【2022年カタールへ期待の選手⑩】ルーキーイヤーの今季劇的成長を遂げた中盤のダイナモ。日本代表でもボランチの軸に?/守田英正(川崎フロンターレ/MF)2018.11.30 23:00 Fri

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▽真冬の寒さの中、3万7000人超の大観衆が詰めかけた東京・味の素スタジアムで24日に行われた2018年J1第33節のFC東京vs川崎フロンターレ戦。前半のうちに知念慶の先制点でリードしていたJ1王者・川崎Fが勝負を決めたのは後半5分の2点目だった。

▽GKチョン・ソンリョンの縦パスを低い位置で受けた守田英正が反転しながら家長昭博に絶妙のボールを通し、エウシーニョと中村憲剛がワンツー。エウシーニョが折り返したところに知念が詰め、そのこぼれ球を長谷川竜也が頭で押し込む形だった。この理想的なカウンターは守田が家長に出した時点で勝負ありだったと言っても過言ではない。今季流通経済大学から加入したルーキーとは思えない中盤のダイナモの成長を色濃く感じさせるシーンだった。

▽「結構タテタテのパスだったんで、僕も角度はなかったですけど、相手が僕に食いついてくるのが1回目に首を振った時に見えたんで、アキ君と憲剛さんがいて、2人とも出せる状況だったんですけど、アキ君の方が角度があったんで出しました。そんな技をいつ身に着けた? どうですかね。普段、憲剛さんや(大島)僚太君がやってることを見よう見まねでやってるだけなんで、自ずとイメージが湧く感じですね」

▽背番号25は淡々とコメントしていたが、川崎FというJ1連覇を果たした絶対王者のチームで自己研鑽していることは非常に大きな意味を持つ。もともと「ボール奪取職人」という色合いの強かった守田が、中村憲剛や家長、大島ら高度な技術と戦術眼を備えた面々と共演することで、自分に足りないものを補えるからだ。「ウチは『隙あらば行く』ってプレーを常に目指しているチーム。そういうビジョンと頭を養うのはホントに日々の積み重ねしかない」と中村憲剛も神妙な面持ちで話したが、この環境にいられることを守田自身が大いに感謝しているはず。むしろ川崎Fにいなければ、森保一監督率いる日本代表に抜擢されることもなかっただろう。

▽9月シリーズは山口蛍(セレッソ大阪)のケガによる追加招集はあったが、11月シリーズは青山敏弘(サンフレッチェ広島)の右ひざ負傷で空いた1枠に確実に滑り込み、堂々と選出された。16日のベネズエラ戦(大分)は目下、ボランチのファーストチョイスである柴崎岳(ヘタフェ)と遠藤航(シント=トロイデン)がスタメン出場したが、守田も20日のキルギス戦(豊田)でインパクトを残すことに成功した。とりわけ際立ったのが、後半28分の大迫勇也(ブレーメン)の3点目の場面。鋭い縦パスを前線に供給し、北川航也(清水エスパルス)から大迫へとつながった。そういった気の利いたプレーができるようになった守田を森保監督も高く評価しているはず。青山の状態次第ではあるが、1月の2019年アジアカップ(UAE)のメンバー滑り込みも現実味を帯びてきたと言っていい。

▽「代表には代表のスタイルがあるから、そのスタイルに合わない選手だと評価されてしまうと、こっちでいいプレーをしていても絶対にメンバーに入らない。自分から代表のスタイルに合わせていくことを意識しないといけない。最初は知らないところからのスタートでしたけど、徐々に慣れてきましたし、こっちでやるいいプレーを残しつつ、スピード感や判断の部分で変えなきゃいけないところもある。そうやって代表でやった経験は川崎Fでも生きてると思います。憲剛さんみたいに何でもできる存在になりたいですね。ただ、『起用貧乏』みたいな感じになってしまうのもいけないので、何か自分に確立したものを持てるようにしていきたい」と守田は単なるボール奪取職人で終わるつもりはない。

▽今の代表ボランチの構成を見ると、非凡な攻撃センスを備えたロシア・ワールドカップ組の柴崎、守備のアグレッシブさが武器の遠藤と三竿健斗(鹿島アントラーズ)という構成で、中間的な選手が少ない。遠藤もベルギー移籍で確実にゲームメーク力をアップさせているし、三竿も鹿島でのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇によってスケールアップを果たしている。

