【ユーロ2020/グループF展望】前回王者、世界王者、ドイツ同居の“死の組”
2021.06.15 18:00 Tue
ユーロ2020のグループステージが6月11日に開幕する。グループFは前大会王者ポルトガル、世界王者フランス、ドイツという3強とハンガリーが同居する今大会における“死の組”だ。◆連覇に向けたいきなりの試練を乗り越えられるか~ポルトガル~
最高順位/優勝
予選戦績/5勝2分け1敗(グループB2位)
監督/フェルナンド・サントス
注目選手/DFルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)
7大会連続の出場となる前回王者ポルトガルは、2018-19シーズンのUEFAネーションズリーグに続くヨーロッパ主要大会連覇を狙う。2014年に就任したフェルナンド・サントス監督の下で長期政権を築くチームは、今大会出場チームにおいて最も安定感のあるチームのひとつだ。
今回の予選では伏兵ウクライナに競り負けて首位通過を逃したが、セルビアを振り切ってきっちり2位での突破を決めた。これまではエースFWクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)におんぶにだっこの状況が続いたが、現スカッドではそのエースやDFペペ(ポルト)、MFモウティーニョ(ウォルバーハンプトン)というベテランに加え、MFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、MFブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)といった中堅、FWフェリックス(アトレティコ・マドリー)、MFレナト・サンチェス(リール)という若手とよりバランスの取れた構成となっている。
連覇に向けてはまずフランス、ドイツのいずれかを退ける必要があるが、初戦をハンガリーと戦えるアドバンテージによってドイツとの第2戦、フランスとの最終戦に向けてコンディションを高めつつ、勝ち点計算を意識した戦い方が可能となる点はプラス材料だ。
昨夏、ベンフィカから総額6450万ポンドの移籍金でシティに加入した24歳は、持ち味の対人守備、カバーリングに加え、難解なグアルディオラの戦術を完璧に理解し、ビルドアップの局面でも存在感を放つ完全無欠のパフォーマンスを披露した。そして、シティの国内2冠に貢献し、今季のプレミアリーグMVPとFWA年間MVPをダブル受賞。今や世界最高のセンターバックの一人との評価も確立している。拮抗した戦いが予想されるグループリーグにおいてはまず失点しないことが求められており、FWムバッペやFWグリーズマンを擁するフランス、MFミュラーやFWヴェルナーを擁するドイツの強豪攻撃陣相手の奮闘が期待されるところだ。
◆タレントの質は今大会屈指も一枚岩で戦えるか~フランス~
最高順位/優勝
予選戦績/8勝1分け1敗(グループH1位)
監督/ディディエ・デシャン
注目選手/FWカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)
8大会連続出場で3度目の優勝を目指すフランスは、ベルギーらと並び今大会の優勝候補筆頭だ。前回大会準優勝のデシャン率いるチームは、2018年ロシア・ワールドカップで悲願の世界一に輝き、今大会では主要大会連覇を目指す。今予選ではトルコ、アイスランドらと同居したグループHを貫録の首位で突破し、以降の試合においても世界王者に相応しい安定した戦いぶりを見せ、直前のテストマッチ2試合ではウェールズ、ブルガリアに快勝している。
ただ、以前から様々なルーツ出身の選手が多く、個性派揃いとして知られるチームは、大会直前にFWジルー(チェルシー)とFWムバッペ(パリ・サンジェルマン)が試合中のパスを巡って口論に発展するなど、ここに来て内紛の可能性も報じられている。堅守速攻一辺倒だったロシアW杯時に比べチームとしてのバリエーションは明らかに増えているが、それを生かすも殺すもチームとしての一体感が重要だ。グループリーグ初戦のドイツ戦までにコミュニケーション問題を改善したいところだ。
注目選手に関してはバロンド-ル候補に挙がるMFカンテ(チェルシー)やMFポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)、ムバッペらも気になるが、今大会に向けて最大のトピックとなったFWカリム・ベンゼマを挙げたい。
