根性があるのは確かみたい…/原ゆみこのマドリッド
2020.09.06 20:02 Sun
「残念、ニアミスだったわね」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、今季は2部で戦うことになったマドリッドの弟分、レガネスに柴崎岳選手が加入したという報を聞いた時のことでした。いやあ、水曜には半年ぶりにブタルケに赴き、ラージョとのプレシーズンマッチを見てきたばかりだったんですけどね。もうちょっと早ければ、コロナ感染防止策の一環でロッカールームが使えない折り、柴崎選手もチームメートに混じって、ピッチの隅で着替えていたかもしれないというのはともかく、まさか、昨季プレーしたデポルティーボが2部B降格となった後、その前の2年間、在籍したヘタフェから、車で10分のお隣さんにやって来るとは一体、誰が想像した?
まあ、聞くと、アギーレ監督を引き継いで今季からレガネスを率いることになったマルティ監督は2017年1月、初めて彼がスペインでプレーしたテネリフェ(2部)時代の知り合いで、実はそのシーズン、昇格プレーオフ決勝でそれこそ、当人がその夏、入団することになったヘタフェに負け、1部には上がれなかったんですけどね。11日のラス・パルマスとの2部開幕戦前、プレシーズン最後となる土曜のアルバセテ戦でもスコアレスドローとまだまだ、攻撃力が発揮できてない感のあるレガネスなだけに、柴崎選手の力を借りて、1部最短Uターンを果たすことができるといいのですが、さて。とりあえず、プレゼンの方は週明けらしいので、今は奥さん同伴でブタルケやインスタラシオン・デポルティーボ・ブタルケ(練習場)を見学する当人の姿を楽しんでもらえればいいかと思います。
え、それよりスペイン代表の試合はどうだったのかって?いやあ、このネーションズリーグの初戦、シュツットガルトでのドイツ戦はクロースとセルヒオ・ラモス、レアル・マドリーの2人がキャプテン対決となったんですが、前半に目を引いたのはGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)のparadon(パラドン/スーパーセーブ)連発。ケーレン(PSG)、ドラクスラー(PSG)、レロイ・サネ(マンチェスター・シティから今季バイエルンに移籍)らのシュートを弾いてくれたため、バケーションから直接出向した選手が7人も先発し、今イチ、攻撃に精彩を欠いていたスペインも0-0のまま、ハーフタイムを迎えることに。
後半頭からはカルバハル(マドリー)、ヘスス・ナバス(セビージャ)と、まるでヘタフェのように、右サイドをダブルSB固めしていたルイス・エンリケ監督が考えを改め、34才のナバスから、17才の新鋭、これが代表デビューとなるアンス・ファティ(バルサ)に代えたんですが、先手を取ったのはドイツでした。ええ、ギュンドアン(マンチェスター・シティ)の大きなパスをエリア内左でゴセンス(アタランタ)がベルナー(チェルシー)に送ったところ、そのシュートがDF陣の間を抜けて、ゴールになってしまうんですから、まったく。8月のCL準々決勝時に彼がすでにライプツィヒにいなかったのは本当にアトレティコにとって、恩恵のはずだったのに…というのは置いておいて。
実際、後でレーブ監督も「ネーションズリーグだけ、交代枠3人のままなのは理解できない。ウチにはまだほんの少ししか、練習していない選手もいたのに90分間、プレーしなければならなかった」と文句を言っていたんですけどね。そのせいもあってか、リードを奪ったドイツは、どこぞのお馴染みのチームのように一歩引いて、カウンターを狙うように。それでもスピードのあるベルナーやレロイ・サネのせいで、時折、ピンチを迎えていたスペインですが、そこはデ・ヘアがとことん死守。
そして46分、フェラン・トーレス(バレンシアから今季マンチェスター・シティに移籍)のクロスからヘッドでゴールが決まった時には、「またしてもnoventa y Ramos/ノベンタ・イ・ラモス(90分とラモス)弾が出たか」と思った私でしたが、それは単なる勘違い。実はアンス・ファティが決めていたんですが、その前で敵DFと戦っていたラモスがファールを取られ、スペインの得点が認められないって、あんまりじゃないですか。まあ、相手はバイエルン勢が何人も欠けているとはいえ、強豪ドイツですし、後半にはブスケツからミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、ファビアン・ルイス(ナポリ)に代わって、セビージャ入団が決まったばかりのオスカル(マドリーからのレンタルで2シーズン、レガネスでプレー)も代表デビューができましたし、来年に延期されたユーロの出場権は得ているとなれば、別に負けても構わなかったんですが…。