▽ただ、守田にはJ1王者・川崎Fで自分を磨けるという強みがある。この1年間でこれだけ目覚ましい進化を遂げたのだから、まだまだ大きく変貌できる。大阪・高槻市の中体連から金光大阪高校を経て、流経大に進んだ経歴を見ても、まだまだ洗練されていないセンスや戦術眼というものが多々あるはずだ。そこはJクラブ育ちの遠藤や三竿とは異なる部分。10代の頃からスター街道を歩んできた柴崎とも違うだろう。こういう遅咲きの選手が25歳を過ぎてブレイクするケースは少なくないだけに、ここからどうなるかが興味深いところだ。

▽「今のレベルで『誰にも負けない』って言えるものはまだない。『僕と言ったらこれ』というのを周りから認めてもらえるようにならないといけないし、特徴を出していかないといけない」と本人も語気を強める。球際の強さやボール奪取力のレベルを上げ、攻撃の起点になれるようなパス出し、展開力も備えていけば、「オールラウンドな中盤のダイナモ」という位置づけになれるかもしれない。中村憲剛を筆頭にいい先輩の長所や強みを最大限吸収して、「オリジナルの守田英正」を作るべく、努力を続けてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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【2022年カタールへ期待の選手⑲】横浜で「チームを勝たせる存在」へ。大激戦の2列目の一角を窺う東京世代のアタッカー/三好康児(横浜F・マリノス/FW)

1-1で迎えた後半アディショナルタイム。トリコロールの背番号41をつける小柄なアタッカー・三好康児は自身の力で勝利をもぎ取るべく、右サイドから強引な突破を見せ、思い切り左足を振り抜いた。が、「ちょっと相手が気になって少しミートしなかった」と本人は悔やんだが、GK武田洋平との1対1を決め切れずにタイムアップの笛。13日の名古屋グランパスとの上位対決を制することはできなかった。 昨季の北海道コンサドーレ札幌に続き、今季は横浜F・マリノスに2度目のレンタル移籍に踏み切った三好。札幌ではミハイロ・ペトロヴィッチ監督の信頼を勝ち取り、J1・26試合出場3ゴールという数字を残した。その実績を引っ提げてジュニア時代から在籍する川崎フロンターレへ復帰する道もあったが、本人は「もう一度、外でチャレンジしたい」と横浜FM行きを決断。勝負の2019年を迎えた。そして新天地デビュー戦となった2月23日のガンバ大阪戦でいきなりゴールをゲット。非常に幸先のいいスタートを切ったと思われた。 アンジェ・ポステコグルー監督からも信頼を勝ち得て、そこからコンスタントに先発出場しているが、得点は1のままストップしている。今回の名古屋戦でもインサイドハーフの位置から切れ味鋭いスルーパスをたびたび前線のマルコス・ジュニオールや仲川輝人に送るなど、お膳立ての部分では異彩を放ったものの、自身のシュートは冒頭の1本のみ。 「もう少しゴールに近いところでシュートを打つなり、工夫をしてもいい。開幕戦のゴールはペナ外でしたけど、このチームでゴールまで近づいて行けるチャンスはある。味方としっかり連携を合わせることで決定機を作り出せるだろうし、そこは自分の中でも改善していかないといけない部分だと思います」と本人もゴールに迫る回数や迫力不足を痛感している様子だった。 <div style="text-align:center;" id="cws_ad"><hr><a href="https://prf.hn/click/camref:1100l3Pqd/adref:innews_j" terget="_blank">横浜FMの三好康児に注目!<br />Jリーグを観るならDAZN!<br />1カ月のお試し無料視聴はコチラから!</a><hr></div> それでも、数々の得点チャンスを演出してくれる「三好加入効果」を実感する選手は多い。U-22日本代表で一緒に戦う遠藤渓太も「康児君は前を向くのがすごくうまいし、自分にないものを沢山持ってるからすごい参考になる。今はセンターFWをマルコスがやってますけど、彼や自分、康児君が流動的にプレーして連動することが大事だと思います」とコメントしていた。東京五輪世代の盟友が指摘する通り、前線のコンビネーションが研ぎ澄まされていけば、横浜FMの攻撃力が増し、三好の課題である得点の部分も改善していくはず。