ベストゲームの要因は取り戻した“アグレッシブさ”、カギは大迫、冨安の存在/日本代表コラム
2019.01.29 21:30 Tue
初戦のトルクメニスタン代表戦から数えて6試合目。今大会の優勝候補にも挙げられ、アジアNo.1の呼び声も高かったイラン代表と決勝進出を懸けて戦った日本は、今大会最高の試合を見せた。
ここまでの5試合を全て1点差で勝ち上がって来た日本は、無失点で勝ち上がって来たイランに対し0-3と快勝。90分間を通して、試合にイニシアチブを握っていた。
苦戦続きだった日本が、最強の敵と言われたイランを相手に好ゲームを披露できた要因はどこにあるのか。
◆あまりにも大きかった大迫勇也の存在
最前線でボールを受ける役回りとなった大迫だが、イランの守備は大迫の落としを受けるMF南野拓実(ザルツブルク)を狙いどころとしていた。立ち上がりはそのイランの読みがあたり、ロングボールを大迫が競り勝っても、イランがセカンドボールを拾うという展開が続いた。
加えて、DF長友佑都(ガラタサライ)、DF酒井宏樹(マルセイユ)の両サイドバックも機を見て高い位置を取り、チーム全体がゴールに向かう推進力を取り戻した。
ベトナム戦でも指摘した通り、FW北川航也(清水エスパルス)のポジショニングや動き出しでは全体が連動できず、FW武藤嘉紀(ニューカッスル)が1トップに入っても、2列目との連携が上手くいかなかっただろう。
2ゴールという結果を残したことも去ることながら、チームを活性化させ、相乗効果をチームメイトに与えられる大迫の存在感の大きさをただただ感じさせられた。まさに「半端ない」活躍だったと言える。
◆著しく成長する冨安健洋の伸び代
ラウンド16のサウジアラビア代表戦では日本代表初ゴールも記録している20歳のセンターバック。今大会初戦のトルクメニスタン戦はボランチでの出場となり、良いパフォーマンスを出せたとは言えないものの、センターバックに入ってからは安定したパフォーマンスを披露した。
とりわけ、イラン戦では1トップのFWサルダール・アズムーンのマークを担当。ロングボールを蹴り込むイランを相手に、アズムーンとの競り合いではほぼ勝利。ロングスローやアーリークロス、セットプレーからのクロスなど、イランのハイボールにもしっかりと対応した。
冨安は修正力と吸収力に優れた選手であり、2017年のU-20ワールドカップでも、大会中に大きな成長を遂げていたが、今大会も試合を重ねるごとに安定感が増していっている印象だ。
特に判断力に優れており、アズムーンのマークに関しても動き出すタイミングや体を寄せるタイミング、ボールの落下点を含め、ほぼ完璧な対応。時間が経過するごとにアズムーンが苛立ちを隠せなかったことは、冨安の対応が素晴らしかったことの表れでもある。
長年日本代表のセンターバックを支えて来たDF吉田麻也(サウサンプトン)も試合後には冨安の対応を褒めるシーンも。大会を通じて隣で成長する冨安は、吉田のコンビ最右翼。決勝でもしっかりとゴールに鍵をかけてもらいたい。
◆取り戻したアグレッシブさ、決勝でも出せるか
イランが日本を相手にしっかりと攻め込んで来たことも影響しているが、攻守に渡って最も良い入りをし、恐れることなく自信を持って、アグレッシブにプレーしていた。
森保監督はこれまでの試合と比べ「基本的にはあまり変わっていない」としながらも、「選手たちが戦う姿勢を持って試合の入りからアグレッシブにプレーしてくれた」と語った。
セカンドボールを拾えないという苦しい展開もあったが、イランのアンカーの脇を使う姿勢、そして、サイドバックがしっかりと攻撃に参加するという姿は、イラン戦がベストパフォーマンスだった。
最終ラインで冨安、吉田がしっかりとイランの攻撃を跳ね返したこと、そして大迫が前線に入ったことで、リスクを犯した攻撃とコンビネーションが生まれたことが、アグレッシブさを取り戻せた要因だろう。カタール、UAEのどちらが決勝に勝ち上がって来ても、イラン戦のようなパフォーマンスが期待される。
◆コンディション調整に成功した森保ジャパン
中盤の遠藤、柴崎も守備だけでなく、縦パスや持ち出しなど、攻撃にも絡む姿勢を見せていた。
UAEに滞在して3週間が経過。このタイミングで最高のパフォーマンスを出せたのは、コーチングスタッフを含め、日本代表チームとしての成功と言って良いだろう。
グループステージは「コンディションを整える」ということを何度も口にし、「総合力」で勝ち上がると語って来た森保監督。決勝トーナメントからは選手が固定されつつある中で、しっかりとマネジメントした結果が、イラン戦にも表れていた。
負傷により後半途中で遠藤がピッチを去ったが、森保監督は決勝トーナメントに入ってからMF塩谷司(アル・アイン)をボランチで起用。試合終盤のクローザーとして起用して来た結果、スクランブル投入となったイラン戦でも落ち着いたプレーを見せていた。
大会を通してのマネジメントを考えれば、森保一監督をはじめとする日本代表チームはここまで成功していると評価できる。残すはあと1試合。ここまで積み上げた自信を、確実なものにし、決勝で勝ち切ってこそ、このアジアカップが成功と言えるだろう。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
ここまでの5試合を全て1点差で勝ち上がって来た日本は、無失点で勝ち上がって来たイランに対し0-3と快勝。90分間を通して、試合にイニシアチブを握っていた。
◆あまりにも大きかった大迫勇也の存在
Getty Images
