【2022年カタールへ期待の選手㊶】コロナ感染も力にできるタフな男。最終予選を前に今こそ日本代表復帰を真剣に考えて!/酒井高徳(ヴィッセル神戸/DF)
2020.03.31 19:30 Tue
「酒井高徳が新型コロナウイルス陽性反応」30日夕方、ショッキングなニュースが日本中を駆け巡った。Jリーガー初の感染者が出たのである。それが2014年ブラジル・2018年ロシア両ワールドカップ日本代表であり、18-19シーズンまでドイツの名門・ハンブルガーSVでキャプテンを務めていた酒井高徳だからこそ、驚きが広がった。海外メディアは「アンドレス・イニエスタの同僚である元日本代表DFが感染」と報道していて、国内のみならず、世界にも衝撃が走ったのだ。
本人が「新型コロナウイルスはどこに潜んでいるか分からない」とコメントしている通り、彼のような高い規律と予防意識を持ったトップアスリートが感染してしまうのだから、目に見えないこのウイルスが驚異的な感染力を持ったものだと痛感させられる。彼にはいち早く回復してほしいし、Jリーグにこれ以上の影響が及ばないことも強く願いたいところだ。
ここで、1つ念押ししておきたいのは、酒井高徳がこんな形でクローズアップされるべき選手ではないということ。左右のサイドバックを高いレベルでこなし、時には前目のポジションで持ち前の攻撃力を発揮できる。西野朗監督がロシア大会のポーランド戦(ヴォルゴグラード)で右MFに抜擢したのも、高い攻撃能力と強靭な守備力を買ってのことだった。
加えて、人間的にも真面目でリーダーシップがあり、コミュニケーションにも優れている。我々メディアに対しても親切で、嫌な顔1つせずに対応してくれる。そんな人物でなければ、遠い日本から赴いた選手が名門・HSVでキャプテンマークを託されることなどあり得ない。ヴィッセル神戸が短期間で強固な結束力を備えた集団になることもできなかったはずだ。
「常に11人が関わっているという感覚を伝えることがキャプテンをやっていた時もすごく大事だったんで、ここに来てからも、近くのやつに『あいつにああ言え』『こう言え』と声をかけ続けたんです」
酒井高徳は神戸移籍2カ月後にこんな話をしていたが、この有能なつなぎ役がいなければ、2020年元日の天皇杯決勝の勝利も、2月8日の富士ゼロックス・スーパーカップ制覇も叶わなかったに違いない。
サイドバックとしてのパフォーマンスも、トップアスリートとしてのメンタリティも統率力も文句なしにトップクラスなのだから、彼が早々と日本代表を引退してしまった状態なのはあまりに惜しい。
「代表復帰? 答えはノーですね。有望な選手はいっぱいいるし」と昨夏の神戸移籍時に完全否定していたが、あれから日本代表が予想以上の苦境に瀕しているのはご存じの通りだ。
絶対的左サイドバック・長友佑都(ガラタサライ)がこの冬に移籍できずメンバー登録外になっているうえ、バックアップ役である安西幸輝(ポルティモネンセ)も守備面で不安を抱えている。森保一監督は佐々木翔(サンフレッチェ広島)や山中亮輔(浦和レッズ)らも起用してきたが、しっくりくるのはやはり長友だけだ。
U-23世代を見ても、期待の星だった杉岡大暉(鹿島アントラーズ)が新天地でケガを負い、ザーゴ監督からも信頼を勝ち得ていない。原輝綺(サガン鳥栖)も負傷が長引いて復帰のメドが立っていないという。相馬勇紀(名古屋グランパス)や菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)のような選手もいるが、彼らは3バックのウイングバックでプレーした時によさが出る選手。酒井高徳のように3バックでも4バックでも確実に役割をこなせる選手は見当たらないのだ。
「自分は2012年に日本代表に入ってからずっとレギュラーになれなかった。チームをサポートする役割は若い選手にやってほしい」とロシアの後、代表引退した彼だが、今なら長友や酒井宏樹(マルセイユ)と互角に勝負ができるのではないだろうか。むしろ、左サイドバックに関しては、現時点では酒井高徳の方がベターと言ってもいいかもしれない。だからこそ、彼には改めて代表復帰を考え直してほしいのだ。
「サポーターの皆さんや一般の方々、Jリーグ関係者、全ての選手、スタッフ、その家族やご友人に不安とご迷惑をおかけしてしまうことになり、本当に申し訳ございません」
コロナ感染に伴い、本人はSNSを通じてこう謝罪した。が、そんなお詫びをするよりも、公式戦で圧倒的なパフォーマンスを見せる方がいい。その舞台が神戸のゲームなのはもちろんだが、再び代表で躍動してくれたら、より多くの人々が安心し、心から声援を送るに違いない。
