【2022年カタールへ期待の選手⑪】欧州日本人最速の10点目。アジアカップ代表入りに前進した新世代のファンタジスタ/鎌田大地(シント=トロイデン/MF)
2018.12.11 20:00 Tue
▽8日のベルギー1部・シント=トロイデン対スタンダール・リエージュ戦。2トップで先発した背番号15・鎌田大地が前半終了間際に見せ場を作った。左からの横パスを受け、ファーストタッチでDFを抜き去ると、そのままドリブルで突進。ゴール前でGKもかわして左足を一閃。今季12試合目にして10点目という欧州クラブ所属日本人最速の2ケタゴール達成を現実にした。
「ゴール前で1対1になれば勝てる自信がありますし、前の選手はゴールを狙わないといけないので、つねに狙っています。ただ、チームの勝ちが一番大事なので、絶対に自分でいくというわけではなく、アシスト数も増やしたい。今は点が取れているので、自分のやりたい方向に向かっている」と本人も大きな手ごたえを口にした。
▽12日には2019年アジアカップ(UAE)に挑む日本代表メンバーも発表されるが、11月下旬に彼を視察した森保一監督がサプライ抜擢する可能性も大いに高まった。「もちろん目標ではありますが、まだ1度も入っていないですし、まずは今はチームでいいプレーをしようという気持ちが大きいです」と彼自身は謙虚な姿勢を崩さなかったが、もちろん野心はあるはず。鎌田であれば最前線でも2列目でもプレーできる。ボールを収める技術も高く、この1年半の欧州経験で屈強なフィジカルと当たりも手に入れた。アジアカップはそのアドバンテージを生かせる場。ここはぜひともチャンスを与えてほしいものだ。
▽そもそも鎌田はサガン鳥栖でプレーしていた頃から「早いうちから代表に入りたい」と熱望していた。まだ19歳だった2016年1月には「今年中にA代表に入りたい」と意欲をむき出しにしていた。ちょうど同時期に行われたリオ・デ・ジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねた2016年AFC・U-23選手権(カタール)のメンバーから落選したことも、彼の闘志に火をつけていた。
▽そうやって挫折をバネに高みを目指すのがこの男の生きざま。井手口陽介(グロイター・フュルト)とともにプレーしたガンバ大阪ジュニアユース時代はユース昇格が叶わず、東山高校に進み、自らを大きく成長させている。鳥栖から昨季赴いたドイツ・ブンデスリーガ1部・フランクフルトも同じ。ニコ・コバチ監督(現バイエルン)に才能を高く評価されながら、公式戦出場機会をほとんど与えられずに苦悩しながら、自身の課題だったフィジカル面の強化に取り組んだ。その成果が今季からプレーする新天地・シント=トロイデンでのパフォーマンスに生かされているのは間違いない。かつてヘルタ・ベルリン時代に1年間肉体改造に取り組み、その後の日本代表でブレイクした原口元気(ハノーファー)もそうだったが、壁にぶつかりながら弱点を克服していくというのは、若い選手に必要な過程なのだろう。
▽仮にアジアカップのメンバーに滑り込んだ場合、彼が勝負しなければならないのは大迫勇也(ブレーメン)あるいは南野拓実(ザルツブルク)といったアタッカーたちだ。大迫は誰もが認める日本の絶対的1トップ。彼がいなければ前線で起点を作れないし、推進力ある堂安律(フローニンヘン)、南野、中島翔哉(ポルティモネンセ)という新2列目トリオを生かすことができなくなる。ただ、大迫も出ずっぱりというわけにはいかないから、代役をこなせる1トップ候補が必須テーマとなる。鎌田ならアジアレベルで1トップをこなすことも可能だろうし、南野と2トップを形成することもできる。インテリジェンスもアイディアもある選手だけに、原口らとコンビを組んでも面白そうだ。課題は90分間ハードワークを続ける体力と守備力だが、そこも時間をかけて取り組めば変わっていくだろう。
▽日本が8年ぶり5度目のアジア制覇を果たすためには、どうしても勢いのある新戦力が必要だ。2011年カタール大会を振り返っても、カタールとの準々決勝の死闘で伊野波雅彦(ヴィッセル神戸)がゴールし、韓国との準決勝で細貝萌(柏レイソル)が得点を取り、決勝・オーストラリア戦で李忠成(浦和レッズ)が決勝弾を叩き出すなど、控えに回っていた面々が目覚ましい働きを見せたからこそ、タイトルをつかむことができた。
▽今回のアジアカップから出陽国数が24に増え、ファイナルまでの試合数も1つ増えて7試合になるだけに、サブの充実はより一層、重要なテーマになってくるのだ。だからこそ、今、結果を出している旬な男がいる意味は大きい。鎌田にとっても代表定着に向けた千載一遇のチャンス。ここで一気にブレイクを果たし、本田圭佑の後継者へと名乗りを上げてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