代表通算83試合27ゴールの実績を誇るも、元同僚MFヴァルブエナへの恐喝事件への関与の疑いから2015年10月を最後に、長らく代表追放の扱いを受けていたベンゼマ。しかし、レアル・マドリーでのここ数年の活躍やパーソナルな部分での成長を受け、デシャン監督は個別面談を経て約5年半ぶりの再招集を決断。直前のテストマッチ2試合ではPK失敗こそあったものの、ムバッペとグリーズマンとの好連携によっていきなり存在感を示しており、カウンターを最大のストロングとするチームの攻撃に新たなオプションをもたらすことが期待される。ブルガリア戦での右ヒザ付近の打撲によって初戦欠場の可能性も伝えられるが、レ・ブルーのキーマンであることに変わりはないはずだ。
◆下馬評3番手もレーブ体制で有終の美を目指す~ドイツ~
最高順位/優勝
予選戦績/7勝1敗(グループC1位)
監督/ヨアヒム・レーブ
注目選手/MFトーマス・ミュラー(バイエルン)
13大会連続で4度目の優勝を目指すドイツは、まず苦戦必至のグループリーグ突破が最大の目標となる。2006年に就任したレーブ監督の下、ユーロ2008準優勝や2014年ブラジル・ワールドカップ優勝など多くの成功を収めたマンシャフトだが、ロシアW杯での屈辱のグループリーグ敗退以降、凋落の一途を辿っている。それでも、今予選ではオランダ、北アイルランドを退けてグループCを貫録の首位通過を果たした。
ここ数年の成績不振もあり、今大会後の退任を明言したレーブ監督は、世代交代を理由に事実上の引退勧告を行ったDFフンメルス(ドルトムント)、MFミュラー(バイエルン)の重鎮を急遽呼び戻すなど、なりふり構わぬ姿勢で自身の有終の美を飾ろうと躍起になっている。そして、直近のテストマッチでは恥を忍んで呼び戻した2選手が早速存在感を発揮するなど、良い形で本大会を迎えることになった。
試合日程に関してはフランスとポルトガルとの直接対決の後にハンガリーとの対戦を残しており、最終節で直接対決となるライバル2チームが談合試合を行う可能性も否定できず、最初の2試合でいかに勝ち点を拾うかが突破のカギを握る。
注目選手は2018年11月以来、約2年半ぶりの復帰となったMFトーマス・ミュラー。2010年のデビュー以降、長らくマンシャフトの主力として活躍してきた百戦錬磨のアタッカーは、代表引退勧告後も所属するバイエルンでは健在ぶりを発揮。とりわけ、今大会後の代表監督就任が内定しているハンジ・フリックの下ではトップ下を主戦場に、2年連続リーグ戦アシスト王に輝くなど、アタッキングサードで違いを生み出し続けている。その卓越したポジショニングセンス、プレー精度、献身的な守備は唯一無二であり、ここ最近勝負弱さが目立つチームに多くのプラスアルファをもたらしてくれるはずだ。また、ワールドカップでは16戦10ゴールと驚異的な決定力を発揮している一方、ユーロでは通算11試合でノーゴールとなっており、今大会での初ゴールにも期待したいところだ。
◆グループ最弱評価の中、かき乱し役となれるか~ハンガリー~
最高順位/3位
予選戦績/4勝4敗(グループE4位)
監督/マルコ・ロッシ
注目選手/GKペーテル・グラーチ(RBライプツィヒ)
2大会連続4度目の出場となるハンガリーは、グループ最弱の前評判を覆し、2大会連続のグループリーグ突破を目指す。東欧の古豪は前大会で下馬評を覆すグループリーグ突破を飾り復権の兆しを見せた。そして、今予選ではグループEでクロアチア、ウェールズ、スロバキアに次ぐ4位フィニッシュとなったが、プレーオフではブルガリア、アイスランドを続けて撃破し、2大会連続の本大会行きを決めた。
通常のグループであれば、勝ち点次第で3位突破の可能性が十分にあると言いたいところだが、優勝候補3チームが並ぶ今回のグループにおいては勝ち点奪取が目先の目標となる。すべての試合で守勢が見込まれる中、チーム一丸となった守備で接戦に持ち込めるか。
注目選手は同僚DFオルバン、主砲FWアダム・サライ(マインツ)と共に長らくブンデスリーガで活躍するRBライプツィヒの守護神ペーテル・グラーチだ。近年躍進を続けるライプツィヒを最後尾から支え続ける31歳は、卓越したシュートストップ、ハイラインの背後をケアする守備範囲の広さ、安定した足元の技術と総合力が高いGKだ。今季のブンデスリーガではドイツの守護神ノイアー(バイエルン)を抑えて最優秀GK(最多クリーンシート)に輝いており、今大会においても最後の壁として存在感を発揮したいところだ。
【試合日程】
◆第1節
▽6/15(火)
《25:00》
ハンガリー vs ポルトガル
《28:00》
フランス vs ドイツ
◆第2節
▽6/19(土)
《22:00》
ハンガリー vs フランス
《25:00》
ポルトガル vs ドイツ
