【2022年カタールへ期待の選手vol.72】鈴木彩艶も参戦し激戦の五輪GK争い。第一人者は地位を守り、A代表昇格を果たせるか?/大迫敬介(サンフレッチェ広島/GK)
2021.05.31 20:05 Mon
2022年カタールワールドカップアジア2次予選・ミャンマー戦(千葉)からスタートした5〜6月の日本代表活動。28日の初戦は欧州組だけの構成だったが、順当に10-0で圧勝。最終予選進出を決めた。
次の段階からはA代表とU-24代表の活動に分かれるが、後者にとっては2か月後に迫る東京五輪最終登録メンバー18人を絞り込むための最終テストの場。非常に重要な意味を持つのだ。
すでにオーバーエージ枠の吉田麻也(サンプドリア)、酒井宏樹(マルセイユ)、遠藤航(シュツットガルト)が決まっているため、U-24世代に残されているのは15枠。このうちGKは2枠という狭き門だ。そこに大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃正(湘南ベルマーレ)、沖悠哉(鹿島アントラーズ)、鈴木彩艶(浦和レッズ)の4人が挑む。他のポジション以上に大激戦なのは間違いないだろう。
候補者のうち、最も正守護神に近いと目されるのが大迫である。A代表との融合チームだった2019年コパ・アメリカ(ブラジル)やEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦。「次世代の日本代表守護神最有力」と目されてきたからだ。当時、19歳ながら世界的強豪のチリに勇敢に挑んでいく姿勢を間近で見ていた川島永嗣(ストラスブール)も「ポテンシャルの大きな選手」と高く評価。そのままの勢いでA代表に定着するかと思われた。
だが、コロナ禍の2020年は国内組の代表活動がほぼできず、彼自身もJリーグで出番を失うことが多かった。広島の城福浩監督はベテラン守護神・林卓人を重用。大迫は2019年の29試合から15試合へとJ出場実績を大きく減らすことになった。
その発言通り、GKはつねに心身両面で安定感を維持し続けなければいけない。何が起きても平常心を保つ必要があるし、パフォーマンスの浮き沈みも許されない。それを21歳という若さで学べたのは、大迫にとって非常にポジティブなこと。五輪の1年延期には意味があったのだ。
迎えた今季。クラブでポジションを奪回した彼はここまでリーグ18試合フル出場(5月29日時点)。今月に入って複数失点している試合が多いのは気がかりだが、彼自身のパフォーマンスがブレているわけではない。
とりわけ王者・川崎フロンターレ相手にドローに持ち込んだ4月16日のゲームなどは「失点しても我慢強く戦うことで勝ち点を拾えると確信を得られた。チームとして前半から前からプレスをかけた分、息が上がっていたので、悪い流れの時は時間を使って落ち着けるなど冷静に判断しながらやれました」と本人も発言。タフさと粘り強さを押し出しつつ、巧みな判断力でリズムの変化をつけていた。
こうした多様性と柔軟性は昨年までの大迫にはなかったもの。五輪本番になれば、南アフリカ、メキシコ、フランスという強豪が相手。必ず押し込まれる時間帯が出てくる。そこで川崎戦のような頭脳的なプレーを見せられれば、チーム全体に安心感を与えられるだろう。吉田や酒井といった百戦錬磨の面々が最終ラインに陣取っているのも心強いが、やはり守護神がチームを最後尾から確実に支えていなければ、メダルという大きな目標には届かない。
今回の4人のGK候補者のうち、こうした風格を出せるのは大迫だけではないか。俊敏性と反応の秀でた谷、キックや組み立てに長けた沖、18歳ながら規格外のフィジカルを持つ鈴木も魅力的ではあるが、総合力と経験値を考えるとやはり大迫抜きには語れない。彼には森保監督の期待に応えるような傑出した仕事ぶりを見せてもらうしかない。
さしあたって6月5日のU-24ガーナ戦(福岡)と13日のU-24ジャマイカ戦(豊田)だ。このいずれかで大迫はスタメンに抜擢されるはず。そこで相手を封じ込め、日本の勝利の原動力になれれば、五輪本番のピッチをグッと引き寄せることができるだろう。
そして五輪で好結果を残せば、秋からのカタールW杯最終予選、1年半後のW杯本大会にもつながる。目下、A代表のGK争いも38歳の大ベテラン・川島や国内で再出発した権田修一(清水エスパルス)らを軸に混とんとしている。若い世代が一気にのし上がる可能性もゼロではないだけに、この機を逃してほしくない。
「もちろん五輪では金メダルを取りたいですけど、昨年1月のタイの大会(AFC U-23選手権)の結果を見れば、簡単に言えることはない。目の前の試合結果を出し続けることが大事」とまずは直近の試合でベストを尽くすことが大迫にとっての至上命題だ。
