森保監督のエピソードとE-1選手権/六川亨の日本サッカー見聞録
2019.08.08 16:00 Thu
昨日発表された、自民党の小泉進次郎・衆議院議員とフリーアナウンサーの滝川クリステルさんの、首相官邸からの婚約会見には多くの日本人が驚いたことだろう。小泉議員は7日の婚約発表について、6日の広島、9日の長崎での原爆記念日を避けるため7日になったと話していた。
広島と長崎と言えば、思い出すのが2年前の10月30日、東京五輪の日本代表監督に就任した森保一氏の就任会見だ。
「私は長崎出身で、広島で人生を一番長く過ごしてきました。2つの都市は世界で2カ所しかない被爆地です。平和都市で過ごしてきた部分を発信できれば幸いです」と語った。11月17日は広島で、12月28日は長崎でU-22日本代表のテストマッチが組まれている。これも平和への祈りを込めたマッチメイクに違いない。
折しも今日8月8日は、来夏の東京五輪サッカーで決勝戦に当たる。そして9日が閉会式。これも何かの縁と言えないだろうか。
ただ、当時の取材ノートを見返すと、森保監督就任についての報道は少ない。というのも、日本代表はアジア最終予選のホームゲームでオーストラリアから初勝利を奪ってロシアW杯出場を決めたものの、監督批判に対して試合後のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は会見を拒否するなどJFA(日本サッカー協会)との関係にヒビが入り始めていたからだ。
話を森保監督に戻すと、9月からはカタールW杯のアジア2次予選がスタートし、キリンチャレンジ杯などをはさみながら12月には韓国・釜山でのE-1アジア選手権が年内最後の試合となる。
今夏は久保建英をはじめ多くの若手選手が海外移籍を果たしたが、コパ・アメリカで招集した若手選手とロシアW杯組をどう融合させていくのかが注目される。対戦相手はミャンマー、モンゴル、タジキスタン、キルギスと最も組み合わせに恵まれただけに、森保監督もさまざまな試行錯誤ができるだろう。
そこでの課題と言えば、やはり大迫勇也のバックアッパーということになる。6月のキリンチャレンジ杯では久々に代表へ招集された永井謙佑がエルサルバドル戦で2ゴールを決めたが、期待の上田綺世や前田大然の再招集はあるのかどうか。
そして12月のE-1選手権は当然国内組での参加となるが、来年1月にタイで開催される東京五輪最終予選に向けて、フル代表ではなくU-22日本代表で臨むのかどうか。先週、味の素スタジアムのFC東京対C大阪戦を視察に訪れた関塚隆技術委員長に聞いたところ、「どうするのか、まだ話し合っていない」段階だという。
逆に関塚技術委員長は、悪化の一途をたどる日韓関係から大会を開催できるか危ぶんでいた。実際、今夏は川崎市のサッカーを通じた青少年交流事業について、韓国・富川(プチョン)市から実施延期の申し出を受けただけでなく、文化的な交流会も中止が相次いでいる。それだけ今回の対立は深刻だ。
「スポーツと政治は関係ない」とよく言われるが、ことサッカーにおいて、それは当てはまらない。前回韓国で開催された2013年のE-1選手権でアルベルト・ザッケローニ監督率いる日本は初優勝を飾ったが、7月28日の日本対韓国戦(2-1で日本の勝利)では韓国側の応援団が政治的なメッセージを掲げたことで日韓の政府間で問題になったことがある。
試合前、韓国側応援団は「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングルで大書された横断幕を掲げた。そして試合開始直前には1909年に初代韓国統監であった伊藤博文元首相を暗殺した安重根と、文禄・慶長の役で豊臣秀吉軍を破った海軍の李舜臣将軍の巨大な肖像画を描いた幕を観客席に広げた。2人とも韓国では、日本に反逆した数少ないヒーローとされている。
いずれも前半終了後に強制撤去されたが、サッカーに限らず日韓の間には難しい問題が山積しているのは事実だろう。森保監督にすれば、できるだけ多く試合を重ねたいところだろうが、果たしてE-1選手権は無事に開催されるのか。こちらも気になるところである。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