やはり若い新人のメンバーが増えたからでしょうか、このスペインはネーションズリーグの試合でも最後まで諦めず。ロスタイム4分を越えた後、50分にまさかの同点ゴールが生まれたんですから、私も驚いたの何のって。ええ、ミケル・メリーノが落としたボールを再び、フェラン・トーレスが右奥から上げたところ、ロドリゴ(バレンシアから今季リーズに移籍)が頭でゴール前にいたガヤ(バレンシア)送り、そこからvolea(ボレア/ボレーシュート)が炸裂。いやあ、明らかにガヤはオフサイドの位置にいましたから、ゴールが決まるやいなや、ドイツの選手たちは揃って手を挙げ、審判にアピールしたものの…いやもう、フェランを止めに行ったゴセンスがゴールラインの外で倒れているのを発見した時のクロースの表情には、私もつくづく、この世の不条理さを感じましたっけ。
おかげで1-1と引分け、ルイス・エンリケ監督の復帰初戦を黒星にしないで済んだスペインだったんですが、ラモスも「Hay cosas que seguir mejorando/アイ・コーサス・ケ・セギール・メホランドー(改善し続けないといけないことがある)。シーズンが始まったばかりで、ボクらはフィジカル的に最高の状態にはない」と言っていましたしね。ただ、私見では彼を始め、バケーション中も筋トレや坂道ダッシュなど、体を鍛えるのに熱心な選手が多いこともあり、むしろ課題はパスなどのチームプレー。ルイス・エンリケ監督も「Hoy a nivel futbolístico me habría gustado no perder tantos balones/オイ・ア・ニベル・フトボリスティコ・メ・アブリア・グスタードー・ノー・ペルデル・タントス・バロネス(今日のサッカー的なレベルとしては、あれ程のボールロストはない方が好ましかったろう)」という意見でしたし、こればっかりは集団で練習しないと上達しませんからね。
そして彼らは金曜早朝にはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に戻り、ネーションズリーグの2節、初戦でスイスに2-1と勝って現在、グループ首位に立つウクライナとの試合に備えて練習を始めたんですが、同日、2度目のPCR検査をクリアしたアダム・トラオレ(ウォルバーハンプトン)がイギリスを離れ、チームに合流するという嬉しいニュースも。ただねえ、飛行機に乗るには問題のなかったこの検査結果なんですが、UEFAに言わせると、完全に陰性という訳ではなかったようで、土曜夜になってから、当人の試合会場入りは勧められないって、まったくもって、コロナ検査は一筋縄ではいかない。
まだそれを知る前、その日午前中のセッションでは、当人は「小さい頃はよく練習したけど、最近はほとんどしない」と言っているものの、昨季もレガネスで圧巻のFKゴール4本を決めているオスカルに蹴り方の秘訣を訊いていたルイス・エンリケ監督は記者会見で、「自分は全員が満足して帰れるよう、気遣ったりしない。Veremos cuantos repiten/ベレモス・クアントス・レピテン(何人、リピートするか、見てみよう)」と、日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、今度はどの選手がエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)のピッチにスタメンとして立つのか、明言してませんけどね。
せっかく、コロナ陽性で来られなくなったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)の代わりに昨季のスペイン人選手のピチチ(得点王)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)を呼んだのですから、今度はもっとガンガン、ゴールを決める代表チームを見たいというファンの期待が叶えられるといいかと。会場が会場なだけに、懐かしい古巣でプレーできる、オスカルやレギロン(マドリーからのレンタルで昨季はセビージャでプレー)、そして今季はマドリーに戻ることが決まったウクライナのGKルニン(昨季はバジャドリー、オビエドにレンタル移籍)などは、とりわけ張り切っていると思いますよ。
そして同じバルデベバス(バラハス空港の近く)の敷地内で今週月曜から、ずっとプレシーズン練習に励んできたマドリーはというと。いやあ、金曜には立て続けにセバージョスが2年連続アーセナル、ブライムもミランへのレンタル移籍が決まり、放出要員の整理がつき始めた彼らだったんですが、一番の問題児、ベイルには相変わらず、オファーがまったく来ないという状況は変わらず。木曜にはウェールズのフィンランド戦前半だけプレーした当人は、「自分はサッカーをしたいが、マドリーが全てコントロールしている。昨年も移籍しようとしたんだけど、最後の最後までクラブが邪魔して、行かせてもらえなかった」と、1500万ユーロ(約19億円)x2年分の高給を一銭も諦めず、マドリッドでのゴルフ三昧生活を満喫しているという世間の批判をかわそうとしていましたけどね。いやだって、いくら太っ腹のマドリーとはいえ、1憶ユーロ(約126億円)の移籍金で獲った選手をタダで中国に行かす訳にはいかないのでは?
