【2022年カタールへ期待の選手㉘】直近J1・3戦4発で代表候補に急浮上。神戸移籍1年で大化けしたスピードスター/古橋亨梧(ヴィッセル神戸/FW)
2019.08.30 13:15 Fri
フェルナンド・トーレスの現役ラストマッチとなった23日のサガン鳥栖vsヴィッセル神戸戦。主役のお株を奪ったのは、神戸の小柄なスピードスター・古橋亨梧だった。
アンドレス・イニエスタのロングパスに反応して前線に抜け出した前半8分のチャンスが惜しくもオフサイドと判定されたのを皮切りに、鋭い動き出しと爆発的スピードで次々と相手ゴールに迫る。3分後に山口蛍が先制点を奪い、前半19分には自らの突破からPKをゲット。イニエスタの2点目をお膳立てする。さらにこの2分後には田中順也の3点目をアシスト。前半だけで2つのゴールに絡む働きを見せる。
迎えた後半9分。一段と輝きを増した古橋は酒井高徳の突破からのクロスにピンポイントで合わせて4点目を叩き出し、28分には山口蛍のマイナスクロスに飛び込んで左足で5点目も挙げることにも成功する。自身の2得点を含めて5ゴールを絡む華々しい活躍を見せた24歳のアタッカーは異次元の存在感を示したと言っていいだろう。
「(トルステン・)フィンク監督からは持ち味のスピードをどんどん生かして攻撃で違いを作ってほしいと言われています。自分が1つのアクセントになってチームに何かをもたらせばいい」と古橋は謙虚にコメントしていたが、その口ぶりとはかけ離れたほどの絶大なインパクトを残している。J2の・FC岐阜から神戸に完全移籍して1年。彼の成長スピードの凄まじさには周囲のビッグネームも驚きを覚えていることだろう。
地元・奈良県生駒市の桜ケ丘FCからアスペガス生駒FC、興国高校を経て中央大学に進んだ頃はそこまで知名度のある選手ではなかった。大学1年で全日本学生選抜入りして多少なりとも注目度は上がったが、大学卒業後に進んだのはJ2のFC岐阜。2部リーグからのプロ挑戦を余儀なくされた。それでも大木武監督に高く評価され、2017年J2開幕・レノファ山口FC戦からコンスタントに出場を果たす。プロ2年目となった2018年は前半戦26試合で11ゴールという目覚ましいパフォーマンスを披露。その活躍ぶりが神戸のスカウトの目に留まり、イニエスタ加入とほぼ同時期に新天地へ赴くことになった。
「シーズン中に監督が変わることは今まであんまり経験してこなかったですけど、プロの世界では当たり前のこと。監督交代があったからってつまづいているようじゃ生きていけない。どんな状況でも自分の持ち味をしっかり出して、言われていることを理解しながらやることが大事だと思ってます。自分は献身的に走らないと、今後使ってもらえないと思うし、FWなんで結果をもっともっと意識していかないといけない。今季もシュートを外してる数の方が多いと思うんで、それを確実に決めていたらもっともっとゴールを取れている。自分が点を取れればチームを助けられるんで、そういう存在になりたいですね」
コツコツと努力を重ね、下のカテゴリーから這い上がってきた男は決して満足しない。そういう雑草魂があるから、今季通算ゴール数を8まで伸ばすことができたのだろう。「とりあえず2ケタが目標」と言う彼がそのラインに到達するのはほぼ確実。この調子なら、目下12点でJ1得点ランキングトップに立つディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)やマルコス・ジュニオール(横浜F・マリノス)らとタイトル争いを繰り広げるところまで行けるかもしれない。そのくらいの潜在能力が古橋にはあるのだ。
ブレイク中の男には欧州クラブも熱視線を送っている。今夏にはオランダ・フローニンヘンからのオファーも届いた。本人も「いつかは海外に行きたい」と考えているため、去就についてずいぶん悩んだようだが、「今は神戸のために全力を注ぎたい」と移籍話を封印して今季に賭けている。今季終盤戦でよりゴールを重ねていけば、近い将来の欧州挑戦は現実になるはずだ。
絶好調男の一挙手一投足を目の当たりにしている森保一監督も黙ってはいられないだろう。日本代表アタッカー陣は欧州組を含めて大激戦になっているが、古橋のスピードと決定力は堂安律(フローニンヘン)や伊東純也(ヘンク)にも引けと取らないレベルにある。むしろ欧州シーズン開幕直後の彼らよりJで試合を重ねている古橋の方がいい仕事をするかもしれない。という意味では、2022年カタール・ワールドカップアジア2次予選初戦となる9月10日のミャンマー戦(ヤンゴン)は彼を抜擢するのもありだ。そういう国内組のサプライズ選出があれば、Jでプレーする選手たちの刺激にもなる。今はぜひとも166㎝の小柄な点取屋を候補に挙げてほしいものである。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
