【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】日本人ブンデス組でトップの7ゴール。前線で体を張れるこの男の存在価値を見直せ!武藤嘉紀
2018.03.28 18:00 Wed
▽2か月半後に迫った2018年ロシアワールドカップ本大会に向け、3月23・27日のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)は非常に重要な最終調整のチャンスだった。
▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も仮想・セネガルと仮想・ポーランドと位置付けられる相手に勝って、停滞感を打破するとともに、チームに弾みをつけようと考えていたが、マリ戦は格下相手に1-1のドローが精一杯。ウクライナ戦も1-2の敗戦を喫し、不安ばかりが募る直前テストマッチになってしまった。
▽昨年11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦でも言えることだが、攻撃の迫力を全くと言っていいほど出せないのが、今のハリルジャパン。香川真司(ドルトムント)のように変化をつけられるアタッカーがいないこともあるのか、攻めのスイッチを入れる選手が見当たらない。
▽最終予選序盤に4試合連続ゴールを奪った原口元気(デュッセルドルフ)も、2017年3月のUAE(アルアイン)・タイ(埼玉)2連戦で2ゴール3アシストと大ブレイクした久保裕也(ヘント)も足踏み状態が続いている。誰がどうやって点を取るのか。その解決策が見えない状態が続いている。
▽その切り札の1人として、新たに推したいのが武藤嘉紀(マインツ)だ。今季ドイツ・ブンデスリーガ1部・7得点というのは、目下ハリルジャパンの絶対的1トップに君臨する大迫勇也(ケルン)の4ゴールより数字的には上回っている。
▽加えて言うと、目下、2部3位とのプレーオフに回る16位に沈んでいるマインツはなかなか攻撃チャンスが巡ってこない。決定機らしい決定機は1試合に2~3回あればいい方。つねに主導権を握って優位に戦えるようなドルトムントのようなチームにいる香川とは置かれた環境が違いすぎる。終始劣勢に追い込まれ、守備負担も大きい中で7ゴールを取っているのは評価に値する。ハリルホジッチ監督はブンデス2部で宇佐美貴史(デュッセルドルフ)が2〜3月にかけて4試合連続ゴールを奪ったことを絶賛していたが、こちらも相手のレベルが低いのは事実。武藤の実績はもっとリスペクトされるべきなのだ。
▽本人もそのあたりを不満に感じているのか、3月欧州2連戦のメンバーから漏れたことに対し「どういう選考基準かってことが定かではない」と顔を曇らせた。実際、ハリルホジッチ監督就任当初の2015年はコンスタントに代表に呼ばれていたから、「なぜ自分が冷遇されるのか」という不可解な感情が拭えないのだろう。
▽しかしながら、彼が2015年秋から右ひざ負傷で長期離脱していた間に大迫や杉本健勇(セレッソ大阪)といった新たな1トップ候補が台頭した。代表50ゴールという傑出した実績を残している岡崎慎司(レスター・シティ)でさえ、ここ半年間メンバーから外されているのを見れば、競争の厳しさが分かるだろう。左サイドにしても、原口や乾貴士(エイバル)、今回の2連戦でインパクトを残した中島翔哉(ポルティモネンセ)のような新顔も現れた。1トップなのか、左サイドなのかという位置づけが難しい武藤が厳しい立場に立たされているのは間違いない。
▽それでも、3月2連戦での攻撃陣が今一つだったこともあって、彼の逆転ロシア行きの可能性は残されている。複数ポジションをこなせる武藤のユーティリティ性はイザという時に重宝する。182㎝という身長にもかかわらず、跳躍力が日本人離れしている点も心強い。高さという面で不安を抱える日本にとって、空中戦で競り勝てる存在はやはり貴重だ。スピードやスプリント回数、運動量という部分でも武藤は秀でている。ハリルホジッチ監督は彼を使うポジションをなかなか見つけられないから、再招集をためらっているのかもしれないが、本当に使いどころがないのかどうか今一度、再検証してほしい。
「もちろんワールドカップに行きたい気持ちもありますけど、今はまずマインツを残留させること。とにかく自分はやり続けるしかない、自分のベストを尽くして、いい結果を出して呼ばれなかったらしょうがない。ワールドカップのためにサッカー選手になったわけじゃないし、ワールドカップなくてもこれからもサッカー人生続くので、自分自身のゴールとマインツの残留に全てを賭けたい。そこからどうなるか見てみたいなとは思います」と武藤は今の偽らざる本音を打ち明けたが、ここからの終盤戦でゴールラッシュを見せ、マインツ残留の立役者になることができれば、ボスニア人指揮官の見る目もガラリと変わるかもしれない。
