【2022年カタールへ期待の選手㉕】海外移籍の噂もある中、得点の取れるアタッカーへ進化を目指す!/中村敬斗(ガンバ大阪/FW)
2019.07.09 12:15 Tue
永遠のライバル・韓国にまさかの苦杯を喫し、8強入りの夢が絶たれた2019年U-20ワールドカップ(ポーランド)から1カ月。世界の厳しさを体感した18歳のアタッカー・中村敬斗(ガンバ大阪)が7月7日、J1首位を走るFC東京戦のピッチに立っていた。今季のガンバは4バックと3バックを併用しているが、この日の中村は左ウイングバックで先発出場。開始早々の5分には、自らのパスを矢島慎也が展開し、ゴール前に飛び込んだ小野瀬康介が決めて先制。最初のゴールの起点を作った。
しかし、前半38分と40分に連続失点し、瞬く間に試合をひっくり返されると、中村らしい突破力とフィニッシュの迫力が影をひそめるようになる。
「崩し切れない場面が多かったですね。いい形で何回か仕掛けられたし、クロスも上げれたし、ボールに関与する回数も多かったけど、どうしてもフィニッシュまで持ち込めない。室屋(成)選手プラス、東(慶悟)選手のカバーリングがあって1対2になる場面が多かったので、僕としては中に下げざるを得なくなってしまった。相手のスキがなかったっていうのが正直なところです」と本人も悔しさをにじませる。結局、ガンバは後半も攻めあぐね、今季J1得点ランキングトップを走るディエゴ・オリヴェイラにダメ押しとなる3点目を食らって敗戦。中村も1つの壁にぶつかったという。
「今回みたいに観客の多い中、最高のピッチでそんなにミスなくできたのは収穫だけど、やっぱり1対2でも抜けるようになりたいですね。僕自身、(2017年U-17ワールドカップに続く)2度目の世界大会を経験して、自信を持ってやることが大事だとすごく感じた。J1で戦い抜くにはそれが一番。U-20の後、ルヴァンも天皇杯もJ1も全部ベンチに入ってますけど、とにかく試合に出続けること、活躍することを大切にしたいです」と彼は改めて語気を強めた。
ガンバで存在価値を高めつつある彼には目下、欧州移籍の噂も出ている。堂安律と板倉滉が所属するフローニンヘンを筆頭に、いくつかのクラブが興味を抱いているとされ、今夏にも移籍に踏み切る可能性が高まっている。実際、この1か月間には久保建英がレアル・マドリー、菅原由勢がAZに赴いていて、安部裕葵(鹿島アントラーズ)のバルセロナ移籍も秒読み段階に入るなど、同世代の欧州挑戦が続いている。こうした動向に、中村も少なからず刺激を受けていると話す。
「Jリーグのレベルが上がっているからこそ、そういう目で見られると思うし、チャンスが沢山あるとも思います。外に出た建英や由勢もJリーグで実績のある選手。この舞台で活躍すれば自ずと自分にも声がかかると思います。それに応えるかどうかも自分次第。今は自分の立ち位置を大事にしたいです」と彼は慎重なスタンスを取っている。
確かに18歳で海外に行ったとしても、必ずしも出番がコンスタントに得られる保証はない。そこは17歳だった昨年、ガンバ大阪入りし、レヴィー・クルピ監督体制でいきなり出場チャンスを与えられながら、指揮官交代によって構想外に近い状態に陥ったことのある中村にはよく分かっているはずだ。
「レヴィー監督には得点感覚が優れていた部分を買われたと思いますけど、それ以外のところを見たら、おそらくプロの平均以下。通用するレベルになかった。『走れないし、戦えないし、球際行かないし、オフの動きも足りない』と宮本(恒靖)監督に指摘された。昨年の7〜11月くらいまでJ1からほぼ姿を消してて、11月後半に倉田(秋)選手が出場停止になったタイミングでスタメンに抜擢され、変わった姿を見せられたかなと思ったけど、まだまだ足りないっていう現実を突きつけられました。結局、今季も頭からはJ1には出られなくて、U-23からのスタート。そこで森下(仁志)監督に鍛えてもらいました。守備とか球際とかサッカーに向き合う姿勢とかに取り組むようになって、少しずつ変わって今があると思います」
彼がしみじみとこう語ったように、この1年間は紆余曲折の連続だった。だからこそ今、手にしている試合出場機会を大事にしたいという気持ちが強いはず。それを手放してリスクを冒して海外に行くか、もう少しJで実績を残すのかは本当に判断が分かれるところだろう。
どういう選択になったとしても、目指すべきなのは「どんな状況でもゴールを奪える怖いアタッカーになること」だ。そこだけは、本人も強く意識している。
「自分の武器はドリブルで仕掛けて、ゴール前まで持ち込んでシュートを決められること。守備とかいろんなことをやってるとそれを忘れそうになりますけど、森下監督から『武器を発揮しなきゃいけない』と言われたのが大きかった」と中村自身も述懐するが、自分の幅を広げながら強みを研ぎ澄ませていくことは難しい。そこにトライし続けることで、より高い領域に辿り着けるに違いない。間もなく19歳になるが、まだまだ彼は若いし、いくらでもトライ&エラーを繰り返していい時期。この貴重なタイミングを最大限生かしつつ、さまざまなアクションを起こして、近い将来、日本サッカー界を背負って立つ大物になってほしい。中村敬斗にはそれだけのポテンシャルがあるはずだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