現状から一歩前進し、壁を超えられればできれば、来年に迫った自国開催の東京五輪出場はもちろんのこと、日本代表入りも見えてくるはずだ。 2017年U-20ワールドカップ(韓国)をともに戦った1つ下の堂安律(フローニンヘン)がすでに森保一監督率いる日本代表に定着している通り、同世代には優れたアタッカーが少なくない。17歳の久保建英(FC東京)も近未来のA代表入りが噂されているほどだ。同じレフティの小柄なアタッカーで、U-22代表では10番を背負う三好も「彼らに負けていられない」という危機感は非常に強いはずだ。 「国内国外問わず、仲間たちとの競争で自分は高め合っていけると思っています。律が力のある選手だというのは分かっていますし、タケもU-20から一緒にやっていて(その凄さは)今に始まったことではない。ただ、自分には自分の特長があるので、そこを出していくしかない。やっぱり一番大事なのは最後に点を決めるか決めないか。結果に結び付けなければ先はないと思っています」 三好は語気を強めたが、大激戦の2列目アタッカー競争に勝とうと思うなら、本当にゴールという数字を残すことにこだわるしかない。すでに森保ジャパンの主軸にとなっているリオ・デ・ジャネイロ五輪世代の中島翔哉(アル・ドゥハイル)や南野拓実(ザルツブルク)、さらに年長の2018年ロシア・ワールドカップ組の香川真司(ベシクタシュ)、乾貴士(アラベス)、原口元気(ハノーファー)らもいるだけに、先輩たちを押しのけて台頭するためには傑出した実績がどうしてもほしい。22歳という年齢を考えると決して若いとは言えないだけに、三好はここから一気に勝負をかけるべきだ。 「五輪に出ることが自分の目標じゃないですし、小さい頃からA代表として大会に出ることが目標だった。それは今も変わっていないし、先も変わることはないです。マリノスでしっかり結果を残さなければ、五輪もA代表も見えてこない。『自分がチームを勝たせなければいけない』という思いはもちろん強く持っています」 名門・マリノスで勝利請負人としての役割を果たし、10年以上遠ざかっているJリーグタイトルを引き寄せる原動力になれれば、彼を取り巻く環境も劇的に変化する。そういった勢いを見せられるか否か。札幌に続く2度目のレンタル先で着実に進化する三好康児には大きな期待が寄せられる。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。<div style="text-align:center;" id="cws_ad"><hr><a href="https://prf.hn/click/camref:1100l3Pqd/adref:innews_j" terget="_blank">横浜FMの三好康児に注目!<br />Jリーグを観るならDAZN!<br />1カ月のお試し無料視聴はコチラから!</a><hr></div> 2019.04.17 11:50 Wed
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【2022年カタールへ期待の選手⑱】長友の後継者候補に名乗り。守備的タイプの佐々木や杉岡とは一線を画す左サイドバック/安西幸輝(鹿島アントラーズ/DF)

3月22日のコロンビア戦(横浜)後半44分に佐々木翔(サンフレッチェ広島)と代わって日本代表初キャップを飾った安西幸輝(鹿島アントラーズ)。彼にとって真の国際Aマッチデビュー戦となったのが22日のボリビア戦(神戸)だった。 東京ヴェルディ時代からの同期・畠中槙之輔(横浜F・マリノス)の横に陣取り、経験豊富な2018年ロシア・ワールドカップ組の乾貴士(アラベス)とタテ関係を形成する中、背番号19をつけた23歳の左サイドバックは序盤から高い位置を取って積極的に仕掛けた。ダイナミックな攻撃力とタテへの推進力は同じポジションの佐々木、東京五輪世代の杉岡大暉(湘南ベルマーレ)と一線を画すものがある。そこは鹿島の先輩・内田篤人が「攻撃だけなら長友佑都(ガラタサライ)さんや宏樹(酒井宏樹/マルセイユ)よりいい」と語っただけのものはある。 課題の守備に関しても、ボリビアで最も大きなインパクトを残したレオナルド・パカの鋭い突破力と1対1の強さに翻弄されながらも、何とかついていって最後の危ない場面に至る前に阻止していた。むしろこういう相手とマッチアップできたのは、安西にとってはいい経験になったはず。