まだ信じるまでには至らないけど…/原ゆみこのマドリッド
2021.06.26 19:30 Sat
「これぐらいのご褒美はあってもいいわよね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、ユーロでグループ敗退を免れて、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でのバブル合宿も続行。よって、休養日でも勝手に外出したり、家族の訪問も許されていないスペイン代表の選手たちにとって、唯一の気晴らしとなっている決起ランチのため、今回は市内のアルカラ門前にあるAarde(アフリカ風料理レストラン)にゾロゾロ入っていく映像を見た時のことでした。いやあ、代表のツイッターなどを見ると、選手たちはスポンサーのくれた電動キックボードで広い敷地の中を走り回ったりして、それなりにエンジョイしているようなんですけどね。
とはいえ、4週間余り続いたラス・ロサス合宿もいよいよ、この日曜にはお別れで、チームは決勝トーナメント16強対決の地、コペンハーゲンに出発。最初は準々決勝進出が決まった場合、一旦、マドリッドに戻り、試合の1日前にロシアのサンクトペテルブルクに向かう予定だったそうなんですが、うーん、これだとフライト時間も長くなりますしね。コペンハーゲンで2泊した後、サンクトペテルブルクに飛び、準決勝進出となった暁にはそこから直接、ロンドン入りするのだとか。
おかげで練習見学で会った顔馴染みの代表番カメラマンなど、デンマーク入国に必要なPCR検査予約やロシアのビザ申請などで忙しいと愚痴っていましたが、何にしろ、こんなご時世。国によって、コロナ対策の規制も異なるため、スペインから追っかけるプレスも苦労しているようですが、万が一、7月11日の決勝まで行くとなると、選手たちもバブル生活が1カ月半にもなりますからね。要はそれがユーロで勝ち残っているチームの宿命で、今週月曜にはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に出勤。7月5日開始のプレシーズンの準備を始めたアンチェロッテイ新監督のレアル・マドリーにはスペイン代表参加メンバーこそいないものの、フランスやベルギー、ドイツなど、決勝トーナメント進出が決まったチームに出向している選手たちのバケーションがどんどん先延ばしに。
総勢13人がユーロ、コパ・アメリカに参加しているアトレティコも同様で、どちらも8月14日の週末のリーガ新シーズン開幕までにいかに準備を整えるのか、そこはテクニカルスタッフの腕の見せどころ。ええ、木曜のスペイン内閣臨時閣議の後にはとうとう、1部2部共、スタジアムに観客を入れての試合開催(キャパの何%になるかは各地方自治体による)の許可が出ていましたしね。その日の夜、ラジオのインタビューでいつからサンティアゴ・ベルナベウが使えるのかと訊かれ、「No se, cuando se pueda/ノー・セ、クアンドー・セ・プエダ(わからない。できる時からだね)」とペレス会長が答えていたマドリーは9月頃まで、改装工事に区切りがつかないかもしれませんが、少なくともワンダ・メトロポリターノでは夏休み中から、リーガ王者の勇姿をファンが楽しめることになりそうですよ。
え、それより、ルイス・エンリケ監督の「tengo la sensación que es como la botella de cava que está a punto de descorchar…/テンゴ・ラ・センサシオン・ケ・エス・コモ・ラ・ボテージャ・デ・カバ・エスタ・ア・プント・デ・デスコルチャル(シャンパンのコルクが今にも抜けそうになっている感じがする…)」という予想が大当たりしたスペインのグループリーグ最終節、スロバキア戦がどうだったかを知りたいって?そうですね、70~80%というボールポゼッションの高さも空しく、開幕スウェーデン戦ではスコアレスドロー、次のポーランド戦でもレバンドフスキ(バイエルン)に同点ゴールを奪われ、1-1と2引き分けで迎えたその試合、チームはスタメンを4人変更。
そう、コケ(アトレティコ)が敵に追われてエリア内をドリブルで逃げていたところ、いきなり転倒。リプレーでフロマダ(スラビア・プラハ)にふくらはぎを蹴られていたのがわかったんですが、リーガ王者チームキャプテンの猛抗議に代表キャプテンのブスケツもすぐさま加勢、更に栄えあるCL王者チームのキャプテン、アスピリクエタにも迫られて、主審がVAR(ビデオ審判)のモニターを見に行ってくれたため、スペインにPKが与えられることに。
