長友のマルセイユ移籍はビッグニュースのはず/六川亨の日本サッカーの歩み

2020.08.31 19:05 Mon
Getty Images
本来なら、もっと騒がれてもいいと思うーーのが、長友佑都のマルセイユ移籍だ。彼のプレーや入団会見の写真がないせいか、スポーツ紙の扱いも予想外に小さかった。しかしマルセイユである。

現在は酒井宏樹も所属していて、長友は左SBのバックアッパーだろうが、両SBを日本人が務めるのは快挙と言っていいだろう。
改めて紹介するまでもないが、マルセイユはリーグ・アンで優勝9回を誇る名門だ。ここ10シーズンほどは優勝から遠ざかっているものの、昨シーズンは2位となり、9シーズンぶりにCLの出場権を獲得した。

そしてマルセイユとCLと言えば、思い出すのが1993年の決勝である。それまでトーナメントによるチャンピオンズカップから、リーグ戦が導入されチャンピオンズリーグに名称が変更された初の大会で、マルセイユはバジール・ボリ(後に浦和でもプレー)の決勝点でACミランを破ってフランス勢としてCL初優勝を果たした。

1986年に会長に就任したベルナール・タピは豊富な資金力でチームを強化し、アラン・ジレス、パパン、フランチェスコリらを擁し、1989年からリーグ4連覇を達成するなど絶頂期にあった。そして1993年にパパン、デシャン、ボリ、デサイー、GKバルテズらフランス代表を軸にヨーロッパの頂点に立った。
しかしシーズン終了後、リーグでの八百長が発覚して1993年のリーグ優勝は取り消され(5連覇は幻に)、CLのタイトルも剥奪こそ免れたものの、同年12月12日のトヨタカップへの出場資格は失ったのだった。

この1993年のトヨタカップは、Jリーグが開幕したことも相まって、旧国立競技場は立錐の余地がないほど超満員だった。カード的にも、ヨーロッパは過去2度の優勝を誇るACミラン。対する南米勢は前年にクライフ率いるバルセロナを破ったブラジルの名門サンパウロ。南米は、ウルグアイ、アルゼンチン、コロンビア勢の出場も悪くはないが、やはりブラジル勢となると話は別格だ。

試合は3-2でサンパウロが競り勝ったが、ミランの黄金時代を築いたフリットはサンプドリアへ、ライカールトはアヤックスへ去り(ファン・バステンはリハビリ中)、マッサーロとパパンがゴールを決めたものの、かつての華やかさはなかった(ミランは翌94年も出場したが、アルゼンチンのベレス・サルスフィエルドに0-2の敗戦)。

一方サンパウロはというと、ベテランのトニーニョ・セレーゾがレオナルドのアシストから2点目を決めるなどMVPに輝いた。レオナルドは後に鹿島に移籍して世界トップクラスの実力を披露する。一方のセレーゾは2000年に鹿島の監督に就任し、いきなり3冠(リーグ、リーグカップ、天皇杯)を達成するなど数々のタイトルを鹿島にもたらした。

話が横道にそれてしまったのでマルセイユに戻そう。八百長の発覚に続き会長の脱税が判明するなどスキャンダルまみれのマルセイユは、主力選手が離脱しただけでなく1994年には2部降格のペナルティーも受けた。

1部に復帰後はフィリップ・トルシエの監督就任で中田浩二が移籍したこともあったが、近年は深刻な財政難からついに2016年、アメリカの実業家にクラブを売却。これも時代の流れだろうが、そのおかげで経営も安定したようだ。

新シーズンは久しぶりにCLに復帰するマルセイユ。長友のコンディション次第だろうが、CLのグループリーグで左サイドを疾走する彼の勇姿を見たいと思っているのは筆者だけではないだろう。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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大岩ジャパン国内最後のテストマッチが終了/六川亨の日本サッカーの歩み

