【2022年カタールへ期待の選手⑰】ベルギー戦の屈辱を次のカタールに行かせ! 新天地でゼロから代表定着を目指す/山口蛍(ヴィッセル神戸/MF)
2019.03.18 13:14 Mon
「今シーズン新たな気持ち、新たなクラブでリスタートした中で日本代表に選ばれたことを大変嬉しく思います。自分が初めて代表に選ばれた気持ちのようです」
3月日本代表2連戦(22日・コロンビア戦=日産、26日・ボリビア戦=神戸)に挑むメンバーに名を連ねた山口蛍(神戸)はクラブを通してこんなコメントを出した。
2018年ロシアワールドカップの後、「次の2022年カタールワールドカップまで4年あるから、若い世代でやっていくのもありじゃないかと。航(遠藤航/シント=トロイデン)や健斗(三竿健斗/鹿島アントラーズ)たちも試合に出続けていけば、絶対に成長するから」と自身の代表続行に迷いを口にしていた男が、9カ月ぶりの代表復帰を心底喜んだのだから、気持ちが完全に切り替わった証拠。本人の中で3度目の世界舞台に向けて新たなモチベーションが湧いてきたのは朗報と言っていい。
2014年ブラジル大会に参戦しながら1分2敗の屈辱を味わったロンドン五輪世代のダイナモにとって、ロシアはリベンジの舞台になるはずだった。ハビエル・アギーレ監督が率いた2014年9月〜2015年1月の5カ月間は右ひざ半月板損傷で長期離脱を強いられていたが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任した2015年春以降はコンスタントに代表に呼ばれ、ロシア・ワールドカップアジア予選も主力として戦った。指揮官の重視する「デュエルの申し子」として山口は不可欠な存在に君臨。6大会連続世界切符を得た2017年9月のオーストラリア戦(埼玉)も井手口陽介(グロイター・フュルト)とインサイドハーフに入って相手の攻撃の芽を摘み、勝利の原動力となった。こうした働きに本人も自信をつかみ、本大会でももちろんレギュラーとしてチームに貢献するつもりでいた。
ところが、本番2カ月前の監督交代によって、山口蛍の立ち位置は大きく変化した。西野朗監督は長谷部誠(フランクフルト)と山口という守備的コンビではなく、長谷部と柴崎岳(ヘタフェ)という攻守のバランスを考えたコンビを起用。山口はコロンビア戦(サランスク)、ポーランド戦(ヴォルゴグラード)、ベルギー戦(ロストフ)の3試合に出場したが、あくまでバックアップの位置づけにとどまった。しかもベルギー戦では、ラスト14秒間の高速カウンターでケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)にかわされたシーンが大きくクローズアップされ、「逆転負けの戦犯」とも扱われるに至った。
「結局、俺らロンドン五輪世代は、圭佑君(本田圭佑/メルボルン・ビクトリー)たち1個前の北京五輪のメンバー、そしてハセさん(長谷部誠)含めて上の世代を引き下ろせなかった。それに監督が代わって戦い方も変わったから、岳のような選手も生きたし、チームとしての成功につながった。俺としては悔しい気持ちがありましたよね」と山口は大会後、複雑な本音を打ち明けてくれた。
その後の9カ月間はクラブでのプレーに集中した。森保ジャパン初陣だった昨年9月シリーズには招集されたものの、ケガで辞退。中学時代から慣れ親しんだセレッソ大阪のために奮闘した。が、尹晶煥監督の辞任に責任を感じたところもあり、昨年末に神戸移籍を決断。新天地でアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャら世界超一流のタレントとプレーするチャンスも得た。こうした環境の変化が世界への渇望を呼び覚ました部分は少なからずあったのではないだろうか。
自身が参戦せず、外から見ることになった2019年アジアカップ(UAE)でも、ボランチの選手層の薄さが問題視された。ベテラン・青山敏弘(サンフレッチェ広島)とポスト長谷部との期待が高まった遠藤航が最終的に負傷離脱し、柴崎岳が本調子でなかったことも、「自分がやらなければいけない」という自覚につながったのかもしれない。
長谷部が代表から退いた今、日本代表のボランチは柴崎と遠藤のコンビがファーストチョイスになっているが、遠藤はケガでメンバーから外れている。柴崎もアジアカップ後はクラブで全く試合に出ておらず、やはりコンディション面で不安は残る。今回は小林祐希(ヘーレンフェーン)が1年半ぶりに復帰し、ケガでアジアカップを棒に振った守田英正(川崎フロンターレ)も戻ってきたが、いずれも代表経験値は乏しいと言わざるを得ない。そういう現在だからこそ、2度のワールドカップを経験し、国際Aマッチ45試合という実績を誇る28歳のダイナモが今一度、存在感を示さなければならない。ここで森保監督から再び信頼をつかめれば、カタールへの道も開けるかもしれないのだ。
「ゼロからアピールする」と本人は語気を強めているというから、チャレンジャー精神むき出しに新生ジャパンに挑んでいくはず。これまで代表でつねに遠慮がちだった山口蛍がそういう堂々たる姿を見せてくれれば非常に頼もしい。森保ジャパンで大きく脱皮したダイナモの姿をぜひ見てみたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
