花粉症とコロナの危ない関係/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.11.17 22:05 Tue
先週水曜日はJ1リーグを取材したが、ちょっと困ったことが起きた。今後はどうしたものかと思案したが、その詳細は後述しよう。
JリーグとNPB(日本野球機構)は16日に定例となる第20回対策連絡会議を開催した。メインの議題としてはプロ野球のベイスターズとジャイアンツが実施した、観客増に伴う感染状況の確認と対策などだ。現状マックスの入場者50%をいつ80%から100%に移行できるのか。東京五輪も見据えた来シーズンの課題であり、クラブにとっては死活問題にも直結する。
結論としては、「公表前なので詳細は控えたい。いくつか分かってきたこともあり、CO₂(二酸化炭素)の濃度を測る、入退場の可視化を図るなど、少なくとも50%より少しは入れてもいいことが少しずつ見えてきた」(愛知医科大学の三鴨廣繁ドクター)ところだそうだ。
それよりも衝撃的だったのは、柏の事例報告だった。最終的に選手5名、トップチームのスタッフ11名の計16名が陽性判定となりクラスターと認定された。現在チーム活動が停止で、21日の鳥栖戦からリーグを再開する予定でいる。
衝撃的だったのは次の2点だ。まず最初に感染した選手は体調不良を訴えたものの、持病の鼻炎が発症したと思って「本人も軽いと思い見過ごした」(村井チェアマン)こと。次いで、クラスターの原因になったと思われた仙台からの帰路のバス移動だが、「仙台には行っていないため、感染経路は不明」(村井チェアマン)ということだ。
そこで冒頭の話に戻る。水曜日のナイトゲームもだいぶ冷え込んできたのでダウンなど防寒対策をしたつもりだったが、体が冷えたのと、そのスタジアムは周囲に木々が多いせいか、記者席に座った途端にクシャミと鼻水が止まらなくなった。
「あれ、もう花粉症の季節が来たのかな」と思った。
しかし、である。
体温が平熱であることは、スタジアム入場時の検温ではっきりしている。記者席も“コロナ仕様"で両隣は空席だし、前後も重ならないよう距離を取ってある。それでも周囲にいる同業者の皆さんは、きっと不快に感じているだろうと推測できた。クシャミをしつつ、マスクをずり下げて鼻をかんでいるのだから当然だ。
かといって、わざわざ「花粉症ですよ」と試合中に説明するのも気が引けた。
プロのアスリートは、我々凡人と違って薬1つとってもドーピングのことがあるので細心の注意を払っているだろう。持病があればその対策にも慣れているはずだが、柏の例ではそこに落とし穴があった。
今回はスタジアムの記者席という、ある意味特殊な空間だった。これがもし、電車内だったらどうなるのか。
過日は、マスクをしていたものの息苦しいのか鼻の下にずり下げているだけで諍いが起きたというニュースも目にした。私自身もメガネが曇るのでよくやるが、誰もが過敏になっているところに、いくらマスクをしていてもクシャミが続くようだと、電車を降りる乗客が出てきてもおかしくないだろう。
これまでも混んだ電車内では、うつやパニック障害の方々はヘルプマークを付けることもあった。しかし必ずしも浸透しているとはいえないだろう。ましてそれがこれからの季節、花粉症ともなると車内には相当な数の乗客がいるのではないだろうか。
柏の例では東邦大学医学部の舘田一博ドクターが「新しい感染(経路)なので、早い段階で囲い込むことができるかどうか。市民1人1人が、喉がいつもと違う鼻炎、花粉症に気付いて受診する必要がある」と警鐘を鳴らしていた。問題は「いつもと違う」と気付けるかどうかだ。
繰り返しになるが、柏の感染ケースはこれからの季節、声を大にして広く注意喚起する必要があると思う。そして花粉症が続けば感染を疑われるJリーグの取材はどうしたものか、まだ思案中である。
【文・六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
JリーグとNPB(日本野球機構)は16日に定例となる第20回対策連絡会議を開催した。メインの議題としてはプロ野球のベイスターズとジャイアンツが実施した、観客増に伴う感染状況の確認と対策などだ。現状マックスの入場者50%をいつ80%から100%に移行できるのか。東京五輪も見据えた来シーズンの課題であり、クラブにとっては死活問題にも直結する。
それよりも衝撃的だったのは、柏の事例報告だった。最終的に選手5名、トップチームのスタッフ11名の計16名が陽性判定となりクラスターと認定された。現在チーム活動が停止で、21日の鳥栖戦からリーグを再開する予定でいる。
衝撃的だったのは次の2点だ。まず最初に感染した選手は体調不良を訴えたものの、持病の鼻炎が発症したと思って「本人も軽いと思い見過ごした」(村井チェアマン)こと。次いで、クラスターの原因になったと思われた仙台からの帰路のバス移動だが、「仙台には行っていないため、感染経路は不明」(村井チェアマン)ということだ。
鳥栖の時も感染経路を特定できなかったが、柏のケースでも選手は発症する前にチーム移動に関わっていた可能性を疑われているものの、はっきりと特定できないのは時間が経ちすぎているからだろう。
そこで冒頭の話に戻る。水曜日のナイトゲームもだいぶ冷え込んできたのでダウンなど防寒対策をしたつもりだったが、体が冷えたのと、そのスタジアムは周囲に木々が多いせいか、記者席に座った途端にクシャミと鼻水が止まらなくなった。
「あれ、もう花粉症の季節が来たのかな」と思った。
しかし、である。
体温が平熱であることは、スタジアム入場時の検温ではっきりしている。記者席も“コロナ仕様"で両隣は空席だし、前後も重ならないよう距離を取ってある。それでも周囲にいる同業者の皆さんは、きっと不快に感じているだろうと推測できた。クシャミをしつつ、マスクをずり下げて鼻をかんでいるのだから当然だ。
かといって、わざわざ「花粉症ですよ」と試合中に説明するのも気が引けた。
プロのアスリートは、我々凡人と違って薬1つとってもドーピングのことがあるので細心の注意を払っているだろう。持病があればその対策にも慣れているはずだが、柏の例ではそこに落とし穴があった。
今回はスタジアムの記者席という、ある意味特殊な空間だった。これがもし、電車内だったらどうなるのか。
過日は、マスクをしていたものの息苦しいのか鼻の下にずり下げているだけで諍いが起きたというニュースも目にした。私自身もメガネが曇るのでよくやるが、誰もが過敏になっているところに、いくらマスクをしていてもクシャミが続くようだと、電車を降りる乗客が出てきてもおかしくないだろう。
これまでも混んだ電車内では、うつやパニック障害の方々はヘルプマークを付けることもあった。しかし必ずしも浸透しているとはいえないだろう。ましてそれがこれからの季節、花粉症ともなると車内には相当な数の乗客がいるのではないだろうか。
柏の例では東邦大学医学部の舘田一博ドクターが「新しい感染(経路)なので、早い段階で囲い込むことができるかどうか。市民1人1人が、喉がいつもと違う鼻炎、花粉症に気付いて受診する必要がある」と警鐘を鳴らしていた。問題は「いつもと違う」と気付けるかどうかだ。
繰り返しになるが、柏の感染ケースはこれからの季節、声を大にして広く注意喚起する必要があると思う。そして花粉症が続けば感染を疑われるJリーグの取材はどうしたものか、まだ思案中である。
【文・六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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