◆第3節
▽6/23(水)
《28:00》
ポルトガル vs フランス
ドイツ vs ハンガリー
Getty Images
最高順位/優勝
予選戦績/5勝2分け1敗(グループB2位)
監督/フェルナンド・サントス
注目選手/DFルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)
今回の予選では伏兵ウクライナに競り負けて首位通過を逃したが、セルビアを振り切ってきっちり2位での突破を決めた。これまではエースFWクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)におんぶにだっこの状況が続いたが、現スカッドではそのエースやDFペペ(ポルト)、MFモウティーニョ(ウォルバーハンプトン)というベテランに加え、MFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、MFブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)といった中堅、FWフェリックス(アトレティコ・マドリー)、MFレナト・サンチェス(リール)という若手とよりバランスの取れた構成となっている。
連覇に向けてはまずフランス、ドイツのいずれかを退ける必要があるが、初戦をハンガリーと戦えるアドバンテージによってドイツとの第2戦、フランスとの最終戦に向けてコンディションを高めつつ、勝ち点計算を意識した戦い方が可能となる点はプラス材料だ。
今大会でイラン代表FWアリ・ダエイの歴代代表得点記録(109点)更新が期待される通算104ゴールのC・ロナウドにも大いに注目が集まるが、若きディフェンスリーダーのルベン・ディアスを注目選手に挙げたい。
昨夏、ベンフィカから総額6450万ポンドの移籍金でシティに加入した24歳は、持ち味の対人守備、カバーリングに加え、難解なグアルディオラの戦術を完璧に理解し、ビルドアップの局面でも存在感を放つ完全無欠のパフォーマンスを披露した。そして、シティの国内2冠に貢献し、今季のプレミアリーグMVPとFWA年間MVPをダブル受賞。今や世界最高のセンターバックの一人との評価も確立している。拮抗した戦いが予想されるグループリーグにおいてはまず失点しないことが求められており、FWムバッペやFWグリーズマンを擁するフランス、MFミュラーやFWヴェルナーを擁するドイツの強豪攻撃陣相手の奮闘が期待されるところだ。
◆タレントの質は今大会屈指も一枚岩で戦えるか~フランス~
Getty Images
最高順位/優勝
予選戦績/8勝1分け1敗(グループH1位)
監督/ディディエ・デシャン
注目選手/FWカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)
8大会連続出場で3度目の優勝を目指すフランスは、ベルギーらと並び今大会の優勝候補筆頭だ。前回大会準優勝のデシャン率いるチームは、2018年ロシア・ワールドカップで悲願の世界一に輝き、今大会では主要大会連覇を目指す。今予選ではトルコ、アイスランドらと同居したグループHを貫録の首位で突破し、以降の試合においても世界王者に相応しい安定した戦いぶりを見せ、直前のテストマッチ2試合ではウェールズ、ブルガリアに快勝している。
ただ、以前から様々なルーツ出身の選手が多く、個性派揃いとして知られるチームは、大会直前にFWジルー(チェルシー)とFWムバッペ(パリ・サンジェルマン)が試合中のパスを巡って口論に発展するなど、ここに来て内紛の可能性も報じられている。堅守速攻一辺倒だったロシアW杯時に比べチームとしてのバリエーションは明らかに増えているが、それを生かすも殺すもチームとしての一体感が重要だ。グループリーグ初戦のドイツ戦までにコミュニケーション問題を改善したいところだ。
注目選手に関してはバロンド-ル候補に挙がるMFカンテ(チェルシー)やMFポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)、ムバッペらも気になるが、今大会に向けて最大のトピックとなったFWカリム・ベンゼマを挙げたい。
代表通算83試合27ゴールの実績を誇るも、元同僚MFヴァルブエナへの恐喝事件への関与の疑いから2015年10月を最後に、長らく代表追放の扱いを受けていたベンゼマ。しかし、レアル・マドリーでのここ数年の活躍やパーソナルな部分での成長を受け、デシャン監督は個別面談を経て約5年半ぶりの再招集を決断。直前のテストマッチ2試合ではPK失敗こそあったものの、ムバッペとグリーズマンとの好連携によっていきなり存在感を示しており、カウンターを最大のストロングとするチームの攻撃に新たなオプションをもたらすことが期待される。ブルガリア戦での右ヒザ付近の打撲によって初戦欠場の可能性も伝えられるが、レ・ブルーのキーマンであることに変わりはないはずだ。
