ゴールの入るチームが強いのは当たり前…/原ゆみこのマドリッド

2021.09.21 20:00 Tue
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「これじゃ態勢を立て直す時間もありゃしない」そんな風に私が嘆いていたのは月曜日、週末のリーガ戦が終わったばかりなのにもう、試合前記者会見にシメオネ監督とミチェル監督が出ているのに気がついた時のことでした。いやあ、近年はヨーロッパの大会常連となっているアトレティコにしてみれば、週2試合ペースなど、いつものことなんですけどね。翻って、ELに数回出場経験のあるだけのヘタフェは今季、リーガだけのノーマルな日常を送っているんですが、逆にそういうチームが辛くなるのが、1週間にリーガ3試合という、ミッドウィーク開催週。

とりわけ、先週末にはアルメリアに0-4と負け、1勝5敗の最下位となった2部の弟分、アルコルコンのアンテケーラ監督が早くも解任されたりもしていますしね。まだ白星が1つもないヘタフェにとっては、ただでさえ、苦手な兄弟分ダービーにそれこそ、背水の陣で挑まないといけないというのは気の毒なんですが、実を言うと、今は昨季王者もあんまり威張れる状態でないのが悩みの種なんですよ。
どうしてそうなったのか、とりあえず、先週末の試合の様子からお話しすることにすると、まずは土曜の午後2時、私はエスタディオ・バジェカスへ。この弟分ダービーでは、早々にアレニャの直接FKがゴールポストに当たるなど、4連敗のヘタフェがやる気を見せていたんですが、やっぱり彼らは大殺界真っ只中なんですかねえ。「Todo lo que pasa lo hace en contra de nosotros/トードー・ロ・ケ・パサ・ロ・アセ・エン・コントラ・デ・ノソトロス(起きることは全て、ウチに悪い目が出る)」とミッチェル監督も嘆いていたように、7分には振り返りVAR(ビデオ審判)判定が入り、エヌテカがエリア内で倒れているのをスルーしてプレーが続いていたのが、遅ればせながら、元凶がジェネのファールだったことが発覚。

ラージョにPKが与えられ、トレホが先制ゴールを決めたんですが、ヘタフェの不運はまだ続きます。ええ、13分には今季加入して、チームの希望の光となっていたチェコ代表のヤンクト(サンプドリアから移籍)がジャンプした際に足を痛め、担架退場となってしまうんですから、本当にツイていない。急遽、ビトロが入って、前半は1-0のままで凌いだんですが、どうにもゴールを決められるようには見えなくてねえ。後半8分、FKから入ったサベリッチのゴールがオフサイドで追加点を免れたのも束の間、とうとう25分には歓喜にスタンドが沸く中、ファルカがピッチへ。これにはヘタフェの選手たちも威圧されてしまったか、32分にはCKから、カテナ、シスにヘッドを繋がれ、2点目を取られているんですから、もう万事休すだったかと。

でもどんな状況でもゴールを追い求めるのが、Tigre(ティグレ/虎、ファルカオの愛称)の生まれ持っての本能なんです。いやあ、実は午後4時15分からのワンダ・メトロポリターノでのアトレティコvsアスレティック戦に行くため、途中、主審の無線機器が何度も不調となり、進行が遅れていたせいもあり、15分も残して、私が席を立つことになったのもタイミングが悪かったんですけどね。1階のスタンドまで下りたところで場内から大歓声。シスのスルーパスから、ファルカオがラージョ初ゴールを決めるシーンを見逃して、ファンが狂喜乱舞しているのを後ろから眺めているしかなったんですから、もう悔しいっちゃありませんって。
そして試合の残りはタクシーの中、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継を聞いていたんですが、マイナス運気にドップリはまったヘタフェはせっかく、41分にはマシアスがバリウスに倒されて、ペナルティをゲットしながら、エネス・ウナルがPKをGKデミトリエフスキに止められてしまう始末。15分という超ロングロスタイムも空しく、3-0で5連敗となったのも何ですが、得点もまだバルサ戦でサンドロが挙げたゴールしかなく、その彼も負傷で離脱中なんですよ。ミチェル監督によると、ハムストリングスを肉離れしたアランバリを始め、ビトロもラージョ戦でふくらはぎを肉離れ、カバコはアキレス腱を痛め、マクシモビッチとオリベイラも火曜のアトレティコ戦出場は当日まで様子見とかなると、もうヘタフェはチーム全員でお祓いにでも行った方がいい?

そしてキックオフギリギリで間に合ったワンダの試合の方はどうだったかというと、うーん、開始早々にはマルコス・ジョレンテの切り込みから、グリーズマンのシュートというチャンスもあったものの、CLポルト戦から続く低調な流れにほとんど変化は見られず。この日のシメオネ監督はまた趣向を変えて、前線にはコレアとグリーズマンを置き、ルイス・スアレスとカラスコがベンチスタートとなるローテーションをしたのも影響あったか、前半は0-0のまま、ハーフタイムに入ります。後半9分には最近、恒例となっている3人一気替え、グリーズマン、コンドグビア、ロディをルイス・スアレス、カラスコ、エレーラにしたんですが、まさか、その5分後、コレアに代わって入ったジョアン・フェリックスが事件を起こしてくれるとは!

いやあ、スタンドの上の方から見ていたため、私も最初は敵にユニを引っ張られていたジョアンがどうしてイエローカードをもらうのか、わからなかったんですけどね。どうやら主審は相手を振り払う際、ジョアンの腕がベンセドールの顔に当たったことを重視。それで警告を受けたのはともかく、その後がいけません。いくら怒っていても審判に「estás loco/エスタス・ロコ(あんた気違いか)」なんて、しかもスタンドにいる3万9000人の観客のせいで聞こえないことを心配したか、念を入れて自分の頭を指さしてまで言っては、即座に2枚目のカードを突きつけられ、退場処分になってしまっても仕方なかったかも。

結局、最後はクーニャも入れて、自慢のFW陣全員を使いながら、得点に一番近かったのはジョレンテのエリア外からのシュートがポストに当たったぐらい。逆にウィリアムスとビジャリブレが揃って、フリーのシュートを外してくれていなければ、アスレティックに負けかねなかったアトレティコなんですが、何とか試合は0-0で終了です。これでポルト戦から連続スコアレスドロー、代表戦期間前のビジャレアル戦を入れれば、ホームで3連続引き分けという体たらくなんですが、ゴール日照りの時期は毎シーズン、必ずありますからね。なるたけ早く、アタッカーたちにツキが巡ってくるよう、祈るしかないとはいえ、この試合だけでも6枚、5試合で20枚というリーガでダントツ、イエローカードゲット王の称号だけはどうにかならないものかと。

まあ、シメオネ監督も「Si el gesto se lo hace otro probablemente no le expulse/シー・エル・ヘストー・セ・ロ・アセ・オトロ・プロバブレメンテ・ノー・レ・エクスプルセ(他のチームがやった仕草だったら、おそらく退場はなかっただろう)」と嫌味を言っていたように、この日の主審だったヒル・マンサーノ審判とは元々、相性も良くないんですけどね。それでも彼らのイエローカードはラフプレーではなく、半分は抗議によるものとなれば、1試合か2試合の出場停止処分が火曜のヘタフェ戦前に決まるジョアンも含めて、チーム全員で反省してもらわないと。

え、まだ5節終わったところだから、累積警告の心配はさすがにしなくてもいいだろうけど、アトレティコもだんだん、ケガ人が増えてきたんじゃないかって?その通りで、ポルト戦でケガをしたコケとレマルはまだ戻らず、その代理を務めたコンドグビアもアスレティック戦で負傷。3人揃って、火曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)からのヘタフェ戦を自宅でTV観戦することになったんですが、そのうちの誰かは土曜のアラベス戦前に回復してくれないとマズいことに。何せ、来週火曜にはCL2節目のミラン戦もありますし、その週末はバルサをワンダに迎えないといけませんからね。その頃までにはゴール力も取り戻して、せっかくスタンドで応援できるようになったファンを喜ばせて欲しいものです。

一方、勝ち点1ゲットで結構、満足していたようなアスレティックにこの火曜、午後10時からサン・マメスで挑むのがラージョなんですが、やはりこのクラスのチームには中2日の試合は辛いようで、主軸のトレホが筋肉痛で出場が微妙なよう。それでも期待してしまうのは、イラオラ監督がファルカオのコンディションが整い、今度は先発も可能と言ってくれたせいで、何せ、彼のゴールへの執念は2012年のEL決勝で対戦した当人だけでなく、その2ゴールなどでアトレティコに負けたアスレティック勢に知れ渡っていますからね。月曜にバルサがグラナダと1-1と分けたせいで、10位に落ちてしまったものの、ここまで2勝1分け2敗のラージョには気持ち的な余裕もあるため、いい勝負ができるものと信じています。

一方、日曜の夜にメスタジャでプレーしたレアル・マドリーはどうだったのかというと元々、負傷禍に悩まされていたのはアンチェロッティ監督のチームだったんですが、試合が進むにつれ、拮抗していくことに。というのも試合直前にはガヤがハムストリングスのケガでベンチ外になっただけに飽き足らず、前半15分にはカルロス・ソレルが、22分にはコレイアも太ももを痛め、バレンシアの主力が次々と交代してしまったから。それでもボルダラス監督に率いられ、今季から体力を惜しむことなく、戦う集団となった相手はその程度の逆境には挫けず。それどころか、26分にふくらはぎを痛め、せっかくオサラバしたはずだった昨季の悪夢を再来させてしまったカルバハルと交代。右SBを務めていたルーカス・バスケスのミスを後半21分にしっかり利用しているんですから、侮れないじゃないですか。

ちなみにその主役となったのは、ボルダラス監督にヘタフェ時代のパフォーマンスを見込まれ、リクルートされた2人で、フルキエが右サイドから上げたクロスをルーカス・バスケスが頭でクリアすると、そのボールがウーゴ・ドゥロの正面に。少し前にはGKクルトワにシュートを弾かれていたヘタフェのカンテラーノ(Bチーム出身の選手)がワンバウンドしたところを蹴ったボールがネットに突き刺さり、バレンシアの先制点となったとなれば、もしかして、ミチェル監督も移籍最終日に彼をレンタルに出したことを後悔してる?

