【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】今季8得点。移籍金27億円と言われる小柄なアタッカーは日本の救世主になるのか? 中島翔哉
2018.02.07 12:00 Wed
▽欧州の冬季移籍市場が1月末でクローズしたが、森岡亮太(アンデルレヒト)同様にステップアップが有力視されながら、惜しくも残留となったのが、ポルトガル1部・ポルティモネンセでプレーする中島翔哉だ。
▽昨年8月にFC東京から同クラブへ赴き、瞬く間に左FWの定位置をつかんだ彼は、1月末時点で16試合出場8ゴールと大ブレイク。ポルトガルビッグ3の一角に数えられるFCポルト行きが現実味を帯びていた。ポルティモネンセ側も移籍金を27億円という強気の数字に設定。うまく契約がまとまるかと思われたが、最終的には今季いっぱいとどまることになった。
▽ポルトへ行っていれば、チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント参戦の可能性もあったが、逆に熾烈なポジション争いを強いられる。実際、今季リーグ戦15ゴールを挙げているムサ・マレガや左MFを担っているヤシン・ブラヒミらがいて、出場機会を得られる保証はない。4カ月後に迫った2018年ロシアワールドカップ滑り込みを目指そうと思うなら、コンスタントで出番のあるポルティモネンセにいた方がいい。そんなプラスマイナスを総合的に判断し、本人も残留を選択したのではないだろうか。
▽中島がポルティモネンセでいち早く適応できたのは、東京ヴェルディアカデミー時代の後輩・亀倉龍希の存在が大きい。かつて同クラブでプレーしていた金崎夢生(鹿島)もそうだったが、ポルトガル語堪能な彼が言葉や生活の面でサポートしてくれていることは心強い。加えて、鹿島アントラーズでもプレー経験のあるファブリシオもいて、新たな環境に戸惑うことなく入り込めた。中島翔哉のドリブル突破や思い切ったシュート力を生かしてくれる体制が整っているから、わずか半年間でこれだけの成績を残せている。やはり環境的要素を抜きに語れないのだ。
▽しかしながら、中島にそれだけのポテンシャルがなかったら、いくら周りに恵まれていたと言っても数字はついてこない。2016年リオデジャネイロ五輪に挑んだU-23日本代表時代にエースナンバー10を与えられ、手倉森誠監督(現日本代表コーチ)に絶大な信頼を寄せられた小柄なアタッカーは傑出した技術と得点能力がある。
▽仮に中島が、2006年ドイツワールドカップの巻誠一郎(熊本)や2014年ブラジルワールドカップの大久保嘉人(川崎)のように、ロシアのラストピースになろうと思うなら、右サイドの久保、浅野拓磨(シュツットガルト)らとの競争を制することが肝要だ。左サイドに関しては、今季スペインで絶好調の乾貴士(エイバル)が君臨しているうえ、ハリルホジッチ監督の寵愛を受ける原口元気(デュッセルドルフ)が1月末の移籍によって出場機会を取り戻したことから、この2枚でほぼ決まりだろう。中島が参入できる余地があるとしたら、やはり右だろう。
▽最近の日本代表のこのポジションは本田圭佑、久保、浅野が順番に使われていて、最終予選終盤はリオ世代の2人が定着した印象だった。が、浅野が昨年11月のブラジル(リール)&ベルギー(ブルージュ)2連戦の後、所属クラブで出番を大幅に減らしていて、冬の移籍も実現しなかったことから、立場的に厳しくなりつつある。久保と本田はクラブでコンスタントに試合に出ているが、2人ともトップ下で起用されている。久保自身も「セカンドトップが自分にとってのベストな役割」と話していて、代表の右サイドには戸惑いも少なくないという。それは本田にしても一緒。本人はインサイドハーフかトップ下でのプレーを望んでいる。そういう状況だけに、本職のサイドアタッカーである中島にはアドバンテージがあるのだ。
▽問題はこれまでハリルジャパンに一度も招集されていないこと。細かい約束事や規律を重んじる指揮官のやり方をすぐ吸収できるかどうか未知数な部分がある。それでも何か大きなことをやってくれそうな意外性とスケール感をこの小兵アタッカーは秘めている。今の日本代表にはそういう隠し玉のような存在が必要かもしれない。
▽いずれにしても、中島が最後の最後に滑り込むためには、ここからさらにパフォーマンスを上げて、目に見える結果を残す必要がある。ポルトガル1部での2ケタ得点はもちろんのこと、15点以上の数字がほしいところ。日本の救世主になるべく、彼には持ち前の貪欲さと泥臭さを前面に押し出してもらいたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