大岩ジャパンの集大成となる国内最後のテストマッチが終わった。あとは来月カタールへ乗り込んで、まずはグループリーグを突破。そして上位3カ国に入ればパリへのキップを手にすることができる。とはいえそれが、簡単な道のりではないことを再認識させられたテストマッチ2試合だった。 U-23ウクライナ戦こそ2-0の勝利を収めた。しかし対戦相手は全員が“国内組”。ルスラン・ロタン監督自身「本来は海外組を招集したかったが、それは難しかった」と、五輪チームへの選手の招集には強制力がないことを指摘した。これは世界共通の悩みのタネだけに仕方がないだろう。ましてヨーロッパ勢は五輪にさほど価値を見いだしていない。 このため今回来日したウクライナも、スペシャルなストライカーやパサー、ドリブラーのいない平凡なチーム。国内は戦争状態に陥っているだけに、強化が思うように進まないのも仕方のないところ。それでも真面目に、フェアに闘う姿勢は清々しさすら感じた。 そんなウクライナに対し、日本は久々に代表へ復帰したFW荒木遼太郎が“違い”を見せた。前線に張るのではなく、バイタルエリアにちょっと下がってプレーを開始することでプレッシャーを避け、得意の右足シュートでウクライナ・ゴールを脅かした。もう一人の代表復帰組であるFW染野唯月は前線で張ることが多かったため、東京Vで見せているようなゴールへの嗅覚を発揮することはできなかったのは残念だった。 攻撃陣はそれなりにJリーグでポジションをつかんだ選手が増えて層の厚みが増した印象を受けた。MF小見洋太は後半33分からの出場にとどまったが、もう少し長く見たい選手。その一方で、五輪のエースストライカーと期待される細谷真大はアジアカップ以降、ちょっと精彩を欠いているというか、自信を失っているように感じられてならない。持ち味である強引な突破が陰を潜めている印象だ。 それでも充実しつつある攻撃陣に比べ、ダブル・ボランチ(藤田譲瑠チマと松木玖生)と両SBはともかく、CB陣の人材不足、というか経験不足は明らかだ。これは大岩ジャパンだけでなく森保ジャパンにも共通した悩みのタネでもある。 思い起こせば96年アトランタ五輪と2008年北京五輪はOA枠を使わなかったが、12年ロンドン五輪(吉田麻也、徳永悠平とGK林彰洋)以降、16年リオ五輪(塩谷司、藤春廣輝とFW興梠慎三)、そして21年東京五輪(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)と五輪代表はOA枠で守備的な選手をいつも起用してきた。 これも日本サッカーの新たな問題点として検証しつつ、JFAとJリーグは解決策を探す努力をすべきではないだろうか。そしてパリ五輪予選で手遅れにならないといいのだが……。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.03.26 10:00 Tue

