湘南のチャレンジ。安価な簡易席を増築/六川亨の日本サッカー見聞録
2018.09.27 14:15 Thu
▽J1リーグは昨日26日、延期されていた第26節の湘南対川崎Fの1試合を行い、0-0で引き分けた。2位の川崎Fにとっては首位の広島に勝点1差に詰め寄るチャンスだったものの、小林のPKはGK秋元にストップされるなどノーゴールに終わり、勝点差3で広島を追走している。至近距離からのシュートに滅法強いGK秋元らしい活躍でもあった。
▽さて湘南は、昨日のホームゲーム後、10月1日よりBMWスタジアムの一部改修に入るため、J1リーグは10月20日まで開催できない。改修場所は両ゴール裏のサポーターゾーン立見席で、観戦環境の改善を目的に、左右両サイドに708席、計1416席の座席を設置するからだ。
▽同スタジアムは1994年のJリーグ昇格時に改修して以来そのまま使用してきた。今回の改修の目的について、真壁会長は「どうせやるならACL出場を目指そう。しかしAFCは立ち見席を認めていない。川崎がそのために等々力を改修したが、行政の支援を待つのではなく我々でできないか。そこでRIZAP(ライザップ)が協力してくれて安く造ることができた」と説明した。
▽今シーズンから湘南はRIZAPの子会社となったが、真壁会長らが注目したのは、鉄骨作りながら“仮設”ではなく“簡易”のスタンドだ。フランスの仮設大手のGLイベンツという会社が開発した技術で、すでにF1レースやラグビーのフランス・ワールドカップでも使用された実績がある。さらに、来年日本で開催されるラグビーワールドカップ2019でも釜石会場が同社の簡易スタンドを採用しているため、耐震構造にも対応しているそうだ。
▽気になる改修費だが、1席あたり9万円台に抑えられ、G大阪の吹田スタジアムの半額で済むという。単純計算で1億5千万円弱だ。そしてこの技法を使えば、新規のスタジアム建設は75億円から90億円ほどかかるが、それが60億円で済むという試算もある。
▽今回の改修費は全額RIZAP(ライザップ)が負担するため、「RIZAPシート」と名付けられた。ただし、真壁会長によると「来シーズンのネーミングは変わるかもしれない」とのこと。新たなスポンサーを募り、クラブの収入増につなげようという狙いがあるのかもしれない。
▽販売価格は未定だが、ホーム、アウェーとも席は指定席ではなく自由席のため価格を抑えてくることが予想される。今後は「サポーターの意見を聞き、増やして欲しいという声が出れば検討したい」と真壁会長。シーズン中の改修は、「来シーズンのチケット販売で認知させるため、今年中の改修を決めた」そうだ。
▽永木、三竿雄、遠藤航と毎シーズンのように主力選手を引き抜かれた湘南。他クラブとの年俸差を少しでも埋めるためRIZAPの子会社となる決断をしたが、将来を見据えて次の手を打ってくる当たり(それも負担にならないよう)、財政難に苦しんできた湘南らしいクラブ経営と言えるのではないだろうか。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽同スタジアムは1994年のJリーグ昇格時に改修して以来そのまま使用してきた。今回の改修の目的について、真壁会長は「どうせやるならACL出場を目指そう。しかしAFCは立ち見席を認めていない。川崎がそのために等々力を改修したが、行政の支援を待つのではなく我々でできないか。そこでRIZAP(ライザップ)が協力してくれて安く造ることができた」と説明した。
▽今シーズンから湘南はRIZAPの子会社となったが、真壁会長らが注目したのは、鉄骨作りながら“仮設”ではなく“簡易”のスタンドだ。フランスの仮設大手のGLイベンツという会社が開発した技術で、すでにF1レースやラグビーのフランス・ワールドカップでも使用された実績がある。さらに、来年日本で開催されるラグビーワールドカップ2019でも釜石会場が同社の簡易スタンドを採用しているため、耐震構造にも対応しているそうだ。
▽真壁会長いわく「立派に造って借金を抱えるより安く造る」という発想は、市民クラブならではの発想と言えるだろう。
▽気になる改修費だが、1席あたり9万円台に抑えられ、G大阪の吹田スタジアムの半額で済むという。単純計算で1億5千万円弱だ。そしてこの技法を使えば、新規のスタジアム建設は75億円から90億円ほどかかるが、それが60億円で済むという試算もある。
▽今回の改修費は全額RIZAP(ライザップ)が負担するため、「RIZAPシート」と名付けられた。ただし、真壁会長によると「来シーズンのネーミングは変わるかもしれない」とのこと。新たなスポンサーを募り、クラブの収入増につなげようという狙いがあるのかもしれない。
▽販売価格は未定だが、ホーム、アウェーとも席は指定席ではなく自由席のため価格を抑えてくることが予想される。今後は「サポーターの意見を聞き、増やして欲しいという声が出れば検討したい」と真壁会長。シーズン中の改修は、「来シーズンのチケット販売で認知させるため、今年中の改修を決めた」そうだ。
▽永木、三竿雄、遠藤航と毎シーズンのように主力選手を引き抜かれた湘南。他クラブとの年俸差を少しでも埋めるためRIZAPの子会社となる決断をしたが、将来を見据えて次の手を打ってくる当たり(それも負担にならないよう)、財政難に苦しんできた湘南らしいクラブ経営と言えるのではないだろうか。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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