「守りが今一つ」と言われてきた若武者はこういった世界基準の相手と対峙する経験を増やしていけば、着実にレベルアップできる。そんな前向きな感触を残したのは確かだろう。 「代表で長い時間プレーして『もっと出たい』って思ったし、『このチームで定着したい』っていうふうに純粋に感じたんで。これからやるべきことは多いですけど、急いで篤人君だったり、長友さんのレベルに追いつかないと。危機感を感じています」と本人は世界基準を目の当たりにして、意識レベルを一気に引き上げていた。 長友の後釜をどうするかというのは、森保一監督率いる日本代表にとって1つの懸案になっている。長友自身は「まだまだ代表でやり続けたい。(1歳の)息子が父親が代表選手だと分かるまでピッチに立っていたい」と繰り返し語っていて、6月のコパ・アメリカ(ブラジル)も出る気満々だ。しかしながら、2018年ロシア・ワールドカップ後には肺気胸に見舞われ、1~2月の2019年アジアカップ(UAE)直後には発熱、右ひざじん帯損傷とアクシデントが続いている。今回の3月2連戦も同じトルコで戦う盟友・香川真司(ベシクタシュ)をサポートする意味も込めて参戦を熱望したはずだが、体の状態には勝てなかった。 となると、現時点では2番手の佐々木がファーストチョイスに繰り上がるが、彼は森保体制になって国際舞台を踏んだ選手。屈強なフィジカルと跳躍力を生かして守備面で貢献できる選手だが、29歳という年齢やここからの伸び代を考えるとやや難しいところがある。これまで森保監督が呼んだ山中亮輔(浦和レッズ)も攻撃偏重の傾向が強く、攻守両面でバランスのとれる適材がなかなか見つからない。そんな中、安西が一気に浮上してきたのだ。 安西はご存知の通り、左右両サイドでプレーでき、タテに出ていく力、アップダウンできる心肺機能の高さや献身性は誰よりも備えている。そこは東京Vアカデミー時代に教えた経験のある元日本代表左サイドバックの都並敏史氏(ブリオベッカ浦安監督)も太鼓判を押していた点だ。加えて、現在の鹿島の大先輩・内田にも薫陶を受けているのだから、これ以上心強いものはない。内田も19歳だった2008年1月のチリ戦(東京・国立)で代表デビューした頃は「守りの方が不安」と言われ、岡田武史監督(FC今治代表)から2010年南アフリカ・ワールドカップのレギュラーを外される苦い経験をしている。その後、ドイツへ渡り、シャルケで屈強な男たちの中でプレーを重ね、守備能力に磨きをかけていった。惨敗した2014年ブラジル・ワールドカップで唯一、世界と渡り合った内田のパフォーマンスを当時18歳だった安西はその目に焼き付けていたに違いない。 その偉大な先輩に近づくためには、ボリビア戦のような場に立ち続けるしかない。2018年はFIFAクラブ・ワールドカップにも参戦しているが、代表の舞台は背負うものが全く違ってくる。ボリビア戦のようなフレンドリーならトライ&エラーを優先しても許されるところがあるが、6月のコパ・アメリカ(ブラジル)や今秋から始まる2022年カタール・ワールドカップアジア予選では1つのミスも許されない。そういう修羅場をくぐり、心身ともに成長できれば、安西は本当に長友の後継者たるべき存在に慣れるかもしれない。だからこそ、今後も代表に残り続けて、大舞台に立つチャンスを伺い続ける必要があるのだ。 「(ドイツから帰ってきた)篤人君が『競技が違う』『サッカーが違う』という話をしていたけど、その通りだと思ったし、Jリーグでバンバン活躍して代表に選ばれても、サッカーが違うというのが衝撃を受けた。フィジカル、スピード感。テクニックというよりはガシャって相手は背負ってキープして連動して、相手がどんどん出てくる。シンプルですけど、それが僕らからしたら怖い。そういうことを篤人君は伝えたかったんじゃないかなと。僕も攻撃面ではキレイに抜くよりもぶち抜くことを考えてやってますし。守備も源君(昌子源/トゥールーズ)が一回り違って帰ってきたのを見ると変えないといけない部分があると思う。ホントに全部ですね」 高いレベルに目覚め、ギラギラし始めた若きサイドバックが大化けしてくれれば、森保ジャパンももっと面白くなる。近い将来、A代表に入ってくるであろう杉岡も含めて、競争が激化してくれるのを祈りたい。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2019.03.29 11:50 Fri