ただ、ドゥロは昨季も「Por la repercusión que tiene el club, incluido su filial/ポル・ラ・レペルクシオン・ケ・ティエネ・エル・クルブ、インクルイードー・ス・フィリアル(クラブの持っている反響の大きさから。Bチームも含めてね)」という理由で、ラウール監督率いるRMカスティージャにレンタル移籍したちゃっかり者。しかも「パンデミックのせいで、マドリーは誰も補強しないと思ったし、シーズン中にはケガ人とか、イロイロあるから、トップチームに呼ばれるチャンスもあるかも」という当人の予想が見事に的中し、ジダン監督にCLアタランタ戦他、計3試合で使われたんですが、残念ながら、買取オプションは行使してもらえなかったため、バレンシア行きは渡りに船だったようですけどね。

とはいえ、そこはアンチェロッティ監督が即座に反応。それも驚いたことにカセミロ、モドリッチ、中盤の要2人をロドリゴとカマンビンガに代えたんですが、リードしたバレンシアが疲れたのもあって、守りに入ったのもマズかったですかね。おかげで一方的に攻められるようになり、何とか終盤まで耐えていたものの、41分にはとうとう、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質が爆発したんですよ。ええ、ロドリゴのパスをエリア内で受けたベンゼマがボールをビニシウスに出すと、今季は決定力をメキメキ向上させているブラジル人FWがシュート。これがフルキエの足に当たり、それまで好セーブを続けていたGKママルシェビリを破って、同点ゴールになるんですから、さすが本家本元。

それどころか、その2分後には絶好調の前線2人が役割を入れ替え、ビニシウスが上げたクロスにベンゼマがヘッドで勝ち越しゴールって、いえ、リプレーで見ると、使ったのは頭ではなく、肩だったようですけどね。これで1-2の逆転勝利となれば、アンチェロッティ監督が「No hemos ganado por la calidad, sino por el espíritu indomable del equipo/ノー・エモス・ガナードー・ポル・ラ・カリダッド、シノ・ポル・エル・エスピリトゥ・インドマブレ・デル・エキポ(ウチは質の高さで勝った訳ではない。チームの反骨精神のおかげだ)」と言っていたのも頷けるかと。いやあ、もうセルヒオ・ラモス(契約満了でPSGに移籍)もいないのに、こんな見事な終盤の逆転劇を見せられた日にはやっぱり、マドリーのDNAにはレモンターダ体質が刷り込まれているんだって、私も思うしかありませんって。

そんなマドリーはこの勝利で単独首位となり、水曜午後10時(日本時間翌午前6時)から、サンティアゴ・ベルナベウに久保建英選手のいる9位のマジョルカを迎えることになるんですが、何か、羨ましいですよねえ、ベンゼマだけでなく、ビニシウスまでがゴールづいて、2人で今季、チームの15得点中、11ゴールを挙げているなんて。とはいえ、負傷者状況の方はあまり変わらず、カルバハルはもちろん、クロース、マルセロ、メンディ、セバージョス、ベイルの復帰もまだ見込めない様子。先週のCLインテル戦で出番がなかったように、「昨季のケガがあるから、2試合連続で先発するのは難しいかもしれない」とアンチェロッティ監督が言っていたアザールもまたベンチに戻るかもしれませんが、ここしばらく、彼らの快進撃は続きそうな気がします。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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もっとCLが続いてほしい…/原ゆみこのマドリッド