▽アルジェリアを率いていた4年前も、ハリルホジッチ監督は3月に呼んでいたメンバーを大幅に変えた実績がある。「私が選ぶのは今、いい選手」と公言しているように、武藤のパフォーマンスが光り輝いていれば、放っておくわけにはいかなくなる。その状況を作れるのは彼自身だけ。インターナショナルウイーク中に蓄えた力をここから出し切ってほしいものである。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も仮想・セネガルと仮想・ポーランドと位置付けられる相手に勝って、停滞感を打破するとともに、チームに弾みをつけようと考えていたが、マリ戦は格下相手に1-1のドローが精一杯。ウクライナ戦も1-2の敗戦を喫し、不安ばかりが募る直前テストマッチになってしまった。
▽昨年11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦でも言えることだが、攻撃の迫力を全くと言っていいほど出せないのが、今のハリルジャパン。香川真司(ドルトムント)のように変化をつけられるアタッカーがいないこともあるのか、攻めのスイッチを入れる選手が見当たらない。
▽最終予選序盤に4試合連続ゴールを奪った原口元気(デュッセルドルフ)も、2017年3月のUAE(アルアイン)・タイ(埼玉)2連戦で2ゴール3アシストと大ブレイクした久保裕也(ヘント)も足踏み状態が続いている。誰がどうやって点を取るのか。その解決策が見えない状態が続いている。
▽その切り札の1人として、新たに推したいのが武藤嘉紀(マインツ)だ。今季ドイツ・ブンデスリーガ1部・7得点というのは、目下ハリルジャパンの絶対的1トップに君臨する大迫勇也(ケルン)の4ゴールより数字的には上回っている。
▽加えて言うと、目下、2部3位とのプレーオフに回る16位に沈んでいるマインツはなかなか攻撃チャンスが巡ってこない。決定機らしい決定機は1試合に2~3回あればいい方。つねに主導権を握って優位に戦えるようなドルトムントのようなチームにいる香川とは置かれた環境が違いすぎる。終始劣勢に追い込まれ、守備負担も大きい中で7ゴールを取っているのは評価に値する。ハリルホジッチ監督はブンデス2部で宇佐美貴史(デュッセルドルフ)が2〜3月にかけて4試合連続ゴールを奪ったことを絶賛していたが、こちらも相手のレベルが低いのは事実。武藤の実績はもっとリスペクトされるべきなのだ。
▽本人もそのあたりを不満に感じているのか、3月欧州2連戦のメンバーから漏れたことに対し「どういう選考基準かってことが定かではない」と顔を曇らせた。実際、ハリルホジッチ監督就任当初の2015年はコンスタントに代表に呼ばれていたから、「なぜ自分が冷遇されるのか」という不可解な感情が拭えないのだろう。
▽しかしながら、彼が2015年秋から右ひざ負傷で長期離脱していた間に大迫や杉本健勇(セレッソ大阪)といった新たな1トップ候補が台頭した。代表50ゴールという傑出した実績を残している岡崎慎司(レスター・シティ)でさえ、ここ半年間メンバーから外されているのを見れば、競争の厳しさが分かるだろう。左サイドにしても、原口や乾貴士(エイバル)、今回の2連戦でインパクトを残した中島翔哉(ポルティモネンセ)のような新顔も現れた。1トップなのか、左サイドなのかという位置づけが難しい武藤が厳しい立場に立たされているのは間違いない。
▽それでも、3月2連戦での攻撃陣が今一つだったこともあって、彼の逆転ロシア行きの可能性は残されている。複数ポジションをこなせる武藤のユーティリティ性はイザという時に重宝する。182㎝という身長にもかかわらず、跳躍力が日本人離れしている点も心強い。高さという面で不安を抱える日本にとって、空中戦で競り勝てる存在はやはり貴重だ。スピードやスプリント回数、運動量という部分でも武藤は秀でている。ハリルホジッチ監督は彼を使うポジションをなかなか見つけられないから、再招集をためらっているのかもしれないが、本当に使いどころがないのかどうか今一度、再検証してほしい。
「もちろんワールドカップに行きたい気持ちもありますけど、今はまずマインツを残留させること。とにかく自分はやり続けるしかない、自分のベストを尽くして、いい結果を出して呼ばれなかったらしょうがない。ワールドカップのためにサッカー選手になったわけじゃないし、ワールドカップなくてもこれからもサッカー人生続くので、自分自身のゴールとマインツの残留に全てを賭けたい。そこからどうなるか見てみたいなとは思います」と武藤は今の偽らざる本音を打ち明けたが、ここからの終盤戦でゴールラッシュを見せ、マインツ残留の立役者になることができれば、ボスニア人指揮官の見る目もガラリと変わるかもしれない。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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