劇的勝利のスイス、そのカギは雪辱に燃えた主将ジャカの存在
2021.06.29 22:40 Tue
初めてコラム記事として執筆させて頂きます。元サッカー選手、現在はサッカー解説者、指導者として活動しています安永聡太郎です。今回から定期的にサッカーにおいて感じた事を書き出していければと思っています。それぞれの立場から色々な感想もあると思いますがフワッと楽しんで頂けると幸いです。宜しくお願いします。
第1回は、現在非常に盛り上がっているユーロ2020の一戦から。
開幕戦イタリアの3-0勝利に始まり、ベスト16のフランスvsスイスまで90分を0-0で終わった試合は3試合しかありません。各国のGKのレベルが非常に高いにも拘らずゴールが生まれる。守備組織の構築に費やす時間がクラブレベルに比べて短いというのも関係していると思いますが、改めてフットボールとはゴールが生み出す感動、興奮、ドラマ、が多くの熱狂に繋がるのだと感じています。
で、今回はこの熱狂ユーロの中から私自身が解説したラウンド16のフランスvsスイスを感じたままに書いてみたいと思います。
スイスの予選3試合はvsウェールズ(1-1)、vsイタリア(0-3)、vsトルコ(4-1)で勝ち点4のグループ3位による上位チーム突破。基本システムは[1-3-4-1-2(1-3-4-2-1)]で、中心選手はジャカ(アーセナル)、シャキリ(リバプール)。
攻守において戦術的要素の多いスイスvs個性の最大値の補完性フランス。戦前の予想は、優勝候補筆頭W杯王者フランス有利。但し、予選グループを通して納得感のある戦い方をしていたのはスイスでした。
因みにここまでは試合解説前に書いていた文章で、ここからは解説後の興奮冷めやらぬ状態での文章なので悪しからず。
試合開始前に行われていたクロアチアvsスペインが延長戦にもつれ込み、3-5という盛り上がりを見せ、勝手に興奮状態での期待感最高潮でのメンバー発表。フランスはケガ人の状態もあり、急造3バックの[1-3-5-2(やや変則)]、スイスはグループ最終戦と同じメンバーによる[1-5-2-3]でスタートしました。
結果から書いてしまうと、延長戦を終えて3-3、PK戦は4-5でスイスの劇的勝利。前半先制しながらも、後半のPK失敗から立て続けに3失点。フランスの1点目、3点目はベンゼマ、ポグバによる超絶ゴラッソ。解説しながらもスペインvsフランスの準々決勝は熱すぎると勝手に興奮していました。
しかししかしですよ、スイスはぺトコヴィッチ監督が諦めず、持ち得る攻撃的な駒を使い総攻撃。すると交代選手ムバブのクロスからのゴールで1点差、同じく交代選手カブラノビッチのショートカウンターからのゴールで同点に。
まさに筋書きの無いドラマ! 事実は小説よりも奇なり! 誰がこの同点をあの状況から予想出来たでしょうか?
延長戦前は意気消沈気味のフランス、興奮最高潮のスイス。スイスは延長前半早々に6人目の交代カードを切りバランス重視にシフトチェンジ。
動きが遅いのはフランス。ベンゼマ、コマンが負傷で交代するも、狙いのあるベンチワークというよりは選択肢の中からの人選。結果、スコアは動かず、スイスの狙い通り延長は0-0でPK戦へ突入しました。
先行で5人全員が決めたスイスに対し、後攻フランスの5人目はここまで大会ノーゴールのエース・ムバッペ。5歩の助走から強振してボールはゴール左へ。
GKゾンマーはドンピシャよりやや早いタイミングで1歩前へ。そしてビックセーブ! 本人も喜びを躊躇する際どいタイミングでしたが、一瞬の間がありPKストップ成立。その瞬間、GKゾンマーを中心に歓喜の輪がサポーターの前へ。実況の方とも終わった後に話しましたが、ムバッペはストップされそうな雰囲気ムンムンでした。
流れはざっとこんな感じですが、では何がスイスを勝利に導いたのか?
個人的に1番感じたのは勝利への渇望、飢え、欲求に入り混じる不安をピッチ上でまとめ鼓舞し続けたジャカの存在だと思います。
実は、ジャカは前回のユーロ(2016年)において、ベスト16でのPK戦で両チーム唯一の失敗で敗退を招いた責任を負っていました。そして今回も歴史的快挙となるベスト8進出の命運を握るのは同じくPK戦。ジャカは蹴りませんでした。
これは本人の希望なのか、監督の判断なのか分かりませんが、蹴った5人のキックはコース、勢い、ハートどれも最高でした。
因みにジャカは、歓喜の輪がサポーターの前へ行く前に抜けてベンチ方向に向きを変え走り去って行きました。勝手な想像ですが、キャプテンでありながら蹴らない選択を受け入れてくれた監督の元へ行ったのではないかと思います。
個人的にはスイスの試合への戦略、色々な状況下での戦術変更を含め全てにおいて、W杯王者フランスを倒すのに値する内容の伴う勝利だったと思います。
この結果、ベスト8の組み合わせはスペインvsスイス! 劇的勝利の2チームによる最高なエンターテイメントを期待せずにはいられませんね!