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【2022年カタールへ期待の選手⑰】ベルギー戦の屈辱を次のカタールに行かせ! 新天地でゼロから代表定着を目指す/山口蛍(ヴィッセル神戸/MF)

「今シーズン新たな気持ち、新たなクラブでリスタートした中で日本代表に選ばれたことを大変嬉しく思います。自分が初めて代表に選ばれた気持ちのようです」 3月日本代表2連戦(22日・コロンビア戦=日産、26日・ボリビア戦=神戸)に挑むメンバーに名を連ねた山口蛍(神戸)はクラブを通してこんなコメントを出した。 2018年ロシアワールドカップの後、「次の2022年カタールワールドカップまで4年あるから、若い世代でやっていくのもありじゃないかと。航(遠藤航/シント=トロイデン)や健斗(三竿健斗/鹿島アントラーズ)たちも試合に出続けていけば、絶対に成長するから」と自身の代表続行に迷いを口にしていた男が、9カ月ぶりの代表復帰を心底喜んだのだから、気持ちが完全に切り替わった証拠。本人の中で3度目の世界舞台に向けて新たなモチベーションが湧いてきたのは朗報と言っていい。 2014年ブラジル大会に参戦しながら1分2敗の屈辱を味わったロンドン五輪世代のダイナモにとって、ロシアはリベンジの舞台になるはずだった。ハビエル・アギーレ監督が率いた2014年9月〜2015年1月の5カ月間は右ひざ半月板損傷で長期離脱を強いられていたが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が就任した2015年春以降はコンスタントに代表に呼ばれ、ロシア・ワールドカップアジア予選も主力として戦った。指揮官の重視する「デュエルの申し子」として山口は不可欠な存在に君臨。6大会連続世界切符を得た2017年9月のオーストラリア戦(埼玉)も井手口陽介(グロイター・フュルト)とインサイドハーフに入って相手の攻撃の芽を摘み、勝利の原動力となった。こうした働きに本人も自信をつかみ、本大会でももちろんレギュラーとしてチームに貢献するつもりでいた。 ところが、本番2カ月前の監督交代によって、山口蛍の立ち位置は大きく変化した。西野朗監督は長谷部誠(フランクフルト)と山口という守備的コンビではなく、長谷部と柴崎岳(ヘタフェ)という攻守のバランスを考えたコンビを起用。山口はコロンビア戦(サランスク)、ポーランド戦(ヴォルゴグラード)、ベルギー戦(ロストフ)の3試合に出場したが、あくまでバックアップの位置づけにとどまった。しかもベルギー戦では、ラスト14秒間の高速カウンターでケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)にかわされたシーンが大きくクローズアップされ、「逆転負けの戦犯」とも扱われるに至った。 「GK(ティボー・クルトワ/レアル・マドリー)が投げたボールをデ・ブライネがドリブルした時のタッチがすごく大きくて、絶対に次もタッチが大きくなると思ったから、そのタイミングで取りに行こうと思ってた。そしたらメッチャ細かいタッチで来て、ホントに相手がすごくうまかった。俺の出るタイミングも測ってたのなかと思うくらいのドリブルだったから、対応できなかったですよね] 「結局、俺らロンドン五輪世代は、圭佑君(本田圭佑/メルボルン・ビクトリー)たち1個前の北京五輪のメンバー、そしてハセさん(長谷部誠)含めて上の世代を引き下ろせなかった。それに監督が代わって戦い方も変わったから、岳のような選手も生きたし、チームとしての成功につながった。俺としては悔しい気持ちがありましたよね」と山口は大会後、複雑な本音を打ち明けてくれた。 その後の9カ月間はクラブでのプレーに集中した。森保ジャパン初陣だった昨年9月シリーズには招集されたものの、ケガで辞退。中学時代から慣れ親しんだセレッソ大阪のために奮闘した。が、尹晶煥監督の辞任に責任を感じたところもあり、昨年末に神戸移籍を決断。新天地でアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャら世界超一流のタレントとプレーするチャンスも得た。こうした環境の変化が世界への渇望を呼び覚ました部分は少なからずあったのではないだろうか。 自身が参戦せず、外から見ることになった2019年アジアカップ(UAE)でも、ボランチの選手層の薄さが問題視された。