【2022年カタールへ期待の選手⑳】「ポスト大迫」に向け成長を加速させろ!コパ・アメリカでも見たいマルチFW/上田綺世(法政大学/FW)
2019.04.30 12:30 Tue
2019年コパ・アメリカ(ブラジル)まで1カ月余り。しかし欧州クラブへの拘束力がないうえ、Jリーグも期間中で、森保一監督は選手選考に苦悩している。
とりわけ、深刻なのがFWだ。絶対的1トップ・大迫勇也の派遣を所属のブレーメンは拒否。となれば、別の選手を見つけなければいけない。1~2月の2019年アジアカップ(UAE)では武藤嘉紀(ニューカッスル)と北川航也(清水エスパルス)、3月シリーズでは鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)と鎌田大地(シント=トロイデン)が代役としてテストされたが、誰も合格できたとは言えない状況だ。その彼らもコパには呼べない可能性が高いため、もっと違った人材に目を向ける必要があるだろう。
そこでクローズアップすべきなのが、U-22日本代表のエースFW上田綺世(法政大学)だ。まだ大学3年生でJリーグでの実績は皆無だが、182㎝の高さと強さを兼ね備え、ヘディングでも裏に抜ける動きでもゴールを奪えるマルチなFWという点で、注目に値する。「プレースタイル的には大迫に一番近い選手」という評価もあるほどだ。
24日に東京・西が丘サッカー場で行われた全日本大学選抜とU-20全日本大学選抜との練習試合でも、彼は1ゴールを含む圧巻のパフォーマンスを披露。視察に訪れた森保一監督を唸らせた。U-20日本代表の影山雅永監督も「上田と三苫(薫=筑波大学)はレベルが違う」と語っていて、すでにJリーグで十分活躍できる存在だと多くの関係者に認められている。2018年12月の日本代表合宿に練習パートナーとして参加した時もそん色ないプレーをしていただけに、今、このタイミングでA代表に呼んでみるのも面白いそうだ。
「僕はU-22代表に参加していて、人に見られる環境にいるから、A代表と比べてもらえるんだと思うけど、僕と大迫選手の間には海外にもJリーグにも沢山のFWがいる。今の自分は少し陽の目を浴びさせてもらっているだけ。大迫選手と比較されるってことは、彼と五分の選手でないといけない。鹿島で練習生をやってるうちは全然そういう立場じゃない。鹿島でエース張ってるくらいじゃないと日の丸は背負えないと思います」と本人は謙虚な姿勢を崩さない。が、もちろんこのレベルで終わるつもりはない。
「『大迫の代役』になるつもりはないし、超えていきたいと思ってます。そこにたどり着くにはいろんな壁がある。そこを超えるために足元を見ながら、大学で活躍し、Jに行って、海外へステップアップするという道を歩んでいければいい」と自分に言い聞かせるようにコメントしていた。
そんな上田だが、中学生時代を過ごした鹿島アントラーズノルテから鹿島ユースに昇格できなかった苦い過去を持つ。地元の茨城県の強豪校である鹿島学園へ進み、絶対的エースとして高校総体や高校選手権で活躍するも、夢だったプロ入りは叶わず、法政大学入りを決意している。
「ユースに上がれなかったことを挫折にしたくなかった。『自分が選んだ道を失敗だと思いたくない』って強い気持ちがあったし、鹿島学園に行ったことで、ユースに行っていたであろう自分を超えたかったんです。大学にしてもそう。(プロ入りできなかった)僕は大学に行くしかなかったけど、大学で殻を破れたし、一皮剥けたというのは感じているんで」と自信をのぞかせるように、高校・大学というルートを歩んだから今がある。
法政大学に来てからの上田は、1年の冬に森保監督率いる東京五輪代表の立ち上げとなったM-150カップ(タイ)のメンバーに抜擢され、2018年に入ってからはトゥーロン国際大会やアジア競技大会(インドネシア)、ドバイ・カップなど数々の代表の舞台に立ち、ゴールを量産してきた。そして所属先でも関東大学リーグベストイレブンや全日本大学選手権(インカレ)ベストFW受賞など、数々の成果を手にしてきた。
そんな逸材には複数のJクラブからオファーが殺到。大学生活を2年残した時点で古巣・鹿島に内定したが、これから2年間をどう過ごしていくべきかを今、本人も熟慮している様子。東京五輪に出て、A代表という道を突き進もうと思うなら、大学からJリーグにいち早くステップアップした方が得策だ。本当に「ポスト大迫」の地位に手にしようと思うなら、成長スピードを加速させなければならないのは確か。かつて長友佑都(ガラタサライ)や武藤、室屋成(FC東京)らが辿ったように、大学在学中に退部してJに進む道をどこかで選ぶ可能性が大だろう。
「いろんな選択肢を含めて考えてますけど、いずれにしても自分を高めていくことが大事ですね。今の僕はヘディングと背後とシュートという他より抜けてるであろう武器で認められていると思うけど、収める仕事や守備とかいろんなことができるようになってきたと見られることは1つの成長かなと感じています。そうやって全てのアベレージを上げ、質を高めていくことが重要。そうできる環境を考えていきます」
さしあたって上田がコパ・アメリカに選ばれるかどうかは大きな関心事。そこに参戦しなかったとしても、トゥーロン、ユニバーシアードと沢山の国際舞台が待っている。そこでゴールを量産して、本当にプロになった時に爆発できるような力を蓄えてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
