【東本貢司のFCUK!】“経済操作的”移籍に警鐘を
2016.08.11 13:00 Thu
▽意外に知られていないようだが、マンチェスター・ユナイテッドの“聖地”オールド・トラッフォードの正確な立地は、マンチェスター市に隣接するサルフォード市内である(サルフォードなどのマンチェスター市周辺の衛星都市をひっくるめて「グレイター・マンチェスター」と呼ぶことから)。さて、そのサルフォード大学・スポーツビジネスセンターがこのほど「ある研究成果」を発表した。曰く「ズラタン・イブラヒモヴィッチとポール・ポグバの加入は、ユナイテッドにとって『+勝ち点10』の価値がある」。同センターの統計学者たちが独自に設計製作した「SAM」(“スポーツ分析機”)がはじき出した「統計データ分析」によるもので、二人の加入はユナイテッドのリーグ優勝確率を「4%」アップさせる効果が期待できるのだという。ちなみに一連の研究データは、新シーズンの全フィクスチャー(対戦カード)を元に「SAM」で1万回以上計算した上での結果だとか。
▽なるほど、まさか二人が何等かの事由でほとんど出場が叶わなかった場合まで計算に入っているとは思えないから、基本的には「信じよう」。ただ、この統計学というしろものはどうも胡散臭い。あのリーマン・ショックだって、この手の“統計数学”による複雑な債券操作が引き起こしたんじゃなかったっけ? 要するに問題は、昨今の急速なIT技術と統計学的金融錬金術が結びついた挙句、現代社会経済はその勿体つけた予測データに振り回されているということなんじゃ? 裏を返せば、ポグバの移籍の真の(では言い過ぎなら「大半の」)目論みとは、スポンサーシップ拡張とそれに伴う株価操作なんじゃないだろうか。つまりは「情緒的効果」ということにならないか? 純粋に数字データを“京”だか何だかクラスのスーパーコンピューターにかけた上での「予測」が、結局は人の欲望をくすぐり、始末に負えないどころではないカオスをもたらしてしまう・・・・。結果的に人間は自分たちがコントロールしているつもりの「データ」に操られるだけのような気も。
▽ひょっとしたら、ポグバの「分不相応な移籍金」に警鐘を鳴らす声(アーセン・ヴェンゲル、ポール・スコールズ他)には、単に「過大評価」云々にとどまらない、いわば、いずれこの手の「経済操作的評価」が、これまでにも増して当たり前のように幅を利かすことへの不安を(無意識にも)代弁しているのではなかろうか。要するに“逆”あゝ、ヴェンゲルの、そしてアーセナルの“金庫番”ガジディスCEOの“現実的”な弱音、嘆きもさにあらん。ヴァーディーに、マーレズに、ラカゼットにそっぽを向かれ、サンチェスはコパアメリカで負傷、コシェルニーはユーロ疲れ、メルテザッカーがしばらくリタイア、ガブリエルまで8週間の負傷で、いざ穴埋めをしようにも「ふっかけられる額」が見合わない、などなど八方ふさがりも同然。チェルシーはカンテを、シティーはストーンズを、そしてユナイテッドは・・・・ときては、法外な「経済操作的」カネ太り補強に愚痴の一つも言いたくなるというものだろう。そのせいかどうかはともかく、ヴェンゲル自身から「自身の将来」に黄信号をほのめかす“つぶやき”まで・・・・。
▽ところで、プレミア開幕は目前の今週末だが、チャンピオンシップ(2部)やスコティッシュプレミアは一足先にスタートして各1試合を消化している。前者では降格組のノリッチは快勝したが、アストン・ヴィラとニューカッスルは黒星スタート、後者の最大の目玉、復活レインジャーズはリーグ開幕戦こそハミルトンに引き分けたが、リーグカップでは大勝を飾った。新加入、おなじみジョーイ・バートン、ニコ・クラニチャールが殊の外元気いっぱいのようで、4年ぶりの本舞台でけっこう暴れてくれそうだ。ユーロで唯一“蚊帳の外”に置かれたりして、しばらく火が消えた状態のスコットランドに、ガツンと活を入れて大いに盛り上げて欲しいものである。今後も「レインジャーズ中心」に見守りたい。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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▽昨シーズン、パリSG所属のイブラヒモヴィッチはフランス・リーグ1で「38ゴール」をマークしたが、SAMの予測によると、これは「8ポイント加算」の計算になるという。一方、ユヴェントスで昨シーズン、ポグバが記録した「13アシスト」は「1.3ポイント」。合計「(約)10ポイント」という訳だ。これを単純に昨シーズンのプレミアに当てはめると、ユナイテッドは5位から2位に上がる計算になる。ここには、二人にかかった「コスト」も加味されているらしく、タダ(フリートランスファー)のイブラヒモヴィッチは、史上最高額(8900万ポンド)についたポグバよりもはるかに「効率が良い」貢献度を果たすという次第。ただし「ポグバの値段が高すぎるという説も多いが、将来性を考えれば十分に元が取れるはず」だそうだ。言うまでもないことだが「SAMの試算はホーム/アウェイ、対戦相手の実力と近年の成績、起こり得る不調や故障などの不測データまで組み込んだ結果」。「すべて純粋な数のデータとアルゴリズムによるもので、それ以外の情緒的要素など一切ない」と同センターのイアン・マクヘイル/スポーツ分析学教授は胸を張る。▽ひょっとしたら、ポグバの「分不相応な移籍金」に警鐘を鳴らす声(アーセン・ヴェンゲル、ポール・スコールズ他)には、単に「過大評価」云々にとどまらない、いわば、いずれこの手の「経済操作的評価」が、これまでにも増して当たり前のように幅を利かすことへの不安を(無意識にも)代弁しているのではなかろうか。要するに“逆”あゝ、ヴェンゲルの、そしてアーセナルの“金庫番”ガジディスCEOの“現実的”な弱音、嘆きもさにあらん。ヴァーディーに、マーレズに、ラカゼットにそっぽを向かれ、サンチェスはコパアメリカで負傷、コシェルニーはユーロ疲れ、メルテザッカーがしばらくリタイア、ガブリエルまで8週間の負傷で、いざ穴埋めをしようにも「ふっかけられる額」が見合わない、などなど八方ふさがりも同然。チェルシーはカンテを、シティーはストーンズを、そしてユナイテッドは・・・・ときては、法外な「経済操作的」カネ太り補強に愚痴の一つも言いたくなるというものだろう。そのせいかどうかはともかく、ヴェンゲル自身から「自身の将来」に黄信号をほのめかす“つぶやき”まで・・・・。
▽ところで、プレミア開幕は目前の今週末だが、チャンピオンシップ(2部)やスコティッシュプレミアは一足先にスタートして各1試合を消化している。前者では降格組のノリッチは快勝したが、アストン・ヴィラとニューカッスルは黒星スタート、後者の最大の目玉、復活レインジャーズはリーグ開幕戦こそハミルトンに引き分けたが、リーグカップでは大勝を飾った。新加入、おなじみジョーイ・バートン、ニコ・クラニチャールが殊の外元気いっぱいのようで、4年ぶりの本舞台でけっこう暴れてくれそうだ。ユーロで唯一“蚊帳の外”に置かれたりして、しばらく火が消えた状態のスコットランドに、ガツンと活を入れて大いに盛り上げて欲しいものである。今後も「レインジャーズ中心」に見守りたい。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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