ベテラン・青山敏弘(サンフレッチェ広島)とポスト長谷部との期待が高まった遠藤航が最終的に負傷離脱し、柴崎岳が本調子でなかったことも、「自分がやらなければいけない」という自覚につながったのかもしれない。 長谷部が代表から退いた今、日本代表のボランチは柴崎と遠藤のコンビがファーストチョイスになっているが、遠藤はケガでメンバーから外れている。柴崎もアジアカップ後はクラブで全く試合に出ておらず、やはりコンディション面で不安は残る。今回は小林祐希(ヘーレンフェーン)が1年半ぶりに復帰し、ケガでアジアカップを棒に振った守田英正(川崎フロンターレ)も戻ってきたが、いずれも代表経験値は乏しいと言わざるを得ない。そういう現在だからこそ、2度のワールドカップを経験し、国際Aマッチ45試合という実績を誇る28歳のダイナモが今一度、存在感を示さなければならない。ここで森保監督から再び信頼をつかめれば、カタールへの道も開けるかもしれないのだ。 「ゼロからアピールする」と本人は語気を強めているというから、チャレンジャー精神むき出しに新生ジャパンに挑んでいくはず。これまで代表でつねに遠慮がちだった山口蛍がそういう堂々たる姿を見せてくれれば非常に頼もしい。森保ジャパンで大きく脱皮したダイナモの姿をぜひ見てみたい。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2019.03.18 13:14 Mon
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【2022年カタールへ期待の選手⑯】「長友佑都の後継者」として期待が高まる大型レフティ。東京経由カタール行きを!/杉岡大暉(湘南ベルマーレ/DF)

カタールに敗れて準優勝に終わった2019年アジアカップ(UAE)で、堂安律(フローニンへン)や冨安健洋(シント=トロイデン)ら若い世代を力強くけん引したのが長友佑都(ガラタサライ)だった。2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアとワールドカップ3大会出場を誇るベテランの存在がなければ、大苦戦を強いられたこの大会で新生ジャパンがファイナルまで勝ち進むことはできなかっただろう。 とはいえ、いつまでも長友1人に頼っていられないのも事実。アジアカップではバックアップの佐々木翔(アル・アイン)がウズベキスタン戦(アル・アイン)1試合に出場したものの、「国際経験の不足を感じた」と本人も言うように、長友と互角に勝負するのは難しい状況だ。年齢的にも29歳と決して若くないため、世代交代要員というべき存在でもない。昨年の森保ジャパンのテストマッチに招集された山中亮輔(浦和レッズ)は移籍早々にスタメンを確保し、初陣となった23日のベガルタ仙台戦でまずまずの印象を残したが、守備面では課題も多い。長友という突出した選手が長年君臨してきた分、日本代表の左サイドバックは手薄感が色濃くなっているのだ。 そこでクローズアップされるべきなのが、20歳の杉岡大暉(湘南ベルマーレ)だろう。昨年10月のJリーグルヴァンカップ決勝で見せた左足強烈ボレー弾が強烈な印象を残したが、レフティかつ182㎝という高さを誇る左サイドバックは日本にはそうそういない。そこは本人も自覚していて「その強みを存分に発揮したい」と意気込んでいた。そのポテンシャルの高さは近未来の日本代表候補というに相応しいものがある。 高校サッカーの名門・市立船橋高校出身の杉岡は2017年に湘南ベルマーレ入りし、いきなり開幕戦の水戸ホーリーホック戦でスタメン出場。鮮烈なデビューを飾った。曺貴裁監督からも絶大な信頼を寄せられ、2017年は37試合に出場。2018年は8月にアジア大会(インドネシア)に参戦した分、リーグ戦出場が30試合に減ったものの、チームの中で重要な役割を担ったのは間違いない。「杉岡君はパワー、スピード、身体能力を兼ね備えた選手。プロ1年目からレギュラーを張れているのは尊敬に値する」と同い年の安部裕葵(鹿島アントラーズ)に言わしめるほどの活躍ぶりなのだ。 もちろん年代別代表でも重要な役割を担ってきた。2017年U-20ワールドカップ(韓国)こそ控えに甘んじたものの、森保一監督率いるU-22日本代表では左サイドでコンスタントに出場。アジア大会準優勝の原動力にもなった。