カズがルヴァン杯で最年長出場記録を更新/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.04.29 19:25 Thu
ルヴァンカップのグループステージ8試合が28日に行われ、横浜FCの三浦知良(カズ)が54歳2カ月2日の最年長出場記録を更新した。
とはいっても、それほど大きな話題にならなかったのは、横浜FCが2-0とリードした後半45分からの出場だったからだろう。カズ自身の衰えぬ現役へのこだわりと、そのための厳しい修練には頭の下がる思いだが、それでも“引退のタイミング”を逃してしまった印象を拭えないのは私だけだろうか。
カズが横浜FCに加入したのは2005年のことだった。東京プリンスホテルで開催された入団会見で、「サントスでプロデビューし、イタリアのジェノアや神戸でプレーし、不思議と港町のクラブに縁があります」と話したことをいまでも覚えている。
この05年はカズにとってもクラブにとってもターニングポイントだった。学校や病院の給食、企業の社内食堂を展開するLEOCが筆頭株主になり、カズだけでなく山口素弘、望月重良ら元日本代表を補強。監督には元JAPANサッカーカレッジの足達勇輔を招聘した。
ところが翌06年3月4日のJ2リーグ開幕戦で愛媛に0-1で敗れると、足達監督はわずか1試合で解任される。これはいまでも最短記録である。そして後任にはコーチだった高木琢也が就任した。
そして高木監督は8月の横浜ダービーで1-8と大敗後に解任され、チームも最下位に終わりJ2へと降格した。
その後、チームの指揮官はジュリオ・レアル、都並敏史、樋口靖洋、岸野晴之、山口素弘、ミロシュ・ルス、中田仁司、タヴァレス、下平隆宏と9人が務め、今シーズン途中で成績不振から下平監督は解任され、ユースチーム監督の早川知伸が指揮を執ることになった。
この間、カズは一選手として黙々とトレーニングに励み、出場に向けて準備をするだけだった。10年前は両親や叔父さんなどが試合観戦によく訪れたものの、近年はその回数もだいぶ減った。
LEOCのグループ会社の代表取締役社長である小野寺氏はカズの大ファンのため、「何歳になってもカズに引退を勧めることはない」とか、「カズを試合に起用しない監督は解任される」といった憶測も流布されているが、それはカズに失礼な話だろう。
いつ訪れるかわからない出場機会に備えてトレーニングを積むことほど、精神的に苦しいことはないと思うからだ。それでもカズが引退を決意するとしたら、それはゴールを決めた時ではないだろうか。ストライカーの矜持として、J1リーグでのゴールでサッカー人生を締めくくる。ダンスを踊るかどうかは別にして、その瞬間に立ち会いたいと思うのは私だけではないだろう。
【文・六川亨】
とはいっても、それほど大きな話題にならなかったのは、横浜FCが2-0とリードした後半45分からの出場だったからだろう。カズ自身の衰えぬ現役へのこだわりと、そのための厳しい修練には頭の下がる思いだが、それでも“引退のタイミング”を逃してしまった印象を拭えないのは私だけだろうか。
この05年はカズにとってもクラブにとってもターニングポイントだった。学校や病院の給食、企業の社内食堂を展開するLEOCが筆頭株主になり、カズだけでなく山口素弘、望月重良ら元日本代表を補強。監督には元JAPANサッカーカレッジの足達勇輔を招聘した。
ところが翌06年3月4日のJ2リーグ開幕戦で愛媛に0-1で敗れると、足達監督はわずか1試合で解任される。これはいまでも最短記録である。そして後任にはコーチだった高木琢也が就任した。
高木監督は第2節から第18節まで15戦無敗(9勝6分け)などの記録で勝点を積み上げ、念願のJ2リーグ優勝とJ1昇格を勝ち取った。初めてのJ1リーグ開幕戦はアウェーの浦和戦。埼玉スタジアムでの試合は、この年から加入した“ドラゴン”こと久保竜彦の超ロングシュートで一時は1-1の同点に追いついたが、浦和の永井雄一郎に決勝点を決められた。
そして高木監督は8月の横浜ダービーで1-8と大敗後に解任され、チームも最下位に終わりJ2へと降格した。
その後、チームの指揮官はジュリオ・レアル、都並敏史、樋口靖洋、岸野晴之、山口素弘、ミロシュ・ルス、中田仁司、タヴァレス、下平隆宏と9人が務め、今シーズン途中で成績不振から下平監督は解任され、ユースチーム監督の早川知伸が指揮を執ることになった。
この間、カズは一選手として黙々とトレーニングに励み、出場に向けて準備をするだけだった。10年前は両親や叔父さんなどが試合観戦によく訪れたものの、近年はその回数もだいぶ減った。
LEOCのグループ会社の代表取締役社長である小野寺氏はカズの大ファンのため、「何歳になってもカズに引退を勧めることはない」とか、「カズを試合に起用しない監督は解任される」といった憶測も流布されているが、それはカズに失礼な話だろう。
いつ訪れるかわからない出場機会に備えてトレーニングを積むことほど、精神的に苦しいことはないと思うからだ。それでもカズが引退を決意するとしたら、それはゴールを決めた時ではないだろうか。ストライカーの矜持として、J1リーグでのゴールでサッカー人生を締めくくる。ダンスを踊るかどうかは別にして、その瞬間に立ち会いたいと思うのは私だけではないだろう。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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