でもねえ、このせっかくの先制点のチャンス、ルイス・エンリケ監督から、直々に声を掛けられて、キッカーを務めたモラタ(ユベントス)がGKドゥブラフカ(ニューキャッスル)に弾かれてしまったんですよ。サンクトペテルブルクで同時刻開催だったスウェーデンが序盤から、フォルスベリ(ライプツィヒ)のゴールでポーランドに勝っていたため、この時はスペインも3位のままで焦る必要はなかったんですけどね。スロバキアもその後、何とか耐えていたんですが、30分、チームを救ったヒーローから一転、サラビアのシュートがゴールバーに当たり、落ちて来たボールをクリアしようとしたドゥブラフカがお手玉して、オウンゴールで1点をプレゼントしているんですから、まったく勝負というのはわからない。
このツキに後押しされたスペインはハーフタイム直前、コケが蹴ったCKが回りに回り、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)が上げたクロスをラポール(マンチェスター・シテイ)がヘッドで2点目のゴールに。彼もポーランド戦ではレバンドフキに空中戦で競り負けて、肩身の狭い思いをしていましたからね。超特急でスペイン国籍を取得しての代表初ゴールを決めて、面目躍如を果たしたのは良かったかと。
そして後半も彼らの勢いは止まらず、11分にはジョルディ・アルバ(バルサ)のラストパスをサラビアがワンタッチで決めて3点目を奪うと、22分には傷心のモラタと代わり、ピッチに入ったばかりだったフェラン・トーレス(マンチェスター・シテイ)がサラビアのパスをtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でゴール前から流し込んで4点目。ここでコロナから復帰後、初めてプレーしたブスケツは、「Su partido es de manual, ha acabado reventado el pobre/ス・パルティードー・エス・デ・マヌアル、ア・アカバードー・レベンタードー・エル・ポブレ(彼の試合はマニュアル通り。疲れ切って終わったよ、可哀そうな奴)」とルイス・エンリケ監督も言っていたようにお役目御免になったんですけどね。
チームはそれでも止まらず、26分にFKからの混戦で途中出場のパウ・トーレスが最後に蹴ったボールがクツカ(パルマ)に当たり、この日、2度目のオウンゴールで0-5としているのですから、まさに大安吉日。ここまで差がつくと、本当に余裕だったか、32分には交代枠最後の2人でオジャルサバル(レアル・ソシエダ)とアダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトン)が入ったんですが、いや、いくらアスピリクエタが痛みを訴えたからって、FWアダマの右SBっていうのはあり?他会場では終盤、レバンドフキが2点を挙げ、意地を見せたポーランドが2-2の同点に追いつき、一時はスペインがグループ1位に立ったりもしたんですけどね。ロスタイムにクラエソン(クラスノダール)が決勝点を決め、3-2でスウェーデンが勝利したため、彼らは2位でグループ通過。成績上位でない3位となったスロバキア、4位のポーランドが敗退となりましたっけ。
え、いくら土壇場まで追い詰められていた試合で素晴らしいgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を見せて勝利したとはいえ、終了の笛が鳴った後、まるでどこぞの優勝祝賀セレモニーのように選手たちが息子さんや娘さんをカルトゥーハのピッチに下ろし、走り回らせていては思いっきり、バブルが崩壊じゃないかって?いや、まあ、そうなんですが、皆、長いこと、家族と会っていませんからね。そろそろワクチンの抗体もできた頃ですし、その辺はサッカー協会も目を瞑ることにしたのかと。
むしろ、アトレティコでゴール日照りの辛さをイヤという程、味わっている私など、1試合で5点も挙げず、ルイス・エンリケ監督も「Ahora es cuando viene la competición real/アオラ・エス・クアンドー・ビエネ・ラ・コンペティシオン・レアル(これからが本当の大会が始まる)」と言っていた16強対決に2つ、3つ、とっておけばいいのにと、みみっちいことを考えていたりしたものですが…。
だってえ、月曜午後6時(日本時間翌午前1時)から、パルケン・スタジアムで彼らはクロアチアと当たるんですよ。スペインでは今回のユーロはメディアセットで全試合オープン放送されるため、私も火曜のスコットランド戦をチラチラ眺めていたんですが、いやもう、モドリッチ(マドリー)が張り切っていてねえ。あちらは初戦のイングランド戦を1-0で落とし、2試合目はチェコと1-1と分け、スペイン以上の窮地に陥っていたんですが、ブラシッチ(CSKAモスクワ)の先制ゴールを前半のうちにマグレガー(セルティック)に帳消しにされ、一時は敗退寸前に。そこで雄々しく立ち上がったのがキャプテンの彼で、後半16分にエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて2-1とすると、最後はCKからペリシッチ(インテル)のヘッドによる3点目を導いているとなれば、マドリーファンは新シーズンを安心して迎えられる?