しかし、前半38分と40分に連続失点し、瞬く間に試合をひっくり返されると、中村らしい突破力とフィニッシュの迫力が影をひそめるようになる。
「崩し切れない場面が多かったですね。いい形で何回か仕掛けられたし、クロスも上げれたし、ボールに関与する回数も多かったけど、どうしてもフィニッシュまで持ち込めない。室屋(成)選手プラス、東(慶悟)選手のカバーリングがあって1対2になる場面が多かったので、僕としては中に下げざるを得なくなってしまった。相手のスキがなかったっていうのが正直なところです」と本人も悔しさをにじませる。結局、ガンバは後半も攻めあぐね、今季J1得点ランキングトップを走るディエゴ・オリヴェイラにダメ押しとなる3点目を食らって敗戦。中村も1つの壁にぶつかったという。
「今回みたいに観客の多い中、最高のピッチでそんなにミスなくできたのは収穫だけど、やっぱり1対2でも抜けるようになりたいですね。僕自身、(2017年U-17ワールドカップに続く)2度目の世界大会を経験して、自信を持ってやることが大事だとすごく感じた。J1で戦い抜くにはそれが一番。U-20の後、ルヴァンも天皇杯もJ1も全部ベンチに入ってますけど、とにかく試合に出続けること、活躍することを大切にしたいです」と彼は改めて語気を強めた。
ガンバで存在価値を高めつつある彼には目下、欧州移籍の噂も出ている。堂安律と板倉滉が所属するフローニンヘンを筆頭に、いくつかのクラブが興味を抱いているとされ、今夏にも移籍に踏み切る可能性が高まっている。実際、この1か月間には久保建英がレアル・マドリー、菅原由勢がAZに赴いていて、安部裕葵(鹿島アントラーズ)のバルセロナ移籍も秒読み段階に入るなど、同世代の欧州挑戦が続いている。こうした動向に、中村も少なからず刺激を受けていると話す。
「Jリーグのレベルが上がっているからこそ、そういう目で見られると思うし、チャンスが沢山あるとも思います。外に出た建英や由勢もJリーグで実績のある選手。この舞台で活躍すれば自ずと自分にも声がかかると思います。それに応えるかどうかも自分次第。今は自分の立ち位置を大事にしたいです」と彼は慎重なスタンスを取っている。
確かに18歳で海外に行ったとしても、必ずしも出番がコンスタントに得られる保証はない。そこは17歳だった昨年、ガンバ大阪入りし、レヴィー・クルピ監督体制でいきなり出場チャンスを与えられながら、指揮官交代によって構想外に近い状態に陥ったことのある中村にはよく分かっているはずだ。
「レヴィー監督には得点感覚が優れていた部分を買われたと思いますけど、それ以外のところを見たら、おそらくプロの平均以下。通用するレベルになかった。『走れないし、戦えないし、球際行かないし、オフの動きも足りない』と宮本(恒靖)監督に指摘された。昨年の7〜11月くらいまでJ1からほぼ姿を消してて、11月後半に倉田(秋)選手が出場停止になったタイミングでスタメンに抜擢され、変わった姿を見せられたかなと思ったけど、まだまだ足りないっていう現実を突きつけられました。結局、今季も頭からはJ1には出られなくて、U-23からのスタート。そこで森下(仁志)監督に鍛えてもらいました。守備とか球際とかサッカーに向き合う姿勢とかに取り組むようになって、少しずつ変わって今があると思います」
彼がしみじみとこう語ったように、この1年間は紆余曲折の連続だった。だからこそ今、手にしている試合出場機会を大事にしたいという気持ちが強いはず。それを手放してリスクを冒して海外に行くか、もう少しJで実績を残すのかは本当に判断が分かれるところだろう。
どういう選択になったとしても、目指すべきなのは「どんな状況でもゴールを奪える怖いアタッカーになること」だ。そこだけは、本人も強く意識している。
「自分の武器はドリブルで仕掛けて、ゴール前まで持ち込んでシュートを決められること。守備とかいろんなことをやってるとそれを忘れそうになりますけど、森下監督から『武器を発揮しなきゃいけない』と言われたのが大きかった」と中村自身も述懐するが、自分の幅を広げながら強みを研ぎ澄ませていくことは難しい。そこにトライし続けることで、より高い領域に辿り着けるに違いない。間もなく19歳になるが、まだまだ彼は若いし、いくらでもトライ&エラーを繰り返していい時期。この貴重なタイミングを最大限生かしつつ、さまざまなアクションを起こして、近い将来、日本サッカー界を背負って立つ大物になってほしい。中村敬斗にはそれだけのポテンシャルがあるはずだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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