「ゴール前で1対1になれば勝てる自信がありますし、前の選手はゴールを狙わないといけないので、つねに狙っています。ただ、チームの勝ちが一番大事なので、絶対に自分でいくというわけではなく、アシスト数も増やしたい。今は点が取れているので、自分のやりたい方向に向かっている」と本人も大きな手ごたえを口にした。
▽そもそも鎌田はサガン鳥栖でプレーしていた頃から「早いうちから代表に入りたい」と熱望していた。まだ19歳だった2016年1月には「今年中にA代表に入りたい」と意欲をむき出しにしていた。ちょうど同時期に行われたリオ・デ・ジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねた2016年AFC・U-23選手権(カタール)のメンバーから落選したことも、彼の闘志に火をつけていた。
▽そうやって挫折をバネに高みを目指すのがこの男の生きざま。井手口陽介(グロイター・フュルト)とともにプレーしたガンバ大阪ジュニアユース時代はユース昇格が叶わず、東山高校に進み、自らを大きく成長させている。鳥栖から昨季赴いたドイツ・ブンデスリーガ1部・フランクフルトも同じ。ニコ・コバチ監督(現バイエルン)に才能を高く評価されながら、公式戦出場機会をほとんど与えられずに苦悩しながら、自身の課題だったフィジカル面の強化に取り組んだ。その成果が今季からプレーする新天地・シント=トロイデンでのパフォーマンスに生かされているのは間違いない。かつてヘルタ・ベルリン時代に1年間肉体改造に取り組み、その後の日本代表でブレイクした原口元気(ハノーファー)もそうだったが、壁にぶつかりながら弱点を克服していくというのは、若い選手に必要な過程なのだろう。
▽何度も挫折を乗り越え、前進していく様子は、同じG大阪ジュニアユースから星稜高校を経て日本代表のエースになった本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)に重なる。それを本人にぶつけたことがあったが「本田圭佑さんと似ているという意識は全然ないです。たまたまガンバで一緒っていうだけ。ただガンバから環境を変えて頑張ったのは事実です」と気にも留めていない様子だったが、本田もVVVフェンロがオランダ2部に落ちた2008-09シーズンに2ケタ得点を奪って一躍スターダムにのしあがっている。欧州五大リーグではないベルギーで数字を残して再びビッグクラブへ挑戦しようという姿勢は本田と共通する。その偉大な先輩を超えるためにも、いち早く日本代表入りすることが肝要だ。
▽仮にアジアカップのメンバーに滑り込んだ場合、彼が勝負しなければならないのは大迫勇也(ブレーメン)あるいは南野拓実(ザルツブルク)といったアタッカーたちだ。大迫は誰もが認める日本の絶対的1トップ。彼がいなければ前線で起点を作れないし、推進力ある堂安律(フローニンヘン)、南野、中島翔哉(ポルティモネンセ)という新2列目トリオを生かすことができなくなる。ただ、大迫も出ずっぱりというわけにはいかないから、代役をこなせる1トップ候補が必須テーマとなる。鎌田ならアジアレベルで1トップをこなすことも可能だろうし、南野と2トップを形成することもできる。インテリジェンスもアイディアもある選手だけに、原口らとコンビを組んでも面白そうだ。課題は90分間ハードワークを続ける体力と守備力だが、そこも時間をかけて取り組めば変わっていくだろう。
▽日本が8年ぶり5度目のアジア制覇を果たすためには、どうしても勢いのある新戦力が必要だ。2011年カタール大会を振り返っても、カタールとの準々決勝の死闘で伊野波雅彦(ヴィッセル神戸)がゴールし、韓国との準決勝で細貝萌(柏レイソル)が得点を取り、決勝・オーストラリア戦で李忠成(浦和レッズ)が決勝弾を叩き出すなど、控えに回っていた面々が目覚ましい働きを見せたからこそ、タイトルをつかむことができた。
▽今回のアジアカップから出陽国数が24に増え、ファイナルまでの試合数も1つ増えて7試合になるだけに、サブの充実はより一層、重要なテーマになってくるのだ。だからこそ、今、結果を出している旬な男がいる意味は大きい。鎌田にとっても代表定着に向けた千載一遇のチャンス。ここで一気にブレイクを果たし、本田圭佑の後継者へと名乗りを上げてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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