まあ、この夏の市場は10月5日まで開いているため、その辺は代表戦週間が終わってからでも何とかなるんですけどね。ちなみに金曜にはベルギー代表でのPCR検査で陽性を疑われ、結局、ロベルト・マルティネス監督は感染してないと断言したものの、試合に出ずにクルトワが帰って来るという不思議な現象も。いよいよ、来週水曜にはラージョと、15日にはヘタフェと、ディ・ステファノで親善試合をすることが決まったマドリーなので、クルトワも異常がないのであれば、その辺りで姿を見ることができるんじゃないでしょうか。
そしてこの木曜にはようやく、お隣さんのアトレティコもマハダオンダ(マドリッド近郊)でプレシーズンをスタートさせたんですが、前日の全員一斉PCR検査とは別に、バケーション先で検査をしたジエゴ・コスタとアリアスの2人が陽性となり、自宅隔離に。他は8人程の各国代表選手以外、全員揃って、お馴染みのフィジカルトレーニングを始めていますが、何よりの朗報はネーションズリーグ、土曜のクロアチア戦でジョアン・フェリックスがエリア外から弾丸シュートを決めて、ポルトガルの4-1の勝利に貢献したことでしょうか。いあや、何せ昨季のゴール不足から、FWの補強が囁かれて止まないシメオネ監督のチームですが、まだ、折しもクロアチアのベンチで、クリスチーノ・ロナウド抜きのポルトガルにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)されるのを見守っていたGKゲルビッチしか、新規加入選手いない状態ですからね。
2年目となるジョアンには大いにゴール増の期待が懸かっているだけに、幸先がいい代表戦でしたが、来週から、チームは恒例のロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)で地獄の1週間ミニキャンプに入ることに。今回はバケーションも3週間弱と例年より短いため、それ程、体調を整えるのに苦労はないんじゃないかと思いますけどね。こちらの親善試合の予定はまず、15日にカランサ杯(カディス主催の夏の親善大会)、そしてアルメリア(2部)ともプレーするようなことを聞いていますが、さすがリーガ3節目からの参戦とあって、予定がはっきりするのにもちょっと、他より時間がかかっているようです。
一方、マドリーと同じ2節からのスタートとなる弟分のヘタフェはこの木曜から土曜の3日間、カンポアモール(スペイン南西部)でキャンプをしているため、あまり様子がわからないんですが、木曜には今季、RMカスティージャにレンタル移籍することが決まったカンテラーノ(ヘタフェBの選手)、ウーゴ・ドゥーロが初招集されたスペインU21代表のユーロ予選、マケドニア戦でPKによる初ゴールを挙げ、チームを0-1の勝利に導いたなんてことも。
いやあ、昨季のヘタフェは、リーガ最終戦のレバンテ戦ではマタのPK失敗で2季連続EL出場の夢が絶たれ、EL16強対決インテル戦ではホルヘ・モリーナ(グラナダに移籍)のPK失敗で準々決勝進出の望みが絶たれるという悲劇は彼にもトラウマになったかと思うんですけどね。「Pedi al mister el penalti, me vi con confianza y nadie puso pegas/ペディ・アル・ミステル・エル・ペナルティ、メ・ビ・コン・コンフィアンサ・イ・ナディエ・プソ・ペガス(監督にPKを蹴るのを頼んだ。自信があったし、誰も文句を言わなかったから)」(ウーゴ・ドゥーロ)とはかなりの度胸。できれば、ラウール監督の下で大きく成長してヘタフェに戻って来てもらいたいものですが、あちらもカテゴリーは2部Bなんですよ。今季開幕も10月18日と遅いため、ドゥーロも今年はU21代表に再び、呼ばれる可能性があるのかどうか…正直、これは目的がよくわからないレンタル移籍だったのは否定できないですねえ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
