【2022年カタールへ期待の選手vol.76】ユース代表時代の恩師・鈴木監督も太鼓判。最終予選へインパクト残した攻撃型ボランチ/川辺駿(サンフレッチェ広島/MF)
2021.06.17 20:05 Thu
5月24日から3週間超に及んだ日本代表活動。「プチ・ワールドカップ(W杯)」とも言われる中、各ポジションとも熾烈なアピール合戦が繰り広げられた。
そんな中、注目されたのがボランチ陣だ。今季ドイツ・ブンデスリーガ・デュエル王の遠藤航(シュツットガルト)がU-24日本代表の方に参戦したため、A代表の方は守田英正(サンタ・クララ)、橋本拳人(FCロストフ)、川辺駿(サンフレッチェ広島)の3人が順番にコンビを組む形に。6月3日のU-24代表戦(札幌)からの4試合でそれぞれのストロングと課題が出る格好となった。
守田であれば、欧州組らしいアグレッシブさと攻守両面でマルチタスクを果たせる能力、橋本であれば、強度とボール奪取能力の高さなどが目立ったが、彼ら以上に鮮烈な印象を残したのが川辺。「国内組の彼もそこそこできるじゃないか」と感じた関係者は少なくなかったことだろう。
彼が最も大きなインパクトを与えたのが、11日のセルビア戦(神戸)だった。先発した橋本がタテパスのミスを連発し、攻撃がこう着状態に陥る中、後半からピッチに立った川辺は長短のパスを駆使しつつ、攻撃リズムを改善。修正能力の高さを見せつけたのだ。
この働きが評価され、スタメンに抜擢された15日の2022年カタールW杯・キルギス戦も、守田とのコンビで巧みなゲームコントロールを披露。視野の広さと状況判断力の高さも際立っていた。さらに言うと、オナイウ阿道(横浜)の2点目につながるDF3人を抜き去ったドリブル突破も大いに光った。
3月の日韓戦(日産)で初キャップを飾ってから3カ月。25歳のボランチは着実に存在感を高めているように映る。彼をユース代表時代に指導し、2014年AFC・U-19選手権(ミャンマー)にもチームを率いた鈴木政一監督(ジュビロ磐田)も真価を実感した様子だった。
「(オナイウの得点につながった)タテにドリブルで出ていくプレー自体は18~19歳から持っているんですよね。それに加えて、守備力や強さ、タイミングや切れ味が1つ上がったなと感じます。あとテレビ画面を通じてよく分かるのが、ボールのない時に周りを沢山見ていること。あれが判断材料を多く持てる1つの要素なんですよね。彼はその必要性を広島でも代表でも感じて意識的にやっている。それがいい効果を生んでいるんじゃないかと思います」
ボールのない時の視野確保と状況判断の巧みさは、磐田のタクトを振るう遠藤保仁に重なる部分。13日のヴァンフォーレ甲府戦でJリーグ通算700試合出場を達成した41歳の大ベテランはその長所を最大限生かしているから一瞬で状況を変えられるし、敵と接触するような大ケガもしない。そういった賢さを中村俊輔(横浜FC)や青山敏弘(広島)らも持ち合わせているから、年齢を重ねてもいいプレーができるのだ。磐田時代には中村、広島では青山とともに戦い、クレバーさに磨きをかけてきた川辺は、その実力が今になって開花しようとしている。
「それに加えて、得点に絡める特徴を持っているので、それをどんどんアピールしてほしい」と鈴木監督からも大きな期待を寄せられている状況だ。
ここで一気にJリーグ基準を超え、代表でコンスタントに戦えるレベルに到達してほしいところだが、海外組に比べると環境的にやや厳しい部分は否めない。遠藤航、守田、橋本、今年になって招集外になっている柴崎岳(レガネス)といったボランチ陣は揃いも揃って欧州でプレー。世界の激しさや強度の中に身を投じ、自己研鑽に励んでいるのだ。
U-24世代の田中碧(川崎)も今夏の海外移籍が確実と言われるだけに、現状のままの川辺が最終予選のメンバーに食い込むのは難しい。国内にいても、世界を意識したプレーをつねにピッチ上で示し続けるしか、森保監督の目を向けさせる方法はない。
「自分の課題は球際と守備の部分。もうちょっと自分で奪い切る力、奪った後に打開していくことが必要だと感じます。そのためにも『球際で勝つんだ』という気持ちの強さを持たないといけないし、フィジカルももっと上げていかないといけない。代表に入っている他の選手に見劣りしないくらいの強度を身に着けたいと思います」
本人も自身のやるべきテーマを明確にしているのは非常にいいことだ。同世代のオナイウや南野拓実(サウサンプトン)が短期間で急成長を遂げたのだから、川辺にもできないわけではない。
先輩・青山が2014年ブラジルW杯で世界の壁に阻まれ、号泣したのを間近に見ていた彼は「自分はそのハードルを超えたい」と強く感じているはず。自分にさまざまな刺激を与えてくれた指導者や先輩、周囲の仲間たちに報いるためにも、満足せずに前へ前へと突き進むことが肝要だ。代表定着の布石を打った今を逃してはならない。
そのためにも、まずは直近のJリーグだ。広島は15日の天皇杯2回戦でJFL・おこしやす京都ACに5失点大敗という不名誉な戦いを見せてしまっただけに、次なる19日の柏レイソル戦が重要になる。川辺にはチーム立て直しの牽引役として「違い」を示してほしいものである。
