【六川亨の日本サッカー見聞録】アジア大会パキスタン戦に見る「対応力」の欠如
2018.08.17 15:00 Fri
▽インドネシアのジャカルタで開催されているサッカーのアジア大会。日本は14日の初戦でネパールを1-0で下すと、16日はパキスタンに4-0で勝って決勝トーナメント進出が確定した。ただし、チームとしてまとまった練習ができずに臨んだ大会とはいえ、2試合を通じて早くも明らかになった課題がある。それは引いて守られた相手をいかに崩すのか――フル代表がアジアでの戦いで苦戦を強いられるのと同じ課題でもあった。
▽日本に限らず、アジアのレベルは年々アップしている。このため、実力的に劣るネパールやパキスタンといえども10-0で勝てるような時代ではない。とはいえパキスタン戦の前半のように、相手が“普通のサッカー"をすればスペースも生まれるだけに技術の差でゴールを重ねることができた。
▽しかし、ネパール戦は相手が6BKで守備を固めてくると、なかなかこじ開けられない。同じことは16日のパキスタン戦の後半も当てはまり、日本は横パスやバックパスをつなぐだけで、ほとんど効果的な攻撃を仕掛けることはできなかった。
▽ゴール前に人数を割いて守備を固める相手に対し有効な攻撃方法は次の4つが上げられる。ロングやミドルで相手を引き出す。ドリブルで仕掛けて数的優位な状況を作る。空中戦ならゴール前を固めていても人数に関係なく勝負できる。FKやCKなどセットプレーを有効活用する(PKを獲得できれば最高)、といったところだろう。
▽ただし、ロングやミドルはそのリバウンドから、そしてドリブル突破はこぼれ球からカウンターを食らうリスクもある。このため常にリスクマネジメントを考慮しておかなければならない。
▽その象徴が、後半のCKだ。2度ほどショートコーナーを選択したものの、相手に詰められると最後はバックラインまで戻し、パス回しのためのパスに終始していた。森保監督は今大会に限らず「目標はベスト4」をどの大会でも掲げると宣言した。試合間のインターバルが短い大会のため、そして4-0とリードしたので体力の消耗とケガを避ける意味でパス回しを選択したのであれば文句はつけない。
▽しかし、ネパール戦から大幅にメンバーを変更したのは、連戦を考慮してターンオーバー制を採用したのと同時に、森保監督は多くの選手をテストしたかったのではないだろうか。だとすれば、攻撃に工夫の見られない、消極的なパス回しに終始した後半は消化不良の45分だったと言える。
▽テレビのアナウンサーはしきりに森保監督が目指す「対応力」を強調していた。そこで改めてショートコーナーを取り上げたい。なぜヤング・ジャパンはショートコーナーを選択したのか。パキスタンが制空権を握っているのなら理解できるが、実際は日本と互角か日本が上回っていた。ならばGKの出られないライナー性のクロスを入れるとか、ニアでワンクッション入れるなど工夫はいくらでもあったはず。対戦相手に応じて戦略を変えることこと「対応力」ではないだろうか。
▽年齢的に年下で、いきなり集まってぶっつけ本番という状況ではあるが、実力的に差があるのは明白なため、それを言い訳にはできない。改めて「対応力」のなさ、守りを固められると打つ手がなくなる日本の現実を見せつけられたアジア大会の2試合だった。願わくば、試合を重ねることで成長して欲しいものだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽日本に限らず、アジアのレベルは年々アップしている。このため、実力的に劣るネパールやパキスタンといえども10-0で勝てるような時代ではない。とはいえパキスタン戦の前半のように、相手が“普通のサッカー"をすればスペースも生まれるだけに技術の差でゴールを重ねることができた。
▽ゴール前に人数を割いて守備を固める相手に対し有効な攻撃方法は次の4つが上げられる。ロングやミドルで相手を引き出す。ドリブルで仕掛けて数的優位な状況を作る。空中戦ならゴール前を固めていても人数に関係なく勝負できる。FKやCKなどセットプレーを有効活用する(PKを獲得できれば最高)、といったところだろう。
▽ただし、ロングやミドルはそのリバウンドから、そしてドリブル突破はこぼれ球からカウンターを食らうリスクもある。このため常にリスクマネジメントを考慮しておかなければならない。
▽そしてヤング・ジャパンはパキスタン戦の後半でどのような選択をしたかというと、ロングやミドルシュートは皆無。前田(松本)や旗手(順天堂大)といった快足FWはいるものの、ドリブル突破を仕掛けられるドリブラーは今大会に招集されていない。そして空中戦を仕掛けることもなければ、セットプレーにも工夫がなかった。
▽その象徴が、後半のCKだ。2度ほどショートコーナーを選択したものの、相手に詰められると最後はバックラインまで戻し、パス回しのためのパスに終始していた。森保監督は今大会に限らず「目標はベスト4」をどの大会でも掲げると宣言した。試合間のインターバルが短い大会のため、そして4-0とリードしたので体力の消耗とケガを避ける意味でパス回しを選択したのであれば文句はつけない。
▽しかし、ネパール戦から大幅にメンバーを変更したのは、連戦を考慮してターンオーバー制を採用したのと同時に、森保監督は多くの選手をテストしたかったのではないだろうか。だとすれば、攻撃に工夫の見られない、消極的なパス回しに終始した後半は消化不良の45分だったと言える。
▽テレビのアナウンサーはしきりに森保監督が目指す「対応力」を強調していた。そこで改めてショートコーナーを取り上げたい。なぜヤング・ジャパンはショートコーナーを選択したのか。パキスタンが制空権を握っているのなら理解できるが、実際は日本と互角か日本が上回っていた。ならばGKの出られないライナー性のクロスを入れるとか、ニアでワンクッション入れるなど工夫はいくらでもあったはず。対戦相手に応じて戦略を変えることこと「対応力」ではないだろうか。
▽年齢的に年下で、いきなり集まってぶっつけ本番という状況ではあるが、実力的に差があるのは明白なため、それを言い訳にはできない。改めて「対応力」のなさ、守りを固められると打つ手がなくなる日本の現実を見せつけられたアジア大会の2試合だった。願わくば、試合を重ねることで成長して欲しいものだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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