1つは、イラン戦でスタメンに復帰したFW大迫勇也(ブレーメン)だ。ロシア・ワールドカップで「大迫半端ない」がたちまち流行した大迫だが、初戦のトルクメニスタン戦以来の先発出場を果たすと、チームは見違える動きを見せた。最前線でボールを受ける役回りとなった大迫だが、イランの守備は大迫の落としを受けるMF南野拓実(ザルツブルク)を狙いどころとしていた。立ち上がりはそのイランの読みがあたり、ロングボールを大迫が競り勝っても、イランがセカンドボールを拾うという展開が続いた。
しかし、大迫が1トップに入ったことで、2列目の南野、MF堂安律(フローニンヘン)、MF原口元気(ハノーファー)の動きが活性化。さらには、MF柴崎岳(ヘタフェ)、MF遠藤航(シント=トロイデン)も守備だけでなく攻撃にもアグレッシブさを出していった。
加えて、DF長友佑都(ガラタサライ)、DF酒井宏樹(マルセイユ)の両サイドバックも機を見て高い位置を取り、チーム全体がゴールに向かう推進力を取り戻した。
ベトナム戦でも指摘した通り、FW北川航也(清水エスパルス)のポジショニングや動き出しでは全体が連動できず、FW武藤嘉紀(ニューカッスル)が1トップに入っても、2列目との連携が上手くいかなかっただろう。
2ゴールという結果を残したことも去ることながら、チームを活性化させ、相乗効果をチームメイトに与えられる大迫の存在感の大きさをただただ感じさせられた。まさに「半端ない」活躍だったと言える。
◆著しく成長する冨安健洋の伸び代
Getty Images
そして、大迫以上に「半端ない」活躍を見せたと言っても良いのが、DF冨安健洋(シント=トロイデン)だ。ラウンド16のサウジアラビア代表戦では日本代表初ゴールも記録している20歳のセンターバック。今大会初戦のトルクメニスタン戦はボランチでの出場となり、良いパフォーマンスを出せたとは言えないものの、センターバックに入ってからは安定したパフォーマンスを披露した。
とりわけ、イラン戦では1トップのFWサルダール・アズムーンのマークを担当。ロングボールを蹴り込むイランを相手に、アズムーンとの競り合いではほぼ勝利。ロングスローやアーリークロス、セットプレーからのクロスなど、イランのハイボールにもしっかりと対応した。
冨安は修正力と吸収力に優れた選手であり、2017年のU-20ワールドカップでも、大会中に大きな成長を遂げていたが、今大会も試合を重ねるごとに安定感が増していっている印象だ。
特に判断力に優れており、アズムーンのマークに関しても動き出すタイミングや体を寄せるタイミング、ボールの落下点を含め、ほぼ完璧な対応。時間が経過するごとにアズムーンが苛立ちを隠せなかったことは、冨安の対応が素晴らしかったことの表れでもある。
長年日本代表のセンターバックを支えて来たDF吉田麻也(サウサンプトン)も試合後には冨安の対応を褒めるシーンも。大会を通じて隣で成長する冨安は、吉田のコンビ最右翼。決勝でもしっかりとゴールに鍵をかけてもらいたい。
◆取り戻したアグレッシブさ、決勝でも出せるか
Getty Images
そして、前述の2人の活躍が大きく引き出したものが、アグレッシブさだ。イランが日本を相手にしっかりと攻め込んで来たことも影響しているが、攻守に渡って最も良い入りをし、恐れることなく自信を持って、アグレッシブにプレーしていた。
森保監督はこれまでの試合と比べ「基本的にはあまり変わっていない」としながらも、「選手たちが戦う姿勢を持って試合の入りからアグレッシブにプレーしてくれた」と語った。
セカンドボールを拾えないという苦しい展開もあったが、イランのアンカーの脇を使う姿勢、そして、サイドバックがしっかりと攻撃に参加するという姿は、イラン戦がベストパフォーマンスだった。
最終ラインで冨安、吉田がしっかりとイランの攻撃を跳ね返したこと、そして大迫が前線に入ったことで、リスクを犯した攻撃とコンビネーションが生まれたことが、アグレッシブさを取り戻せた要因だろう。カタール、UAEのどちらが決勝に勝ち上がって来ても、イラン戦のようなパフォーマンスが期待される。
◆コンディション調整に成功した森保ジャパン
Getty Images
大迫、冨安以外にも、この試合の選手たちのパフォーマンスは出色の出来だった。ダメ押しゴールを記録した原口も、攻守にわたり走り切った。また、3ゴールに絡んだ南野も、ゴールこそ生まれなかったが本来の良さを出せていた。中盤の遠藤、柴崎も守備だけでなく、縦パスや持ち出しなど、攻撃にも絡む姿勢を見せていた。
UAEに滞在して3週間が経過。このタイミングで最高のパフォーマンスを出せたのは、コーチングスタッフを含め、日本代表チームとしての成功と言って良いだろう。
グループステージは「コンディションを整える」ということを何度も口にし、「総合力」で勝ち上がると語って来た森保監督。決勝トーナメントからは選手が固定されつつある中で、しっかりとマネジメントした結果が、イラン戦にも表れていた。
負傷により後半途中で遠藤がピッチを去ったが、森保監督は決勝トーナメントに入ってからMF塩谷司(アル・アイン)をボランチで起用。試合終盤のクローザーとして起用して来た結果、スクランブル投入となったイラン戦でも落ち着いたプレーを見せていた。
大会を通してのマネジメントを考えれば、森保一監督をはじめとする日本代表チームはここまで成功していると評価できる。残すはあと1試合。ここまで積み上げた自信を、確実なものにし、決勝で勝ち切ってこそ、このアジアカップが成功と言えるだろう。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
|
関連ニュース