アンドレス・イニエスタのロングパスに反応して前線に抜け出した前半8分のチャンスが惜しくもオフサイドと判定されたのを皮切りに、鋭い動き出しと爆発的スピードで次々と相手ゴールに迫る。3分後に山口蛍が先制点を奪い、前半19分には自らの突破からPKをゲット。イニエスタの2点目をお膳立てする。さらにこの2分後には田中順也の3点目をアシスト。前半だけで2つのゴールに絡む働きを見せる。
「(トルステン・)フィンク監督からは持ち味のスピードをどんどん生かして攻撃で違いを作ってほしいと言われています。自分が1つのアクセントになってチームに何かをもたらせばいい」と古橋は謙虚にコメントしていたが、その口ぶりとはかけ離れたほどの絶大なインパクトを残している。J2の・FC岐阜から神戸に完全移籍して1年。彼の成長スピードの凄まじさには周囲のビッグネームも驚きを覚えていることだろう。
地元・奈良県生駒市の桜ケ丘FCからアスペガス生駒FC、興国高校を経て中央大学に進んだ頃はそこまで知名度のある選手ではなかった。大学1年で全日本学生選抜入りして多少なりとも注目度は上がったが、大学卒業後に進んだのはJ2のFC岐阜。2部リーグからのプロ挑戦を余儀なくされた。それでも大木武監督に高く評価され、2017年J2開幕・レノファ山口FC戦からコンスタントに出場を果たす。プロ2年目となった2018年は前半戦26試合で11ゴールという目覚ましいパフォーマンスを披露。その活躍ぶりが神戸のスカウトの目に留まり、イニエスタ加入とほぼ同時期に新天地へ赴くことになった。
ルーカス・ポドルスキやウェリントンら外国人助っ人や田中順也、渡邉千真(現ガンバ大阪)といった日本代表経験者がひしめく神戸アタッカー陣で生き抜くのは難しいと思われた。が、移籍間もない8月11日のジュビロ磐田戦でいきなりJ1初ゴールを挙げるとレギュラーに定着。昨季後半は13試合出場5ゴールとまずまずの数字を残す。そして今季もダビド・ビジャの加入や小川慶治朗の復帰、藤本憲明らの移籍がある中でポジションをガッチリキープ。ファン・マヌエル・リージョ、吉田孝行、フィンクと指揮官が入れ替わる中でも絶対的な信頼を寄せられている。それだけ攻守両面で貢献度の高い選手だと認められているのだ。
「シーズン中に監督が変わることは今まであんまり経験してこなかったですけど、プロの世界では当たり前のこと。監督交代があったからってつまづいているようじゃ生きていけない。どんな状況でも自分の持ち味をしっかり出して、言われていることを理解しながらやることが大事だと思ってます。自分は献身的に走らないと、今後使ってもらえないと思うし、FWなんで結果をもっともっと意識していかないといけない。今季もシュートを外してる数の方が多いと思うんで、それを確実に決めていたらもっともっとゴールを取れている。自分が点を取れればチームを助けられるんで、そういう存在になりたいですね」
コツコツと努力を重ね、下のカテゴリーから這い上がってきた男は決して満足しない。そういう雑草魂があるから、今季通算ゴール数を8まで伸ばすことができたのだろう。「とりあえず2ケタが目標」と言う彼がそのラインに到達するのはほぼ確実。この調子なら、目下12点でJ1得点ランキングトップに立つディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)やマルコス・ジュニオール(横浜F・マリノス)らとタイトル争いを繰り広げるところまで行けるかもしれない。そのくらいの潜在能力が古橋にはあるのだ。
ブレイク中の男には欧州クラブも熱視線を送っている。今夏にはオランダ・フローニンヘンからのオファーも届いた。本人も「いつかは海外に行きたい」と考えているため、去就についてずいぶん悩んだようだが、「今は神戸のために全力を注ぎたい」と移籍話を封印して今季に賭けている。今季終盤戦でよりゴールを重ねていけば、近い将来の欧州挑戦は現実になるはずだ。
絶好調男の一挙手一投足を目の当たりにしている森保一監督も黙ってはいられないだろう。日本代表アタッカー陣は欧州組を含めて大激戦になっているが、古橋のスピードと決定力は堂安律(フローニンヘン)や伊東純也(ヘンク)にも引けと取らないレベルにある。むしろ欧州シーズン開幕直後の彼らよりJで試合を重ねている古橋の方がいい仕事をするかもしれない。という意味では、2022年カタール・ワールドカップアジア2次予選初戦となる9月10日のミャンマー戦(ヤンゴン)は彼を抜擢するのもありだ。そういう国内組のサプライズ選出があれば、Jでプレーする選手たちの刺激にもなる。今はぜひとも166㎝の小柄な点取屋を候補に挙げてほしいものである。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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