最後は3-1で勝利して、スペイン同様、2位通過したクロアチアにはお隣さんのベルサイコもいるんですが、クラブでレ連続出場に慣れていないため、このグループ3試合目はお休み。それはともかく、昨季ライプツィヒに移籍するまで6年間、在籍したディナモ・ザグレブのチームメートだけでなく、「クロアチア代表がマクシミル(ディナモ・ザグレブのホーム)で練習する時、yo siempre aparecía y así conocí a todos/ジョ・シエンプレ・アパレシア・イ・アシー・コノシ・ア・トードス(いつもボクは立ち寄って、皆、知ってる)」というダニ・オルモのアドバイスが効いて、スペインが準々決勝に進むことになったとしても前途多難なのは間違いありません。
というのもサンクトペテルブルクで準々決勝の相手となるのはフランスvsスイス戦の勝者で、とにかくデシャン監督のチームは大会前から優勝候補と言われていましたからね。グループ最終節ではベンゼマ(マドリー)が2ゴール挙げ、かつての同僚、クリスチアーノ・ロナウド(ユベントス)がPK2本を決めたポルトガルと2-2で引き分けていましたが、デンベレ(バルサ)など、2試合目のハンガリー戦で太ももをケガして、手術のために代表離脱。元アトレティコのリュカ(バイエルン)、元バルサのディーニェ(エバートン)の左SB2人も負傷、更にレマル(アトレティコ)も練習中に打撲を受けて早退と、少々、実戦部隊が減っている感はありますが、エムバペ(PSG)、グリーズマン(バルサ)までが並んだ3弾頭にはとても撃ち勝てる気がしないかと。
更に「Lo he pasado bastante mal, diez días en casa, no sabía si podía volver o no/ロ・エ・パサードー・バスタンテ・マル、ディエス・ディアス・エン・カサ、ノー・サビア・シー・ポディア・ボルベル・オ・ノー(かなりひどい気分で過ごしたよ。10日間家にいて、戻れるのかどうかもわからなかったし)」と試合後のインタビューで涙ぐんでいたものの、運良く、当人は無症状感染。そのブスケツが帰ってきてからは誰1人、ケガ人がいないスペインに奇跡が起きて、ウェンブリーでの準決勝の進んだ場合、相手はベルギーvsポルトガル戦、イタリアvsオーストリア戦の中から出て来るんですが、敗退後はマドリー入団プレゼンがある予定のアラバがキャプテンを務めるオーストリア以外は皆、強そうな。
それ以上にマドリーのGKクルトワがゴールを守り、とうとう3節のフィンランド戦ではアザールもフル出場したベルギーにはカラスコもいますし、ポルトガルにもまだ出場機会のないジョアン・フェリックスがいるとあって、あまりアトレティコ勢対決は見たくない気がしますが、さて。何にしても2012年のユーロ優勝を最後に2014年ブラジルW杯はグループリーグ敗退、2016年ユーロ、2018年ロシアW杯ではどちらも16強対決敗退とほとんど上に行けていないスペインですからねえ。
ラス・ロサスに来ていた代表番記者たちもあまり、過度の期待は抱いていないようでしたが…聞いたところによると、昨年のセルヒオ・ラモス(マドリー)が1試合で2度、ユーロ前、U21代表が代理プレーしたリトアニアとの親善試合でアベル・ルイス(スポルティング・ブラガ)、ポーランド戦のジェラール・モレノ、そしてモラタとここ、5回連続してPK失敗をしているのをルイス・エンリケ監督が懸念。最近はビジャレアルとのEL決勝で11人目に蹴って止められたデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)らGKも含め、全員が毎日PK練習をしているというスペインですが、私もなるたけ長く、彼らの戦いが続いてくれることを祈るばかりです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している
とはいえ、4週間余り続いたラス・ロサス合宿もいよいよ、この日曜にはお別れで、チームは決勝トーナメント16強対決の地、コペンハーゲンに出発。最初は準々決勝進出が決まった場合、一旦、マドリッドに戻り、試合の1日前にロシアのサンクトペテルブルクに向かう予定だったそうなんですが、うーん、これだとフライト時間も長くなりますしね。コペンハーゲンで2泊した後、サンクトペテルブルクに飛び、準決勝進出となった暁にはそこから直接、ロンドン入りするのだとか。
