ミャンマー戦で改めて大迫をOA枠に推薦/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.05.29 22:10 Sat
JFA(日本サッカー協会)は29日、政府の緊急事態宣言の延長により来月から始まるキリンチャレンジ杯とカタールW杯アジア2次予選、そしてU-24日本代表のテストマッチ1試合(5日のU-24ガーナ戦)をリモートマッチ(無観客)で開催することを発表した。有観客試合となるのは12日に豊田で開催されるジャマイカ戦だけの予定だ。
その一方で五輪は開催のために着々と準備が進められている。五輪のための緊急事態宣言の延長という見方もできるし、そのために日本はW杯2次予選のセントラル開催(複数チームのバブル対策のシミュレーション)を引き受けたと思うのは私だけだろうか。
さてミャンマー戦である。19年9月のアウェーは豪雨の影響もあり2-0の勝利にとどまった。当時は毎日夕方になるとスコールだった印象が強く残っている。しかし今回は万全のピッチ状態で、日本はJリーグが開催されている関係から“海外組"のメンバー編成になったが、“国内組"がスタメンに入る可能性はかなり低いだろう。
つまり現状で考えられるベストメンバーで試合に臨んだだけに、10-0の大差がついたのも当然だ。そして大迫は2試合連続してハットトリック、南野はW杯予選で6試合連続ゴールという記録を更新した。こちらも対戦相手の実力を考えれば当然の結果であり、特筆すべきことではない。
それでも敢えて指摘するなら、今シーズンのブレーメンではノーゴールだった大迫の得点感覚は衰えていないことだ。巧みなポジショニングからヘディングでのゴールがあり、体が自然に反応したスライディングでのゴール、南野のシュートに反応したゴールなど、様々なパターンから得点した。
現在の日本のストロングポイントは、南野や鎌田、原口ら2列目にテクニシャンが揃っていることだろう。それはU-24日本も同様で、堂安、久保、三笘、三好、食野、相馬とタレントは豊富だ。となると、東京五輪でも1トップを採用する可能性が高い。
今回U-24日本に招集されているFWは林、前田、上田、田川の4人だが、前田と田川に林はA代表では伊東と浅野のポジションで起用されるタイプである。スピード勝負であり、ロンドン五輪では永井の役割となる。とするなら大迫のようなオールラウンダー候補は上田しかいない。しかし上田もケガに悩まされることが多いのが気がかりだ。
となれば、やはりOA枠は当初の予定通り「呼ばれると想像していなかった」という酒井ではなく大迫を選ぶべきではないだろうか。
先週のコラムで大迫が外れたのは「五輪の経験の有無を森保監督は重視した」と紹介したが、酒井自身、ロンドン五輪は「初戦のスペイン戦でケガをして、ろくに動けないのでチームに迷惑をかけた思いしかない」と振り返っていた。
今回招集されたメンバーで右SBには橋岡と菅原の2人の候補がいる。手薄なのは板倉と中山という候補はいるものの、彼らはCB候補でもあるためボランチということになるだろう。そのために遠藤航がOA枠に選ばれたことは理解できる。そしてCBは冨安という絶対的な存在がいるが、これまではU-24日本より日本代表の活動の方が長いため、コンビを組むなら吉田ということになるのも必然だ。
今シーズンでマルセイユを退団する酒井は、フランスが日本と同じグループになったことに触れ、「ベストメンバーが来れば強いですよ」と言いつつ、「U-23代表はEUROがある」ことで主力の来日を懐疑視した。ヨーロッパ勢はEUROの本大会があり、U-23の大会もある。だからこそ優勝候補は南米の2強(アルゼンチンとブラジル)であり、日本にもメダルのチャンスがあるというわけだ。
そのためには、負けないことも大事だが、勝ちきる必要もある。ミャンマー戦を見る限り、ロンドン五輪の出場を逃した大迫にリベンジの機会を与える意味でもOA枠として選出することを森保監督に提言したい。
もちろん5日のU-24ガーナ戦で前線の選手が活躍すれば、考えが変わる可能性もあるけれど……。
【文・六川亨】
その一方で五輪は開催のために着々と準備が進められている。五輪のための緊急事態宣言の延長という見方もできるし、そのために日本はW杯2次予選のセントラル開催(複数チームのバブル対策のシミュレーション)を引き受けたと思うのは私だけだろうか。
つまり現状で考えられるベストメンバーで試合に臨んだだけに、10-0の大差がついたのも当然だ。そして大迫は2試合連続してハットトリック、南野はW杯予選で6試合連続ゴールという記録を更新した。こちらも対戦相手の実力を考えれば当然の結果であり、特筆すべきことではない。
それでも敢えて指摘するなら、今シーズンのブレーメンではノーゴールだった大迫の得点感覚は衰えていないことだ。巧みなポジショニングからヘディングでのゴールがあり、体が自然に反応したスライディングでのゴール、南野のシュートに反応したゴールなど、様々なパターンから得点した。
3月の時も言っていたが、ブレーメンではトップ下だったりサイドだったりと、本職のFWで起用されないことに不満を漏らしていた。しかし森保ジャパンでは4-2-3-1の「1」の絶対的な存在である。そして起用されれば期待に応える結果を残してきた。
現在の日本のストロングポイントは、南野や鎌田、原口ら2列目にテクニシャンが揃っていることだろう。それはU-24日本も同様で、堂安、久保、三笘、三好、食野、相馬とタレントは豊富だ。となると、東京五輪でも1トップを採用する可能性が高い。
今回U-24日本に招集されているFWは林、前田、上田、田川の4人だが、前田と田川に林はA代表では伊東と浅野のポジションで起用されるタイプである。スピード勝負であり、ロンドン五輪では永井の役割となる。とするなら大迫のようなオールラウンダー候補は上田しかいない。しかし上田もケガに悩まされることが多いのが気がかりだ。
となれば、やはりOA枠は当初の予定通り「呼ばれると想像していなかった」という酒井ではなく大迫を選ぶべきではないだろうか。
先週のコラムで大迫が外れたのは「五輪の経験の有無を森保監督は重視した」と紹介したが、酒井自身、ロンドン五輪は「初戦のスペイン戦でケガをして、ろくに動けないのでチームに迷惑をかけた思いしかない」と振り返っていた。
今回招集されたメンバーで右SBには橋岡と菅原の2人の候補がいる。手薄なのは板倉と中山という候補はいるものの、彼らはCB候補でもあるためボランチということになるだろう。そのために遠藤航がOA枠に選ばれたことは理解できる。そしてCBは冨安という絶対的な存在がいるが、これまではU-24日本より日本代表の活動の方が長いため、コンビを組むなら吉田ということになるのも必然だ。
今シーズンでマルセイユを退団する酒井は、フランスが日本と同じグループになったことに触れ、「ベストメンバーが来れば強いですよ」と言いつつ、「U-23代表はEUROがある」ことで主力の来日を懐疑視した。ヨーロッパ勢はEUROの本大会があり、U-23の大会もある。だからこそ優勝候補は南米の2強(アルゼンチンとブラジル)であり、日本にもメダルのチャンスがあるというわけだ。
そのためには、負けないことも大事だが、勝ちきる必要もある。ミャンマー戦を見る限り、ロンドン五輪の出場を逃した大迫にリベンジの機会を与える意味でもOA枠として選出することを森保監督に提言したい。
もちろん5日のU-24ガーナ戦で前線の選手が活躍すれば、考えが変わる可能性もあるけれど……。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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