まあ、聞くと、アギーレ監督を引き継いで今季からレガネスを率いることになったマルティ監督は2017年1月、初めて彼がスペインでプレーしたテネリフェ(2部)時代の知り合いで、実はそのシーズン、昇格プレーオフ決勝でそれこそ、当人がその夏、入団することになったヘタフェに負け、1部には上がれなかったんですけどね。11日のラス・パルマスとの2部開幕戦前、プレシーズン最後となる土曜のアルバセテ戦でもスコアレスドローとまだまだ、攻撃力が発揮できてない感のあるレガネスなだけに、柴崎選手の力を借りて、1部最短Uターンを果たすことができるといいのですが、さて。とりあえず、プレゼンの方は週明けらしいので、今は奥さん同伴でブタルケやインスタラシオン・デポルティーボ・ブタルケ(練習場)を見学する当人の姿を楽しんでもらえればいいかと思います。
後半頭からはカルバハル(マドリー)、ヘスス・ナバス(セビージャ)と、まるでヘタフェのように、右サイドをダブルSB固めしていたルイス・エンリケ監督が考えを改め、34才のナバスから、17才の新鋭、これが代表デビューとなるアンス・ファティ(バルサ)に代えたんですが、先手を取ったのはドイツでした。ええ、ギュンドアン(マンチェスター・シティ)の大きなパスをエリア内左でゴセンス(アタランタ)がベルナー(チェルシー)に送ったところ、そのシュートがDF陣の間を抜けて、ゴールになってしまうんですから、まったく。8月のCL準々決勝時に彼がすでにライプツィヒにいなかったのは本当にアトレティコにとって、恩恵のはずだったのに…というのは置いておいて。
実際、後でレーブ監督も「ネーションズリーグだけ、交代枠3人のままなのは理解できない。ウチにはまだほんの少ししか、練習していない選手もいたのに90分間、プレーしなければならなかった」と文句を言っていたんですけどね。そのせいもあってか、リードを奪ったドイツは、どこぞのお馴染みのチームのように一歩引いて、カウンターを狙うように。それでもスピードのあるベルナーやレロイ・サネのせいで、時折、ピンチを迎えていたスペインですが、そこはデ・ヘアがとことん死守。
ええ、ルイス・エンリケ監督も「あの見事な試合ぶりには、deberíamos estar diciendo vaya porterazo que temenos/デビアモス・エスタル・ディシエンドー・バジャ・ポルテラソ・ケ・テネモス(ウチには最高のGKがいると言うべきだ)」と、カシージャス(この夏、ポルトで引退)の後を継いで代表正GKになってから、ユーロやW杯での大チョンボのせいで、昨今ではスペインが試合をする度、スタメンを疑問視されている当人に自信をつけたかったんでしょうかね。大袈裟な程、褒めなくっていましたが、確かに彼らが1点差を保ったまま、後半ロスタイムに入れたのはデ・ヘアのおかげと言っていいかと。
そして46分、フェラン・トーレス(バレンシアから今季マンチェスター・シティに移籍)のクロスからヘッドでゴールが決まった時には、「またしてもnoventa y Ramos/ノベンタ・イ・ラモス(90分とラモス)弾が出たか」と思った私でしたが、それは単なる勘違い。実はアンス・ファティが決めていたんですが、その前で敵DFと戦っていたラモスがファールを取られ、スペインの得点が認められないって、あんまりじゃないですか。まあ、相手はバイエルン勢が何人も欠けているとはいえ、強豪ドイツですし、後半にはブスケツからミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、ファビアン・ルイス(ナポリ)に代わって、セビージャ入団が決まったばかりのオスカル(マドリーからのレンタルで2シーズン、レガネスでプレー)も代表デビューができましたし、来年に延期されたユーロの出場権は得ているとなれば、別に負けても構わなかったんですが…。
やはり若い新人のメンバーが増えたからでしょうか、このスペインはネーションズリーグの試合でも最後まで諦めず。ロスタイム4分を越えた後、50分にまさかの同点ゴールが生まれたんですから、私も驚いたの何のって。ええ、ミケル・メリーノが落としたボールを再び、フェラン・トーレスが右奥から上げたところ、ロドリゴ(バレンシアから今季リーズに移籍)が頭でゴール前にいたガヤ(バレンシア)送り、そこからvolea(ボレア/ボレーシュート)が炸裂。いやあ、明らかにガヤはオフサイドの位置にいましたから、ゴールが決まるやいなや、ドイツの選手たちは揃って手を挙げ、審判にアピールしたものの…いやもう、フェランを止めに行ったゴセンスがゴールラインの外で倒れているのを発見した時のクロースの表情には、私もつくづく、この世の不条理さを感じましたっけ。