総勢13人がユーロ、コパ・アメリカに参加しているアトレティコも同様で、どちらも8月14日の週末のリーガ新シーズン開幕までにいかに準備を整えるのか、そこはテクニカルスタッフの腕の見せどころ。ええ、木曜のスペイン内閣臨時閣議の後にはとうとう、1部2部共、スタジアムに観客を入れての試合開催(キャパの何%になるかは各地方自治体による)の許可が出ていましたしね。その日の夜、ラジオのインタビューでいつからサンティアゴ・ベルナベウが使えるのかと訊かれ、「No se, cuando se pueda/ノー・セ、クアンドー・セ・プエダ(わからない。できる時からだね)」とペレス会長が答えていたマドリーは9月頃まで、改装工事に区切りがつかないかもしれませんが、少なくともワンダ・メトロポリターノでは夏休み中から、リーガ王者の勇姿をファンが楽しめることになりそうですよ。
え、それより、ルイス・エンリケ監督の「tengo la sensación que es como la botella de cava que está a punto de descorchar…/テンゴ・ラ・センサシオン・ケ・エス・コモ・ラ・ボテージャ・デ・カバ・エスタ・ア・プント・デ・デスコルチャル(シャンパンのコルクが今にも抜けそうになっている感じがする…)」という予想が大当たりしたスペインのグループリーグ最終節、スロバキア戦がどうだったかを知りたいって?そうですね、70~80%というボールポゼッションの高さも空しく、開幕スウェーデン戦ではスコアレスドロー、次のポーランド戦でもレバンドフスキ(バイエルン)に同点ゴールを奪われ、1-1と2引き分けで迎えたその試合、チームはスタメンを4人変更。
PCR検査が陰性になり、先週、ようやく代表に復帰したブスケツ(バルサ)がロドリ(マンチェスター・シティ)と代わったのは当然でしたが、前線にはダニ・オルモ(ライプツィヒ)に代えてサラビア(PSG)、守備陣もパウ・トーレス(ビジャレアル)がエリック・ガリシア(マンチェスター・シティからバルサに移籍)に、更に本職でないながら、右SBで頑張っていたマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)をマルチDFのアスピリクエタ(チェルシー)へと置き換えていましたが、前半9分には意外なところからチャンスが到来します。
そう、コケ(アトレティコ)が敵に追われてエリア内をドリブルで逃げていたところ、いきなり転倒。リプレーでフロマダ(スラビア・プラハ)にふくらはぎを蹴られていたのがわかったんですが、リーガ王者チームキャプテンの猛抗議に代表キャプテンのブスケツもすぐさま加勢、更に栄えあるCL王者チームのキャプテン、アスピリクエタにも迫られて、主審がVAR(ビデオ審判)のモニターを見に行ってくれたため、スペインにPKが与えられることに。
でもねえ、このせっかくの先制点のチャンス、ルイス・エンリケ監督から、直々に声を掛けられて、キッカーを務めたモラタ(ユベントス)がGKドゥブラフカ(ニューキャッスル)に弾かれてしまったんですよ。サンクトペテルブルクで同時刻開催だったスウェーデンが序盤から、フォルスベリ(ライプツィヒ)のゴールでポーランドに勝っていたため、この時はスペインも3位のままで焦る必要はなかったんですけどね。スロバキアもその後、何とか耐えていたんですが、30分、チームを救ったヒーローから一転、サラビアのシュートがゴールバーに当たり、落ちて来たボールをクリアしようとしたドゥブラフカがお手玉して、オウンゴールで1点をプレゼントしているんですから、まったく勝負というのはわからない。
このツキに後押しされたスペインはハーフタイム直前、コケが蹴ったCKが回りに回り、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)が上げたクロスをラポール(マンチェスター・シテイ)がヘッドで2点目のゴールに。彼もポーランド戦ではレバンドフキに空中戦で競り負けて、肩身の狭い思いをしていましたからね。超特急でスペイン国籍を取得しての代表初ゴールを決めて、面目躍如を果たしたのは良かったかと。