「いきなりクライマックスが来ちゃった」そんな風に私が武者震いをしていたのは月曜日、午前中にマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習を済まし、午後にはバラハス空港から旅立つアトレティコの選手たちの写真をXで見た時のことでした。いやあ、1カ月近くかけて、トロトロやっていたCL16強対決と違い、準々決勝、準決勝になると、2週間で決着がつく短期決戦になるのはわかっていたんですけどね。それが昨季など、何をトチ狂ったか、シメオネ監督のチームはグループリーグで最下位敗退して、年明けからヨーロッパの大会とは完全に無縁に。 よって、レアル・マドリーだけを追っていれば良かったため、あまりせわしい思いをした記憶はなかったんですが、今季は両者共に準々決勝まで残っていますからね。しかもホームとアウェイの順番が一致して、先週は火水の連夜、1stレグを見にサンティアゴ・ベルナベウ、メトロポリターノに足を運んだかと思いきや、今週は2晩続けて、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のお世話になることに。しかもどちらも1stレグで大差をつけられず、アトレティコはドルトムントに2-1勝利、マドリーはマンチェスター・シティと3-3の引分けと、これって、延長戦突入の長丁場になることを覚悟しないといけない? それでも揃って勝ち抜けてくれれば、4月の末から5月の第2週にかけて開催される準決勝ではホーム、アウェイの順番が分かれてくれるんですが、え?最悪の場合、パリで2-3とPSGに勝ったバルサも含め、スペイン勢全てがこのラウンドで消える可能性もあるんじゃないかって?うーん、一応、3チーム共、先週末のリーガで勝利して、流れは悪くないんですが、リーグ1の試合が延期されてプレーしていないPSGはともかく、ドルトムントも土曜にはメンヘングラッドバッハにザビッツァーの2得点で1-2と勝利。 メトロポリターノで2ndレグに希望を繋ぐゴールを挙げたハラーがその試合で負傷し、出られないのは助かりますが、かの「Gelbe Wand(黄色い壁)」立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクには4000人駆けつけるとはいえ、所詮、アトレティコファンは少数派というのは怖いかと。それ以上に大変そうなのは、実力的にガップリ五分に見えたシティにエティハド・スタジアムで勝たないといけないマドリーで、何せ、グアルディオラ監督のチームは先週末のプレミアリーグでルートンに5-1と大勝。リバプールとアーセナルが負けたことも相まって、とうとう単独首位に。マドリッドでは食中毒で試合に出られなかったデ・ブルイネも完全復帰しているため、それこそリーガ首位独走チームのお手並み拝見といったところでしょうが、ホント、どうなることやら。 まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにすると、金曜の私は久々にブタルケを訪問。ずっと2部の首位で頑張っているレガネスを応援するためだったんですが、それがちょっと目を離しているうちにファンが物凄く盛り上がっていてねえ。相手が2位のエスパニョールで、しかも4年前、冬の市場が閉じた後、契約解除金を支払ったバルサに特例移籍。アギーレ監督(現マジョルカ)の残留達成計画を狂わせて、2部降格の一因になったブライトワイテが初めて古巣訪問するというのもあったんでしょうか。 2部時代では最多記録となる1万2573人の観客でブタルケは超満員となり、1部の試合でも見たことない程の熱気だったんですが、残念なことに気合がから滑りしちゃいましたかね。レガネスはゴールを挙げられず、ここ3試合連続となるスコアレスドローで終わってしまうことに。いえまあ、それでもエイバル、エスパニョール、バジャドリーと同じ勝ち点で2位から4位につける後続とは勝ち点4差あるため、首位の座は安泰なんですけどね。まだ残り7試合もあるため、ボルハ・ヒメネス監督も今一度、手綱を引き締めて、白星基調を取り戻さないと、シーズン前はただの夢だった1部再昇格が決まるのも6月2日の最終節近くまでかかってしまうかもしれませんが、こればっかりはねえ。 そして土曜は1部のマドリッド勢が揃ってプレーしたんですが、先陣を切ったのは午後2時から、メトロポリターノにジローナを迎えたアトレティコ。何せ、コパ・デル・レイ決勝で1週間以上空いた後、一転、過密日程に入り、CLドルトムント戦1stレグとこの試合、そして2ndレグも中2日でこなさないといけない彼らでしたからね。シメオネ監督も中8日空いても70分ぐらいまでしか体力が持たない選手たちに配慮して、その日は6人も先発を変えていたんですが、久々のデーゲームでしかも、いきなり気温が夏モード入りというのが影響したんでしょうか。 だってえ、開始4分にはサビーニョの独走を許し、エレーラ、コウトとパスを繋がれ、ゴール左前にいたドブビクに易々と先制点を決められているんですよ。相手は勝ち点7差あるとはいえ、1つ上の3位で、4位から3位に上がってもあまり大差はないとはいえ、アトレティコには5位アスレティックを引き離して、CL出場圏を死守するという使命がありますからね。その後もしばらく、ジローナに主導権を握られていたため、20分にはシメオネ監督がシステムを4-4-2から、5-3-2に戻すなど、懸命に立て直しを図ったところ…。 いやあ、ドルトムント戦でもそうでしたが、今はアトレティコにはツキがあるんですよ。水曜も彼らの2得点は相手の守備ミスのおかげだったんですが、この日は34分、グリーズマンが蹴ったFKをエルモーソがヘッドしたところ、まさかミゲール・グティエレスが手を伸ばしてクリアしてくれるとは!有難くもらったPKをグリーズマンが決め、12月以来となるリーガゴールで同点にしてくれたんですが、40分にはサウールが足首を打撲して、急遽、モラタと交代するというアクシデントも。 するとそれが更に幸運を呼んで、いえ、モラタのゴール乾季が終わった訳じゃないんですけどね。前半ロスタイム6分には彼がラインを越えそうになっていたボールを救い、そこからゴール前に上げたクロスをコレアが敵DF2人の間でヘッドして、勝ち越しゴールを奪っているんですから、ビックリしたの何のって。え、でもそれもロスタイムが始まってすぐ、レイニウドがエリア内でサビーニョを倒しながら、主審もVAR(ビデオ審判)もお目こぼししてくれたからだろうって? まあ、確かにミチェル監督も後で「論理的でないのは、せめてチェックするようにVARが介入しなかったことだ。主審がエリア外だったかもとか、勝手に転んだだけかもとか、迷うのはわかるが、es una patada, es penalti/エス・ウナ・パタダ、エス・ペナルティ(あれは蹴られた。ペナルティだ)」と怒っていたんですけどね。その辺もアトレティコがラッキーだったということでしょうが、2-1で迎えた後半頭から、シメオネ監督はヒザの靭帯断裂から復帰して以来、ペナルティ癖がついてしまったレイニウドをビッツェルに交代することに。 そのおかげもあって、後半はほとんど守備でピンチを迎えることのなかったアトレティコですが、ええ、5分にはデ・パウルのクロスをソリスがエリア内でクリアミスし、こぼれ球を拾ったグリーズマンが3点目を入れてくれましたしね。ちなみにこのゴールの後、当人がデ・パウルと一緒に踊っていたのは、「Mi hijo Amaro quería un baile y se lo mandé a De Paul para hacerlo para Amaro/ミ・イホ・アマロ・ケリア・ウン・バイレ・イ・セ・ロ・マンデ・ア・デ・パウル・パラ・アセールロ・パラ・アマロ(ボクの息子、アマロが踊りを見たがっていて、デ・パウルにアマロのためにやるように命じたんだ)」(グリーズマン)ということだったよう。 それにはシメオネ監督も「Lo vi más suelto, más el, lo necesitamos así/ロ・ビ・マス・スエルトー・、マス・エル、ロ・ネセシタモス・アシー(ずっと伸び伸びしているように見える。彼らしくね。そういう彼が必要なんだ)」と目を細めていましたしね。2点差となった後は安心して、25分にはグリーズマン、リケルメをジョレンテ、サムエル・リノに、30分にはデ・パウルをアスピリクエタに代え、主力選手に疲れが溜まらないよう、またはベンチでお尻が痛くならようにプレー時間を配分できたのも、ドイツでの決戦を前に朗報だったかと。 結局、ジローナはドブビクの頼りになるウクライナ人仲間、ツィガンコフが負傷でおらず、交代で入ったポルトゥやストゥアーニも体調が完璧でなかったこともあって、アトレティコはそのまま3-1で勝利。直近のリーガホームゲームでバルサに負けて、1年以上ぶりに途切れてしまったメトロポリターノ不敗神話を再スタートすることになったんですが、とにかく火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのドルトムント戦まで、あまり時間がありませんからね。とりあえず、2回セッションをしただけで、チームは現地に向かったんですが、今回のお留守番は出場停止のリノと全治3、4週間のケガを負ったメンフィス・デパイ、そしてアキレス腱断裂からの復帰最終段階にあるレマルの3人。今回は引分けでもOKと油断することなく、同日同時刻にプレーするバルサvsPSG戦の勝者と当たる準決勝に進んでくれたらいいんですが…。 そして土曜は次の時間帯がラージョvsヘタフェの弟分ダービーだったんですが、さすがにアトレティコを途中で見捨てて、移動することはできなかったため、私はエスタディオ・バジェカスには行かず、試合の終盤をバルのTVで観戦することに。それがまた、ヨーロッパの大会と無縁な両者は2週間、じっくり調整できたにも関わらず、どちらもゴール日照りを克服することができなかったんですよ。スコアレスドローでそれぞれ、勝ち点1を上積みというのは一応、ラージョは降格圏との差が7に広がったため、レガネスと交代で2部降格という憂き目は回避できそうなんですけどね。 ヘタフェも残留確定ラインの40まであと1つと迫ったため、決して悪くはないんですが、10位の彼らが、せっかくアスレティックのコパ優勝で7位に下りてきたコンフェレンスリーグ出場権を掴むのはかなり遠い夢になってしまったかと。まあ、ボルハ・マジョラルが今季絶望になってから、CF不在となり、ボランチのマクシモビッチが前線に投入されているぐらいですから、ある意味、仕方ないんですけどね。せめて週末日曜にレアル・ソシエダを迎える試合ではマタなり、グリーンウッドなりが力を振り絞って、コリセウムのファンを喜ばせてあげられるといいのですが、それは続けてホームゲームでオサスナ戦を土曜に迎えるラージョも同じかと。 一方、そのまま私がバルに居座って、キックオフを待ったマジョルカvsマドリー戦では、もちろんアンチェロッティ監督もマンチェスター・シティ戦を考えて、大量5人のスタメンをローテーション。それでもコパ決勝でPK戦まで粘ったチームを称えるべく、ソン・モイシュはマジョルカファンで満員御礼となり、開始9分にはそのアスレティック戦で出番がなかったアブドン・プラッツの仮面をスタンドのファンが掲げて、労をねぎらったなんてことも。ただ、プレーのリズムはどちらも低調で、前半など、ライージョのヘッドをGKルーニンがparadon(パラドン/スーパーセーブ)したり、ベリンガムのシュートがゴールバーに弾かれたぐらいで終わってしまったのはガッカリでしたが、でも後半早々、見せ場が来たんですよ。 そう、3分にチュアメニがエリア外から放った一撃がモルラネスに当たって軌道が変わり、GKライコビッチが一歩も動けないまま、ネットを揺らしているんですから、ホント、マドリーはFW以外も恐ろしい。当人も「Sé que puedo chutar, lo trabajamos mucho en el entrenamiento/セ・ケ・プエド・チュタール、ロ・トラバハモス・ムーチョ・エン・エル・エントレナミエント(自分がシュートできるのは知っているし、練習で沢山取り組んでいる)」と言っていたんですけどね。世の中にはいくら撃っても入らないMFも多いため、やっぱりこれは才能あってこそ? ただ、マドリーもそれ以上は点が入らず、いえ、26分にはバルベルデのシュートがナスタシッチにゴールライン前でクリアされるなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も20分頃にはベリンガム、ブライムをビニシウス、カマビンガに、続いてモドリッチをカルバハルに代え、ヒザの靭帯断裂からの復帰でまだ慣らし運転中のミリトンにもロスタイムの4分を与えるなど、粛々とプレー時間を調整。ダルデルのvolea(ボレア/ボレーシュート)もルーニンに弾かれてしまったマジョルカはコソボ人エースのムリキ、途中出場のアブドン・プラッツも火を吹くことはなく、そのまま試合は0-1で終了したんですが、おかげでマドリーが勝ち点8差を保ったまま、日曜にバルサをサンティアゴ・ベルナベウに迎えられることになったのは良かったかと。 実際、リーガの次節はクラシコ(伝統の一戦)で、ここで勝てば、ほぼマドリーの優勝も決まりとなるんですが、何せ、今はどちらのチームもCL準々決勝2ndレグで頭がいっぱいですからね。それこそ、バルサは火曜のPSG戦で、マドリーは水曜午後9時からのマンチェスター・シティ戦で勝ち上がれるかどうかで、選手たちの士気も変わってくるはずですが、果たして結果は如何に。ちなみにチュアメニが出場停止でエティハドでプレーできないマドリーはCBスタメンがリュディガーとナチョになるようですが、昨季のように4点取られても、今度は決して撃ち負けない根性を見せてくることを期待しています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.16 20:30 Tue

まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド

「長い1週間になりそうね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL準々決勝1stレグ4試合の結果が入った決勝までのトーナメント表を眺めていた時のことでした。いやあ、火曜にプレーしたレアル・マドリーvsマンチェスター・シティ、アーセナルvsバイエルンがどちらも引分けに終わった時はまだ、今はもうアウェイゴールルールもないため、2ndレグの一発勝負になったなぐらいの気分だったんですけどね。水曜のアトレティコvsドルトムント、PSGvsバルサの方はどちらもスペイン勢が1点差で勝利という微妙なもので、それでもチャビ監督のチームは2ndレグを今季はカンプ・ノウ建て替えで、仮宿のモンジュイックとはいえ、ホームで戦えるんですよお。 翻って、アトレティコはかの「Gelbe Wand(黄色い壁)」が立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込まないといけず、ええ、今季の彼らのアウェイ弱者ぶりはつとに有名で、更に苦手の黄色ユニのチーム相手となると、いえ、先日、全身黄色でプレーして、とうとう1年以上続いたメトロポリターノのリーガ不敗神話を終わらせたバルサに倣ったんでしょうか。黒のアウェイユニでなく、一番黄色味が強いカップ戦用ユニで挑んだドルトムントとの1stレグではかろうじて、勝つことはできたんですけどね。一応、リーガ前節のビジャレアル戦でもアウェイ&黄色ユニというダブルジンクスを破っているとはいえ、1点なんて、何の弾みで引っくり返されるかわからないじゃないですか。 うーん、それでもシメオネ監督は「CL準々決勝の4試合を見れば、estamos contentos, es muy difícil ganar/エスタモス・コンテントス、エス・ムイ・デフィシル・ガナール(勝つのはとても難しいから、満足している)」と言っていたんですけどね。すでにビジター用チケット4000枚は完売。決して安くはない飛行機代を払って、現地まで2ndレグの応援に行くアトレティコファンの勇気にはただただ、敬服するしかないかと。 まあ、そんなことはともかく、まずは火曜のビッグマッチ、3500人のイギリス人ファンがサンティアゴ・ベルナベウに駆けつけたマンチェスター・シティ戦1stレグから、どんなだったか、お伝えしていくことにすると。さすがにこの高みまで来ると、勝負は2ndレグまでつかなくても、いても立ってもいられなくなるのか、スタジアム周辺は午後7時頃から、チームバスのお出迎えをする何千人もののファンで凄いことに。でもねえ、せっかくメトロポリターノでのドルトムントの記者会見と練習見学から直行し、チームの到着時間前に現地にいた私だったものの、バスが入って来るゲートに通じるパドレ・ダミアン通りが封鎖されていることを知らなかったのが致命的でした。 結局、レアル・マドリーTVの中継を見てお茶を濁すしかなかったんですが、まあ、激混みの中、bengala(ベンガラ/発煙筒)などの火も見えましたしね。煙いのと怖いのを我慢するよりは良かったかと。その頃にはすでに発表されていたマドリーのスタメンには意外性がなく、驚かされたのはスタジアムに入ってから知ったシティの方で、ええ、デ・ブルイネが先発じゃなかったんですよ。後でグァルディオラ監督は「ホテルでのミーティングではスタメンだったが、ロッカールームに着いたら、プレーできないと言ってきた。Tenía vómitos y se ha encontrado muy mal/テニア・ボミトス・イ・セ・ア・エンコントラードー・ムイ・マル(嘔吐して、とても気分が悪いようだった)」と説明していたんですが、もしや、その代理として出場したコバチッチは古巣のピッチが踏めて嬉しかった? それにしたって、CL用の大幕とスタンド全面モザイク、更に屋根を閉じているせいで一層、ファンの歌声やpito(ピト/ブーイング)の音響効果が高まった新装ベルナベウの雰囲気に酔っていたのが、ホームチームの方だったとは。そう、開始45秒にシティのカウンターに泡を喰らい、その日、CBに抜擢されたチュアメニが駆け上がるグリーリッシュにタックル。早々にイエローカードをもらい、しかも累積警告で2ndレグに出られなくなってしまったのは、後でアンチェロッティ監督が悩めばいいことですが、まさか、ベルナルド・シウバの蹴ったFKをGKルーニンが逃し、2分には先制点を取られてしまうとは一体、どういうこと? でも大丈夫。マドリー相手にリードするには時間の工夫が必要っていうのはとりわけ、お隣さんなどはよく知っているんですが、そう、彼らのDNAに刷り込まれたremontada(レモンターダ/逆転劇)根性が発動してしまいますからね。案の定、12分には長いポゼッションの後、カルバハルからパスを受けたカマビンガがエリア外からシュート。これがルーベン・ルイスに当たってオウンゴールとなり、あっという間に同点に。更にその2分後にはビニシウスが自陣から放ったロングボールをロドリゴが受け、エリア内から撃ったところ、アカンジに当たったせいでトロトロになりながら、ゴールに入ったから、ビックリしたの何のって。 いやあ、これには直近のアスレティック戦でビニシウスが出場停止となり、代理で左サイドを務めたロドリゴが2ゴールと活躍したため、逆にビニシウスの方をセンター寄りに、ロドリゴを左サイドに置いたアンチェロッティ監督の作戦のおかげもあるんですけどね。一応、この速攻逆転でマドリーも落ち着いたか、前半は2-1のままで終わったんですが、そこは相手も昨季のCL王者。後半が始まって、ボールポゼッションが増えてきたシティは21分、マドリーが「Nos descansamos un poco, dejamos de presionar por cansancio/ノス・デスカンサモス・ウン・ポコ、デハモス・デ・プレシオナル・ポル・カンサンシオ(ウチはちょっと休んじゃって、疲れから、プレスをかけるのを止めた)」(バルベルデ)ところを狙い、フォーデンがエリア前から、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、2-2にしたんですよ。 その5分後にも今度はグバルディオルがやはり、エリア前からのシュートを決めて、2-3の逆転返しをされてしまったとなれば、アンチェロッティ監督が慌てて、モドリッチとブライムを投入したのも当然だったかと。実際、その交代は的を得ていて、ええ、34分にはモドリッチのパスから、ビニシウスがクロスを挙げ、バルベルデのvolea(ボレア/ボレーシュート)で3-3に追いつくことができましたからね。これがもし、2ndレグで準決勝進出が決まるのであれば、絶対、マドリーはあと1点取っていたはずと私は確信しているんですが、生憎、この日は1stレグ。 どちらにしろ、来週水曜にはエティハド・スタジアムで再戦となるため、マドリーもレモンターダ根性を振り絞らず、最後は3-3で分けたんですが、え?「El empate parece como el del año pasado, como si fuera una derrota/エル・エンパテ・パレセ・コモ・エル・デル・アーニョ・パサードー、コモ・シ・フエラ・ウナ・デロータ(去年みたいな引分けだから、負けたようなもんだ)」とバルベルデは嘆いていなかったかって?まあ、確かに昨季は準決勝1stレグをベルナベウで1-1、2ndレグではシティに4-0の大敗を喰らって敗退した記憶はまだ新しいですからね。ただ、アンチェロッティ監督は試合前、「Jugamos sin coraje y sin personalidad/フガモス・シン・コラヘ・イ・シン・ペルソナリダッド(勇気もパーソナリティも持たずにプレーした)」とその敗因を解明していたため、同じ轍を踏むことはないのでは? ええ、この日も昨季のベルナベウでの対戦同様、ハーランドに1本しかシュートを撃たせなかったリュディガーを2ndレグで控えにするなんて、もう絶対にやらないでしょうしね。ただ、不気味なのは試合後、ベルナベウのピッチの芝の状態が絨毯のようではなかったという、今季はまだ誰からも言われていない文句を言って、注目を浴びていたグァルディオラ監督が交代枠をまったく使わず、90分を終わらせそうだったこと。いえ、最後はフォーデンがふくらはぎにこむら返しを起こし、フリアン・アルバレスを入れる破目になったんですけどね。これって、もしや2ndレグに備えて、手を隠していたのかも。 何にせよ、エティハドではデ・ブルイネも出て来るでしょうし、また競ったいい勝負が見られるんじゃないかと思いますが、その前にマドリーは土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からマジョルカ戦に挑むことに。まあ現在、2位のバルサと勝ち点8差がある彼らですから、シティ戦2ndレグの後にはクラシコ(伝統の一戦)が来るとはいえ、ローテーションする可能性もありますけどね。どうやら体力も超一流のここの選手たちは逆に中3日ぐらいの方が調子を維持できるよう。コパ・デル・レイ決勝でアスレティックに負け、落ち込んでいたアギーレ監督のチームもあれから1週間経つだけに完全に切り替えて、リーガの1部残留達成一本に絞っているため、この狭間試合はちょっと苦労するかもしれませんね。 そして翌水曜、お隣さんに負けじと、メトロポリターノに繋がる沿道をぎっしり埋めたファンのお出迎えを受け、赤白青のモザイクでスタンドが彩られた中、アトレティコもドルトムント戦をスタートさせたんですが、助かりました。何せ、メトロポリターノは密閉仕様じゃありませんからね。あそこまでヒートアップしたファンの歌声をドーム型スタジアムで聞かされた日には、耳の鼓膜が持ちませんって。3、4000人と言われたドルトムントファンもかなり応援の声量が高く、しかもそれが前半早々、4分にはGKコベルからボールを受けたマートセンが大ポカ。横に出したボールをデ・パウルに奪われ、そのシュートで先制されながらもちっとも衰えないって、やっぱりジグナル・イドゥナ・パルクは地獄になる? といってもメトロポリターノでは絶対的にアトレティコファンの方が多かったため、ドルトムントの選手たちもプレッシャーを感じていたんでしょう。さすがに中8日あっただけあって、この日は積極的にプレスをかけていったシメオネ監督のチームは32分にも敵のミスを利用。ええ、モリーナのスローインをDFが中途半端に弾き、それを拾ったモラタがグリーズマンへ。そのアシストでサムエル・リノが2点目を決めてくれたとなれば、当人もその5分前にイエローカードをもらい、2ndレグが出場停止になった懺悔は済ませたと思った? でも2-0で始まった後半、アトレティコはモラタ、グリーズマン、モリーナもシュートを決められず、追加点が取れなくてねえ。ハーフタイムにテジッチ監督が「メンタル的に落ち着くように」と選手たちにアドバイスしたドルトムントはエンメチャがブラントに代わったのも良かったようで、だんだんボールを持つようになったんですが、ホント、後悔先に立たずの典型だったのは30分。グリーズマンの蹴ったFKをゴール前からシュートしたリノがGKコベルに弾かれていなければ、3点差となり、2ndレグで逆転される悪夢から、かなり遠ざかれたはずだったんですが…。 それどころか、「Mantener el nivel de lo que se hizo 70 minutos es muy difícil/マンテネール・エル・ニベル・デ・ロ・ケ・セ・イソ・セテンタ・ミヌートス・エス・ムイ・デフィシル(70分間やってきたこことのレベルをずっと維持するのはとても難しい)」とシメオネ監督も言っていたように、アトレティコがガス切れしていた36分、とうとうブラントが入れたパスから、フルクルクから代わっていたFWアラーに1点を返されてしまったから、さあ大変!実際、その後もバイノー=ギデンスやブラントのシュートがゴールバーに当たり、かろうじて同点を免れるというシーンもありましたからね。試合は2-1で終わり、もちろん、「Hemos ganado, que es lo importante/エモス・ガナードー、ケ・エス・ロ・インポルタンテ(ボクらは勝った。それが大事なこと)」(グリーズマン)というのは正論ですが、こんな僅差では…。 何せ、珍しく長い間、元気だったメンフィス・デパイが先週土曜の練習でまた筋肉を痛め、全治3、4週間となってしまったため、今のアトレティコにはCFがこのところ、ゴール乾季に入ったモラタしかいませんからね。うっかりドルトムントに追いつかれ、点を取らないといけなくなった時、誰を頼りにしていいのかもわからない有り様なんですが、それは土曜午後2時(日本時間午後9時)のジローナ戦も同じこと。ただ、勝ち点2差の5位アスレティックは先週末からずっと、コパ優勝祝い漬けで、木曜にガバラ(ビルバオの運河を航行する運搬船)で水上パレード、その後もパスで市内パレードと延々と続いていたのはともかく、その前日にも街中に選手たちが現れて、ファンとゲリラ祝勝イベントまでしていましたからね。 おそらく日曜のビジャレアル戦では勝てないんじゃないかと思いますが、アトレティコも相手が勝ち点差が7差ある3位と手ごわいため、負傷から復帰したばかりのヒメネスや試合後、また足首に氷を巻いていたグリーズマンらに休養を与える訳にいかないのが辛いところ。合法的に休めるのは出場停止となるバリオスだけですが、結局、中8日あっても選手たちのスタミナが持続するのは70分までとわかってしまった今、あとはシメオネ監督が途中交代などでコマメに調整するしかないかと。 そしてヨーロッパの大会もなく、コパ決勝のせいで2週間試合がなかったヘタフェとラージョは土曜にエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーとなるんですが、すでに残留確定見込みラインまであと勝ち点2で、当面の目標がなかったボルダラス監督のチームには朗報が。というのもコパでEL出場圏にいるアスレティックが優勝したため、コンフェレンスリーグ出場権がリーガ7位に与えられることになったからで、現在、バレンシアが占めるそこまでなら、勝ち点6差。まあ、11位のヘタフェが到達するには4チームも抜かさないといけないので、難行ではありますが、高みを目指すにこしたことはありませんからね。16位のラージョの方はあと2、3勝しないと、残留確定とならないんですが、今は降格圏と勝ち点差5あるため、イニゴ・ペレス監督もこのparon(パロン/リーガの停止期間)は落ち着いて練習できたんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.12 20:30 Fri