3月日本代表2連戦(22日・コロンビア戦=日産、26日・ボリビア戦=神戸)に挑むメンバーに名を連ねた山口蛍(神戸)はクラブを通してこんなコメントを出した。
2014年ブラジル大会に参戦しながら1分2敗の屈辱を味わったロンドン五輪世代のダイナモにとって、ロシアはリベンジの舞台になるはずだった。ハビエル・アギーレ監督が率いた2014年9月〜2015年1月の5カ月間は右ひざ半月板損傷で長期離脱を強いられていたが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任した2015年春以降はコンスタントに代表に呼ばれ、ロシア・ワールドカップアジア予選も主力として戦った。指揮官の重視する「デュエルの申し子」として山口は不可欠な存在に君臨。6大会連続世界切符を得た2017年9月のオーストラリア戦(埼玉)も井手口陽介(グロイター・フュルト)とインサイドハーフに入って相手の攻撃の芽を摘み、勝利の原動力となった。こうした働きに本人も自信をつかみ、本大会でももちろんレギュラーとしてチームに貢献するつもりでいた。
ところが、本番2カ月前の監督交代によって、山口蛍の立ち位置は大きく変化した。西野朗監督は長谷部誠(フランクフルト)と山口という守備的コンビではなく、長谷部と柴崎岳(ヘタフェ)という攻守のバランスを考えたコンビを起用。山口はコロンビア戦(サランスク)、ポーランド戦(ヴォルゴグラード)、ベルギー戦(ロストフ)の3試合に出場したが、あくまでバックアップの位置づけにとどまった。しかもベルギー戦では、ラスト14秒間の高速カウンターでケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)にかわされたシーンが大きくクローズアップされ、「逆転負けの戦犯」とも扱われるに至った。
「GK(ティボー・クルトワ/レアル・マドリー)が投げたボールをデ・ブライネがドリブルした時のタッチがすごく大きくて、絶対に次もタッチが大きくなると思ったから、そのタイミングで取りに行こうと思ってた。そしたらメッチャ細かいタッチで来て、ホントに相手がすごくうまかった。俺の出るタイミングも測ってたのなかと思うくらいのドリブルだったから、対応できなかったですよね]
「結局、俺らロンドン五輪世代は、圭佑君(本田圭佑/メルボルン・ビクトリー)たち1個前の北京五輪のメンバー、そしてハセさん(長谷部誠)含めて上の世代を引き下ろせなかった。それに監督が代わって戦い方も変わったから、岳のような選手も生きたし、チームとしての成功につながった。俺としては悔しい気持ちがありましたよね」と山口は大会後、複雑な本音を打ち明けてくれた。
その後の9カ月間はクラブでのプレーに集中した。森保ジャパン初陣だった昨年9月シリーズには招集されたものの、ケガで辞退。中学時代から慣れ親しんだセレッソ大阪のために奮闘した。が、尹晶煥監督の辞任に責任を感じたところもあり、昨年末に神戸移籍を決断。新天地でアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャら世界超一流のタレントとプレーするチャンスも得た。こうした環境の変化が世界への渇望を呼び覚ました部分は少なからずあったのではないだろうか。
自身が参戦せず、外から見ることになった2019年アジアカップ(UAE)でも、ボランチの選手層の薄さが問題視された。ベテラン・青山敏弘(サンフレッチェ広島)とポスト長谷部との期待が高まった遠藤航が最終的に負傷離脱し、柴崎岳が本調子でなかったことも、「自分がやらなければいけない」という自覚につながったのかもしれない。
長谷部が代表から退いた今、日本代表のボランチは柴崎と遠藤のコンビがファーストチョイスになっているが、遠藤はケガでメンバーから外れている。柴崎もアジアカップ後はクラブで全く試合に出ておらず、やはりコンディション面で不安は残る。今回は小林祐希(ヘーレンフェーン)が1年半ぶりに復帰し、ケガでアジアカップを棒に振った守田英正(川崎フロンターレ)も戻ってきたが、いずれも代表経験値は乏しいと言わざるを得ない。そういう現在だからこそ、2度のワールドカップを経験し、国際Aマッチ45試合という実績を誇る28歳のダイナモが今一度、存在感を示さなければならない。ここで森保監督から再び信頼をつかめれば、カタールへの道も開けるかもしれないのだ。
「ゼロからアピールする」と本人は語気を強めているというから、チャレンジャー精神むき出しに新生ジャパンに挑んでいくはず。これまで代表でつねに遠慮がちだった山口蛍がそういう堂々たる姿を見せてくれれば非常に頼もしい。森保ジャパンで大きく脱皮したダイナモの姿をぜひ見てみたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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