そして後半も彼らの勢いは止まらず、11分にはジョルディ・アルバ(バルサ)のラストパスをサラビアがワンタッチで決めて3点目を奪うと、22分には傷心のモラタと代わり、ピッチに入ったばかりだったフェラン・トーレス(マンチェスター・シテイ)がサラビアのパスをtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でゴール前から流し込んで4点目。ここでコロナから復帰後、初めてプレーしたブスケツは、「Su partido es de manual, ha acabado reventado el pobre/ス・パルティードー・エス・デ・マヌアル、ア・アカバードー・レベンタードー・エル・ポブレ(彼の試合はマニュアル通り。疲れ切って終わったよ、可哀そうな奴)」とルイス・エンリケ監督も言っていたようにお役目御免になったんですけどね。
チームはそれでも止まらず、26分にFKからの混戦で途中出場のパウ・トーレスが最後に蹴ったボールがクツカ(パルマ)に当たり、この日、2度目のオウンゴールで0-5としているのですから、まさに大安吉日。ここまで差がつくと、本当に余裕だったか、32分には交代枠最後の2人でオジャルサバル(レアル・ソシエダ)とアダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトン)が入ったんですが、いや、いくらアスピリクエタが痛みを訴えたからって、FWアダマの右SBっていうのはあり?他会場では終盤、レバンドフキが2点を挙げ、意地を見せたポーランドが2-2の同点に追いつき、一時はスペインがグループ1位に立ったりもしたんですけどね。ロスタイムにクラエソン(クラスノダール)が決勝点を決め、3-2でスウェーデンが勝利したため、彼らは2位でグループ通過。成績上位でない3位となったスロバキア、4位のポーランドが敗退となりましたっけ。
え、いくら土壇場まで追い詰められていた試合で素晴らしいgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を見せて勝利したとはいえ、終了の笛が鳴った後、まるでどこぞの優勝祝賀セレモニーのように選手たちが息子さんや娘さんをカルトゥーハのピッチに下ろし、走り回らせていては思いっきり、バブルが崩壊じゃないかって?いや、まあ、そうなんですが、皆、長いこと、家族と会っていませんからね。そろそろワクチンの抗体もできた頃ですし、その辺はサッカー協会も目を瞑ることにしたのかと。
むしろ、アトレティコでゴール日照りの辛さをイヤという程、味わっている私など、1試合で5点も挙げず、ルイス・エンリケ監督も「Ahora es cuando viene la competición real/アオラ・エス・クアンドー・ビエネ・ラ・コンペティシオン・レアル(これからが本当の大会が始まる)」と言っていた16強対決に2つ、3つ、とっておけばいいのにと、みみっちいことを考えていたりしたものですが…。
だってえ、月曜午後6時(日本時間翌午前1時)から、パルケン・スタジアムで彼らはクロアチアと当たるんですよ。スペインでは今回のユーロはメディアセットで全試合オープン放送されるため、私も火曜のスコットランド戦をチラチラ眺めていたんですが、いやもう、モドリッチ(マドリー)が張り切っていてねえ。あちらは初戦のイングランド戦を1-0で落とし、2試合目はチェコと1-1と分け、スペイン以上の窮地に陥っていたんですが、ブラシッチ(CSKAモスクワ)の先制ゴールを前半のうちにマグレガー(セルティック)に帳消しにされ、一時は敗退寸前に。そこで雄々しく立ち上がったのがキャプテンの彼で、後半16分にエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて2-1とすると、最後はCKからペリシッチ(インテル)のヘッドによる3点目を導いているとなれば、マドリーファンは新シーズンを安心して迎えられる?