伊東純也の代わりに呼んで欲しい選手/六川亨の日本サッカーの歩み

「ヤングなでしこ」ことU-20日本女子代表は、AFC U-20女子アジアカップ決勝でU-20北朝鮮女子に1-2で敗れて大会4連覇はならなかった。内容的にも後半は押されていて、グループステージ(ミスからの失点で0-1)に続いての完敗だった。 北朝鮮の実力は侮れない――ということで、21日から始まる北中米W杯アジア2次予選の北朝鮮戦もかなりの苦戦が予想されるのではないだろうか。というのも、日本の主力選手のほとんどが“海外組”なのに対し、北朝鮮の“海外組”はJ3の岐阜でプレーする左SB文仁柱(ムン・インジュ)ただ一人。それも日本でプレーしているのだから、時差に苦しむことはない。 過去の北朝鮮代表には2010年南アW杯に出場したFW鄭大世(チョン・テセ)、MF安英学(アン・ヨンハ)の他にもMF梁勇基(リャン・ヨンギ)、MF李漢宰(リ・ハンジェ)らがいた。「北朝鮮には3人の在日コリアン枠」があるとも噂されている由縁だ。 日本での試合には多くの在日コリアンが応援に駆けつけるが、在日の選手が試合に出れば応援にも力が入るのは間違いない。ただ、以前に比べるとJリーガーになる選手が減っていることも確か。「裕福な家庭の子供が多いから、ハングリー精神が希薄になった」と指摘するのは在日のサッカー関係者だが、日本との対戦で刺激を受けてプロを目指す選手が増えるかもしれない。 試合に話を戻すと、2試合とも時差の影響を受けない北朝鮮にはかなりのアドバンテージがあると見ていいだろう。そこで日本代表のスタメンを、時差等のコンディション面から予想してみた(システムは4-2-3-1)。GKはこれまでの実績と国内組ということで大迫敬介。CBは板倉滉と町田浩樹が有力だが、町田の帰国は19日と試合の2日前。このため1日早く帰国する谷口彰悟の方が試合にフィットするかもしれない。 SBは、右はC大阪の毎熊晟矢で決まりだろう。左は18日に帰国する伊藤洋輝か橋岡大樹か悩むところ。コンディション次第では2年ぶりに代表へ復帰した長友佑都という選択もあるかもしれない。 ボランチは“国内組”なら川村拓夢(広島)と佐野海舟(鹿島)※ということになるが、いくらなんでも経験不足の2人を同時にスタメン起用することはないだろう。これまでなら遠藤航とケガからの回復次第だが守田英正ということになるが、2人とも帰国は19日だ。そこで一人は17日に帰国している田中碧で、遠藤にはコンディション次第だが強行出場してもらうしかない。(※編集部注:佐野はケガで不参加が決定) 攻撃陣は南野拓実、相馬勇紀、小川航基、堂安律、上田綺世、中村敬斗の6人が19日に帰国と厳しいスケジュールになっている。そこでトップ下には17日に帰国した久保建英、左FWはアジアカップのイラン戦でプレスバックから久保と好連携を見せた前田大然、1トップに浅野拓磨(2人とも18日に帰国)と、スピードを武器にする2選手を前線に配置。問題となるのは右FWで、ここは堂安に無理をしてもらうしかなさそうだ。 こうしてコンディション面から人選を考えていて、是非とも今回招集して欲しかったのが浦和に移籍して好プレーを連発している前田直輝だ。スピードとキレのあるドリブル突破を武器に、カットインからの左足シュートに加え、タテにも仕掛けられるウインガーで、第4節の湘南戦では今シーズン初ゴールも決めた。 伊東純也の招集が難しい現状のなか、森保一監督には6月シリーズで前田直の招集を期待したいところである。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.03.19 13:00 Tue