2010年南アフリカW杯で楢崎正剛(名古屋CFR)から定位置を奪った川島のような勢いを、21歳の守護神には強く求めたいところ。森保監督に早くから評価されてきた彼の一挙手一投足が気になる。
【文・元川悦子】
次の段階からはA代表とU-24代表の活動に分かれるが、後者にとっては2か月後に迫る東京五輪最終登録メンバー18人を絞り込むための最終テストの場。非常に重要な意味を持つのだ。
候補者のうち、最も正守護神に近いと目されるのが大迫である。A代表との融合チームだった2019年コパ・アメリカ(ブラジル)やEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦。「次世代の日本代表守護神最有力」と目されてきたからだ。当時、19歳ながら世界的強豪のチリに勇敢に挑んでいく姿勢を間近で見ていた川島永嗣(ストラスブール)も「ポテンシャルの大きな選手」と高く評価。そのままの勢いでA代表に定着するかと思われた。
だが、コロナ禍の2020年は国内組の代表活動がほぼできず、彼自身もJリーグで出番を失うことが多かった。広島の城福浩監督はベテラン守護神・林卓人を重用。大迫は2019年の29試合から15試合へとJ出場実績を大きく減らすことになった。
「試合に出られない時期が多かったですけど、自分自身の感覚としては、いつ出番が来てもやれる自信はありました。出られなかった要因としては、メンタルが一番大きかったと思います。代えられた時はメンタルの持っていき方が難しかった。シーズン通して苦しかったけど、どんな時も前向きに取り組むことの大事さは改めて感じました」と本人も昨年末の五輪代表合宿の際、しみじみコメントしていた。
その発言通り、GKはつねに心身両面で安定感を維持し続けなければいけない。何が起きても平常心を保つ必要があるし、パフォーマンスの浮き沈みも許されない。それを21歳という若さで学べたのは、大迫にとって非常にポジティブなこと。五輪の1年延期には意味があったのだ。
迎えた今季。クラブでポジションを奪回した彼はここまでリーグ18試合フル出場(5月29日時点)。今月に入って複数失点している試合が多いのは気がかりだが、彼自身のパフォーマンスがブレているわけではない。
とりわけ王者・川崎フロンターレ相手にドローに持ち込んだ4月16日のゲームなどは「失点しても我慢強く戦うことで勝ち点を拾えると確信を得られた。チームとして前半から前からプレスをかけた分、息が上がっていたので、悪い流れの時は時間を使って落ち着けるなど冷静に判断しながらやれました」と本人も発言。タフさと粘り強さを押し出しつつ、巧みな判断力でリズムの変化をつけていた。
こうした多様性と柔軟性は昨年までの大迫にはなかったもの。五輪本番になれば、南アフリカ、メキシコ、フランスという強豪が相手。必ず押し込まれる時間帯が出てくる。そこで川崎戦のような頭脳的なプレーを見せられれば、チーム全体に安心感を与えられるだろう。吉田や酒井といった百戦錬磨の面々が最終ラインに陣取っているのも心強いが、やはり守護神がチームを最後尾から確実に支えていなければ、メダルという大きな目標には届かない。
今回の4人のGK候補者のうち、こうした風格を出せるのは大迫だけではないか。俊敏性と反応の秀でた谷、キックや組み立てに長けた沖、18歳ながら規格外のフィジカルを持つ鈴木も魅力的ではあるが、総合力と経験値を考えるとやはり大迫抜きには語れない。彼には森保監督の期待に応えるような傑出した仕事ぶりを見せてもらうしかない。
さしあたって6月5日のU-24ガーナ戦(福岡)と13日のU-24ジャマイカ戦(豊田)だ。このいずれかで大迫はスタメンに抜擢されるはず。そこで相手を封じ込め、日本の勝利の原動力になれれば、五輪本番のピッチをグッと引き寄せることができるだろう。
そして五輪で好結果を残せば、秋からのカタールW杯最終予選、1年半後のW杯本大会にもつながる。目下、A代表のGK争いも38歳の大ベテラン・川島や国内で再出発した権田修一(清水エスパルス)らを軸に混とんとしている。若い世代が一気にのし上がる可能性もゼロではないだけに、この機を逃してほしくない。
「もちろん五輪では金メダルを取りたいですけど、昨年1月のタイの大会(AFC U-23選手権)の結果を見れば、簡単に言えることはない。目の前の試合結果を出し続けることが大事」とまずは直近の試合でベストを尽くすことが大迫にとっての至上命題だ。
2010年南アフリカW杯で楢崎正剛(名古屋CFR)から定位置を奪った川島のような勢いを、21歳の守護神には強く求めたいところ。森保監督に早くから評価されてきた彼の一挙手一投足が気になる。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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