日本代表メンバー発表で分かった日本の弱点/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.03.19 13:30 Fri
JFA(日本サッカー協会)は3月18日、今月25日に開催される国際親善試合の韓国戦(19時20分/日産スタジアム)、同30日に開催されるカタールW杯アジア2次予選のモンゴル戦(19時30分/フクダ電子アリーナ)に臨む日本代表23名のメンバーを発表した。
発表に際しては、これまで代表の常連だった堂安律を始め、久保建英や三笘薫らアンダー24の選手はA代表ではなく、U-24日本代表の活動を優先することも併せて発表された。
さすがに冨安だけは、A代表にとっても欠くことのできない選手なのだろう。森保一監督は「育成年代で一緒にプレーしているので意思の疎通はできている」としてUー24日本代表ではなくA代表の活動を優先させたが、34歳のベテランCB吉田に何かあった時は、ディフェンス陣のリーダーとして期待されている裏返しに他ならない。
今回選出されたメンバーは以下の通りだ(氏名の後の数字は出場試合数/予想されるポジション)。
GK/西川周作(31)、権田修一(18)、前川黛也(初)
MF/江坂任(初/中央)、遠藤航(25/ボランチ)、伊東純也(20/右)、原川力(初/ボランチ)、南野拓実(26/2列目のオールマイティー)、古橋亨梧(1/左右)、守田英正(3/ボランチ)、川辺駿(初/ボランチ)、鎌田大地(8/中央)、坂元達裕(初/右)
FW/大迫勇也(45/1トップ)、浅野拓磨(22/右か1トップ)
森保監督は「集まった時の状態を見てベストのメンバーで韓国と戦う」と言っていたが、こうしてポジション別に出場回数から判断すると、ライバル韓国との試合のスタメンは次のようになると予想される(システムは4-2-3-1)。
GK権田 DFは右から松原、冨安、吉田、佐々木 ボランチは遠藤と守田、2列目は右から伊東、鎌田、南野、そして1トップは大迫である。
そしてポジション別に選手を比較してみると、日本の弱点も透けて見えてくる。まず1番は「ポスト長友」だ。初招集の小川は16年リオ五輪の時にも代表キャンプに招集されるなど期待されていたが、若いためなかなかFC東京でレギュラーポジションをつかめなかった。
しかし一昨シーズンからJ1で出場機会をつかみ、昨シーズンはルヴァン杯の優勝にも貢献した。フィジカルの強さに加えて空中戦も強い。小川自身は初招集に「驚きました。うれしい気持ちもあった。ここからが勝負。もっと引き締めないといけない」と話していたが、FC東京でのパフォーマンスからいつ呼ばれてもおかしくないと思っていた。
問題は小川とポジション争いをするのが32歳の佐々木ということだ。クレバーな選手だが、ドメスティックな選手であることは、これまでの国際試合で森保監督もわかっていたのではないだろうか。それでも山中亮輔(浦和)や杉岡大暉(鹿島。移籍したものの昨シーズンは精彩を欠いた)ではなく、佐々木というところにサムライ・ブルーの人材不足を感じずにはいられない。
同じことは1トップにも当てはまる。
一時は「東京五輪のオーバーエイジ1番手」と思われた大迫が、ブレーメンでは結果を残せずに出場機会が激減。移籍の噂も出ている。にもかかわらず、招集せざるを得ないところに日本の台所事情の苦しさがうかがえる(森保監督は手元に置いて見たいと言うかもしれないが)。
そこで記者会見でも質問が出たが、いまこそリーグ戦で結果を出している大久保嘉人を呼ぶべきだと思う。
森保監督は大久保について「ベテランも不要ではない。すでにたくさんの経験を積んで計算できるので違う選択をした」と言うものの、「底上げしながらベストのチームを作る」というコンセプトの「底上げ」は、言葉を変えれば「若返り」を意味するのではないだろうか。
しかし大迫のコンディションに問題があるのであれば、サムライ・ブルーはもちろん、U-24日本代表のオーバーエイジ枠として大久保の起用が浮上してもおかしくない。
さすがに、FC東京でまだスタメンでフル出場していない永井謙佑や、川崎Fの右サイドで輝きを放っている家長昭博を呼ぶべきだとは言えない。それでも9月から始まるカタールW杯アジア最終予選が、新型コロナの影響で日程や開催方式が変更されるなどのアクシデントを予想すると、チームの強化方法もこれまで通りの常識が通用しない可能性がある。
