OA枠対決が見られなかったのは残念/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.06.05 10:15 Sat
ジャマイカ代表のヨーロッパ組10名がコロナウイルスの陰性証明に不備があったとして飛行機に搭乗できず、日本代表との対戦が不可能になった。そこで急きょJFA(日本サッカー協会)は3日に札幌で予定されていた対戦カードを日本代表対U-24日本に切り替えた。
試合は無観客とはいえ、ゴールデンタイムでの地上波テレビ中継が決まっている。苦肉の策だったが、結果は“吉"と出たと言っていい。
ジャマイカのように選手が来日できないこと。定刻通り来日しても空港での検査結果が深夜0時を過ぎてしまうと3日後の試合に出場できないこと。さらには5日に福岡でU-24日本と対戦するU-24ガーナの選手1人が来日時の空港での検査で陽性反応だったこと。そのため濃厚接触者の特定検査が必要になったことなど、短期間でいろいろなことが起きた。
これらは全て東京五輪・パラリンピックにとって絶好のシミュレーションになったことだろう。4日に千歳空港から福岡空港へ移動するはずだったU-24日本が、折からの暴風雨でフライトに遅延が出て足止めを食らったのは想定外だったが。
さて試合である。開始早々に室屋が仕掛けてつかんだ右CKから橋本があっさりと先制点を奪った。ボールを持ったら足を止めずにそのまま仕掛けて旗手をかわした室屋の積極的なプレー。ロシア・リーグのロフトスへ移籍して、2列目からの飛び出しで得点感覚を高めた橋本と、元FC東京の2人は海外移籍の成果を証明した。
橋岡は本来右SBだが、そのポジションにOA枠の酒井が来て、CBにも吉田がいる。彼自身としたら右SBで勝負したかったところだろう。
いずれにせよDF陣の経験不足は明らかで、OA枠に吉田と酒井、さらに日本代表戦は負傷で出場を見合わせた冨安は「欠くことのできない戦力」ということが証明された。DF陣に関して言えば、今後は左SBのポジション争いと、右SBのバックアッパー探しということになるだろう。CBに関しては板倉と中山もいるので心配することはない。
次に攻撃陣である。前半は1トップの田川にロングパスを出すか、久保の個人技による突破の2パターンしかなかった。三好や遠藤渓にもっと久保と絡んで欲しかったので、こちらは“消化不良"といった感じだ。その久保にしても、複数人で囲むしたたかさが日本代表にはあった。
後半は両チームとも多くの選手が代わったが、U-24日本でいえば田中が入ったことでタテパスが入るようになり、遠藤航が入ったことで中盤でタメができ、落ち着いて攻撃できるようになった。OA枠では大迫が必要だと思っていたが、遠藤航のプレーには感心させられてしまった。
試合後の大迫は「正直残念な気持ちの方が強いです。せっかくだったらオーバーエイジも出て欲しかったです。試合前からその気持ちの方が強かったですね」とOA枠とのマッチアップを楽しみにしていたことを明かした。
たぶん今回の対戦が決まったことで、多くのファン・サポーターは日本代表の1トップと2列目の3人(南野、鎌田、伊東)と、吉田&冨安と酒井の対戦を期待したことだろう。ただし冷静に考えれば、合流した翌日に予定を変更して札幌入りしたU-24日本に十分な練習時間が取れなかったことも事実。彼らのプレーは5日のガーナ戦と、12日のU―24ジャマイカ戦で見られることを期待したい。
【文・六川亨】
試合は無観客とはいえ、ゴールデンタイムでの地上波テレビ中継が決まっている。苦肉の策だったが、結果は“吉"と出たと言っていい。
これらは全て東京五輪・パラリンピックにとって絶好のシミュレーションになったことだろう。4日に千歳空港から福岡空港へ移動するはずだったU-24日本が、折からの暴風雨でフライトに遅延が出て足止めを食らったのは想定外だったが。
さて試合である。開始早々に室屋が仕掛けてつかんだ右CKから橋本があっさりと先制点を奪った。ボールを持ったら足を止めずにそのまま仕掛けて旗手をかわした室屋の積極的なプレー。ロシア・リーグのロフトスへ移籍して、2列目からの飛び出しで得点感覚を高めた橋本と、元FC東京の2人は海外移籍の成果を証明した。
代表戦に限らずクラブチーム同士の試合でも、キックオフから10~15分くらいはハイプレスで攻撃を仕掛けることはよくあるパターン。しかしU-24日本は受け身になってしまった。ここら当たり、「経験不足」と言ってしまえばそれまでだが、特に橋岡と町田のCBは1点目も2点目もCBとしての役割を果たせていなかった。
橋岡は本来右SBだが、そのポジションにOA枠の酒井が来て、CBにも吉田がいる。彼自身としたら右SBで勝負したかったところだろう。
いずれにせよDF陣の経験不足は明らかで、OA枠に吉田と酒井、さらに日本代表戦は負傷で出場を見合わせた冨安は「欠くことのできない戦力」ということが証明された。DF陣に関して言えば、今後は左SBのポジション争いと、右SBのバックアッパー探しということになるだろう。CBに関しては板倉と中山もいるので心配することはない。
次に攻撃陣である。前半は1トップの田川にロングパスを出すか、久保の個人技による突破の2パターンしかなかった。三好や遠藤渓にもっと久保と絡んで欲しかったので、こちらは“消化不良"といった感じだ。その久保にしても、複数人で囲むしたたかさが日本代表にはあった。
後半は両チームとも多くの選手が代わったが、U-24日本でいえば田中が入ったことでタテパスが入るようになり、遠藤航が入ったことで中盤でタメができ、落ち着いて攻撃できるようになった。OA枠では大迫が必要だと思っていたが、遠藤航のプレーには感心させられてしまった。
試合後の大迫は「正直残念な気持ちの方が強いです。せっかくだったらオーバーエイジも出て欲しかったです。試合前からその気持ちの方が強かったですね」とOA枠とのマッチアップを楽しみにしていたことを明かした。
たぶん今回の対戦が決まったことで、多くのファン・サポーターは日本代表の1トップと2列目の3人(南野、鎌田、伊東)と、吉田&冨安と酒井の対戦を期待したことだろう。ただし冷静に考えれば、合流した翌日に予定を変更して札幌入りしたU-24日本に十分な練習時間が取れなかったことも事実。彼らのプレーは5日のガーナ戦と、12日のU―24ジャマイカ戦で見られることを期待したい。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
|
関連ニュース