今回の騒動は、彼がJリーグ屈指のトップ選手であるということを広く知らしめるいい機会になったのはないか。とにかく今はまず治療に専念し、回復に努めてほしい。そしてピッチに戻ってきた時には、これまで以上に老獪なプレーを見せる酒井高徳であってほしいものである。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
ここで、1つ念押ししておきたいのは、酒井高徳がこんな形でクローズアップされるべき選手ではないということ。左右のサイドバックを高いレベルでこなし、時には前目のポジションで持ち前の攻撃力を発揮できる。西野朗監督がロシア大会のポーランド戦(ヴォルゴグラード)で右MFに抜擢したのも、高い攻撃能力と強靭な守備力を買ってのことだった。
加えて、人間的にも真面目でリーダーシップがあり、コミュニケーションにも優れている。我々メディアに対しても親切で、嫌な顔1つせずに対応してくれる。そんな人物でなければ、遠い日本から赴いた選手が名門・HSVでキャプテンマークを託されることなどあり得ない。ヴィッセル神戸が短期間で強固な結束力を備えた集団になることもできなかったはずだ。
「最初、神戸に来た時には誰も喋らないし、何となく試合をこなしていた。喋れば一言で終わるところを、ムリに10m走ったり、15m自分で何とかしたりしていた。『それって一言、口にすれば助かるのに…』と思うような雰囲気があって、『何でこんなに言葉が出ないんだろう』と僕は思っていたんです」
「常に11人が関わっているという感覚を伝えることがキャプテンをやっていた時もすごく大事だったんで、ここに来てからも、近くのやつに『あいつにああ言え』『こう言え』と声をかけ続けたんです」
酒井高徳は神戸移籍2カ月後にこんな話をしていたが、この有能なつなぎ役がいなければ、2020年元日の天皇杯決勝の勝利も、2月8日の富士ゼロックス・スーパーカップ制覇も叶わなかったに違いない。
サイドバックとしてのパフォーマンスも、トップアスリートとしてのメンタリティも統率力も文句なしにトップクラスなのだから、彼が早々と日本代表を引退してしまった状態なのはあまりに惜しい。
「代表復帰? 答えはノーですね。有望な選手はいっぱいいるし」と昨夏の神戸移籍時に完全否定していたが、あれから日本代表が予想以上の苦境に瀕しているのはご存じの通りだ。
絶対的左サイドバック・長友佑都(ガラタサライ)がこの冬に移籍できずメンバー登録外になっているうえ、バックアップ役である安西幸輝(ポルティモネンセ)も守備面で不安を抱えている。森保一監督は佐々木翔(サンフレッチェ広島)や山中亮輔(浦和レッズ)らも起用してきたが、しっくりくるのはやはり長友だけだ。
U-23世代を見ても、期待の星だった杉岡大暉(鹿島アントラーズ)が新天地でケガを負い、ザーゴ監督からも信頼を勝ち得ていない。原輝綺(サガン鳥栖)も負傷が長引いて復帰のメドが立っていないという。相馬勇紀(名古屋グランパス)や菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)のような選手もいるが、彼らは3バックのウイングバックでプレーした時によさが出る選手。酒井高徳のように3バックでも4バックでも確実に役割をこなせる選手は見当たらないのだ。
「自分は2012年に日本代表に入ってからずっとレギュラーになれなかった。チームをサポートする役割は若い選手にやってほしい」とロシアの後、代表引退した彼だが、今なら長友や酒井宏樹(マルセイユ)と互角に勝負ができるのではないだろうか。むしろ、左サイドバックに関しては、現時点では酒井高徳の方がベターと言ってもいいかもしれない。だからこそ、彼には改めて代表復帰を考え直してほしいのだ。
「サポーターの皆さんや一般の方々、Jリーグ関係者、全ての選手、スタッフ、その家族やご友人に不安とご迷惑をおかけしてしまうことになり、本当に申し訳ございません」
コロナ感染に伴い、本人はSNSを通じてこう謝罪した。が、そんなお詫びをするよりも、公式戦で圧倒的なパフォーマンスを見せる方がいい。その舞台が神戸のゲームなのはもちろんだが、再び代表で躍動してくれたら、より多くの人々が安心し、心から声援を送るに違いない。
今回の騒動は、彼がJリーグ屈指のトップ選手であるということを広く知らしめるいい機会になったのはないか。とにかく今はまず治療に専念し、回復に努めてほしい。そしてピッチに戻ってきた時には、これまで以上に老獪なプレーを見せる酒井高徳であってほしいものである。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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