この決勝は他人事だったけど…/原ゆみこのマドリッド

「これは教訓になるわね」そんな風に私が気を引き締めていたのは日曜日、コパ・デル・レイ決勝が午前1時近くにようやく終わった時のことでした。いやあ、アトレティコが準決勝2ndレグでボコボコにやられ、決勝がアスレティックvsマジョルカというカードになったため、わざわざセビージャのカルトゥーハまで見に行く理由もなし。おまけにTVE(スペイン国営放送)の中継があり、自宅でTV観戦できたため、別に決着がつくのが翌日にもつれ込んだことはそれ程、気にならなかったんですけどね。 午後10時に始まった試合が何故にそんなに長引いたかと言えば、もちろん、マジョルカが2匹目のドジョウを狙い、ひたすらPK戦突入を目指して、延長戦を戦っていたからなんですが、残念ながら、準決勝レアル・ソシエダ戦と同じ結末にはならず。そう、レアル・アレナでの2ndレグのPK戦同様、第1キッカーにムリキ、それからモルラン、マスカレルはベンチ待機だったため、ラドンジッチの順番を繰り上げたところ、コソボ人エースこそ、この日もしっかりPKを成功させたものの、モルランがGKアギレサバラに止められてしまったのが誤算でしたかねえ。 それで動揺したか、ラドンジッチも大きく撃ち上げてしまっては。ソシエダ戦で相手の第1キッカーだったオジャルサバルを弾き、試合中にもブライス・メンデスのPKを防いでいたため、一躍、parapenarti(パラペナルティ/PK止め屋)として脚光を浴びていた、マジョルカのGKグレイフがアスレティックのキッカーには歯が立たなかったのも災難で、ええ、ラウール・ガルシア、ムニアイン、ベスガ、ベレンゲルと全て、ゴールになってしまいましたしね。おかげで4人目のアントニオ・サンチェスは決めたものの、結局、アギーレ監督のチームは4-2で負けてしまったんですが、これを我が身としてほしいのはアトレティコ。 というのも今週はまだ1stレグですが、2ndレグとの間が1週間しかないCL準々決勝ドルトムント戦が来るからで、ええ、16強対決のインテル戦2ndレグにPK戦で勝ったせいで、過信されても困りますからね。あの時だって、メンフィス・デパイ、リケルメ、コレアは成功したものの、2番目に蹴ったサウールはGKゾマーに止められてしまい、GKオブラクがアレクシス・サンチェスとクラーセンを連続セーブという奇跡があってこその勝利だったとなれば、準々決勝2ndの後の週末にはリーガもありますし、余分な延長戦で体力を消耗することなく、いい結果を出してもらいたいものですが…。 まあ、そんなことはともかく、ようやく各国代表戦週間が明けたリーガを再びparon(パロン/停止期間)に追いやって、大々的に開催されたコパ決勝がどんな試合だったか、一応、お話ししておくと。いやもう、これがアスレティックとマジョルカのファンが大盛り上がりで、うーん、カルトゥーハには5万人ぐらいしか、入らないんですけどね。それがチケットを買えなかったファンまでが大移動して、試合当日にはセビージャに10万人のアスレティック勢、地中海を渡らないと来られないマジョルカ勢も2万5000人程、集結していたんですが、更にはサン・マメスでのパブリックビューイングも5万人の満員御礼だったなんてと聞くと、彼らのコパへの思い入れがわかるってもの? 試合の方はクラブが警告を出したのが功を奏して、ええ、これまでバスク地方に本拠を置くアスレティックがファイナリストになる度、場内がスペイン国歌へのpito(ピト/ブーイング)の嵐になり、パルコ(貴賓席)に主賓として座るスペイン国王フェリペ6世に決まりの悪い思いをさせていたんですけどね。ようやくそれがなくなったのは良かったんですが、開始24秒でニコ・ウィリアムスが撃ったシュートが外れながら、何と先手を取ったのはマジョルカだったから、ビックリしたの何のって。 それは前半21分、CKからの攻撃でサム・コスタが頭で流したボールはゴール前左から、ジオ・ゴンサレスのシュートはプラドスに当たり、コペテの撃ち直しもアギレサバラに弾かれてしまったんですけどね。こぼれ球をキャプテンのライージョがダニ・ロドリゲスに繋いだところ、3度目の正直で入るとはまさに執念の賜物。いやあ、アスレティックも38分にはジュリとの連携でニコがゴールを決めたんですけどね。こちらはオフサイドだったため、試合は0-1で折り返すことに。 バルベルデ監督がプラドスをベルガに代えた後半は、逆に19秒にラリンが撃って、アギレサバラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という形で始まったんですが、コパ優勝最多31回のバルサに続く、24回で2位につけながら、ここ40年間、上積みできず。そのアスレティックが悔しさをバネにして、同点に追いついたのはすぐのことでした。5分には、リーガ前節のレアル・マドリー戦を筋肉痛でお休みしていたニコがダニ・ロドリゲスからボールを奪い、サンセットにラストパスを送ると、そのシュートでゴールが入ったんですが、何せ、その先はまったくスコアが動かなくってねえ。 アギーレ監督もアスレティックの攻撃陣を抑える方を優先したか、16分にはもうラリンを引っ込め、中盤を増やしたのはいいんですが、延長戦に入っても今季のコパで最多6得点を挙げているアブドン・プラッツを入れなかったのは何故?同様に延長戦から、イニャキ・ウィリアムス、サンセット、グルセタを引っ込め、ラウール・ガルシア、ムニアインらベテランとベレンゲルを入れたアスレティックも最後まで、やはり6得点しているビジャリブレを入れなかったとはいえ、これはやっぱり、PK戦の成功体験がマジョルカは忘れられなかった? 実際、ぶっつけ本番だったソシエダ戦と違い、「Esta vez incluso habíamos ensayado los penaltis/エスタ・ベス・インクルソ・アビアモス・エンサジャードー・ロス・ペナルティス(今回はPK戦の練習までした)」(アギーレ監督)そうですしね。結果はバルベルデ監督も「Llevábamos tiempo preparándolo y sobre todo he elegido a los que han entrado de refresco/ジェバモス・ティエンポー・プレパランドロ・イ・ソブレ・トードー・エ・エレヒードー・ア・ロス・ケ・アン・エントラードー・デ・レフレスコ(ウチはしばらくの間、準備していて、とにかくPKキッカーにはリフレッシュで入った選手を選んだ)」と言っていたように、アトレティコとの準決勝1stレグでもメトロポリターノから、希少な白星を持ち帰るPKを決めたベレンゲルが4人目として、アスレティック優勝の殊勲者に。 それでもビジャリブレはピッチでのお祝いで、2021年のスペイン・スーパーカップ優勝時にも披露した、趣味のトランペットでカンティコを演奏するという晴れ舞台があったんですけどね。アブドン・プラッツなど、マルカ(スポーツ紙)の決勝前インタビュー企画に乗せられて、趣味の陶芸でコパトロフィーを作り、今でもマジョルカの教室で焼かれるのを待っているというのに、こうなるとあの作品、一体、どうしたらいいんでしょう。 え、これまで4度もコパ決勝をプレーしながら、1度も勝てなかったムニアインがとうとう、31才で悲願のトロフィーを掲げた後、カルトゥーハで遅い時間まで祝っていたアスレティックはその夜、セビージャに宿泊。翌日、ビルバオに戻って早速、伝説のガバラ(市内の運河を航行する木材運搬船)で水上パレードしたのかって?いやあ、それがコパでは控えGKだったウナイ・シモンも「Ha costado 40 años. Existe. La Gabarra existe. A ver si ahora flota/ア・コスタードー・クアレンタ・アーニョス。エクシステ。ラ・ガバラ・エクシクテ。ア・ベル・シー・アホラ・フロタ(40年かかった。あるよ、ガバラはある。今も浮かぶかどうか見てみよう)」と言っていたんですけどね。 やはりオープンデッキバスでの普通の市内パレードとは違い、運河は交通規制が複雑らしくて、ガバラはすでに大金を投じて整備され、乾ドックで待機しているものの、木曜まで出航できないのだとか。まあ、その際には街を挙げてのお祭りになるはずですが、ガバラと並走するボートや小型船に乗るにはかなりの値段がつけられているため、ファンの大半は河岸から、見学することになるよう。ただこの遅いお祝いはアトレティコにとっては渡りに船で、ええ、リーガ前節で4位をアスレティックから奪還したとはいえ、勝ち点差はたったの2ですからね。 その2日後にビジャレアルを迎えるサン・マメスでの一戦もお祭り気分が覚めていないはずなので、土曜のメトロポリターノでのジローナ戦で一気に5差にして、そのままシーズン最後までCL出場圏を守ってもらいたいものですが、まあそれは先の話。試合のなかった先週、彼らは水曜と日曜を練習休みにして、木曜夕方にはゲリラ的にシメオネ監督時代前期の大功労者、ゴディンを称えるペーニャ(ファンクラブ)主催のイベントをスタジアムの講堂で当人、現役選手やスタッフも大勢参加で開催していたりしたんですが、とにかく今のアトレティコはCLドルトムント戦に全集中なんですよ。 ええ、直近のビジャレアル戦ではようやく苦手のアウェイで勝利、おまけに天敵の黄色いユニのチームを破ったにも関わらず、本格的に練習を再開した木曜には、シメオネ監督がマハダオンダ(マドリッド近郊)グラウンドでセッションを一時停止して、選手たちにとうとう、「サッカーは歩いてないで、走らないといけない」という訓示をしたらしいですしね。その通り、ラ・セラミカでのようにたらたらプレーしていたら、ブンデスリーガの上位チームには絶対、敵わないことを彼らに自覚してもらいたいのはファン共通の願いかと。 おかげでクラブのメディアへのインタビューでは、グリーズマンなども「Ellos están muy bien, vienen de ganar al Bayern y hay que estar atentos a cualquier detalle/エジョス・エスタン・ムイ・ビエン、ビエネン・デ・ガナール・アル・バイエルン・イ・アイ・ケ・エスタル・アテントス・ア・クアルキエル・デタジェ(彼らはとてもいい状態で、バイエルンに勝ったばかり。だから、どんなディテールにも注意しないと)」と慎重になっていたんですが、大丈夫。バイエルンに0-2で勝った後、折しも土曜のシュツットガルト戦でドルトムントは0-1と負け、CL出場権争いをしているライプツィヒを抜くことができませんでしたしね。インテル戦の前も悲観視されながら、何とか勝ち抜けたアトレティコだけに可能性は決してゼロではありませんが、何にしても水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からの1stレグでよっぽどの大勝をしない限り、私が安心できることはないような気がします。 そしてアトレティコ同様、中8日で火曜午後9時にマンチェスター・シティをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるマドリーも休養日を交えながら、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でずっと準備をしていたんですが、こちらはもっと日程的に有利なんですよ。というのもシティはミッドウィークにアストン・ビラ戦をこなした後、土曜にもクリスタル・パレス戦と、ずっとハードスケジュールが続いているからですが、それが2試合共、4得点勝利しているとなれば、決して侮れませんって。 実際、昨季のCL準決勝でも1stレグがホーム開催となったマドリーはベルナベウで1-1と引分けた後、エティハド・スタジアムでの2ndレグで4-0と大敗。よって、こちらもアトレティコ同様、初戦で余裕の勝利を挙げておかないと、いくら根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がお家芸の彼らとはいえ、アウェイでは辛いものがありますからね。ただ去年、シティにやられまくってしまったのには事情もあって、マドリーは2ndレグの直前、コパ決勝のオサスナ戦で優勝したものの、中日が少なかったのが致命的だったよう。 それだけに今回、グァルディオラ監督に文句を言われる筋合いはないんですけどね。この準々決勝には休養十分で挑める上、前節のアスレティック戦では昨夏にヒザの靭帯断裂をしたミリトンも復帰して、現在、負傷欠場者はクルトワとアラバだけ。となると、逆にアンチェロッティ監督も起用したい選手が多すぎて、スタメン選びに困っているんじゃないかと思いますが…何はともあれ、マドリッドで2日連続CLの試合が見られるのは嬉しいですよね。 そしてこの2週間、丸々空いてしまったヘタフェとラージョがエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーに挑むのは週末土曜とまだかなり先なんですが、直近のセビージャ戦でコリセウムのファンの差別的野次を告発されたヘタフェには競技委員会から、厳しい処分が。ええ、アルゼンチン人のアクーニャが「mono(モノ/サ猿)」と侮辱された件で2万7000ユーロ(約450万円)の罰金と、そのファンがいた区画を3試合に渡って閉鎖しないといけなくなったんですが、すでに犯人は発見済み。クラブは元凶のアボナードー(年間チケット所有者)を追放処分にするようですが、実際、その罰金を当人に付け替えることができれば、一番お灸をすえられるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.08 22:40 Mon

