【CL決勝特集③・戦術分析】世界最高峰のプレッシングゲームに!
2019.06.01 22:01 Sat
2018-19シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝、トッテナムvsリバプールが日本時間6月1日28時からスペイン・マドリードのエスタディオ・メトロポリターノで開催される。2007-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッドvsチェルシー以来、11年ぶりのイングランド勢対決となったこの大一番を前に、注目の一戦のタクティカルプレビューを紹介する。
昨夏の積極補強、国内カップ戦の早期敗退による日程面のアドバンテージを生かしたリバプールは、シーズンを通して安定したフィジカルコンディションを保って、クロップ監督が求める攻守両面でアグレッシブに戦い、相手を圧倒するハイインテンシティのスタイルを見事に体現した。対して昨夏、今冬と2つの移籍市場で新戦力補強ゼロに終わり、多くの負傷者に悩まされたトッテナムは、シーズンを通して好不調の波が大きかった。それでも、就任5年目を迎えたポチェッティーノ監督が育て上げた若きチームは、毎試合のように試合途中にシステムを使い分ける多彩な戦いぶりをみせてきた。
いくつかの引き出しを増やしてきたリバプールだが、今回の決勝では“アンフィールドの奇跡”と評された準決勝バルセロナ戦のように相手に自由を与えない激しいプレスと、自慢の快速3トップの個人技を生かしたショートカウンターという最大のストロングポイントを前面に押し出した戦い方を見せてくれるはずだ。
一方、約3週間の準備期間を経て主力の復帰、勤続疲労から解放されたトッテナムも今季の多くの試合で見せた“相手に合わせた”戦い方ではなく、3-1で快勝した昨年11月のリーグ戦のチェルシー戦や、1-0で勝利した準々決勝1stレグのマンチェスター・シティ戦のように、前線から激しく圧力をかけてセカンドボールを握り波状攻撃を仕掛ける本来のスタイルで頂点に挑むはずだ。
◆ポチェッティーノの閃きは?
一方、今季のリーグ戦での直接対決の結果(2連敗)、順位表における26ポイントの差を考えれば、トッテナムは前線から激しく圧力をかけるポチェッティーノ監督本来の戦い方を採用しながらも、相手をよりリスペクトした戦い方を意識することになるはずだ。具体的にはハイプレス回避のロングボールの採用、両サイドバックの攻撃参加の自重、最終ラインの高さ設定だ。
また、リバプールはフィルミノのコンディション次第でFWオリジ、インサイドハーフにMFワイナルドゥムかMFミルナーのどちらを起用するかという変更点があるものの、お馴染みの[4-3-3]である程度戦い方が予想し易い。
これに対してトッテナムは長期離脱明けのFWケイン、MFウィンクスの主力2選手の起用法、[4-2-3-1]、[4-3-1-2]のいずれの布陣を採用するのか、読めない部分が大きい。ビルドアップやボール保持、前からの圧力の強調、ケインをベンチに置くプランであれば、FWルーカス・モウラ、FWソン・フンミンの快速コンビを2トップに配した[4-3-1-2]の採用が濃厚だ。ただ、シティとの準決勝2ndレグでは相手のサイドの選手へのプレッシャーがハマらず、前半途中に並びを変えた一件もあり、強力な両サイドバックを擁するリバプール相手にある程度ボールを握れないとリスクは大きい。
一方、ケインを最前線に配する[4-2-3-1]であれば、システムのかみ合わせ上、マークがハッキリしてマンマーク気味に相手を捕まえられるメリットがある一方、万全のウィンクスがセントラルMFに入らない限り、ビルドアップの局面での苦戦は必至。また、負傷明けのケインがDFファン・ダイクとDFマティプのセンターバックコンビ相手に五分五分で競り勝てないと、攻撃面は厳しくなりそうだ。
先発11人の選び方、システムを含めてポチェッティーノ監督の用兵が試合の行方を左右することになりそうだが、アルゼンチン人指揮官の選択はいかに…。また、試合中の修正力ではトッテナムに分があるだけに、リバプールにとっては先制点がいつも以上に大きな意味を持つことになるだろう。
◆劇的結末を演出するラッキーボーイ候補は?
