Jリーグの日程でベストな解答はあるのか/六川亨の日本サッカー見聞録
2020.01.24 22:00 Fri
昨日はFC東京の新体制発表会の取材のため、渋谷のストリームホールを初めて訪れた。すっかり様変わりした渋谷の街並みを、氷雨に震えながら散策したが、渋谷ストリームのある稲荷橋広場から天現寺橋まで流れる渋谷川がきれいに整備されたのは新鮮な発見だった。
FC東京が渋谷でこうしたイベントを開催するのは初めてである。その理由を大金社長は「1つのメッセージです。23区の人々にFC東京を知ってもらうため」と前置きしつつ、「23区に拠点を作りたい。サッカー専用のスタジアムの絵を描きたいし、渋谷でもその話がある」と将来構想を明かした。
これまでは味の素スタジアムのある調布市や練習グラウンドのある小平市など6市をホームタウンにしてきたが、ようやく「東京」のチームとして、都心へのホームタウン拡大に大きく舵を切ったと言える。
FC東京がJ1リーグで優勝したら、スクランブル交差点がファン・サポーターで埋め尽くされるとはすぐには想像できないし、渋谷区だけでなく23区へのホームタウン拡大にはかなりの時間がかかるだろう。それでも「始めなければ」何も変わらない。その1歩を踏み出した2020年と言える。
チームは磐田からアダイウトン、鹿島からレアンドロ、そして神戸からオマリと即戦力の3人、大学勢は明治大からボランチの安部柊斗と右SBの中村帆高、法政大からはレフティーのドリブラー紺野和也を獲得。彼ら以外ではユースからの昇格組3人の9人が加わった。
同じことは大幅にメンバーの入れ替えが予想される鹿島や、積極的に補強している柏にも当てはまる。優勝争いは昨シーズンの覇者・横浜FMが本命視されるだろうが、対抗馬を探すのは難しいシーズンでもある。
そんな2020年で、やはりというか、東京五輪の影響がJ1リーグにも波及した。FC東京は昨シーズンに続き6月13日の第17節から8試合連続して味の素スタジアムを使えず、8月29日の第24節までアウェー8連戦となった。
長谷川監督は「しょうがないと思っている。五輪があるし、去年もジャブがあった」と半ば諦め顔。それでも昨シーズンの経験から対策は考えていることがうかがえた。
同様に浦和は埼玉スタジアムが使えず浦和駒場スタジアムで、横浜FMはニッパツ三ツ沢競技場で夏場は4試合を開催する。50年に1度とも言われる五輪のためには仕方ないと諦めるしかないだろう。
そんなところに飛び出したのが、天皇杯の開催時期の見直しだ。コトの発端は元鹿島の柴崎の発言で、元旦の天皇杯決勝から1週間足らずで新シーズンの練習がスタートしたことを疑問視した。選手には2週間のオフを獲ることが規約にあるからでもある。これはこれで、正論だ。
そのことに関して原博実Jリーグ副チェアマンは、天皇杯はあくまでJFA(日本サッカー協会)のコントロール下にあるとしながら、Jリーグの終わる12月中旬での決勝戦開催というプランを提示した。これまで12月中旬はクラブW杯のため開けていたが、来シーズンから同大会は開催時期が夏に移行する。そこで天皇杯の決勝を12月中旬に移せば、選手は2週間以上の休養が取れることになる。
天皇杯決勝は元旦の「風物詩」という側面もあるが、JFAがどんな判断をするか注目したい。そして田嶋幸三JFA会長は、21年に新設する女子プロリーグ(成功するかどうかは疑問だが)について、8月スタートの「秋春制」を導入することを明言した。
かつて16年に行われたJFA初の会長選挙では、Jリーグの秋春制導入を掲げて原氏と争い会長に就任した田嶋氏だが、秋春制はJリーグの反対により実現していない。シーズン移行の問題はこれまで何度も議題にのぼりながら、GW(ゴールデンウィーク)や夏休みの集客が大きいため見送られてきた。
田嶋会長の女子プロリーグの8月開催というプランは、Jリーグの村井満チェアマンに対する挑戦状でもあるだろう。選手にとってのベストシーズン、観戦者にとってのベストシーズンはどこにあるのか。落としどころの難しい問題でもあるし、議論は尽きないだろう。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
