【2022年カタールへ期待の選手vol.89】今こそ代表エースに定着した原点回帰を!エースの存在価値が問われる大一番/大迫勇也(ヴィッセル神戸/FW)
2021.10.12 12:30 Tue
「(サウジアラビア戦も)チャンスはあったので。僕自身決めないといけないシーンはあると思います。そこを分かりつつ、後はチームとして得点のチャンスを増やすためにどうするかを話し合っています。勝てる確率を高くしていくのが僕らが今、やるべきことだと思うし、本当に最高の準備をしないといけない。いい切り替えをして試合にのぞまないといけないと思います」
2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場権獲得に向け、最終予選序盤戦で早くも2敗と崖っぷちに立たされている日本代表。12日のオーストラリア戦(埼玉)はその行方を大きく左右するだけなく、森保一監督体制続行の是非も問われる大一番となる。
「正直、(これだけのプレッシャーは)初めての経験。やっぱり簡単な試合はない」とW杯予選初参戦の古橋亨梧(セルティック)も異様なムードに驚きを隠せない様子だが、若い世代の大半がこの苦境をどう乗り切るか戸惑っているはず。だからこそ、過去の最終予選を知る面々が力強くチームをけん引しなければいけない。
大迫勇也も2014年ブラジルW杯最終予選こそ経験していないが、2018年ロシアW杯大会の時は苦境続きだった前半戦の山場である2016年11月のサウジアラビア戦(埼玉)から参戦。そこまでの1年半、代表から遠ざかってドイツで屈強かつ大柄なDF陣と対峙してきた経験値をいかんなく発揮し、2-0の勝利に貢献。そこから絶対的1トップの座を射止めた。
「やっぱドイツはゴール前の強さがすごくありますからね。自陣にしろ、相手陣内にしろ。そこでプレーする回数が増えて、点を重ねることができれば、それだけ自分も強くなるし、成長できるってこと。アジア予選はいつも通りやってれば大丈夫だと思ってたんで」と自信満々に話したように、急激な成長曲線を辿っていた当時の大迫は本当に頼もしかった。あれから5年が経過し、アジア最高峰FWになった今、その自信とチャレンジャー精神が少し欠けているのではないだろうか。
オーストラリアという強敵は、むしろ弾みをつける意味で絶好の相手と言っていい。前回最終予選にも参戦していた守護神・ライアン(レアル・ソシエダ)は健在だし、セインズベリー(コルトレイク)とソウター(ストーク・シティ)の2センターバックも高さと強さを兼ね備えている分、巧みな駆け引きが必要になってくる。簡単にクロスを上げても跳ね返されるだけ。大迫自身が囮になって別のアタッカーがペナルティエリア内に侵入したり、自ら2次攻撃・3次攻撃を仕掛けるなど、これまで以上の連携と意思疎通、そして泥臭さが求められるのだ。
「個人でもいろいろとイメージはしているし、プラス、チームとしてどう相手にプレッシャーをかけるか、どう相手に対して崩しに行けるかは距離感等を含め、いろいろコミュニケーションを取りながらやっている感じです。真ん中を閉めるチームが多くなったという印象ですけど、その分、サイドが空いている。うまく対応していかないといけない」と彼自身の中ではゴールへの道筋は明確に描けている様子だ。
あとはそれを実行に移すだけ。ここまで追い込まれた以上、前を向いてアグレッシブにぶつかるしかない。そういう割り切りを大迫は持てるタイプ。本田圭佑(スドゥーヴァ)や岡崎慎司(カルタヘナ)、香川真司(PAOK)といった日本攻撃陣をけん引してきた先輩たちが去り、背負うものが大きくなったのは確かだが、ここはいったん全ての重荷を横に置いて、彼らしさを前面に出すことに集中してほしい。そうすれば、ロシア切符を手中にした2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)の再現は叶うはずだ。
ボール支配に徹してくる相手をタイトなマークで封じ、井手口陽介(G大阪)と浅野拓磨(ボーフム)の2発で勝ち切ったあの名勝負とは「必ずしも同じイメージというわけではない」と大迫は言う。ただ「先手を取りたい」と熱望していた。
そのためにも、彼自身が前からプレスをかけてパスコースを消し、高い位置でボール奪取できるように仕向けるべき。それができれば、似たような展開と結果になる可能性は十分ある。日本中が歓喜したオーストラリア撃破の瞬間を大迫本人も決して忘れてはいないはず。その再現を12日の埼玉で見せてくれることを強く祈りたい。
