と慎重になっていたんですが、大丈夫。バイエルンに0-2で勝った後、折しも土曜のシュツットガルト戦でドルトムントは0-1と負け、CL出場権争いをしているライプツィヒを抜くことができませんでしたしね。インテル戦の前も悲観視されながら、何とか勝ち抜けたアトレティコだけに可能性は決してゼロではありませんが、何にしても水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からの1stレグでよっぽどの大勝をしない限り、私が安心できることはないような気がします。 そしてアトレティコ同様、中8日で火曜午後9時にマンチェスター・シティをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるマドリーも休養日を交えながら、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でずっと準備をしていたんですが、こちらはもっと日程的に有利なんですよ。というのもシティはミッドウィークにアストン・ビラ戦をこなした後、土曜にもクリスタル・パレス戦と、ずっとハードスケジュールが続いているからですが、それが2試合共、4得点勝利しているとなれば、決して侮れませんって。 実際、昨季のCL準決勝でも1stレグがホーム開催となったマドリーはベルナベウで1-1と引分けた後、エティハド・スタジアムでの2ndレグで4-0と大敗。よって、こちらもアトレティコ同様、初戦で余裕の勝利を挙げておかないと、いくら根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がお家芸の彼らとはいえ、アウェイでは辛いものがありますからね。ただ去年、シティにやられまくってしまったのには事情もあって、マドリーは2ndレグの直前、コパ決勝のオサスナ戦で優勝したものの、中日が少なかったのが致命的だったよう。 それだけに今回、グァルディオラ監督に文句を言われる筋合いはないんですけどね。この準々決勝には休養十分で挑める上、前節のアスレティック戦では昨夏にヒザの靭帯断裂をしたミリトンも復帰して、現在、負傷欠場者はクルトワとアラバだけ。となると、逆にアンチェロッティ監督も起用したい選手が多すぎて、スタメン選びに困っているんじゃないかと思いますが…何はともあれ、マドリッドで2日連続CLの試合が見られるのは嬉しいですよね。 そしてこの2週間、丸々空いてしまったヘタフェとラージョがエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーに挑むのは週末土曜とまだかなり先なんですが、直近のセビージャ戦でコリセウムのファンの差別的野次を告発されたヘタフェには競技委員会から、厳しい処分が。ええ、アルゼンチン人のアクーニャが「mono(モノ/サ猿)」と侮辱された件で2万7000ユーロ(約450万円)の罰金と、そのファンがいた区画を3試合に渡って閉鎖しないといけなくなったんですが、すでに犯人は発見済み。クラブは元凶のアボナードー(年間チケット所有者)を追放処分にするようですが、実際、その罰金を当人に付け替えることができれば、一番お灸をすえられるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.08 22:40 Mon

またリーガが休みに入った…/原ゆみこのマドリッド

「1月2月はあんなに忙しかったのにこの落差、激しすぎる」そんな風に私が戸惑っていたのは火曜日、来週まで見に行ける試合が全然、ないのに気がついた時のことでした。いやあ、先週末も各国代表戦のparon(パロン/リーガの中断期間)明けで、クラブの試合があるのは2週間ぶりだったんですけどね。それでもスペイン代表の親善試合があったため、マドリッド勢からの参加は3人だけと少なかったものの、6月のユーロ前にデ・ラ・フエンテ監督のチームを知るいい機会となったんですが、この週末は土曜のコパ・デル・レイ決勝、アスレティックvsマジョルカ戦だけ。 それぞれ40年ぶり、21年ぶりとなるコパタイトルを懸けた大舞台ですし、前者などは2021年にコロナ禍で延期された前年度分を含め、同じ月に2度、無観客決勝に挑戦。その時はレアル・ソシエダ、バルサに続けて負けるという悔しい思いをしているだけに、すでに先週から、ビルバオの街がガバラ(運河を航行する木材運搬船、アスレティック優勝の際にパレードに使われる)出航への期待でウズウズしているのはよくわかりますけどね。