因みにこの試合も私、安永聡太郎が解説させて頂きます。
【文・安永聡太郎】
開幕戦イタリアの3-0勝利に始まり、ベスト16のフランスvsスイスまで90分を0-0で終わった試合は3試合しかありません。各国のGKのレベルが非常に高いにも拘らずゴールが生まれる。守備組織の構築に費やす時間がクラブレベルに比べて短いというのも関係していると思いますが、改めてフットボールとはゴールが生み出す感動、興奮、ドラマ、が多くの熱狂に繋がるのだと感じています。
で、今回はこの熱狂ユーロの中から私自身が解説したラウンド16のフランスvsスイスを感じたままに書いてみたいと思います。
フランスの予選3試合はvsドイツ(1-0)、vsハンガリー(1-1)、vsポルトガル(2-2)と強豪国の揃う難関グループを勝ち点5の1位突破。基本システムは[1-4-3-3(1-4-4-2)]で、中心選手はカンテ(チェルシー)、ムバッペ(パリ・サンジェルマン)。
スイスの予選3試合はvsウェールズ(1-1)、vsイタリア(0-3)、vsトルコ(4-1)で勝ち点4のグループ3位による上位チーム突破。基本システムは[1-3-4-1-2(1-3-4-2-1)]で、中心選手はジャカ(アーセナル)、シャキリ(リバプール)。
攻守において戦術的要素の多いスイスvs個性の最大値の補完性フランス。戦前の予想は、優勝候補筆頭W杯王者フランス有利。但し、予選グループを通して納得感のある戦い方をしていたのはスイスでした。
因みにここまでは試合解説前に書いていた文章で、ここからは解説後の興奮冷めやらぬ状態での文章なので悪しからず。
試合開始前に行われていたクロアチアvsスペインが延長戦にもつれ込み、3-5という盛り上がりを見せ、勝手に興奮状態での期待感最高潮でのメンバー発表。フランスはケガ人の状態もあり、急造3バックの[1-3-5-2(やや変則)]、スイスはグループ最終戦と同じメンバーによる[1-5-2-3]でスタートしました。
結果から書いてしまうと、延長戦を終えて3-3、PK戦は4-5でスイスの劇的勝利。前半先制しながらも、後半のPK失敗から立て続けに3失点。フランスの1点目、3点目はベンゼマ、ポグバによる超絶ゴラッソ。解説しながらもスペインvsフランスの準々決勝は熱すぎると勝手に興奮していました。
しかししかしですよ、スイスはぺトコヴィッチ監督が諦めず、持ち得る攻撃的な駒を使い総攻撃。すると交代選手ムバブのクロスからのゴールで1点差、同じく交代選手カブラノビッチのショートカウンターからのゴールで同点に。
まさに筋書きの無いドラマ! 事実は小説よりも奇なり! 誰がこの同点をあの状況から予想出来たでしょうか?
延長戦前は意気消沈気味のフランス、興奮最高潮のスイス。スイスは延長前半早々に6人目の交代カードを切りバランス重視にシフトチェンジ。
動きが遅いのはフランス。ベンゼマ、コマンが負傷で交代するも、狙いのあるベンチワークというよりは選択肢の中からの人選。結果、スコアは動かず、スイスの狙い通り延長は0-0でPK戦へ突入しました。
先行で5人全員が決めたスイスに対し、後攻フランスの5人目はここまで大会ノーゴールのエース・ムバッペ。5歩の助走から強振してボールはゴール左へ。
GKゾンマーはドンピシャよりやや早いタイミングで1歩前へ。そしてビックセーブ! 本人も喜びを躊躇する際どいタイミングでしたが、一瞬の間がありPKストップ成立。その瞬間、GKゾンマーを中心に歓喜の輪がサポーターの前へ。実況の方とも終わった後に話しましたが、ムバッペはストップされそうな雰囲気ムンムンでした。
流れはざっとこんな感じですが、では何がスイスを勝利に導いたのか?
個人的に1番感じたのは勝利への渇望、飢え、欲求に入り混じる不安をピッチ上でまとめ鼓舞し続けたジャカの存在だと思います。
実は、ジャカは前回のユーロ(2016年)において、ベスト16でのPK戦で両チーム唯一の失敗で敗退を招いた責任を負っていました。そして今回も歴史的快挙となるベスト8進出の命運を握るのは同じくPK戦。ジャカは蹴りませんでした。
これは本人の希望なのか、監督の判断なのか分かりませんが、蹴った5人のキックはコース、勢い、ハートどれも最高でした。
因みにジャカは、歓喜の輪がサポーターの前へ行く前に抜けてベンチ方向に向きを変え走り去って行きました。勝手な想像ですが、キャプテンでありながら蹴らない選択を受け入れてくれた監督の元へ行ったのではないかと思います。
個人的にはスイスの試合への戦略、色々な状況下での戦術変更を含め全てにおいて、W杯王者フランスを倒すのに値する内容の伴う勝利だったと思います。
この結果、ベスト8の組み合わせはスペインvsスイス! 劇的勝利の2チームによる最高なエンターテイメントを期待せずにはいられませんね!
因みにこの試合も私、安永聡太郎が解説させて頂きます。
【文・安永聡太郎】
山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験。1995年のFIFAワールドユース(現U-20ワールドカップ)に出場し、1996年のアトランタ五輪のバックアップメンバーにも選ばれた。高校卒業後は横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に入団し、1年目から主力として優勝に貢献。その後はスペインのレリダ、清水エスパルス、横浜FM、ラシン・デ・フェロール(スペイン)、柏レイソルでプレーし2005年に現役を引退。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督を務め、現在は大学生の指導の他、サッカー解説者として活躍している。
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