リバプールを含めその他のビッグクラブに比べて明らかに選手層が薄いトッテナムにおいて唯一のゲームチェンジャーの役割を担っているのが、195cmの長身を誇るベテランストライカーのFWジョレンテだ。基本的にケインのバックアップを担う34歳のスペイン人FWは今季のリーグ戦では20試合でわずかに1ゴールの数字にとどまった。しかし、今季ここまでのCLで果たした役割は非常に大きかった。
グループステージ敗退の危機を迎えた第4節PSV戦ではロングボールを落としてケインの同点ゴールを演出すると、ラウンド16のドルトムント戦、準々決勝のシティ戦ではいずれもセットプレーから貴重なゴールを記録。極めつけは準決勝2ndレグのアヤックス戦で後半頭から投入されると、前線での競り合いに勝ち続けてハットトリックのルーカスに次ぐ逆転突破の立役者となった。これまでの対戦相手に比べて高さや強さに不安のないリバプール相手にどこまでやれるかは不明だが、相手にとってピッチに入って来て嫌な選手であることに間違いはない。
その他の交代カードに関してはこれまでMFラメラ、MFワニャマぐらいしかオプションがなかったが、ケインの復帰、“ファンタスティック・フォー”に続く5人目として台頭したルーカスの存在によって、ジョレンテと共にケイン、ルーカス、デレ・アリのいずれかがベンチに置かれることになり、その主役級の3選手のいずれかが強力なジョーカーとして控えることになる。
一方、稼働率の高い世界屈指のトリデンテを擁するリバプールに関してはその3人を最後までプレーさせることが勝利の近道と言われるが、ジョレンテ同様にシーズン終盤に存在感を増したオリジがラッキーボーイ候補だ。
今夏、ヴォルフスブルクからレンタルバックした24歳のベルギー代表FWは当初構想外と思われたが、ひたむきな努力が評価されてリーグ第14節のエバートンとのマージーサイド・ダービーで今季リーグ初出場を飾ると、相手GKのミス絡みではあったものの後半ラストプレーで劇的な決勝点を挙げた。その後、2019年に入って出場時間は短いものの継続的にプレーを機会を与えられると、第37節のニューカッスル戦ではリーグ優勝に望みを繋ぐ決勝点を奪取。さらに、準決勝2ndレグバルセロナ戦では見事な決定力で先制点、決勝点と2つのゴールを記録し、“アンフィールドの奇跡”実現の立役者となった。いわゆる“持ってる”男はCL決勝という大舞台で再びその勝負強さを発揮するか。
その他の交代カードに関してはMFナビ・ケイタの不在は痛いが、リーグ戦のチェルシー戦で驚愕のゴラッソを叩き込んだ“一発”を持っているFWスタリッジ、シーズン序盤に存在感を示したFWシャキリ、長期離脱明けも対スパーズ戦で最も燃える男、MFチェンバレン、中盤の汗かきやMFララナが控える。また、バルセロナ戦で途中出場から2ゴールを決めたワイナルドゥム、超ユーティリティープレーヤーのミルナーのいずれかがベンチに控える点は心強い限りだ。
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◆世界最高峰のプレッシングゲームGetty Images
共にフィジカル、テクニック、献身性に長けた世界屈指のタレントが揃い、チームとしてアグレッシブ且つコレクティブなプレーを志向する、比較的似た特徴を持つチーム同士の対戦だ。いくつかの引き出しを増やしてきたリバプールだが、今回の決勝では“アンフィールドの奇跡”と評された準決勝バルセロナ戦のように相手に自由を与えない激しいプレスと、自慢の快速3トップの個人技を生かしたショートカウンターという最大のストロングポイントを前面に押し出した戦い方を見せてくれるはずだ。
一方、約3週間の準備期間を経て主力の復帰、勤続疲労から解放されたトッテナムも今季の多くの試合で見せた“相手に合わせた”戦い方ではなく、3-1で快勝した昨年11月のリーグ戦のチェルシー戦や、1-0で勝利した準々決勝1stレグのマンチェスター・シティ戦のように、前線から激しく圧力をかけてセカンドボールを握り波状攻撃を仕掛ける本来のスタイルで頂点に挑むはずだ。
したがって、スコアが打ち合いになるかは不明だが、相手の様子を窺う決勝らしい堅い展開ではなく、プレミアリーグ仕様の立ち上がりからバチバチとやり合う世界最高峰のプレッシングゲームが期待される。
◆ポチェッティーノの閃きは?