反町技術委員長と森保監督には理想を追求しつつも、万が一に備えて懐の深い対応を期待したい。
【文・六川亨】
発表に際しては、これまで代表の常連だった堂安律を始め、久保建英や三笘薫らアンダー24の選手はA代表ではなく、U-24日本代表の活動を優先することも併せて発表された。
今回選出されたメンバーは以下の通りだ(氏名の後の数字は出場試合数/予想されるポジション)。
GK/西川周作(31)、権田修一(18)、前川黛也(初)
DF/吉田麻也(104/中央)、佐々木翔(9/左)、松原健(0/右)、山根視来(初/右)、畠中慎之輔(7/中央)、中谷進之介(初/中央)、小川諒也(初/左)、富安健洋(21/中央)
MF/江坂任(初/中央)、遠藤航(25/ボランチ)、伊東純也(20/右)、原川力(初/ボランチ)、南野拓実(26/2列目のオールマイティー)、古橋亨梧(1/左右)、守田英正(3/ボランチ)、川辺駿(初/ボランチ)、鎌田大地(8/中央)、坂元達裕(初/右)
FW/大迫勇也(45/1トップ)、浅野拓磨(22/右か1トップ)
森保監督は「集まった時の状態を見てベストのメンバーで韓国と戦う」と言っていたが、こうしてポジション別に出場回数から判断すると、ライバル韓国との試合のスタメンは次のようになると予想される(システムは4-2-3-1)。
GK権田 DFは右から松原、冨安、吉田、佐々木 ボランチは遠藤と守田、2列目は右から伊東、鎌田、南野、そして1トップは大迫である。
そしてポジション別に選手を比較してみると、日本の弱点も透けて見えてくる。まず1番は「ポスト長友」だ。初招集の小川は16年リオ五輪の時にも代表キャンプに招集されるなど期待されていたが、若いためなかなかFC東京でレギュラーポジションをつかめなかった。
しかし一昨シーズンからJ1で出場機会をつかみ、昨シーズンはルヴァン杯の優勝にも貢献した。フィジカルの強さに加えて空中戦も強い。小川自身は初招集に「驚きました。うれしい気持ちもあった。ここからが勝負。もっと引き締めないといけない」と話していたが、FC東京でのパフォーマンスからいつ呼ばれてもおかしくないと思っていた。
問題は小川とポジション争いをするのが32歳の佐々木ということだ。クレバーな選手だが、ドメスティックな選手であることは、これまでの国際試合で森保監督もわかっていたのではないだろうか。それでも山中亮輔(浦和)や杉岡大暉(鹿島。移籍したものの昨シーズンは精彩を欠いた)ではなく、佐々木というところにサムライ・ブルーの人材不足を感じずにはいられない。
同じことは1トップにも当てはまる。
一時は「東京五輪のオーバーエイジ1番手」と思われた大迫が、ブレーメンでは結果を残せずに出場機会が激減。移籍の噂も出ている。にもかかわらず、招集せざるを得ないところに日本の台所事情の苦しさがうかがえる(森保監督は手元に置いて見たいと言うかもしれないが)。
そこで記者会見でも質問が出たが、いまこそリーグ戦で結果を出している大久保嘉人を呼ぶべきだと思う。
森保監督は大久保について「ベテランも不要ではない。すでにたくさんの経験を積んで計算できるので違う選択をした」と言うものの、「底上げしながらベストのチームを作る」というコンセプトの「底上げ」は、言葉を変えれば「若返り」を意味するのではないだろうか。
しかし大迫のコンディションに問題があるのであれば、サムライ・ブルーはもちろん、U-24日本代表のオーバーエイジ枠として大久保の起用が浮上してもおかしくない。
さすがに、FC東京でまだスタメンでフル出場していない永井謙佑や、川崎Fの右サイドで輝きを放っている家長昭博を呼ぶべきだとは言えない。それでも9月から始まるカタールW杯アジア最終予選が、新型コロナの影響で日程や開催方式が変更されるなどのアクシデントを予想すると、チームの強化方法もこれまで通りの常識が通用しない可能性がある。
反町技術委員長と森保監督には理想を追求しつつも、万が一に備えて懐の深い対応を期待したい。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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