FC東京が渋谷でこうしたイベントを開催するのは初めてである。その理由を大金社長は「1つのメッセージです。23区の人々にFC東京を知ってもらうため」と前置きしつつ、「23区に拠点を作りたい。サッカー専用のスタジアムの絵を描きたいし、渋谷でもその話がある」と将来構想を明かした。
FC東京がJ1リーグで優勝したら、スクランブル交差点がファン・サポーターで埋め尽くされるとはすぐには想像できないし、渋谷区だけでなく23区へのホームタウン拡大にはかなりの時間がかかるだろう。それでも「始めなければ」何も変わらない。その1歩を踏み出した2020年と言える。
チームは磐田からアダイウトン、鹿島からレアンドロ、そして神戸からオマリと即戦力の3人、大学勢は明治大からボランチの安部柊斗と右SBの中村帆高、法政大からはレフティーのドリブラー紺野和也を獲得。彼ら以外ではユースからの昇格組3人の9人が加わった。
外国籍選手に関しては、今シーズンはACLのプレーオフもあり開幕が早いため「(Jリーグの)経験者を獲った」と長谷川健太監督。チームはこれまでの4-4-2だけでなく、4-2-3-1や4-3-3も採用するなど試行錯誤の最中だ。果たしてACLのプレーオフも含め、どんな陣容になるのか興味は尽きない。
同じことは大幅にメンバーの入れ替えが予想される鹿島や、積極的に補強している柏にも当てはまる。優勝争いは昨シーズンの覇者・横浜FMが本命視されるだろうが、対抗馬を探すのは難しいシーズンでもある。
そんな2020年で、やはりというか、東京五輪の影響がJ1リーグにも波及した。FC東京は昨シーズンに続き6月13日の第17節から8試合連続して味の素スタジアムを使えず、8月29日の第24節までアウェー8連戦となった。
長谷川監督は「しょうがないと思っている。五輪があるし、去年もジャブがあった」と半ば諦め顔。それでも昨シーズンの経験から対策は考えていることがうかがえた。
同様に浦和は埼玉スタジアムが使えず浦和駒場スタジアムで、横浜FMはニッパツ三ツ沢競技場で夏場は4試合を開催する。50年に1度とも言われる五輪のためには仕方ないと諦めるしかないだろう。
そんなところに飛び出したのが、天皇杯の開催時期の見直しだ。コトの発端は元鹿島の柴崎の発言で、元旦の天皇杯決勝から1週間足らずで新シーズンの練習がスタートしたことを疑問視した。選手には2週間のオフを獲ることが規約にあるからでもある。これはこれで、正論だ。
そのことに関して原博実Jリーグ副チェアマンは、天皇杯はあくまでJFA(日本サッカー協会)のコントロール下にあるとしながら、Jリーグの終わる12月中旬での決勝戦開催というプランを提示した。これまで12月中旬はクラブW杯のため開けていたが、来シーズンから同大会は開催時期が夏に移行する。そこで天皇杯の決勝を12月中旬に移せば、選手は2週間以上の休養が取れることになる。
天皇杯決勝は元旦の「風物詩」という側面もあるが、JFAがどんな判断をするか注目したい。そして田嶋幸三JFA会長は、21年に新設する女子プロリーグ(成功するかどうかは疑問だが)について、8月スタートの「秋春制」を導入することを明言した。
かつて16年に行われたJFA初の会長選挙では、Jリーグの秋春制導入を掲げて原氏と争い会長に就任した田嶋氏だが、秋春制はJリーグの反対により実現していない。シーズン移行の問題はこれまで何度も議題にのぼりながら、GW(ゴールデンウィーク)や夏休みの集客が大きいため見送られてきた。
田嶋会長の女子プロリーグの8月開催というプランは、Jリーグの村井満チェアマンに対する挑戦状でもあるだろう。選手にとってのベストシーズン、観戦者にとってのベストシーズンはどこにあるのか。落としどころの難しい問題でもあるし、議論は尽きないだろう。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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