おかげで1-1と引分け、ルイス・エンリケ監督の復帰初戦を黒星にしないで済んだスペインだったんですが、ラモスも「Hay cosas que seguir mejorando/アイ・コーサス・ケ・セギール・メホランドー(改善し続けないといけないことがある)。シーズンが始まったばかりで、ボクらはフィジカル的に最高の状態にはない」と言っていましたしね。ただ、私見では彼を始め、バケーション中も筋トレや坂道ダッシュなど、体を鍛えるのに熱心な選手が多いこともあり、むしろ課題はパスなどのチームプレー。ルイス・エンリケ監督も「Hoy a nivel futbolístico me habría gustado no perder tantos balones/オイ・ア・ニベル・フトボリスティコ・メ・アブリア・グスタードー・ノー・ペルデル・タントス・バロネス(今日のサッカー的なレベルとしては、あれ程のボールロストはない方が好ましかったろう)」という意見でしたし、こればっかりは集団で練習しないと上達しませんからね。
そして彼らは金曜早朝にはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に戻り、ネーションズリーグの2節、初戦でスイスに2-1と勝って現在、グループ首位に立つウクライナとの試合に備えて練習を始めたんですが、同日、2度目のPCR検査をクリアしたアダム・トラオレ(ウォルバーハンプトン)がイギリスを離れ、チームに合流するという嬉しいニュースも。ただねえ、飛行機に乗るには問題のなかったこの検査結果なんですが、UEFAに言わせると、完全に陰性という訳ではなかったようで、土曜夜になってから、当人の試合会場入りは勧められないって、まったくもって、コロナ検査は一筋縄ではいかない。
まだそれを知る前、その日午前中のセッションでは、当人は「小さい頃はよく練習したけど、最近はほとんどしない」と言っているものの、昨季もレガネスで圧巻のFKゴール4本を決めているオスカルに蹴り方の秘訣を訊いていたルイス・エンリケ監督は記者会見で、「自分は全員が満足して帰れるよう、気遣ったりしない。Veremos cuantos repiten/ベレモス・クアントス・レピテン(何人、リピートするか、見てみよう)」と、日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、今度はどの選手がエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)のピッチにスタメンとして立つのか、明言してませんけどね。
せっかく、コロナ陽性で来られなくなったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)の代わりに昨季のスペイン人選手のピチチ(得点王)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)を呼んだのですから、今度はもっとガンガン、ゴールを決める代表チームを見たいというファンの期待が叶えられるといいかと。会場が会場なだけに、懐かしい古巣でプレーできる、オスカルやレギロン(マドリーからのレンタルで昨季はセビージャでプレー)、そして今季はマドリーに戻ることが決まったウクライナのGKルニン(昨季はバジャドリー、オビエドにレンタル移籍)などは、とりわけ張り切っていると思いますよ。
そして同じバルデベバス(バラハス空港の近く)の敷地内で今週月曜から、ずっとプレシーズン練習に励んできたマドリーはというと。いやあ、金曜には立て続けにセバージョスが2年連続アーセナル、ブライムもミランへのレンタル移籍が決まり、放出要員の整理がつき始めた彼らだったんですが、一番の問題児、ベイルには相変わらず、オファーがまったく来ないという状況は変わらず。木曜にはウェールズのフィンランド戦前半だけプレーした当人は、「自分はサッカーをしたいが、マドリーが全てコントロールしている。昨年も移籍しようとしたんだけど、最後の最後までクラブが邪魔して、行かせてもらえなかった」と、1500万ユーロ(約19億円)x2年分の高給を一銭も諦めず、マドリッドでのゴルフ三昧生活を満喫しているという世間の批判をかわそうとしていましたけどね。いやだって、いくら太っ腹のマドリーとはいえ、1憶ユーロ(約126億円)の移籍金で獲った選手をタダで中国に行かす訳にはいかないのでは?