またリーガが休みに入った…/原ゆみこのマドリッド

「1月2月はあんなに忙しかったのにこの落差、激しすぎる」そんな風に私が戸惑っていたのは火曜日、来週まで見に行ける試合が全然、ないのに気がついた時のことでした。いやあ、先週末も各国代表戦のparon(パロン/リーガの中断期間)明けで、クラブの試合があるのは2週間ぶりだったんですけどね。それでもスペイン代表の親善試合があったため、マドリッド勢からの参加は3人だけと少なかったものの、6月のユーロ前にデ・ラ・フエンテ監督のチームを知るいい機会となったんですが、この週末は土曜のコパ・デル・レイ決勝、アスレティックvsマジョルカ戦だけ。 それぞれ40年ぶり、21年ぶりとなるコパタイトルを懸けた大舞台ですし、前者などは2021年にコロナ禍で延期された前年度分を含め、同じ月に2度、無観客決勝に挑戦。その時はレアル・ソシエダ、バルサに続けて負けるという悔しい思いをしているだけに、すでに先週から、ビルバオの街がガバラ(運河を航行する木材運搬船、アスレティック優勝の際にパレードに使われる)出航への期待でウズウズしているのはよくわかりますけどね。決勝会場も現在、当局の捜査が入っている契約で、サッカー協会のルビアレス前会長がセビージャのカルトゥーハに固定してしまったせいで、以前のようにサンティアゴ・ベルナベウやビセンテ・カルデロン(アトレティコの旧ホームスタジアム)開催となって、気楽に私が見に行くことすら不可能に。 よって、今週末はマドリッドのサッカーファンも退屈してしまいそうですが、いい面を考えれば、兄貴分2チームが来週のCL準々決勝1stレグを余裕を持って迎えられることでしょうか。ええ、グァルディオラ監督も怒っていたんですが、マンチェスター・シティは水曜にアストン・ビラ戦、土曜にクリスタル・パレス戦のプレミアリーグ2試合があり、9日(火)のベルナベウの試合は中3日で迎えないといけないのに対し、レアル・マドリーは中8日。アトレティコも、いえ、せっかくお隣さんを準々決勝で倒した後、準決勝でアスレティックに足蹴にされた時は本当に悔しかったものですけどね。 うっかりコパ決勝などに行ってたら、10日(水)にドルトムントを迎えるまで中3日しかなかったのが、8日となり、何せ、最近はそのアスレティックとの準決勝1stレグ、そしてリーガも代表戦週間直前にバルサに負けて、メトロポリターノ不敗神話も雲散霧消してしましたからね。昔は体力だけが唯一の自慢だったアトレティコも選手たちの加齢のせいか、今は中日がいくらあっても疲れが溜まっているような動きしかできないんですが、このリーガ30節では一筋の光明が。ええ、とうとう天敵の黄色のユニを着た相手を破ることができたため、同じくチームカラーが黄色のドルトムントであっても、何とかなるかもしれないという希望が芽生えたのはきっと、私だけではない? そんなことも含めて、先週末のリーガでマドリッド勢がどうだったか、お話ししていくことにすると、先陣を切ったのは弟分のヘタフェ。土曜の昼間にコリセウムにセビージャを迎えたんですが、うーん、2週間もありながら、ボルダラス監督のチームはセットプレーの守備を練習しなかったんですかね。開始5分にアクーニャの蹴ったCKをモリバがクリアできず、ファーサイドに落ちたボールをご存知、セルヒオ・ラモスに決められてしまったから、さあ大変!その後もセビージャがCKを蹴る度、ラモスやエン・ネシリに撃ち込まれ、44分など、またしてもアクーニャのFKから、その日が38才のバースデーだったラモスにゴールを入れられる始末では…。 でも大丈夫。2点目はオフサイドで認められなかったからですが、後でボルダラス監督が「Sabíamos que el Sevilla solo nos podía dañar en una contra o balón parado/サビアモス・ケ・エル・セビージャ・ソロ・ノス・ポディア・ダニャール・エン・ウナ・コントラ・オ・バロン・パラードー(セビージャはカウンターかセットプレーででしか、ウチにダメージを与えられないと知っていた)」と言っていた割には、守備がかなりお粗末だったかと。ただ、この日は1月のコパ16強対決で2得点、ヘタフェを敗退に追いやる元凶となったトップチーム昇格カンテラーノ(Bチームの選手)、イサークがスランプに陥っていたこともあり、それ以上、セビージャに点を取られることはなかったんですけどね。 何せ、今のヘタフェはエネス・ウナル(ボーンマス)の売却に続き、ボルハ・マジョラルがヒザの半月板損傷で今季絶望。マタには往年のゴール力はなく、ラタサはあまりボルダラス監督に信頼されておらずと、確実に得点を望めるFWがいませんからね。前節ジローナ戦にジェジュのゴールで1-0と勝ったことに味を占めたか、オスカル・ロドリゲスのfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)をリピートしたものの、この日は2度目のドジョウは掴めなかったんですよ。 大体がして、最初から控えのフィールドプレーヤーが5人しかいないというのも異常でしたが、後半45分にマタが決めたゴールもオフサイドだったため、結局、0-1のまま、負けてしまうことに。ただ試合後、話題の中心となったのは、後半24分にスタンドから、アクーニャに「mono/モノ(猿)」という野次が飛んだことの方で、おかげで主審が試合を止め、スタジアムに差別的な行為をしないよう、アナウンスが流れたんですけどね。それが何故か、サッカー界で繰り返される人種差別事件として、世間から非難を受けることに。 いやだって、アクーニャは白人のアルゼンチン人ですし、もし野次を飛ばしたのが黒人だったら、逆人種差別でしょうけどね。試合後の記者会見でフラメンコ歌手の息子である自らも、「gitano(ヒターノ/ジプシー)」とスタンドから叫ばれたことを認めたキケ・サンチェス・フローレス監督も、「Parte del publico piensa que puede venir a decir lo que quiera/パルテ・デル・プブリコ・ピンサ・ケ・プエダ・ベニール・ア・デシール・ロ・ケ・キエラ(観客の一部は好きなことを言えると思って来ている)」と批判していたように、要は常識のないファンには、とても1対1ではありえない侮蔑的な言葉をスタジアムで選手に投げかける習性が。その相手が黒人だったら、人種差別と大騒ぎになるだけのような気がしますが、まあ、マスコミもいちいち事例を区別するより、インパクトのある単語が好きですからね。 この辺はもう、礼節を知らないというか、躾の問題かと私などは思っていますが、ちなみにこの敗戦で順位を11位と1つ落としたヘタフェのリーガ再開試合は13日(土)、エスタディオ・バジェカスでの弟分ダービー。6位レアル・ソシエダとの差も勝ち点11に開いてしまいましたし、コパでアスレティックが優勝すれば、リーガ7位に回ってくる、勝ち点4差で現在、ベティスが占めている来季のコンフェレンスリーグ出場権を狙うかどうかは、土曜の決勝が終わらないことには決められませんしね。