JFAの支援事業の概要が決定、地域に差し伸べられた救いの手/六川亨の日本サッカー見聞録
2020.05.08 22:30 Fri
JFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長は5月7日、17時過ぎよりWeb会見を実施し、14時よりJFA公式サイト上に、新型コロナウイルス対策として電話での相談窓口と、資金難に陥っているクラブ・チームを対象にした財政支援のためのwebによる申請フォームを開設したと発表した。
すでに4月24日のweb会見で、田嶋会長はJFAの支援事業の概要を発表していたが、今回はより具体的な内容となっている。正式名称は「新型コロナウイルス JFAサッカーファミリー支援事業(仮称)」といい、仮称となっているのは14日の理事会で予算を承認される必要があるからだ。
14日の理事会の承認を待たずに開設した理由を田嶋会長は「各地から悲鳴が聞こえている。14日の予算が承認後はすぐに融資したい」と説明した。こちらも14日の理事会での承認待ちではあるが、選手はもちろんコーチやレフェリーらのJFAへの年間登録料の免除、そして納付金(有料試合の入場料収入の3%をJFAが徴収)の免除も発表通り実施する予定だ。
そして支援の対象は男女のサッカー、フットサル、ビーチサッカーも含み、法人格の有無や協会登録の有無を問わない。その一方でJ1~J3、JFL、なでしこリーグ、Fリーグは対象外とした。その理由は「各連盟が各チームを支援するイメージでいる。まずは小さなクラブから支援する」(田嶋会長)からだ。
そして融資の条件としては次の【1】から【4】の全てを満たすこととしている。それは【1】「2019年のチーム活動の実績があること」。【2】「クラブの規模として次のA、B、C、Dのどれかに該当すること」。
B)アルバイトコーチ5名以上いるクラブ(チーム)
C)クラブ(チーム)で自己占有しているホームグラウンドを有するクラブ(チーム)
D)毎月の固定的なキャッシュアウトが100万円を超えるクラブ(チーム)。
【3】の条件は、「4月(もしくは5月)の月次の収入が対前年度同月比で半分以上減少していること」。【4】が「クラブ(チーム)は指導者の雇用などのクラブ環境の維持に最大限務めること」となっている。
融資額は上記に応じて、例えばA)なら人数×30万円など、申請者が法人格を有する場合はクラブハウスの維持費も含め総額500万円、法人格のない任意団体は総額200万円を無利子、無担保で最長10年借りることができる(初回返済は2023年まで延長可能)。
田嶋会長は200~300件ほどの融資申請を想定し、さらに感染者の多い13都道府県など47都道府県と全国9地域からの申請も視野に入れ、「地域の特性によってサポートしなければならないだろう」とした。
今回の決定で「さすがだな」と思ったことが2点ある。Jクラブよりも街クラブの救済を優先したのは、ほとんどの選手がまず街クラブでサッカー人生をスタートさせ、その後スキルに応じてJクラブに移るから、優先的に救いの手を差し伸べるのは当然と言える。
その上で、「法人格の有無と(協会への)登録の有無は問わない」としたことと、「ホームグラウンドを有するクラブ(チーム)」も救済することだ。
前者に関して言えば、例えば東京23区のチーム(少年団から社会人まで)は、全国大会の予選に参加するためにはJFAに選手登録をしなければならない。しかし日常の活動が区リーグ止まりの場合は区に選手登録こそするものの、JFAに登録することは稀だ(昔からの懸案事項でもある)。恐らく23区ではそうしたチームの方が多いのではないだろうか。だからこそJFAも、そうしたチームを救済するために「登録の有無は問わない」としたのだろう。
そして「ホームグラウンドを有するクラブ」である。都心でホームグラウンドを持っているクラブ(チーム)はほとんどないだろう。にも関わらず救済の条件に加えたのは、「フットサルコート」を想定したのではないだろうか。