【文・元川悦子】
そんな中、注目されたのがボランチ陣だ。今季ドイツ・ブンデスリーガ・デュエル王の遠藤航(シュツットガルト)がU-24日本代表の方に参戦したため、A代表の方は守田英正(サンタ・クララ)、橋本拳人(FCロストフ)、川辺駿(サンフレッチェ広島)の3人が順番にコンビを組む形に。6月3日のU-24代表戦(札幌)からの4試合でそれぞれのストロングと課題が出る格好となった。
彼が最も大きなインパクトを与えたのが、11日のセルビア戦(神戸)だった。先発した橋本がタテパスのミスを連発し、攻撃がこう着状態に陥る中、後半からピッチに立った川辺は長短のパスを駆使しつつ、攻撃リズムを改善。修正能力の高さを見せつけたのだ。
この働きが評価され、スタメンに抜擢された15日の2022年カタールW杯・キルギス戦も、守田とのコンビで巧みなゲームコントロールを披露。視野の広さと状況判断力の高さも際立っていた。さらに言うと、オナイウ阿道(横浜)の2点目につながるDF3人を抜き去ったドリブル突破も大いに光った。
「横パスを自分の前につけて、そのままチャンスがあったので上がっていきましたし、DFも来ましたけど、うまく抜け出してGKとDFの間いいいボールをつけられた。アドが入ってくるのは分かっていたので、出す瞬間にうまく裏を取ってくれたと思います」と川辺本人もアシストという目に見える結果を残せたことに、手ごたえをつかんだ様子だった。
3月の日韓戦(日産)で初キャップを飾ってから3カ月。25歳のボランチは着実に存在感を高めているように映る。彼をユース代表時代に指導し、2014年AFC・U-19選手権(ミャンマー)にもチームを率いた鈴木政一監督(ジュビロ磐田)も真価を実感した様子だった。
「(オナイウの得点につながった)タテにドリブルで出ていくプレー自体は18~19歳から持っているんですよね。それに加えて、守備力や強さ、タイミングや切れ味が1つ上がったなと感じます。あとテレビ画面を通じてよく分かるのが、ボールのない時に周りを沢山見ていること。あれが判断材料を多く持てる1つの要素なんですよね。彼はその必要性を広島でも代表でも感じて意識的にやっている。それがいい効果を生んでいるんじゃないかと思います」
ボールのない時の視野確保と状況判断の巧みさは、磐田のタクトを振るう遠藤保仁に重なる部分。13日のヴァンフォーレ甲府戦でJリーグ通算700試合出場を達成した41歳の大ベテランはその長所を最大限生かしているから一瞬で状況を変えられるし、敵と接触するような大ケガもしない。そういった賢さを中村俊輔(横浜FC)や青山敏弘(広島)らも持ち合わせているから、年齢を重ねてもいいプレーができるのだ。磐田時代には中村、広島では青山とともに戦い、クレバーさに磨きをかけてきた川辺は、その実力が今になって開花しようとしている。
「それに加えて、得点に絡める特徴を持っているので、それをどんどんアピールしてほしい」と鈴木監督からも大きな期待を寄せられている状況だ。
ここで一気にJリーグ基準を超え、代表でコンスタントに戦えるレベルに到達してほしいところだが、海外組に比べると環境的にやや厳しい部分は否めない。遠藤航、守田、橋本、今年になって招集外になっている柴崎岳(レガネス)といったボランチ陣は揃いも揃って欧州でプレー。世界の激しさや強度の中に身を投じ、自己研鑽に励んでいるのだ。
U-24世代の田中碧(川崎)も今夏の海外移籍が確実と言われるだけに、現状のままの川辺が最終予選のメンバーに食い込むのは難しい。国内にいても、世界を意識したプレーをつねにピッチ上で示し続けるしか、森保監督の目を向けさせる方法はない。
「自分の課題は球際と守備の部分。もうちょっと自分で奪い切る力、奪った後に打開していくことが必要だと感じます。そのためにも『球際で勝つんだ』という気持ちの強さを持たないといけないし、フィジカルももっと上げていかないといけない。代表に入っている他の選手に見劣りしないくらいの強度を身に着けたいと思います」
本人も自身のやるべきテーマを明確にしているのは非常にいいことだ。同世代のオナイウや南野拓実(サウサンプトン)が短期間で急成長を遂げたのだから、川辺にもできないわけではない。
先輩・青山が2014年ブラジルW杯で世界の壁に阻まれ、号泣したのを間近に見ていた彼は「自分はそのハードルを超えたい」と強く感じているはず。自分にさまざまな刺激を与えてくれた指導者や先輩、周囲の仲間たちに報いるためにも、満足せずに前へ前へと突き進むことが肝要だ。代表定着の布石を打った今を逃してはならない。
そのためにも、まずは直近のJリーグだ。広島は15日の天皇杯2回戦でJFL・おこしやす京都ACに5失点大敗という不名誉な戦いを見せてしまっただけに、次なる19日の柏レイソル戦が重要になる。川辺にはチーム立て直しの牽引役として「違い」を示してほしいものである。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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