【文・元川悦子】
2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場権獲得に向け、最終予選序盤戦で早くも2敗と崖っぷちに立たされている日本代表。12日のオーストラリア戦(埼玉)はその行方を大きく左右するだけなく、森保一監督体制続行の是非も問われる大一番となる。
大迫勇也も2014年ブラジルW杯最終予選こそ経験していないが、2018年ロシアW杯大会の時は苦境続きだった前半戦の山場である2016年11月のサウジアラビア戦(埼玉)から参戦。そこまでの1年半、代表から遠ざかってドイツで屈強かつ大柄なDF陣と対峙してきた経験値をいかんなく発揮し、2-0の勝利に貢献。そこから絶対的1トップの座を射止めた。
「やっぱドイツはゴール前の強さがすごくありますからね。自陣にしろ、相手陣内にしろ。そこでプレーする回数が増えて、点を重ねることができれば、それだけ自分も強くなるし、成長できるってこと。アジア予選はいつも通りやってれば大丈夫だと思ってたんで」と自信満々に話したように、急激な成長曲線を辿っていた当時の大迫は本当に頼もしかった。あれから5年が経過し、アジア最高峰FWになった今、その自信とチャレンジャー精神が少し欠けているのではないだろうか。
実際、大迫へのマークの厳しさは凄まじいものがある。9月の初戦・オマーン戦(吹田)では彼と鎌田大地(フランクフルト)のタテのホットラインを相手が徹底的に消してきて、仕事らしい仕事をさせてもらえなかった。続く中国戦(ドーハ)は伊東純也(ヘンク)の右サイドの鋭い突破からの折り返しを右足で決めきったが、前回のサウジアラビア戦(ジェッダ)でも大迫は封じられてしまった。鎌田からのタテパスに抜け出した決定機もゴールにつなげられず、どこか波に乗り切れない部分を本人も感じているはずだが、そういう時こそ原点回帰を図るべき。絶対的1トップに定着した頃のギラギラ感や野獣のような目線を取り戻せば、必ず壁を破れるに違いない。
オーストラリアという強敵は、むしろ弾みをつける意味で絶好の相手と言っていい。前回最終予選にも参戦していた守護神・ライアン(レアル・ソシエダ)は健在だし、セインズベリー(コルトレイク)とソウター(ストーク・シティ)の2センターバックも高さと強さを兼ね備えている分、巧みな駆け引きが必要になってくる。簡単にクロスを上げても跳ね返されるだけ。大迫自身が囮になって別のアタッカーがペナルティエリア内に侵入したり、自ら2次攻撃・3次攻撃を仕掛けるなど、これまで以上の連携と意思疎通、そして泥臭さが求められるのだ。
「個人でもいろいろとイメージはしているし、プラス、チームとしてどう相手にプレッシャーをかけるか、どう相手に対して崩しに行けるかは距離感等を含め、いろいろコミュニケーションを取りながらやっている感じです。真ん中を閉めるチームが多くなったという印象ですけど、その分、サイドが空いている。うまく対応していかないといけない」と彼自身の中ではゴールへの道筋は明確に描けている様子だ。
あとはそれを実行に移すだけ。ここまで追い込まれた以上、前を向いてアグレッシブにぶつかるしかない。そういう割り切りを大迫は持てるタイプ。本田圭佑(スドゥーヴァ)や岡崎慎司(カルタヘナ)、香川真司(PAOK)といった日本攻撃陣をけん引してきた先輩たちが去り、背負うものが大きくなったのは確かだが、ここはいったん全ての重荷を横に置いて、彼らしさを前面に出すことに集中してほしい。そうすれば、ロシア切符を手中にした2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)の再現は叶うはずだ。
ボール支配に徹してくる相手をタイトなマークで封じ、井手口陽介(G大阪)と浅野拓磨(ボーフム)の2発で勝ち切ったあの名勝負とは「必ずしも同じイメージというわけではない」と大迫は言う。ただ「先手を取りたい」と熱望していた。
そのためにも、彼自身が前からプレスをかけてパスコースを消し、高い位置でボール奪取できるように仕向けるべき。それができれば、似たような展開と結果になる可能性は十分ある。日本中が歓喜したオーストラリア撃破の瞬間を大迫本人も決して忘れてはいないはず。その再現を12日の埼玉で見せてくれることを強く祈りたい。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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