まあ、この夏の市場は10月5日まで開いているため、その辺は代表戦週間が終わってからでも何とかなるんですけどね。ちなみに金曜にはベルギー代表でのPCR検査で陽性を疑われ、結局、ロベルト・マルティネス監督は感染してないと断言したものの、試合に出ずにクルトワが帰って来るという不思議な現象も。いよいよ、来週水曜にはラージョと、15日にはヘタフェと、ディ・ステファノで親善試合をすることが決まったマドリーなので、クルトワも異常がないのであれば、その辺りで姿を見ることができるんじゃないでしょうか。
そしてこの木曜にはようやく、お隣さんのアトレティコもマハダオンダ(マドリッド近郊)でプレシーズンをスタートさせたんですが、前日の全員一斉PCR検査とは別に、バケーション先で検査をしたジエゴ・コスタとアリアスの2人が陽性となり、自宅隔離に。他は8人程の各国代表選手以外、全員揃って、お馴染みのフィジカルトレーニングを始めていますが、何よりの朗報はネーションズリーグ、土曜のクロアチア戦でジョアン・フェリックスがエリア外から弾丸シュートを決めて、ポルトガルの4-1の勝利に貢献したことでしょうか。いあや、何せ昨季のゴール不足から、FWの補強が囁かれて止まないシメオネ監督のチームですが、まだ、折しもクロアチアのベンチで、クリスチーノ・ロナウド抜きのポルトガルにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)されるのを見守っていたGKゲルビッチしか、新規加入選手いない状態ですからね。
2年目となるジョアンには大いにゴール増の期待が懸かっているだけに、幸先がいい代表戦でしたが、来週から、チームは恒例のロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)で地獄の1週間ミニキャンプに入ることに。今回はバケーションも3週間弱と例年より短いため、それ程、体調を整えるのに苦労はないんじゃないかと思いますけどね。こちらの親善試合の予定はまず、15日にカランサ杯(カディス主催の夏の親善大会)、そしてアルメリア(2部)ともプレーするようなことを聞いていますが、さすがリーガ3節目からの参戦とあって、予定がはっきりするのにもちょっと、他より時間がかかっているようです。
一方、マドリーと同じ2節からのスタートとなる弟分のヘタフェはこの木曜から土曜の3日間、カンポアモール(スペイン南西部)でキャンプをしているため、あまり様子がわからないんですが、木曜には今季、RMカスティージャにレンタル移籍することが決まったカンテラーノ(ヘタフェBの選手)、ウーゴ・ドゥーロが初招集されたスペインU21代表のユーロ予選、マケドニア戦でPKによる初ゴールを挙げ、チームを0-1の勝利に導いたなんてことも。
いやあ、昨季のヘタフェは、リーガ最終戦のレバンテ戦ではマタのPK失敗で2季連続EL出場の夢が絶たれ、EL16強対決インテル戦ではホルヘ・モリーナ(グラナダに移籍)のPK失敗で準々決勝進出の望みが絶たれるという悲劇は彼にもトラウマになったかと思うんですけどね。「Pedi al mister el penalti, me vi con confianza y nadie puso pegas/ペディ・アル・ミステル・エル・ペナルティ、メ・ビ・コン・コンフィアンサ・イ・ナディエ・プソ・ペガス(監督にPKを蹴るのを頼んだ。自信があったし、誰も文句を言わなかったから)」(ウーゴ・ドゥーロ)とはかなりの度胸。できれば、ラウール監督の下で大きく成長してヘタフェに戻って来てもらいたいものですが、あちらもカテゴリーは2部Bなんですよ。今季開幕も10月18日と遅いため、ドゥーロも今年はU21代表に再び、呼ばれる可能性があるのかどうか…正直、これは目的がよくわからないレンタル移籍だったのは否定できないですねえ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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