VARの介入によるPKにはウンザリ/六川亨の日本サッカーの歩み

J1リーグは第3節を消化して、10日にアウェイで札幌を1-0で下した浦和が今シーズン初勝利で12位へ浮上。最下位はノーゴールで3連敗の名古屋は変わらず、ホームで初勝利を飾れなかった札幌も19位のまま。そして3試合連続してアディショナルタイムのPKでC大阪に敗れた東京Vが18位、神戸に逆転負けを喫したFC東京が17位と下位に沈んでいる。 そのFC東京だが、第3節の神戸戦では前半5分にPKを与えた。これはキッカーのFW大迫勇也が立ち足を滑らせて大きく右に外したが、PKとなったシーンはゴール前のこぼれ球をMF宮代大聖がシュートしたところ、CB森重真人の腹部あたりに当たったリバウンドが左手に当たったものだった。 その後はFC東京がクリアし、神戸の選手もハンドをアピールすることなく試合は続行された。 ところがここでVARが介入した。スタジアムのオーロラビジョンには問題のシーンが映し出され、確かに少し広げた手に当たっているものの、自分の身体に当たったリバウンドが不運にも手のある方向に飛んだというだけ。故意に手でブロックしたわけではない。 しかしOFRの結果、主審はペナルテイーマークを指さして神戸にPKを与えた。森重の手に当たったシーンは前半5分、そして大迫がPKを蹴ったのは前半9分。その間の4分間は、選手はもちろんファン・サポーターも待機するしかない。 実はFC東京は前節の広島戦でも後半19分にPKを与えて先制点を許していた。広島の右CKを中央で競って背後に流れたボールが、同時にジャンプしていたディエゴ・オリヴェイラの手に当たったのだ。これも記者席からは確認できなかったが、オーロラビジョンでは確かにディエゴ・オリヴェイラの手に当たっている。 そしてOFRの結果、主審は22分にPKと判定し、FC東京の選手の抗議も実らず24分にFW大橋祐紀がPKを確実に決めてリードした。この間に要した時間は5分で、神戸戦同様に待機するしかなかった。 VARやOFRに関しては、いまに始まったことではないが、やはり「興ざめ」である。ディエゴ・オリヴェイラのハンドも森重のハンドも、ボールがゴール方向に飛んでいるといった『得点機会阻止(DOGSO)』ではない。ディエゴ・オリヴェイラの場合は彼の背後に広島の選手が走り込んでいたわけではないので、広島にも得点チャンスはなかった。 「ルールとして手を広げてはならない」ことは理解しているものの、DFが両手を後ろに隠しながらドリブル突破を図る選手と相対する姿は不自然だし不格好でもある。せっかくの1対1の対決なのに『絵にならない』ことこの上ない。 そんなVARに2試合を一緒に取材したベテランジャーナリストの後藤健生さんは、「監督のチャレンジ制にして、失敗したら権利を失うようにした方がいい」と提案した。テニスの国際大会やMLBでは微妙な判定に対し、選手や監督が異議を申し立ててビデオ判定を要求することができる。 MLBではチャレンジといい(日本のプロ野球ではリクエスト)、ホームランやヒットかファウルかどうか、アウトかセーフか、ボールかストライクかなど微妙な判定にビデオでの確認を要求できる。1試合最大2回までで、チャレンジして判定が覆ればもう1回チャレンジできるが、判定が覆らなければチャレンジ権を失うというルールだ。 悪質な反則に対してイエローではなくレッドだといった選手生命を守るためのVARは大歓迎だ。しかしハンドかどうか『重箱の隅をつつく』ようなVARとOFRがのべつまくなし介入して試合が中断されるのは、サッカーの持つ連続性とダイナミズムを損なう気がしてならない。 といって嘆いても、競技規則はIFAB(国際サッカー評議会)が変更しない限り変わらないし、そもそもVARが導入された時点でビデオアシスタントレフェリーは職務に忠実に『鵜の目鷹の目』で試合をチェックするのは予想されたことでもあった。そしてカタールでのアジアカップでは、やたらと後半のアディショナルタイムが長くなり、ドラマチック?な展開が続いた。 オフサイドにしても、2次元から3次元に判定基準が進化した。「手首が出ていた、つま先が出ていた」からオフサイド? これも枝葉末節なことであり、サッカーの本質とはかけ離れた議論と思うが、話が長くなるのでやめておこう。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> <span class="paragraph-title">【動画】微妙な判定となったハンド…VARの介入に疑問の声も</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="2ROa037_DwU";var video_start = 75;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.03.11 18:30 Mon

東京Vは観客動員で早くも貢献?/六川亨の日本サッカーの歩み

Jリーグは3月4日、今シーズンの開幕期(J1、J2、J3の第1節:2月23日~25日、第2節:3月1日~3日)でトータル683,587人と過去最多の入場者数を更新したと発表した。とりわけJ1リーグは前年の33万2,440人から45万8,039人と前年比138パーセントを記録。国立競技場での第1節、東京ヴェルディ対横浜F・マリノス戦には53,026人もの観衆が集まったし、第2節の浦和レッズ対東京V戦にも50,863人の観衆が詰めかけた。 元々、浦和の集客力はJリーグ屈指であるが、やはり東京Vの16年ぶりのJ1復帰という“名門復活”を楽しみにスタジアムへ足を運んだファン・サポーターも多かったのではないだろうか。23年の東京Vの平均観客数は7,982人。ホームである味の素スタジアムのゴール裏には緑のユニホームを着た熱心なサポーターが声援を送っていたものの、「閑古鳥が鳴いていた」と言われても仕方ないだろう。 それが国立競技場では、ゴール裏はオーロラビジョンの下まで、さらにバックスタンドの大部分をヴェルディ・サポーターが占めていた。アジアカップは不本意な結果に終わっただけに、Jリーグにも悪影響が出ないか心配していたが、どうやら杞憂に終わったようだ。16日は味の素スタジアムで新潟戦があるが、何人のファン・サポーターが詰めかけるか楽しみでならない。 ただ、横浜FM戦に続いて浦和戦でも先制しながらJ1初勝利はお預けとなってしまった。試合終了間際、クロスボールのこぼれ球をDF山越康平が振り向きざまにクリアしようとしたところ、先にボールにコンタクトしたDF大畑歩夢を蹴り倒してしまいPKの判定。こぼれ球に反応した山越だったが、周囲の状況を確認する余裕がなかったのだろう。大畑がマイボールにしても、シュートを打てたかどうか微妙だし、カバーに入っている選手もいただけに、無理してアタックする必要はなかったのではないか。 それでも昨シーズン2位の横浜FMと4位の浦和を相手にしての善戦だけに「アウェーの勝点1だし、悲観することはない。来週につなげたい」とキャプテンの森田晃樹も前を見据えていたように、自信にしてもいい2試合と捕らえることもできるだろう。むしろ重傷なのはヘグモ新監督を迎えて新戦術や新布陣にトライしながら、決定力不足にあえぐ浦和と言える。次節は同じく1分け1敗で19位に沈む札幌が相手。かつての指揮官から今シーズン初勝利を奪うことができるのか。 名古屋や浦和が下位に沈んでいると、Jリーグ開幕当時を思い出してしまうのは私だけではないだろう。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.03.05 18:15 Tue