都心には区営、私営を含めて数多くのフットサルコートがある。多くは時間帯によって小学生を対象にしたスクールも併設している。当然、有給もしくはアルバイトのコーチもいる。しかし現状は休業状態だろう。彼らも「サッカーファミリー」の一員だからこそ、救いの手を差し伸べたのではないだろうか。
短期間ながら、非常によく考えられた支援事業の概要でもある。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
すでに4月24日のweb会見で、田嶋会長はJFAの支援事業の概要を発表していたが、今回はより具体的な内容となっている。正式名称は「新型コロナウイルス JFAサッカーファミリー支援事業(仮称)」といい、仮称となっているのは14日の理事会で予算を承認される必要があるからだ。
そして支援の対象は男女のサッカー、フットサル、ビーチサッカーも含み、法人格の有無や協会登録の有無を問わない。その一方でJ1~J3、JFL、なでしこリーグ、Fリーグは対象外とした。その理由は「各連盟が各チームを支援するイメージでいる。まずは小さなクラブから支援する」(田嶋会長)からだ。
そして融資の条件としては次の【1】から【4】の全てを満たすこととしている。それは【1】「2019年のチーム活動の実績があること」。【2】「クラブの規模として次のA、B、C、Dのどれかに該当すること」。
A)有給コーチ(専任)が少なくとも1名以上いるクラブ(チーム)
B)アルバイトコーチ5名以上いるクラブ(チーム)
C)クラブ(チーム)で自己占有しているホームグラウンドを有するクラブ(チーム)
D)毎月の固定的なキャッシュアウトが100万円を超えるクラブ(チーム)。
【3】の条件は、「4月(もしくは5月)の月次の収入が対前年度同月比で半分以上減少していること」。【4】が「クラブ(チーム)は指導者の雇用などのクラブ環境の維持に最大限務めること」となっている。
融資額は上記に応じて、例えばA)なら人数×30万円など、申請者が法人格を有する場合はクラブハウスの維持費も含め総額500万円、法人格のない任意団体は総額200万円を無利子、無担保で最長10年借りることができる(初回返済は2023年まで延長可能)。
田嶋会長は200~300件ほどの融資申請を想定し、さらに感染者の多い13都道府県など47都道府県と全国9地域からの申請も視野に入れ、「地域の特性によってサポートしなければならないだろう」とした。
今回の決定で「さすがだな」と思ったことが2点ある。Jクラブよりも街クラブの救済を優先したのは、ほとんどの選手がまず街クラブでサッカー人生をスタートさせ、その後スキルに応じてJクラブに移るから、優先的に救いの手を差し伸べるのは当然と言える。
その上で、「法人格の有無と(協会への)登録の有無は問わない」としたことと、「ホームグラウンドを有するクラブ(チーム)」も救済することだ。
前者に関して言えば、例えば東京23区のチーム(少年団から社会人まで)は、全国大会の予選に参加するためにはJFAに選手登録をしなければならない。しかし日常の活動が区リーグ止まりの場合は区に選手登録こそするものの、JFAに登録することは稀だ(昔からの懸案事項でもある)。恐らく23区ではそうしたチームの方が多いのではないだろうか。だからこそJFAも、そうしたチームを救済するために「登録の有無は問わない」としたのだろう。
そして「ホームグラウンドを有するクラブ」である。都心でホームグラウンドを持っているクラブ(チーム)はほとんどないだろう。にも関わらず救済の条件に加えたのは、「フットサルコート」を想定したのではないだろうか。
都心には区営、私営を含めて数多くのフットサルコートがある。多くは時間帯によって小学生を対象にしたスクールも併設している。当然、有給もしくはアルバイトのコーチもいる。しかし現状は休業状態だろう。彼らも「サッカーファミリー」の一員だからこそ、救いの手を差し伸べたのではないだろうか。
短期間ながら、非常によく考えられた支援事業の概要でもある。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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