◆下馬評3番手もレーブ体制で有終の美を目指す~ドイツ~
Getty Images
最高順位/優勝
予選戦績/7勝1敗(グループC1位)
監督/ヨアヒム・レーブ
注目選手/MFトーマス・ミュラー(バイエルン)
13大会連続で4度目の優勝を目指すドイツは、まず苦戦必至のグループリーグ突破が最大の目標となる。2006年に就任したレーブ監督の下、ユーロ2008準優勝や2014年ブラジル・ワールドカップ優勝など多くの成功を収めたマンシャフトだが、ロシアW杯での屈辱のグループリーグ敗退以降、凋落の一途を辿っている。それでも、今予選ではオランダ、北アイルランドを退けてグループCを貫録の首位通過を果たした。
ここ数年の成績不振もあり、今大会後の退任を明言したレーブ監督は、世代交代を理由に事実上の引退勧告を行ったDFフンメルス(ドルトムント)、MFミュラー(バイエルン)の重鎮を急遽呼び戻すなど、なりふり構わぬ姿勢で自身の有終の美を飾ろうと躍起になっている。そして、直近のテストマッチでは恥を忍んで呼び戻した2選手が早速存在感を発揮するなど、良い形で本大会を迎えることになった。
試合日程に関してはフランスとポルトガルとの直接対決の後にハンガリーとの対戦を残しており、最終節で直接対決となるライバル2チームが談合試合を行う可能性も否定できず、最初の2試合でいかに勝ち点を拾うかが突破のカギを握る。
注目選手は2018年11月以来、約2年半ぶりの復帰となったMFトーマス・ミュラー。2010年のデビュー以降、長らくマンシャフトの主力として活躍してきた百戦錬磨のアタッカーは、代表引退勧告後も所属するバイエルンでは健在ぶりを発揮。とりわけ、今大会後の代表監督就任が内定しているハンジ・フリックの下ではトップ下を主戦場に、2年連続リーグ戦アシスト王に輝くなど、アタッキングサードで違いを生み出し続けている。その卓越したポジショニングセンス、プレー精度、献身的な守備は唯一無二であり、ここ最近勝負弱さが目立つチームに多くのプラスアルファをもたらしてくれるはずだ。また、ワールドカップでは16戦10ゴールと驚異的な決定力を発揮している一方、ユーロでは通算11試合でノーゴールとなっており、今大会での初ゴールにも期待したいところだ。
◆グループ最弱評価の中、かき乱し役となれるか~ハンガリー~
Getty Images
最高順位/3位
予選戦績/4勝4敗(グループE4位)
監督/マルコ・ロッシ
注目選手/GKペーテル・グラーチ(RBライプツィヒ)
2大会連続4度目の出場となるハンガリーは、グループ最弱の前評判を覆し、2大会連続のグループリーグ突破を目指す。東欧の古豪は前大会で下馬評を覆すグループリーグ突破を飾り復権の兆しを見せた。そして、今予選ではグループEでクロアチア、ウェールズ、スロバキアに次ぐ4位フィニッシュとなったが、プレーオフではブルガリア、アイスランドを続けて撃破し、2大会連続の本大会行きを決めた。
通常のグループであれば、勝ち点次第で3位突破の可能性が十分にあると言いたいところだが、優勝候補3チームが並ぶ今回のグループにおいては勝ち点奪取が目先の目標となる。すべての試合で守勢が見込まれる中、チーム一丸となった守備で接戦に持ち込めるか。
注目選手は同僚DFオルバン、主砲FWアダム・サライ(マインツ)と共に長らくブンデスリーガで活躍するRBライプツィヒの守護神ペーテル・グラーチだ。近年躍進を続けるライプツィヒを最後尾から支え続ける31歳は、卓越したシュートストップ、ハイラインの背後をケアする守備範囲の広さ、安定した足元の技術と総合力が高いGKだ。今季のブンデスリーガではドイツの守護神ノイアー(バイエルン)を抑えて最優秀GK(最多クリーンシート)に輝いており、今大会においても最後の壁として存在感を発揮したいところだ。
【試合日程】
◆第1節
▽6/15(火)
《25:00》
ハンガリー vs ポルトガル
《28:00》
フランス vs ドイツ
◆第2節
▽6/19(土)
《22:00》
ハンガリー vs フランス
《25:00》
ポルトガル vs ドイツ
◆第3節
▽6/23(水)
《28:00》
ポルトガル vs フランス
ドイツ vs ハンガリー
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