2020年東京五輪はオーバーエージ3人を差し引くと15人の狭き門だが、「堂安と冨安に続く当確組」とさえ目されている。そんな人材だけに「ポスト長友」の呼び声は日に日に高まってきているのだ。 本人は「まずはチームでの結果や成績だと思います。佐々木選手や山中選手だったり、いい選手は沢山いるんで、自分はしっかりやるべきことをやって、それで選んでいただけるように頑張りたい」と慎重な姿勢を崩していない。ただ、「(森保一)監督がA代表と五輪代表で一緒というのはチャンスだと思います」という野心は抱いている。2019年は6月の南米選手権(ブラジル)など東京五輪世代が試される舞台も用意されているだけに、確かにA代表入りのチャンスは広がりそうだ。そこをつかむか否か。それは杉岡自身にかかっている。 「杉岡がA代表になるためには、まだまだ足りない部分がある。その1つが予測力と状況判断力。そこは彼だけじゃなくて、ベルマーレ自体に足りない。ただ、杉岡にはチャレンジする意識がある。そこは前向きに感じています」とチョウ監督も課題を指摘していたが、その予測力を上げられれば、本当に長友とポジションを争う領域まで到達できるかもしれない。2019年J1で彼がどこまでパフォーマンスを上げられるかが大いに楽しみだ。 実際、長友のように小柄でダイナミックさがウリの選手と、杉岡のようにセンターバックもこなせる守備的なタイプが日本代表にいれば、チームとしての戦術や戦い方のバリエーションも広がってくる。例えば、アジアカップのサウジアラビア戦(シャルジャ)のような超守備的な試合になれば、強固な高さと強さを備えた杉岡を入れた方がいいだろうし、逆に攻撃的に行けるベトナム戦(ドバイ)のような展開であれば、長友がどんどん高い位置を取ればいい。対戦相手や状況によって戦い方を柔軟に変化させられるチームを目指している森保監督にとって、異なるタイプの左サイドバックを用意しておくことは非常に心強いはずだ。 今季J1開幕戦の北海道コンサドーレ札幌戦でも、積極的にシュートを打ちに行き、武富孝介の2点目も自らの左足でお膳立てするなど杉岡は光るプレーを要所要所で見せていた。「僕も3年目なんでチームを引っ張る意識を持ちたいし、そうなれるように意識してやっていきたい」と語っていた意気込みがピッチ上で見られたのは嬉しい限りだ。同じ東京五輪世代の初瀬亮(ヴィッセル神戸)や東俊希(サンフレッチェ広島)も追い上げている今、杉岡はもっともっと成長曲線を引き上げていく必要がある。伸び盛りの今を大事にして、一目散に長友に追いついてほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2019.03.03 21:30 Sun
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【2022年カタールへ期待の選手⑮】新天地・トルコで復活へ。「カタールまでは十分時間がある」と3年後に照準を合わせるエースナンバー10/香川真司(ベシクタシュ/MF)

「今季は言うたら『構想外』。競争したくてもできない状況が約1年続いた。体は万全なのにそこに加わらせてもらえない、考えられてないっていうのは非常に屈辱的で、悔しい気持ちをつねに抱えながら暮らしてきました。でもこの経験値が必ず数年後には自分の糧になって成長できると思っている。今は純粋にサッカーがしたいと心から感じているので、トライしたいですね」 2018年末に一時帰国した際、香川真司(ベシクタシュ)はメディアの前で苦しい胸の内をしみじみと吐露した。今季ドルトムントでの公式戦出場はわずか4試合。2018年ロシア・ワールドカップで得た自信と手ごたえも薄れかけていた。本人はスペイン行きを熱望していたが、とにかく試合に出られる環境をいち早く見出さなければ、選手としてのキャリアも下降線を辿りかねない。そんな危機感を大いに強めていたに違いない。 それから1カ月。悩みに悩んだ香川が赴いたのはトルコだった。憧れのスペインからのオファーは届かず、モナコ移籍話もギリギリで立ち消えになった。そこで浮上したのがベシクタシュ。欧州5大リーグで足掛け10年過ごした男にしてみれば「都落ち感」は否めなかっただろうが、1年前に同国に新天地を見出した長友佑都(ガラタサライ)がイキイキと躍動している姿に背中を押された部分はあったはず。トルコサッカーの異様な熱狂にも突き動かされたことだろう。