最後は3-1で勝利して、スペイン同様、2位通過したクロアチアにはお隣さんのベルサイコもいるんですが、クラブでレ連続出場に慣れていないため、このグループ3試合目はお休み。それはともかく、昨季ライプツィヒに移籍するまで6年間、在籍したディナモ・ザグレブのチームメートだけでなく、「クロアチア代表がマクシミル(ディナモ・ザグレブのホーム)で練習する時、yo siempre aparecía y así conocí a todos/ジョ・シエンプレ・アパレシア・イ・アシー・コノシ・ア・トードス(いつもボクは立ち寄って、皆、知ってる)」というダニ・オルモのアドバイスが効いて、スペインが準々決勝に進むことになったとしても前途多難なのは間違いありません。
というのもサンクトペテルブルクで準々決勝の相手となるのはフランスvsスイス戦の勝者で、とにかくデシャン監督のチームは大会前から優勝候補と言われていましたからね。グループ最終節ではベンゼマ(マドリー)が2ゴール挙げ、かつての同僚、クリスチアーノ・ロナウド(ユベントス)がPK2本を決めたポルトガルと2-2で引き分けていましたが、デンベレ(バルサ)など、2試合目のハンガリー戦で太ももをケガして、手術のために代表離脱。元アトレティコのリュカ(バイエルン)、元バルサのディーニェ(エバートン)の左SB2人も負傷、更にレマル(アトレティコ)も練習中に打撲を受けて早退と、少々、実戦部隊が減っている感はありますが、エムバペ(PSG)、グリーズマン(バルサ)までが並んだ3弾頭にはとても撃ち勝てる気がしないかと。
更に「Lo he pasado bastante mal, diez días en casa, no sabía si podía volver o no/ロ・エ・パサードー・バスタンテ・マル、ディエス・ディアス・エン・カサ、ノー・サビア・シー・ポディア・ボルベル・オ・ノー(かなりひどい気分で過ごしたよ。10日間家にいて、戻れるのかどうかもわからなかったし)」と試合後のインタビューで涙ぐんでいたものの、運良く、当人は無症状感染。そのブスケツが帰ってきてからは誰1人、ケガ人がいないスペインに奇跡が起きて、ウェンブリーでの準決勝の進んだ場合、相手はベルギーvsポルトガル戦、イタリアvsオーストリア戦の中から出て来るんですが、敗退後はマドリー入団プレゼンがある予定のアラバがキャプテンを務めるオーストリア以外は皆、強そうな。
それ以上にマドリーのGKクルトワがゴールを守り、とうとう3節のフィンランド戦ではアザールもフル出場したベルギーにはカラスコもいますし、ポルトガルにもまだ出場機会のないジョアン・フェリックスがいるとあって、あまりアトレティコ勢対決は見たくない気がしますが、さて。何にしても2012年のユーロ優勝を最後に2014年ブラジルW杯はグループリーグ敗退、2016年ユーロ、2018年ロシアW杯ではどちらも16強対決敗退とほとんど上に行けていないスペインですからねえ。
ラス・ロサスに来ていた代表番記者たちもあまり、過度の期待は抱いていないようでしたが…聞いたところによると、昨年のセルヒオ・ラモス(マドリー)が1試合で2度、ユーロ前、U21代表が代理プレーしたリトアニアとの親善試合でアベル・ルイス(スポルティング・ブラガ)、ポーランド戦のジェラール・モレノ、そしてモラタとここ、5回連続してPK失敗をしているのをルイス・エンリケ監督が懸念。最近はビジャレアルとのEL決勝で11人目に蹴って止められたデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)らGKも含め、全員が毎日PK練習をしているというスペインですが、私もなるたけ長く、彼らの戦いが続いてくれることを祈るばかりです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している
|
関連ニュース