広島と長崎と言えば、思い出すのが2年前の10月30日、東京五輪の日本代表監督に就任した森保一氏の就任会見だ。
折しも今日8月8日は、来夏の東京五輪サッカーで決勝戦に当たる。そして9日が閉会式。これも何かの縁と言えないだろうか。
ただ、当時の取材ノートを見返すと、森保監督就任についての報道は少ない。というのも、日本代表はアジア最終予選のホームゲームでオーストラリアから初勝利を奪ってロシアW杯出場を決めたものの、監督批判に対して試合後のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は会見を拒否するなどJFA(日本サッカー協会)との関係にヒビが入り始めていたからだ。
10月31日にはフランス・リールでブラジルと、ベルギー・ブルージュでベルギー代表と対戦する代表選手23名が発表されたため、ファンの感心はフル代表に集まっていた。試合は1-3、0-1と連敗し、その後は国内で開催されたE-1選手権でも韓国に1-4と完敗するなどハリルホジッチ監督に対して逆風が強まることになる。
話を森保監督に戻すと、9月からはカタールW杯のアジア2次予選がスタートし、キリンチャレンジ杯などをはさみながら12月には韓国・釜山でのE-1アジア選手権が年内最後の試合となる。
今夏は久保建英をはじめ多くの若手選手が海外移籍を果たしたが、コパ・アメリカで招集した若手選手とロシアW杯組をどう融合させていくのかが注目される。対戦相手はミャンマー、モンゴル、タジキスタン、キルギスと最も組み合わせに恵まれただけに、森保監督もさまざまな試行錯誤ができるだろう。
そこでの課題と言えば、やはり大迫勇也のバックアッパーということになる。6月のキリンチャレンジ杯では久々に代表へ招集された永井謙佑がエルサルバドル戦で2ゴールを決めたが、期待の上田綺世や前田大然の再招集はあるのかどうか。
そして12月のE-1選手権は当然国内組での参加となるが、来年1月にタイで開催される東京五輪最終予選に向けて、フル代表ではなくU-22日本代表で臨むのかどうか。先週、味の素スタジアムのFC東京対C大阪戦を視察に訪れた関塚隆技術委員長に聞いたところ、「どうするのか、まだ話し合っていない」段階だという。
逆に関塚技術委員長は、悪化の一途をたどる日韓関係から大会を開催できるか危ぶんでいた。実際、今夏は川崎市のサッカーを通じた青少年交流事業について、韓国・富川(プチョン)市から実施延期の申し出を受けただけでなく、文化的な交流会も中止が相次いでいる。それだけ今回の対立は深刻だ。
「スポーツと政治は関係ない」とよく言われるが、ことサッカーにおいて、それは当てはまらない。前回韓国で開催された2013年のE-1選手権でアルベルト・ザッケローニ監督率いる日本は初優勝を飾ったが、7月28日の日本対韓国戦(2-1で日本の勝利)では韓国側の応援団が政治的なメッセージを掲げたことで日韓の政府間で問題になったことがある。
試合前、韓国側応援団は「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングルで大書された横断幕を掲げた。そして試合開始直前には1909年に初代韓国統監であった伊藤博文元首相を暗殺した安重根と、文禄・慶長の役で豊臣秀吉軍を破った海軍の李舜臣将軍の巨大な肖像画を描いた幕を観客席に広げた。2人とも韓国では、日本に反逆した数少ないヒーローとされている。
いずれも前半終了後に強制撤去されたが、サッカーに限らず日韓の間には難しい問題が山積しているのは事実だろう。森保監督にすれば、できるだけ多く試合を重ねたいところだろうが、果たしてE-1選手権は無事に開催されるのか。こちらも気になるところである。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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