現地入りした時の笑顔には迷いを吹っ切った男のスッキリ感が伺えた。 彼の選択は今のところ間違っていなかったようだ。デビュー戦となった2月2日(日本時間3日)のアンタルヤスポル戦での3分間2ゴールで強烈なインパクトを残した香川は、続く9日(同10日)のブルサスポル戦では後半22分から出場。着実にプレー時間を伸ばしている。後者ではトップ下の定位置を担っているセルビア人MFアデム・リャイッチが左サイドに移動。背番号23をつける日本人ファンタジスタがトップ下に入る形を取った。トルコを2002年日韓ワールドカップ3位へと導いた名将、シェノール・ギュネシュ監督は17歳のサイドアタッカー、ギュヴェン・ヤルチンらを含めて2列目の組み合わせを流動的に入れ替えながら戦う意向のようで、今後は香川がトップ下以外でプレーする可能性も考えられる。ベシクタシュがリーグ3位というポジションから順位を上げていくためにも、攻撃陣が多彩なバリエーションからゴールをこじ開けていくことが重要になってくるのだ。 ただ、基本的に香川はセンターのポジションで輝きを放つ選手。それはドルトムントやマンチェスター・ユナイテッド、日本代表でも証明されている。過去2度参戦したワールドカップを見ても、2014年ブラジル大会は左サイドが主戦場。4年間指揮を執ったアルベルト・ザッケローニ監督から「(アレッサンドロ・)デルピエロになれる」と期待を寄せられながら、全くと言っていいほど精彩を欠いた。しかし2018年ロシア・ワールドカップは本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)との競争に勝って本職のトップ下に君臨し、コロンビア戦(サランスク)のPKなど記憶に残る仕事をした。左サイドに陣取った乾貴士(アラベス)との連携も効果的で、「キャプテン翼の翼君と岬君」とさえ評されたほど。2019年アジアカップ(UAE)の際も「香川は間のギャップに入り込むのに非常に長けたアタッカー。それがいなかった分、日本は苦戦した」と分析した解説者もいて、やはり香川が真ん中で卓越した仕事のできる選手であることを再認識するいい機会となった。 その本職でベシクタシュでも輝こうと思うのなら、ロシアで本田から定位置を奪ったように、リャイッチからポジションを奪取するしかない。ただ、今季頭からチームの攻撃の軸をになってきた彼をギュネシュ監督も簡単には外しづらい。ヤルチンやイェレマイン・レンスといった周囲のアタッカー陣も彼に合わせて動くような組織が築き上げられている。それだけにシーズン途中加入の香川がいかにしてその中に入り込むのかが難しいテーマになってくる。ギュネシュ監督も近い将来、背番号23をトップ下に据えてスタートから起用する機会を作るだろう。そこが彼にとっての大きなチャンス。それをつかむかどうかで今後の動向は大きく変わってきそうだ。 日本代表で10番に返り咲けるかどうかもベシクタシュでの働き次第ではないか。森保一監督率いる新生ジャパンは発足当初から中島翔哉(アル・ドゥハイル)がエースナンバー10をつけていて、アジアカップに追加招集された乾でさえも「自分は翔哉の代わりで10番をつけているだけ」と語っていた。中島は新天地・カタールで試合に出られないということはないだろうから、当面は代表から外れることはないだろうし、10番も背負い続ける見通しだ。となれば、香川が復帰した時、どうなるかという疑問が浮上する。本人が「代表でも23番をつけたい」などと、かつて18から4番に自ら変更を申し出た本田のような姿勢を示せば問題はないだろうが、香川自身も10番には特別な思い入れを持っているはず。ただ、「自分自身がクラブで異彩を放っていなければ10番は相応しくない」と考えるタイプでもあるだけに、やはりベシクタシュのトップ下に君臨し、代表でも華々しい復活を果たすというが理想的なシナリオではある。 「次のワールドカップまでは十分時間があると思っている」と長期的なビジョンに立って代表を捉えている香川。肝心な3度目の大舞台で大輪の花を咲かせるためにも、まずは今の1日1日を大切にすること。そこに集中してほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2019.02.14 12:00 Thu
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