▽昨年8月にFC東京から同クラブへ赴き、瞬く間に左FWの定位置をつかんだ彼は、1月末時点で16試合出場8ゴールと大ブレイク。ポルトガルビッグ3の一角に数えられるFCポルト行きが現実味を帯びていた。ポルティモネンセ側も移籍金を27億円という強気の数字に設定。うまく契約がまとまるかと思われたが、最終的には今季いっぱいとどまることになった。
▽中島がポルティモネンセでいち早く適応できたのは、東京ヴェルディアカデミー時代の後輩・亀倉龍希の存在が大きい。かつて同クラブでプレーしていた金崎夢生(鹿島)もそうだったが、ポルトガル語堪能な彼が言葉や生活の面でサポートしてくれていることは心強い。加えて、鹿島アントラーズでもプレー経験のあるファブリシオもいて、新たな環境に戸惑うことなく入り込めた。中島翔哉のドリブル突破や思い切ったシュート力を生かしてくれる体制が整っているから、わずか半年間でこれだけの成績を残せている。やはり環境的要素を抜きに語れないのだ。
▽しかしながら、中島にそれだけのポテンシャルがなかったら、いくら周りに恵まれていたと言っても数字はついてこない。2016年リオデジャネイロ五輪に挑んだU-23日本代表時代にエースナンバー10を与えられ、手倉森誠監督(現日本代表コーチ)に絶大な信頼を寄せられた小柄なアタッカーは傑出した技術と得点能力がある。
▽それは日本代表のトレーニングパートナーとして帯同した2015年アジアカップ(オーストラリア)直前合宿でも明らかだった。本田圭佑(パチューカ)や香川真司(ドルトムント)らがズラリと揃う中、彼は物怖じすることなくピッチに立ち、ゲーム形式の練習でも果敢にゴールを狙いに行っていた。その後、移籍したFC東京でコンスタントに活躍できなかったため、A代表にお呼びはかからなかったが、すでにヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる代表に定着している久保裕也(ヘント)や井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)らと同等以上の実力の持ち主なのは確か。ボスニア人指揮官も興味を示していると言われる。
▽仮に中島が、2006年ドイツワールドカップの巻誠一郎(熊本)や2014年ブラジルワールドカップの大久保嘉人(川崎)のように、ロシアのラストピースになろうと思うなら、右サイドの久保、浅野拓磨(シュツットガルト)らとの競争を制することが肝要だ。左サイドに関しては、今季スペインで絶好調の乾貴士(エイバル)が君臨しているうえ、ハリルホジッチ監督の寵愛を受ける原口元気(デュッセルドルフ)が1月末の移籍によって出場機会を取り戻したことから、この2枚でほぼ決まりだろう。中島が参入できる余地があるとしたら、やはり右だろう。
▽最近の日本代表のこのポジションは本田圭佑、久保、浅野が順番に使われていて、最終予選終盤はリオ世代の2人が定着した印象だった。が、浅野が昨年11月のブラジル(リール)&ベルギー(ブルージュ)2連戦の後、所属クラブで出番を大幅に減らしていて、冬の移籍も実現しなかったことから、立場的に厳しくなりつつある。久保と本田はクラブでコンスタントに試合に出ているが、2人ともトップ下で起用されている。久保自身も「セカンドトップが自分にとってのベストな役割」と話していて、代表の右サイドには戸惑いも少なくないという。それは本田にしても一緒。本人はインサイドハーフかトップ下でのプレーを望んでいる。そういう状況だけに、本職のサイドアタッカーである中島にはアドバンテージがあるのだ。
▽問題はこれまでハリルジャパンに一度も招集されていないこと。細かい約束事や規律を重んじる指揮官のやり方をすぐ吸収できるかどうか未知数な部分がある。それでも何か大きなことをやってくれそうな意外性とスケール感をこの小兵アタッカーは秘めている。今の日本代表にはそういう隠し玉のような存在が必要かもしれない。
▽いずれにしても、中島が最後の最後に滑り込むためには、ここからさらにパフォーマンスを上げて、目に見える結果を残す必要がある。ポルトガル1部での2ケタ得点はもちろんのこと、15点以上の数字がほしいところ。日本の救世主になるべく、彼には持ち前の貪欲さと泥臭さを前面に押し出してもらいたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
|
関連ニュース