Getty Images
前述のようなプレッシングゲームという展開を予想する中、不動のリバプールは相手のビルドアップのやり方に合わせてプレスのタイミングやボールの奪いどころなど、対トッテナム仕様に細部を詰めているはずだが、対戦相手のストロングポイントを消すことよりも自分たちのストロングを出すことを意識したゲームプランを練っているはずだ。一方、今季のリーグ戦での直接対決の結果(2連敗)、順位表における26ポイントの差を考えれば、トッテナムは前線から激しく圧力をかけるポチェッティーノ監督本来の戦い方を採用しながらも、相手をよりリスペクトした戦い方を意識することになるはずだ。具体的にはハイプレス回避のロングボールの採用、両サイドバックの攻撃参加の自重、最終ラインの高さ設定だ。
また、リバプールはフィルミノのコンディション次第でFWオリジ、インサイドハーフにMFワイナルドゥムかMFミルナーのどちらを起用するかという変更点があるものの、お馴染みの[4-3-3]である程度戦い方が予想し易い。
これに対してトッテナムは長期離脱明けのFWケイン、MFウィンクスの主力2選手の起用法、[4-2-3-1]、[4-3-1-2]のいずれの布陣を採用するのか、読めない部分が大きい。ビルドアップやボール保持、前からの圧力の強調、ケインをベンチに置くプランであれば、FWルーカス・モウラ、FWソン・フンミンの快速コンビを2トップに配した[4-3-1-2]の採用が濃厚だ。ただ、シティとの準決勝2ndレグでは相手のサイドの選手へのプレッシャーがハマらず、前半途中に並びを変えた一件もあり、強力な両サイドバックを擁するリバプール相手にある程度ボールを握れないとリスクは大きい。
一方、ケインを最前線に配する[4-2-3-1]であれば、システムのかみ合わせ上、マークがハッキリしてマンマーク気味に相手を捕まえられるメリットがある一方、万全のウィンクスがセントラルMFに入らない限り、ビルドアップの局面での苦戦は必至。また、負傷明けのケインがDFファン・ダイクとDFマティプのセンターバックコンビ相手に五分五分で競り勝てないと、攻撃面は厳しくなりそうだ。
先発11人の選び方、システムを含めてポチェッティーノ監督の用兵が試合の行方を左右することになりそうだが、アルゼンチン人指揮官の選択はいかに…。また、試合中の修正力ではトッテナムに分があるだけに、リバプールにとっては先制点がいつも以上に大きな意味を持つことになるだろう。
◆劇的結末を演出するラッキーボーイ候補は?
Getty Images
一発勝負のファイナルという状況、今シーズンのCLが例年にないドラマティックな結末が頻発していることを考えれば、試合途中に戦局を変えるゲームチェンジャー、ラッキーボーイの存在が最終的にビッグイヤーの行方を左右することになりそうだ。リバプールを含めその他のビッグクラブに比べて明らかに選手層が薄いトッテナムにおいて唯一のゲームチェンジャーの役割を担っているのが、195cmの長身を誇るベテランストライカーのFWジョレンテだ。基本的にケインのバックアップを担う34歳のスペイン人FWは今季のリーグ戦では20試合でわずかに1ゴールの数字にとどまった。しかし、今季ここまでのCLで果たした役割は非常に大きかった。
グループステージ敗退の危機を迎えた第4節PSV戦ではロングボールを落としてケインの同点ゴールを演出すると、ラウンド16のドルトムント戦、準々決勝のシティ戦ではいずれもセットプレーから貴重なゴールを記録。極めつけは準決勝2ndレグのアヤックス戦で後半頭から投入されると、前線での競り合いに勝ち続けてハットトリックのルーカスに次ぐ逆転突破の立役者となった。これまでの対戦相手に比べて高さや強さに不安のないリバプール相手にどこまでやれるかは不明だが、相手にとってピッチに入って来て嫌な選手であることに間違いはない。
その他の交代カードに関してはこれまでMFラメラ、MFワニャマぐらいしかオプションがなかったが、ケインの復帰、“ファンタスティック・フォー”に続く5人目として台頭したルーカスの存在によって、ジョレンテと共にケイン、ルーカス、デレ・アリのいずれかがベンチに置かれることになり、その主役級の3選手のいずれかが強力なジョーカーとして控えることになる。
一方、稼働率の高い世界屈指のトリデンテを擁するリバプールに関してはその3人を最後までプレーさせることが勝利の近道と言われるが、ジョレンテ同様にシーズン終盤に存在感を増したオリジがラッキーボーイ候補だ。
今夏、ヴォルフスブルクからレンタルバックした24歳のベルギー代表FWは当初構想外と思われたが、ひたむきな努力が評価されてリーグ第14節のエバートンとのマージーサイド・ダービーで今季リーグ初出場を飾ると、相手GKのミス絡みではあったものの後半ラストプレーで劇的な決勝点を挙げた。その後、2019年に入って出場時間は短いものの継続的にプレーを機会を与えられると、第37節のニューカッスル戦ではリーグ優勝に望みを繋ぐ決勝点を奪取。さらに、準決勝2ndレグバルセロナ戦では見事な決定力で先制点、決勝点と2つのゴールを記録し、“アンフィールドの奇跡”実現の立役者となった。いわゆる“持ってる”男はCL決勝という大舞台で再びその勝負強さを発揮するか。
その他の交代カードに関してはMFナビ・ケイタの不在は痛いが、リーグ戦のチェルシー戦で驚愕のゴラッソを叩き込んだ“一発”を持っているFWスタリッジ、シーズン序盤に存在感を示したFWシャキリ、長期離脱明けも対スパーズ戦で最も燃える男、MFチェンバレン、中盤の汗かきやMFララナが控える。また、バルセロナ戦で途中出場から2ゴールを決めたワイナルドゥム、超ユーティリティープレーヤーのミルナーのいずれかがベンチに控える点は心強い限りだ。
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