決勝会場も現在、当局の捜査が入っている契約で、サッカー協会のルビアレス前会長がセビージャのカルトゥーハに固定してしまったせいで、以前のようにサンティアゴ・ベルナベウやビセンテ・カルデロン(アトレティコの旧ホームスタジアム)開催となって、気楽に私が見に行くことすら不可能に。 よって、今週末はマドリッドのサッカーファンも退屈してしまいそうですが、いい面を考えれば、兄貴分2チームが来週のCL準々決勝1stレグを余裕を持って迎えられることでしょうか。ええ、グァルディオラ監督も怒っていたんですが、マンチェスター・シティは水曜にアストン・ビラ戦、土曜にクリスタル・パレス戦のプレミアリーグ2試合があり、9日(火)のベルナベウの試合は中3日で迎えないといけないのに対し、レアル・マドリーは中8日。アトレティコも、いえ、せっかくお隣さんを準々決勝で倒した後、準決勝でアスレティックに足蹴にされた時は本当に悔しかったものですけどね。 うっかりコパ決勝などに行ってたら、10日(水)にドルトムントを迎えるまで中3日しかなかったのが、8日となり、何せ、最近はそのアスレティックとの準決勝1stレグ、そしてリーガも代表戦週間直前にバルサに負けて、メトロポリターノ不敗神話も雲散霧消してしましたからね。昔は体力だけが唯一の自慢だったアトレティコも選手たちの加齢のせいか、今は中日がいくらあっても疲れが溜まっているような動きしかできないんですが、このリーガ30節では一筋の光明が。ええ、とうとう天敵の黄色のユニを着た相手を破ることができたため、同じくチームカラーが黄色のドルトムントであっても、何とかなるかもしれないという希望が芽生えたのはきっと、私だけではない? そんなことも含めて、先週末のリーガでマドリッド勢がどうだったか、お話ししていくことにすると、先陣を切ったのは弟分のヘタフェ。土曜の昼間にコリセウムにセビージャを迎えたんですが、うーん、2週間もありながら、ボルダラス監督のチームはセットプレーの守備を練習しなかったんですかね。開始5分にアクーニャの蹴ったCKをモリバがクリアできず、ファーサイドに落ちたボールをご存知、セルヒオ・ラモスに決められてしまったから、さあ大変!その後もセビージャがCKを蹴る度、ラモスやエン・ネシリに撃ち込まれ、44分など、またしてもアクーニャのFKから、その日が38才のバースデーだったラモスにゴールを入れられる始末では…。 でも大丈夫。2点目はオフサイドで認められなかったからですが、後でボルダラス監督が「Sabíamos que el Sevilla solo nos podía dañar en una contra o balón parado/サビアモス・ケ・エル・セビージャ・ソロ・ノス・ポディア・ダニャール・エン・ウナ・コントラ・オ・バロン・パラードー(セビージャはカウンターかセットプレーででしか、ウチにダメージを与えられないと知っていた)」と言っていた割には、守備がかなりお粗末だったかと。ただ、この日は1月のコパ16強対決で2得点、ヘタフェを敗退に追いやる元凶となったトップチーム昇格カンテラーノ(Bチームの選手)、イサークがスランプに陥っていたこともあり、それ以上、セビージャに点を取られることはなかったんですけどね。 何せ、今のヘタフェはエネス・ウナル(ボーンマス)の売却に続き、ボルハ・マジョラルがヒザの半月板損傷で今季絶望。マタには往年のゴール力はなく、ラタサはあまりボルダラス監督に信頼されておらずと、確実に得点を望めるFWがいませんからね。前節ジローナ戦にジェジュのゴールで1-0と勝ったことに味を占めたか、オスカル・ロドリゲスのfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)をリピートしたものの、この日は2度目のドジョウは掴めなかったんですよ。 大体がして、最初から控えのフィールドプレーヤーが5人しかいないというのも異常でしたが、後半45分にマタが決めたゴールもオフサイドだったため、結局、0-1のまま、負けてしまうことに。ただ試合後、話題の中心となったのは、後半24分にスタンドから、アクーニャに「mono/モノ(猿)」という野次が飛んだことの方で、おかげで主審が試合を止め、スタジアムに差別的な行為をしないよう、アナウンスが流れたんですけどね。