とりわけ、深刻なのがFWだ。絶対的1トップ・大迫勇也の派遣を所属のブレーメンは拒否。となれば、別の選手を見つけなければいけない。1~2月の2019年アジアカップ(UAE)では武藤嘉紀(ニューカッスル)と北川航也(清水エスパルス)、3月シリーズでは鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)と鎌田大地(シント=トロイデン)が代役としてテストされたが、誰も合格できたとは言えない状況だ。その彼らもコパには呼べない可能性が高いため、もっと違った人材に目を向ける必要があるだろう。
そこでクローズアップすべきなのが、U-22日本代表のエースFW上田綺世(法政大学)だ。まだ大学3年生でJリーグでの実績は皆無だが、182㎝の高さと強さを兼ね備え、ヘディングでも裏に抜ける動きでもゴールを奪えるマルチなFWという点で、注目に値する。「プレースタイル的には大迫に一番近い選手」という評価もあるほどだ。
24日に東京・西が丘サッカー場で行われた全日本大学選抜とU-20全日本大学選抜との練習試合でも、彼は1ゴールを含む圧巻のパフォーマンスを披露。視察に訪れた森保一監督を唸らせた。U-20日本代表の影山雅永監督も「上田と三苫(薫=筑波大学)はレベルが違う」と語っていて、すでにJリーグで十分活躍できる存在だと多くの関係者に認められている。2018年12月の日本代表合宿に練習パートナーとして参加した時もそん色ないプレーをしていただけに、今、このタイミングでA代表に呼んでみるのも面白いそうだ。
「僕はU-22代表に参加していて、人に見られる環境にいるから、A代表と比べてもらえるんだと思うけど、僕と大迫選手の間には海外にもJリーグにも沢山のFWがいる。今の自分は少し陽の目を浴びさせてもらっているだけ。大迫選手と比較されるってことは、彼と五分の選手でないといけない。鹿島で練習生をやってるうちは全然そういう立場じゃない。鹿島でエース張ってるくらいじゃないと日の丸は背負えないと思います」と本人は謙虚な姿勢を崩さない。が、もちろんこのレベルで終わるつもりはない。
「『大迫の代役』になるつもりはないし、超えていきたいと思ってます。そこにたどり着くにはいろんな壁がある。そこを超えるために足元を見ながら、大学で活躍し、Jに行って、海外へステップアップするという道を歩んでいければいい」と自分に言い聞かせるようにコメントしていた。
そんな上田だが、中学生時代を過ごした鹿島アントラーズノルテから鹿島ユースに昇格できなかった苦い過去を持つ。地元の茨城県の強豪校である鹿島学園へ進み、絶対的エースとして高校総体や高校選手権で活躍するも、夢だったプロ入りは叶わず、法政大学入りを決意している。
「ユースに上がれなかったことを挫折にしたくなかった。『自分が選んだ道を失敗だと思いたくない』って強い気持ちがあったし、鹿島学園に行ったことで、ユースに行っていたであろう自分を超えたかったんです。大学にしてもそう。(プロ入りできなかった)僕は大学に行くしかなかったけど、大学で殻を破れたし、一皮剥けたというのは感じているんで」と自信をのぞかせるように、高校・大学というルートを歩んだから今がある。
法政大学に来てからの上田は、1年の冬に森保監督率いる東京五輪代表の立ち上げとなったM-150カップ(タイ)のメンバーに抜擢され、2018年に入ってからはトゥーロン国際大会やアジア競技大会(インドネシア)、ドバイ・カップなど数々の代表の舞台に立ち、ゴールを量産してきた。そして所属先でも関東大学リーグベストイレブンや全日本大学選手権(インカレ)ベストFW受賞など、数々の成果を手にしてきた。
そんな逸材には複数のJクラブからオファーが殺到。大学生活を2年残した時点で古巣・鹿島に内定したが、これから2年間をどう過ごしていくべきかを今、本人も熟慮している様子。東京五輪に出て、A代表という道を突き進もうと思うなら、大学からJリーグにいち早くステップアップした方が得策だ。本当に「ポスト大迫」の地位に手にしようと思うなら、成長スピードを加速させなければならないのは確か。かつて長友佑都(ガラタサライ)や武藤、室屋成(FC東京)らが辿ったように、大学在学中に退部してJに進む道をどこかで選ぶ可能性が大だろう。
「いろんな選択肢を含めて考えてますけど、いずれにしても自分を高めていくことが大事ですね。今の僕はヘディングと背後とシュートという他より抜けてるであろう武器で認められていると思うけど、収める仕事や守備とかいろんなことができるようになってきたと見られることは1つの成長かなと感じています。そうやって全てのアベレージを上げ、質を高めていくことが重要。そうできる環境を考えていきます」
さしあたって上田がコパ・アメリカに選ばれるかどうかは大きな関心事。そこに参戦しなかったとしても、トゥーロン、ユニバーシアードと沢山の国際舞台が待っている。そこでゴールを量産して、本当にプロになった時に爆発できるような力を蓄えてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
|
関連ニュース