とりあえず、今は日曜のセルタ戦で、RdT(ラウール・デ・トマス)が出場停止だったのは元々、今季はゴールに見放されているだけにあまり関係ないんですが、前節のベティス戦でホームファンに2勝目をプレゼントしたカメージョも不発。スコアレスドローに終わり、降格圏との差が勝ち点5にしか開かなかったラージョを応援してあげた方がいいような気はします。 そして土曜のコリセウムでは途中で氷雨が降り出し、3月末とは思えない寒さに震えていた私でしたが、うーん、丁度、土日の間の夜に夏時間に変わり、日曜午後9時のベルナベウに向かう頃にはここ何日か、しつこくマドリッド上空に滞留していた雨雲も一掃。日が照っていたのも良かったんですかね。屋根の閉じたマドリーのホームでは強風に悩まされることがないのもわかっていたため、コラソン・クラシックマッチ(マドリーOBの出場するチャリティマッチ)、スペインvsブラジル親善試合の後、ようやく真剣勝負の公式戦が見られるのを楽しみに出かけたんですが、いやあ、驚かされました。 だってえ、マドリーがヨウジ・ヤマモトとコラボした第4ユニ、紫を着ることにしたのはともかく、相手のアスレティックが白いユニでプレーしていたんですよ。8階にあるプレス席からはピッチが遠すぎて、ロクロク選手の顔もわからないため、ふっと気づくと、白組が攻撃している時にゴールを期待している自分がいたりしたんですが、やっぱりベルベルデ監督のチームはコパ決勝が頭から離れなかったんでしょう。前半8分にはブライムが右サイドから送ったロングボールを受け、その日、出場停止のビニシウスに代わって、得意の左側にいたロドリゴが敵DFの見守る中、エリア前からシュート。 これが見事に決まり、早々と先制点を取ったマドリーでしたが、25分にはアスレティックに負傷者が発生。ジェライが太ももを痛め、ビビアンと交代を余儀なくされたため、それもコパ決勝に絶対出たいと願う選手たちにブレーキをかけることに。おかげで前半はほとんど反撃されることもなく、1-0で折り返したんですが、まあ、この日はスペイン代表で躍動していたニコ・ウィリアムスも筋肉痛で来ていませんでしたからね。 兄イニャキも後半3分にはCKから、volea(ボレア/ボレーシュート)で狙っていったものの、代表戦週間にはユーロ出場プレーオフの2試合でゴールを死守。ボスニア・ヘルツェゴビナとアイスランドを破って、ウクライナを本大会に導いたルーニンには、復帰直前だったクルトワが反対側のヒザの半月板を痛めたため、今季は最後まで、マドリーの正GKでいられるという励みもできましたからね。イニャキの一撃もしっかり弾いて同点を免れると、11分にはアスレティックが選手3人を一斉交代したのも空しく、25分、ロドリゴの足が再び、火を吹くことに。 ええ、今度は自陣から高速カウンターで、バレンシア戦での退場による2試合の出場停止から戻ったばかりのベリンガムがドリブルで上がり、エリア前からラストパス。これをビビアンをかわして決めたんですが、もしや彼、スペインとの親善試合でウナイ・シモンからゴールキックをプレゼントされ、ブラジル反撃の狼煙を上げてから、運気が変わった?まあ、この日はコパ決勝前の足慣らしもあって、アスレティックのGKはアギレサバラだったんですけどね。この2点目で敵も白旗を挙げてくれたため、アンチェロッティ監督も終盤にはクルトワから数日遅れ、まさにリーガ開幕戦だったアスレティック戦でヒザの靭帯を断裂。7カ月ぶりに招集されたミリトンを交代出場させることができたんですが、マンチェスター・シティ戦1stレグでの先発はまだ、時期尚早かもしれませんね(最終結果2-0)。 そんなマドリーは次節も、勝っても負けてもコパ決勝の2日酔いをしていそうなマジョルカと対戦とあって、土曜にバルサに詰められた差も勝ち点8に回復。もうリーガ優勝は秒読みに入ったと言っていいんじゃないかと思いますが、翌月曜、30節のトリを飾ったアトレティコはというと。お隣さんが代表戦週間前に4位を奪ったアスレティックを負かしたため、CL出場圏に戻るお膳立てはできていたものの、ええ、今季は筋金入りのアウェイ弱者、15試合で4勝しかしていないシメオネ監督のチームですからね。しかも黄色のユニのビジャレアルはここ9試合黒星がなく、4連勝中と聞いた日にはまたしてもむかむかして、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)から帰宅する覚悟をしていたんですが…。 それが何と、早くも前半9分にはリケルメのCKをビッツェルが見事な首の動きでヘッドして、先制ゴールを挙げてくれたから、ビックリしたの何のって。ただ、その後はモラタに代わって先発したメンフィス・デパイ、ジョレンテのシュートもGKヨルゲンセンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまい、時間が経つにつれ、得意の「リードしたら一歩後退」癖も発動。ハーフタイムまでは0-1で耐えていたんですが、後半5分、まさかフランス代表を離脱して足首を完治させ、ファンをホッとさせていたグリーズマンが自陣エリア近くでボールロスト。カプエからジェラール・モレノに繋がれて、最後はセルロートに同点ゴールを決められているんですから、本当にこのチーム、進歩というものがない。 20分にはグリーズマン、デパイ、ビッツェルがモラタ、コレア、アスピリクエタと交代し、勝ち越し点を目指したアトレティコだったんですが、相変わらず、モラタもコレアもゴールと縁がなくてねえ。もう今季は何度となくアウェイで繰り返されたシナリオ通り、引分け、最悪逆転負けして終わるんじゃないかと爪を噛みながら見ていたところ、最後の交代で入った伏兵、サウールがやってくれたんですよ!それは42分、敵エリア前右から、コケ、コレアとボールが繋がり、最後にアスピリクエタが横に出したパスから、落ち着いて撃ったシュートがゴール左隅に入ってくれるとは、え?これって奇跡って言わない? いえまあ、VAR(ビデオ審判)のオフサイドチェックが長引いていた時は私も生きた心地がしなかったんですけどね。お約束で敵選手とGKの間にいたモラタもプレーに関与していなかったため、無事に1-2で勝利することができたんですが、まったく。そう、この日も試合が進むにつれ、どんどん足取りが鈍くなってくるわ、パスは真っすぐ敵目掛けて飛ぶわは言わずもがな。バリオスなど、スペインU21でご一緒したモスケラがSB全滅だったビジャレアルでCBからジョブチェンジ、左SBでがんがん上がってくるのにまったく歯が立たず、タックルで止めてイエローカードをゲット。次節のジローナ戦に累積警告で出場停止になってしまいましたし、何より、これが今季2得点だったサウールに毎回は頼れませんからね。とにかく一刻も早く、モラタやグリーズマンがゴールを取り戻してくれるのが、ドルトムント戦の鍵にもなるはずですが…とりあえず、リーガ4位を取り戻したことで今は満足するしかありません。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.04 01:30 Thu