それが何故か、サッカー界で繰り返される人種差別事件として、世間から非難を受けることに。 いやだって、アクーニャは白人のアルゼンチン人ですし、もし野次を飛ばしたのが黒人だったら、逆人種差別でしょうけどね。試合後の記者会見でフラメンコ歌手の息子である自らも、「gitano(ヒターノ/ジプシー)」とスタンドから叫ばれたことを認めたキケ・サンチェス・フローレス監督も、「Parte del publico piensa que puede venir a decir lo que quiera/パルテ・デル・プブリコ・ピンサ・ケ・プエダ・ベニール・ア・デシール・ロ・ケ・キエラ(観客の一部は好きなことを言えると思って来ている)」と批判していたように、要は常識のないファンには、とても1対1ではありえない侮蔑的な言葉をスタジアムで選手に投げかける習性が。その相手が黒人だったら、人種差別と大騒ぎになるだけのような気がしますが、まあ、マスコミもいちいち事例を区別するより、インパクトのある単語が好きですからね。 この辺はもう、礼節を知らないというか、躾の問題かと私などは思っていますが、ちなみにこの敗戦で順位を11位と1つ落としたヘタフェのリーガ再開試合は13日(土)、エスタディオ・バジェカスでの弟分ダービー。6位レアル・ソシエダとの差も勝ち点11に開いてしまいましたし、コパでアスレティックが優勝すれば、リーガ7位に回ってくる、勝ち点4差で現在、ベティスが占めている来季のコンフェレンスリーグ出場権を狙うかどうかは、土曜の決勝が終わらないことには決められませんしね。とりあえず、今は日曜のセルタ戦で、RdT(ラウール・デ・トマス)が出場停止だったのは元々、今季はゴールに見放されているだけにあまり関係ないんですが、前節のベティス戦でホームファンに2勝目をプレゼントしたカメージョも不発。スコアレスドローに終わり、降格圏との差が勝ち点5にしか開かなかったラージョを応援してあげた方がいいような気はします。 そして土曜のコリセウムでは途中で氷雨が降り出し、3月末とは思えない寒さに震えていた私でしたが、うーん、丁度、土日の間の夜に夏時間に変わり、日曜午後9時のベルナベウに向かう頃にはここ何日か、しつこくマドリッド上空に滞留していた雨雲も一掃。日が照っていたのも良かったんですかね。屋根の閉じたマドリーのホームでは強風に悩まされることがないのもわかっていたため、コラソン・クラシックマッチ(マドリーOBの出場するチャリティマッチ)、スペインvsブラジル親善試合の後、ようやく真剣勝負の公式戦が見られるのを楽しみに出かけたんですが、いやあ、驚かされました。 だってえ、マドリーがヨウジ・ヤマモトとコラボした第4ユニ、紫を着ることにしたのはともかく、相手のアスレティックが白いユニでプレーしていたんですよ。8階にあるプレス席からはピッチが遠すぎて、ロクロク選手の顔もわからないため、ふっと気づくと、白組が攻撃している時にゴールを期待している自分がいたりしたんですが、やっぱりベルベルデ監督のチームはコパ決勝が頭から離れなかったんでしょう。前半8分にはブライムが右サイドから送ったロングボールを受け、その日、出場停止のビニシウスに代わって、得意の左側にいたロドリゴが敵DFの見守る中、エリア前からシュート。 これが見事に決まり、早々と先制点を取ったマドリーでしたが、25分にはアスレティックに負傷者が発生。ジェライが太ももを痛め、ビビアンと交代を余儀なくされたため、それもコパ決勝に絶対出たいと願う選手たちにブレーキをかけることに。おかげで前半はほとんど反撃されることもなく、1-0で折り返したんですが、まあ、この日はスペイン代表で躍動していたニコ・ウィリアムスも筋肉痛で来ていませんでしたからね。 兄イニャキも後半3分にはCKから、volea(ボレア/ボレーシュート)で狙っていったものの、代表戦週間にはユーロ出場プレーオフの2試合でゴールを死守。ボスニア・ヘルツェゴビナとアイスランドを破って、ウクライナを本大会に導いたルーニンには、復帰直前だったクルトワが反対側のヒザの半月板を痛めたため、今季は最後まで、マドリーの正GKでいられるという励みもできましたからね。イニャキの一撃もしっかり弾いて同点を免れると、11分にはアスレティックが選手3人を一斉交代したのも空しく、25分、ロドリゴの足が再び、火を吹くことに。 