女子W杯辞退と主審の重要性/六川亨の日本サッカー見聞録
2020.06.26 22:00 Fri
本来なら6月25日はFIFA(国際サッカー連盟)カウンシルでリモートによる投票から2023年の女子W杯開催国が決まるはずだった。しかし日本は22日の臨時理事会で女子W杯の招致から撤退することを決めた。
その理由として、10日に公表されたFIFAの候補地評価報告書では、6項目(スタジアム、・チーム、審判の設備、・宿泊施設、・国際放送センター、・関係イベント会場、・商業面で各5点満点)の総合評価で3・9点の2位にとどまったことが前提にあった。1位は共催で立候補したオーストラリア/ニュージーランドで、総合評価は4・1点。6項目中4項目で日本を上回り(スタジアムは同点)、日本は宿泊施設だけが高く評価された(唯一満点に近い4・9点)。
こうした客観的な情勢に加え、近年のFIFA主催の国際大会は規模が拡大傾向にあり(女子W杯も23年は24チームから32チームに増加)、そのため共催が認可されやすい傾向にあること。ASEANサッカー連盟が共催の支持を表明したこと。そして新型コロナウイルスにより東京五輪が来年に延期されたことで、女子の2大国際イベントが「短期間に日本で開催されることを危ぶむ声があった」(須原清貴JFA専務理事)ことなどから日本は撤退を決めた。
W杯の予行演習として五輪を開催した(68年と70年のメキシコ、72年のミュンヘンと74年の西ドイツ)のは遙か遠い昔の出来事だ。23年の女子W杯が黒字になるかどうかはわからないが、オーストラリアとニュージーランドにとって大会を成功裏に終わらせれば、次の国際大会の招致に向けて実績となる。
田嶋幸三JFA会長も、「(男子の)W杯を1カ国で開催できる国は限られているので、FIFAは共催がトレンドになりつつあります」と漏らしていた。すでにEUROは2000年にベルギーとオランダの共催で実施した。W杯なら02年の日韓大会があり、26年はアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国による共催となっている。
撤退するかどうかを決める理事会では、「玉砕」を覚悟に投票に賭ける理事もいたという。しかし「票読みはぎりぎりにならないとわからない。負け方によっては次にマイナスになりかねない」(田嶋会長)ことと、アジア勢同士の直接対決を避けることで「アジアのソリダリティー(連帯)と、ポイントの評価は次につながる。そのインパクトは次に計り知れないのではないか」(田嶋会長)という2点から、投票3日前の撤退となった。
12年のヤングなでしこ(U-20女子代表)に続くW杯の開催断念は残念だ。とはいえ次に可能性を広げる撤退と前向きに判断したい。
翌23日にはJリーグの臨時理事会が開催され、主立った決議事項はすでに当サイトで紹介済みだ。VARシステムは3密が予想されるだけでなく、審判はリーグ戦の過密日程で例年にない厳しいシーズンとなる。このため審判への負荷を減らすためにもVARは見送ることになった。
そして試合は主審と副審2名、第4の審判員の4名で構成されるが、万が一主審が試合当日の朝に発熱したり、移動途中で発熱したりして欠場を余儀なくされた場合は試合が中止になる可能性もある(補充できれば開催される)。これまでは選手にばかり目が行きがちだったが、ホイッスルを吹く主審は1人しかいない。むしろ主審の不在により試合が中止になる可能性の方が高いのではないだろうか。
それが杞憂に終わることを祈りつつ、27日に再開・開幕するシーズン到来を待つことにする。リモートマッチを取材できるのはカメラマン15名、記者26名という狭き門で、当日はJ2の試合を申請したが、残念ながら却下されてしまった。このためDAZNで複数の試合を楽しもうと思っている。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
その理由として、10日に公表されたFIFAの候補地評価報告書では、6項目(スタジアム、・チーム、審判の設備、・宿泊施設、・国際放送センター、・関係イベント会場、・商業面で各5点満点)の総合評価で3・9点の2位にとどまったことが前提にあった。1位は共催で立候補したオーストラリア/ニュージーランドで、総合評価は4・1点。6項目中4項目で日本を上回り(スタジアムは同点)、日本は宿泊施設だけが高く評価された(唯一満点に近い4・9点)。
W杯の予行演習として五輪を開催した(68年と70年のメキシコ、72年のミュンヘンと74年の西ドイツ)のは遙か遠い昔の出来事だ。23年の女子W杯が黒字になるかどうかはわからないが、オーストラリアとニュージーランドにとって大会を成功裏に終わらせれば、次の国際大会の招致に向けて実績となる。
田嶋幸三JFA会長も、「(男子の)W杯を1カ国で開催できる国は限られているので、FIFAは共催がトレンドになりつつあります」と漏らしていた。すでにEUROは2000年にベルギーとオランダの共催で実施した。W杯なら02年の日韓大会があり、26年はアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国による共催となっている。
過去のW杯で、南半球で開催されたのは南アとブラジルの2回しかない。それも10年、14年とつい最近だ。このため、そう遠くない将来、オーストラリアとニュージーランドで男子のW杯が開催される可能性は大きいのではないだろうか。
撤退するかどうかを決める理事会では、「玉砕」を覚悟に投票に賭ける理事もいたという。しかし「票読みはぎりぎりにならないとわからない。負け方によっては次にマイナスになりかねない」(田嶋会長)ことと、アジア勢同士の直接対決を避けることで「アジアのソリダリティー(連帯)と、ポイントの評価は次につながる。そのインパクトは次に計り知れないのではないか」(田嶋会長)という2点から、投票3日前の撤退となった。
12年のヤングなでしこ(U-20女子代表)に続くW杯の開催断念は残念だ。とはいえ次に可能性を広げる撤退と前向きに判断したい。
翌23日にはJリーグの臨時理事会が開催され、主立った決議事項はすでに当サイトで紹介済みだ。VARシステムは3密が予想されるだけでなく、審判はリーグ戦の過密日程で例年にない厳しいシーズンとなる。このため審判への負荷を減らすためにもVARは見送ることになった。
そして試合は主審と副審2名、第4の審判員の4名で構成されるが、万が一主審が試合当日の朝に発熱したり、移動途中で発熱したりして欠場を余儀なくされた場合は試合が中止になる可能性もある(補充できれば開催される)。これまでは選手にばかり目が行きがちだったが、ホイッスルを吹く主審は1人しかいない。むしろ主審の不在により試合が中止になる可能性の方が高いのではないだろうか。
それが杞憂に終わることを祈りつつ、27日に再開・開幕するシーズン到来を待つことにする。リモートマッチを取材できるのはカメラマン15名、記者26名という狭き門で、当日はJ2の試合を申請したが、残念ながら却下されてしまった。このためDAZNで複数の試合を楽しもうと思っている。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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