得点ランク歴代3位の岡崎慎司が今季限りで引退/六川亨の日本サッカーの歩み

元日本代表FWで、現在はベルギーのシント=トロイデンでプレーしている岡崎慎司が今シーズン限りで現役引退を決断したと知人からLINEがあった。(注:その後に引退が公式発表) 滝川二高から清水へ入団したのが2005年のこと。以来シュツットガルト、マインツ、レスターなどヨーロッパのクラブで活躍を続け、20年の長きに渡りストライカーとしてゴールを狙い続けた。マインツでは2シーズン連続して2ケタ得点を記録し、レスターでは主力選手としてクラブのプレミアリーグ初優勝に貢献。 174センチ、76キロと体格に恵まれていたわけでもなければ、飛び抜けて足が速いとか、華麗なテクニックの持ち主でもなかった。ひらすら泥臭くゴールに突進し、身体ごと押し込むようなワンタッチでのプレーが代名詞でもあった。日本代表の試合に出場するため帰国するたびに、身体が一回り大きくなっているのを実感したものだ。それだけ努力を重ねたのだろう。 2007年の北京五輪にU-23日本代表として国際舞台にデビューすると、翌年には日本代表にも選出され、代表初ゴールは2009年1月のアジアカップ予選イエメン戦だった。この09年は16試合出場で15ゴールを奪い、世界得点ランキング1位に輝いている。こうして2019年まで日本代表として積み重ねた得点数は歴代3位の50ゴール(119試合出場)に達した。 歴代1位は言わずと知れた釜本邦茂の75ゴールで、76試合に出場での記録だけに突出した得点率であることがわかる。2位はキング・カズの55ゴールで、4位が本田圭佑と「アジアの核弾頭」と言われた原博実の37ゴールだから、岡崎の数字がいかに凄いかを物語っている。 釜本やカズ、原らの記録は東南アジアの弱小国から固め取りをできた時代でもあった。しかしW杯に連続して出場するようになってから、日本はアジア予選でも1次ではなく2次から出場するなど対戦相手のレベルも上がっている。そうした中での岡崎や本田の記録だけに、1点の重みが違うと言えるだろう。 ちなみに森保ジャパンの得点ランキングでは、1月のアジアカップで2点を加えた南野拓実の20ゴールがトップで13位、伊東純也が13ゴールで21位、4得点だった上田綺世が11ゴールで25位タイ(原口元気や中田英寿、久保竜彦ら)、浅野拓磨が9ゴールで36位タイ(奥寺康彦、福田正博、名波浩ら)、1ゴールだった堂安律が8ゴールで43位タイ、三笘薫、鎌田大地、田中碧の3人が7ゴールで47位タイとなっている。 そして代表復帰を望む声の多い大迫勇也は25ゴールで9位、まだ現役を続けていて北京五輪のメンバーだった香川真司が31ゴールで6位にランクインしている。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.02.26 19:30 Mon
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