ええ、今度は自陣から高速カウンターで、バレンシア戦での退場による2試合の出場停止から戻ったばかりのベリンガムがドリブルで上がり、エリア前からラストパス。これをビビアンをかわして決めたんですが、もしや彼、スペインとの親善試合でウナイ・シモンからゴールキックをプレゼントされ、ブラジル反撃の狼煙を上げてから、運気が変わった?まあ、この日はコパ決勝前の足慣らしもあって、アスレティックのGKはアギレサバラだったんですけどね。この2点目で敵も白旗を挙げてくれたため、アンチェロッティ監督も終盤にはクルトワから数日遅れ、まさにリーガ開幕戦だったアスレティック戦でヒザの靭帯を断裂。7カ月ぶりに招集されたミリトンを交代出場させることができたんですが、マンチェスター・シティ戦1stレグでの先発はまだ、時期尚早かもしれませんね(最終結果2-0)。 そんなマドリーは次節も、勝っても負けてもコパ決勝の2日酔いをしていそうなマジョルカと対戦とあって、土曜にバルサに詰められた差も勝ち点8に回復。もうリーガ優勝は秒読みに入ったと言っていいんじゃないかと思いますが、翌月曜、30節のトリを飾ったアトレティコはというと。お隣さんが代表戦週間前に4位を奪ったアスレティックを負かしたため、CL出場圏に戻るお膳立てはできていたものの、ええ、今季は筋金入りのアウェイ弱者、15試合で4勝しかしていないシメオネ監督のチームですからね。しかも黄色のユニのビジャレアルはここ9試合黒星がなく、4連勝中と聞いた日にはまたしてもむかむかして、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)から帰宅する覚悟をしていたんですが…。 それが何と、早くも前半9分にはリケルメのCKをビッツェルが見事な首の動きでヘッドして、先制ゴールを挙げてくれたから、ビックリしたの何のって。ただ、その後はモラタに代わって先発したメンフィス・デパイ、ジョレンテのシュートもGKヨルゲンセンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまい、時間が経つにつれ、得意の「リードしたら一歩後退」癖も発動。ハーフタイムまでは0-1で耐えていたんですが、後半5分、まさかフランス代表を離脱して足首を完治させ、ファンをホッとさせていたグリーズマンが自陣エリア近くでボールロスト。カプエからジェラール・モレノに繋がれて、最後はセルロートに同点ゴールを決められているんですから、本当にこのチーム、進歩というものがない。 20分にはグリーズマン、デパイ、ビッツェルがモラタ、コレア、アスピリクエタと交代し、勝ち越し点を目指したアトレティコだったんですが、相変わらず、モラタもコレアもゴールと縁がなくてねえ。もう今季は何度となくアウェイで繰り返されたシナリオ通り、引分け、最悪逆転負けして終わるんじゃないかと爪を噛みながら見ていたところ、最後の交代で入った伏兵、サウールがやってくれたんですよ!それは42分、敵エリア前右から、コケ、コレアとボールが繋がり、最後にアスピリクエタが横に出したパスから、落ち着いて撃ったシュートがゴール左隅に入ってくれるとは、え?これって奇跡って言わない? いえまあ、VAR(ビデオ審判)のオフサイドチェックが長引いていた時は私も生きた心地がしなかったんですけどね。お約束で敵選手とGKの間にいたモラタもプレーに関与していなかったため、無事に1-2で勝利することができたんですが、まったく。そう、この日も試合が進むにつれ、どんどん足取りが鈍くなってくるわ、パスは真っすぐ敵目掛けて飛ぶわは言わずもがな。バリオスなど、スペインU21でご一緒したモスケラがSB全滅だったビジャレアルでCBからジョブチェンジ、左SBでがんがん上がってくるのにまったく歯が立たず、タックルで止めてイエローカードをゲット。次節のジローナ戦に累積警告で出場停止になってしまいましたし、何より、これが今季2得点だったサウールに毎回は頼れませんからね。とにかく一刻も早く、モラタやグリーズマンがゴールを取り戻してくれるのが、ドルトムント戦の鍵にもなるはずですが…とりあえず、リーガ4位を取り戻したことで今は満足するしかありません。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.04 01:30 Thu
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