写真週刊誌と仙台HPの食い違い/六川亨の日本サッカー見聞録
2020.10.24 13:05 Sat
ネットのスポーツサイトでは、「久保建英」の名前を目にしない日はない――と言っていいくらい、19歳の若者の一挙手一投足が注目を集めている。それだけ注目されている選手であり、一日も早く新天地ビジャレアルでの活躍が期待されている証拠でもあるだろう。
ところが21日ばかりはトップニュースの座を譲った。写真週刊誌「FLASH」が仙台所属のMF道渕諒平(26歳)のDV(ドメスティックバイオレンス)疑惑を報じたからだ。
折しも20日の夕方からはJリーグの実行委員会が行われ、その後の会見ではコロナ禍におけるガイドラインの改定が報告されたものの、記者からの質問は新潟のブラジル人選手の酒気帯び運転と仙台のDVの2件に集中したため、21日は多くのメディアがこの件を報じた。
すでにご存じの読者も多いと思うので詳細は割愛させていただきたい。仙台は20日にホームページで「本日発売の週刊誌報道および選手の処分について」と題したリリースも発表している。
しかし、そのリリースとFLASHの報道を改めて読み比べると、新たな疑問が浮かんできたので、時間軸で簡単に振り返って見たい。
この経緯は仙台も認めていて、HPには「当クラブは、記事に記載されております女性とのトラブルを8月14日に認識し、同選手の事情聴取を行い、顧問弁護士に相談して対応を進めてまいりました。その際に当人同士で解決することが望ましいと助言を受けております。同選手からは、本人の代理人となる弁護士を通じて女性と話し合い、最終的に双方合意の上で解決したとの報告が9月5日にありました。同選手から二度と同様の行為をしないとの誓約書を取り、重い処分を科した上で活動を継続させておりました。本件は、両名のプライバシーに関わり、また双方の要望があるなかで、公表を控えてまいりました」と書かれている。
ところがFLASHによると、宮城県警が被害届を受理し、道渕を傷害容疑で逮捕したのは“9月7日”と報じている。
一連の経緯に関して、Jリーグは20日の会見でコンプライアンスの担当者が「仙台については8月中旬に、すぐに情報をいただき、示談になったとの報告を受けました。仙台もJリーグも落着したと判断しました。週刊誌に出て、今朝から仙台とやりとりをしているところです」と話していた。
さらに同誌によると被害女性の知人の証言として「彼女は道渕が裁判を受けることを望んでいましたが、面倒を嫌った所属事務所が、彼女の意に反して示談にしてしまったそうです。結局、9月いっぱいで事務所との契約も解除になりました」とある。
一連の報道から、8月上旬から中旬にかけてトラブルが発生したことは間違いないだろう。FLASH、仙台、Jリーグの3者が認めている。そこで問題は、1)道渕は逮捕されたか否か。2)示談は誰に指示だったのか、の2点である。
FLASHは9月7日に逮捕されたと明記してある。一方、仙台はHPの謝罪文で一言も「逮捕」に触れていない。さらに示談の報告が9月5日にあったことを受け、活動の継続を認めたとある(実際、道渕は9月20日のFC東京戦から10月18日の浦和戦まで7試合に連続して出場している(2試合はサブ、5試合がスタメン)。
9月5日に示談になり、7日に逮捕されることはありえないので、どちらかの記憶違いの可能性が高いのではないだろうか。
示談に関しても、仙台は顧問弁護士の助言により、本人の代理人となる弁護士が女性と話したとあるが、FLASHは被害女性の知人の証言として所属事務所が示談にしたと報じている。
今回の1件が被害女性のトラウマにならないことを願うばかりだが、この食い違いはどこに原因があるのか気になるのは筆者だけだろうか。そして事情聴取した仙台の担当者は、選手本人からどのような話を聞き、どんな「重い処分」を科したのか。選手の話を鵜呑みにしたのではないかと疑うのも筆者だけではないだろう。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
ところが21日ばかりはトップニュースの座を譲った。写真週刊誌「FLASH」が仙台所属のMF道渕諒平(26歳)のDV(ドメスティックバイオレンス)疑惑を報じたからだ。
すでにご存じの読者も多いと思うので詳細は割愛させていただきたい。仙台は20日にホームページで「本日発売の週刊誌報道および選手の処分について」と題したリリースも発表している。
しかし、そのリリースとFLASHの報道を改めて読み比べると、新たな疑問が浮かんできたので、時間軸で簡単に振り返って見たい。
まずDVは許されるものではなく、被害者の女性タレント(大手芸能事務所に所属。地元放送局の報道番組で活躍)は“8月9日”に宮城県警に通報した。その後、女性は被害届も出している(以上FLASHから抜粋)。
この経緯は仙台も認めていて、HPには「当クラブは、記事に記載されております女性とのトラブルを8月14日に認識し、同選手の事情聴取を行い、顧問弁護士に相談して対応を進めてまいりました。その際に当人同士で解決することが望ましいと助言を受けております。同選手からは、本人の代理人となる弁護士を通じて女性と話し合い、最終的に双方合意の上で解決したとの報告が9月5日にありました。同選手から二度と同様の行為をしないとの誓約書を取り、重い処分を科した上で活動を継続させておりました。本件は、両名のプライバシーに関わり、また双方の要望があるなかで、公表を控えてまいりました」と書かれている。
ところがFLASHによると、宮城県警が被害届を受理し、道渕を傷害容疑で逮捕したのは“9月7日”と報じている。
一連の経緯に関して、Jリーグは20日の会見でコンプライアンスの担当者が「仙台については8月中旬に、すぐに情報をいただき、示談になったとの報告を受けました。仙台もJリーグも落着したと判断しました。週刊誌に出て、今朝から仙台とやりとりをしているところです」と話していた。
さらに同誌によると被害女性の知人の証言として「彼女は道渕が裁判を受けることを望んでいましたが、面倒を嫌った所属事務所が、彼女の意に反して示談にしてしまったそうです。結局、9月いっぱいで事務所との契約も解除になりました」とある。
一連の報道から、8月上旬から中旬にかけてトラブルが発生したことは間違いないだろう。FLASH、仙台、Jリーグの3者が認めている。そこで問題は、1)道渕は逮捕されたか否か。2)示談は誰に指示だったのか、の2点である。
FLASHは9月7日に逮捕されたと明記してある。一方、仙台はHPの謝罪文で一言も「逮捕」に触れていない。さらに示談の報告が9月5日にあったことを受け、活動の継続を認めたとある(実際、道渕は9月20日のFC東京戦から10月18日の浦和戦まで7試合に連続して出場している(2試合はサブ、5試合がスタメン)。
9月5日に示談になり、7日に逮捕されることはありえないので、どちらかの記憶違いの可能性が高いのではないだろうか。
示談に関しても、仙台は顧問弁護士の助言により、本人の代理人となる弁護士が女性と話したとあるが、FLASHは被害女性の知人の証言として所属事務所が示談にしたと報じている。
今回の1件が被害女性のトラウマにならないことを願うばかりだが、この食い違いはどこに原因があるのか気になるのは筆者だけだろうか。そして事情聴取した仙台の担当者は、選手本人からどのような話を聞き、どんな「重い処分」を科したのか。選手の話を鵜呑みにしたのではないかと疑うのも筆者だけではないだろう。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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