代表戦の宴は終わった…/原ゆみこのマドリッド

「ようやくサンティアゴ・ベルナベウで公式戦が見られるんだ」そんな風に私が気分を切り替えていたのは木曜日、いよいよ佳境に入ったSemana Santa/セマーナ・サンタ(イースター週間)とは裏腹に、この週末から、ようやくparon(パロン/リーガの停止期間)明けとなる30節の予定を見ていた時のことでした。いやあ、普段の各国代表戦週間はTV観戦ばかりで、しかもスペイン代表の試合はTVE(スペイン国営放送)が中継してくれるため、あまり家から出ることもないんですけどね。それがこの3月はレアル・マドリーが先週土曜、コロナ禍とスタジアム改装工事で開催が見送られていたコラソン・クラシックマッチを5年ぶりに再開。 おかげでスタジアムに行けることになったとはいえ、要はマドリーとポルトのOB選手がプレーするチャリティイマッチですからね。カシージャス、ジダン、フィーゴ、ラウールといった、かつてのスター選手を見られたのは嬉しかったとはいえ、真剣勝負を期待すべくもなく、おまけにマドリーは0-1で負けてしまう始末。その欲求不満を解消すべく、再度、火曜にベルナベウでスペインvsブラジルの親善試合を観戦したんですが、詳細はまた後で話すとしても、結果は黒白つかずのドローとはいやはや。こうなると必然的に日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのアスレティック戦に期待するしかないんですが、ええ、相手は前節、アトレティコからCL出場圏の4位を奪ったチームですからね。 なるたけ早くリーガ優勝を決めたいお隣さんが塩を送ってくれるのを待つのも、ちょっと情けないんですが、何せ、そのブラジル戦ではアトレティコから1人参加のスペインのエース、モラタが相変わらず、スランプ継続中なのを再確認。リーガも残り9試合しかありませんし、この2カ月で彼が復調してくれないことには、この夏、ユーロ2024をプレーするデ・ラ・フエンテ監督のチームも困ってしまうはずなんですが、こればっかりはねえ。 まあ、そんなことはともかく、ユーロ用招集リストが出る前最後となるスペインの親善試合がどうだったかお伝えしていくことにすると、いやあ、マドリッドでやってくれるのは本当に有難いもの。というのも対戦相手も近場で練習してくれるからで、前日月曜にブラジルはベルナベウではなく、バルデベバス(バラハス空港の近く)にあるマドリー練習場で記者会見とセッションを実施。時間も午後3時30分からと都合が良かったため、低気圧ネルソンの接近で天候に不安はあったものの、私も久々に行ってみることに。 それがメトロのフェリア・デ・マドリッド駅から歩くこと30分、マドリーの練習見学に使うゲートに着いてみれば、警備員に入口は反対側のゲートと言われ、広大な敷地外縁に沿って、更に追加で30分歩く破目になるとは!ようやく辿り着いた頃はすでに会見の予定時刻を過ぎていたものの、私と同じ目に遭って、ただし大半は自家用車やタクシー、Uberなどでグルグル回ってから来た取材陣が入場の順番を待っている有り様。更にあるあるで、ブラジルのチームバス到着もかなり遅延したため、反人種主義をテーマにしたこの親善試合の主役、昨年から数々の被害に遭っているビニシウスが現れたのは午後4時過ぎだったかと。 その会見も練習場のプレスルームを満員にしたブラジル人記者たちの質問が途切れないわ、自らの受けた人種差別的な野次や行為に、「Cada vez me siento más triste, cada vez tengo menos voluntad de jugar/カーダ・ベス・メ・シエントー・マス・トリステ、カーダ・ベス・テンゴ・メノス・ボルンタッド・デ・フガール(その度により悲しく感じて、プレーする意志が減っていく)」というビニシウスが途中で泣いてしまうハプニングがあるわで、結構、長かったんですけどね。結局、エスタディオ・ディ・ステファノでの練習が始まったのは午後5時近くとなり、いえ、この夏のマドリー入団が決まっている17才のFW、エンドリッキ(パルメイラス)を遠目でも見られたのは収穫でしたよ。 おかげでセッション後に開かれたドリバウ・ジュニオール新監督の会見など、午後6時半ぐらいになっていましたが、さすがサッカーがお国の一大事であるブラジル。延々と先日、ウェンブリーでイングランドに0-1で勝った試合でのチームや選手についての質疑応答ばかりで、スペイン代表の選手をどう評価しているかは全然、わからず仕舞いに。まあ、所詮は親善試合ですから、別にいいんですが、昨年はアンチェロッティ監督が今年の夏から、ブラジル代表監督に就任すると散々、言われながら、12月にマドリーと契約を2年延長。そこで白羽の矢が当たったドリバウ監督の手腕たるや如何にと楽しみにして、火曜の夜、ベルナベウに向かったところ…。 先週金曜のコロンビア戦では実験的なメンバーを並べ、ロンドン・スタジアムで0-1と負けていたスペインだったものの、この日の試合でデ・ラ・フエンテ監督はユーロ用のAチームを披露したんですよ。いえ、まだコロナ禍だった2021年、前回のユーロため、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での合宿中にブスケツ(現インテル・マイアミ)が陽性となり、隔離されたため、急遽、U21をA代表に格上げして、ブタルケでリトアニアとプレーした親善試合に出場。おかげで代表1キャップを稼ぎながら、U21卒業後、A代表からお声が掛からず、今回、ガジャ(バレンシア)の負傷で追加招集された、元ヘタフェのククレジャ(チェルシー)は違うんですけどね。 ロンドンから戻ってすぐ、祖父が亡くなり、この3日間の練習に1度も参加しなかったロドリ(マンチェスター・シティ)がモラタから譲ってもらったキャプテンマークを着け、GKウナイ・シモン(アスレティック)、CBラポール(アル・ナスル)、ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)、そして右SBにビニシウスとロドリゴを一番良く知るカルバハル(マドリー)とベテランの多いスタメンだったんですが、早い時間から躍動したのは左右のウィングに入った若い2人。21才のニコ・ウィリアムス(アスレティック)と16才のジャマル(バルサ)が本家ブラジルも真っ青というばかりの個人技で切り込んで、敵ゴールを脅かしていたんですが…いや、でも12分、ジャマルがジョアン・ゴメス(ウォルバーハンプトン)にぶつかって倒れたのがペナルティって、甘すぎじゃない? 何せ、この試合にはVAR(ビデオ審判)がいませんでしたからね。ダニ・オルモ(ライプツィヒ)にキッカーを譲ってもらったロドリがPKを決めて、早くもスペインは先制したんですが、一転、36分にオルモがジャマルからスルーパスをもらい、敵DF2人かわして決めた2点目は完璧なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)と言っていいかと。昨年9月の代表戦で負傷し、しばらく招集が途切れていた当人も3月上旬にCL16強対決2ndレグでベルナベウを初訪問。マドリーに敗退してしまった試合のリベンジができたのは良かったんですが、いやあまさか、そのゴールの余韻も覚めやらぬ40分、GKウナイ・シモンがロドリからのバックパスを受け、何を思ったか、真正面のロドリゴにボールを送る大ポカを犯してしまうとは! いやあ、それまでは時折、カウンターが見られる程度のブラジルだったんですけどね。せっかくのプレゼントを利用しない訳はなく、ロドリゴのvaselina(バセリーナ/ループシュート)で1点を返されてしまったんですが、2-1で迎えた後半はドリバウ監督が選手4人交代の荒療治を決行。中でもラフィーニャ(バルサ)と代わったエンドリッキが最初からフルスロットルで、5分もしないうち、イングランド戦に続く、代表2ゴール目を挙げてしまったから、ビックリしたの何のって。それはCKからのプレーで、ラポールがヘッドクリアしたボールをvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込んだところ、ル・ノルマンに当たって、ネットに収まったんですが、いやあ。 来季から自分がプレーするスタジアムの観客にどでかい名刺を叩きつけてくれましたが、未来のマドリー前線トリオが続いたのは26分にビニシウスが下がるまで。もちろん、ファンから大きな拍手を浴びて、ドウグラス・ルイス(アストン・ビラ)と交代したんですが、それと対照的だったのはモラタ。ええ、大したことはしていなかったのは否定しませんが、36分にオジャルサバル(レアル・ソシエダ)と交代した際、スペイン代表を応援するファン主体のスタンドから、pito(ピト/ブーイング)を受けているんですから、たまったもんじゃありませんって。 うーん、元々、ベルナベウのファンは要求が高くて、マドリーの選手でもプレーがひどいとピーピーやられるのは珍しくない光景なんですけどね。モラタの場合、数年前、お膝元のメトロポリターノで代表親善試合があった時やセビージャのカルトゥーハでもブーイングされていたため、やはりどこか、ファンをイラッとさせるところがあるんじゃないかと。といっても、私は怒ってもブーイングはしませんが、これって、スペインのサッカー文化のようなものですからね。 人種差別的であろうとなかろうと、侮蔑的な野次やカンティコ同様、いくらデ・ラ・フエンテ監督が「Me duele en el alma que en mi país se pite a un jugador de la selección/メ・ドウェレ・エン・エル・アルマ・ケ・エン・ミ・パイス・セ・ピテ・ア・ウン・フガドール・デ・ラ・セレクシオン(私の国で人々が代表選手をブーイングするのは心が痛む)」と抗議しても、完全になくすのは不可能な気がしますが、さて。それでもモラタはチームメートから信頼されていて、ロドリも「Muy agradecido a Álvaro por el gesto, habla de la gran persona que es/ムイ・アグラデシードー・ア・アルバロ・ポル・エル・ヘストー、アブラ・デ・ラ・グラン・ペルソナ・ケ・エス(モラタの気遣いにはとても感謝している。素晴らしい人柄を示すものだ)」と褒めていたぐらい。 それだけに42分、カルバハルがベラウド(PSG)に倒されて、またしても何ちゃってPKを獲得。再びロドリがゴールを沈めて、スコアが3-2となった後、ジャマルがヘスス・ナバス(セビージャ)と交代した時、バルサの選手なのにスタンドから喝采を浴びているのを見たりすると、やっぱり人柄だけじゃ、サッカー選手はダメなんじゃないかと思ってしまったりもするんですが、いやあ。試合の方は親善ながら、ロスタイムが5分もあったのも珍しかったんですが、最後の最後で審判に辻褄を合わされてしまったから、さあ大変! そう、50分、カルバハルがエリア内で倒れた姿勢からガレノ(ポルト)のふくらはぎを手でつかんで転がして、今度は自分がブラジルにPKを献上しちゃったんですよ。パケタ(ウェストハム)がウナイ・シモンを破り、結局、3-3で終わったんですが、この時、ベンチから両チームの選手たちが出て来て、一悶着起きそうだったのはやっぱり、ビニシウスの口が原因だった?ちなみにこの引分けにデ・ラ・フエンテ監督は、「Salimos muy reforzados/サリモス・ムイ・レフォルサードー(ウチはとても力を与えられた)。このチームが遠くまで行けるという手応えを得たからね」と言っていたんですが、それはちょっと微妙なところ。 だってえ、スペインの2点はVARがあったら、おそらく認められていないだろうPKで、守備もまだまだ完璧ではありませんからね。しかも攻撃はジャマルとニコ・ウィリアムスの若輩者2人に頼りきりとなると、強豪ひしめくユーロでどうなるか、私はちょっと不安なんですが、まあ、大会用招集リストが出るのは5月末ですからね。それまでにもう、23人中20人は確定している言われるメンバーにも何が起きるかわかりませんし、今から考えていても仕方ないんですが、モラタの復活はアトレティコの命運を左右する重大案件。 何せ、フランス代表でネンザしたカマビンガも軽傷で済み、アスレティック戦には各国代表に行った14人全員が出場可能。ただしビニシウスは累積警告で出場停止というマドリーが、4月6日に迫ったコパ・デル・レイ決勝で頭がいっぱいになっている相手に勝利しても、月曜午後9時にラ・セラミカでビジャレアル戦となるシメオネ監督のチームが勝たないことには4位奪還ができませんからね。 週末3連休の後、火曜から練習を再開したチームには、足首完治のため、フランス代表を離脱してきたグリーズマンも合流し、ヒメネスも先発OKになったという朗報もあるんですが、アルゼンチン代表でアメリカツアーに行ったデ・パウルとモリーナは出場停止。おまけに今季は超苦手のアウェイ戦かつ、黄色のユニを着たチームに勝つというダブルジンクス破りをしないといけないとなると、まったく楽観的になれないのは私だけではない? そしてこの週末、マドリッドの弟分チームたちはまず、土曜にヘタフェが16位のセビージャをコリセウムに迎えるホームゲームなんですが、彼らは前節にジローナ戦に勝って、残留確定目安の勝ち点40にあと2と迫っていますからね。ここは一気に上がりとなってもらいたいところですが、ラージョの方は日曜にセルタとのアウェイ戦。各国代表戦前にイニゴ・ペレス新監督がベティス戦で初勝利を挙げ、一息ついたとはいえ、15位の彼らが来季も1部でプレーするためにはあと勝ち点11は欲しいところかと。17位の相手も今は降格圏から勝ち点5離れているんですが、とにかく残り試合もどんどん少なくなっていきますし、この先、リーガの最終パートはガチで削り合う対戦が増えていくんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.29 21:00 Fri
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